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商業ギルドにて①
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昨夜作った木のおもちゃを収納魔法で持ち運んでいる。
商業ギルドに行くからだ。
朝イチで商業ギルドへ行って午後商談お願いしますと受付のお姉さんに言ってきた。
もちろんギルドマスターとの面談で。
言ってきたっていうけど、返事はもらっていない。
相手にされないだろうと思って言うだけ言ってすぐ回れ右して出てきたんだ。
今日のギルマスの午後の予定は耳強化で把握済み。
昼食後すぐのほんの短い時間だけ手が空いていると。
つまりそれは、彼の休憩時間。
一応アポ取らないとダメかなと思って伝言頼んでみたけど、子ども相手にまともに対応してくれるのか、わからない。
薬草採取を切りのいいところでいつもより早めに終わりにする。
カートの中のルドはおとなしくおもちゃをにぎにぎむしゃむしゃしていた。
よし。
良い子には治癒魔法をもっとかけてあげよう。
カートはなかなか使い勝手が良かった。
薬草の買取りをしてもらってから母乳をもらいに行って、いざ、商業ギルドへ。
ちょうど立ち上がった今朝のお姉さんを捕まえることができた。
「今朝ギルドマスターへ伝言をお願いしましたエラと申します。ほんの少しで構いません、ギルドマスターとお話させてください」
お姉さんはこれから休憩に入るところだったらしい。
一瞬イヤな顔していた。
「んー、ちょっと待っててね」
子どもを追い払うか、丁寧な対応をすべきか少し逡巡していたようだったが、おんぶ紐を見て一度ギルマスに掛け合ってくれるようだ。
そう、今はルドをおんぶしている。
昨日は長時間おんぶして歩く体力がないことがわかったんだけど、魔法でルドを軽くすればいいことに気付いたんだよね。
耳強化で私は知っている。
昨日このおんぶ紐を見た人の話が、この商業ギルドの人間の耳にも入って、興味を持ったということを。
お姉さんが戻ってきて、応接室に通された。
「お会いしてくださるって。良かったね」
優しいお姉さんだった。
お礼を言ってソファに静かに座って待つ。
耳強化でギルマスの情報はすでに得ている。
だがここで1番大事なのは、子ども相手に契約を交わしてくれるかどうかだ。
いくら前世おばあちゃんの私といえども貴族相手に交渉ができるような頭のいい人間ではなかったので、慎重に話をしなければならない。
この5才児を囲った方がいいと思わせる。
でも攫うのは得策ではない、とも。
ガチャ
ドアが開いた音がしたのでソファから立ち上がる。
「待たせたね。今日は昼の時間しか開けられないんだ。食事しながらでいいかい?」
そう言いながら入室してきた紳士は素敵な英国紳士風だった。
さすが貴族、顔がいい。
前世の面食いの私だったらときめいていたと思う。
返事を待たずに給仕係がテーブルに食事を並べていった。
「はい、どうぞ。お忙しい中、貴重な休憩時間をいただいてしまって申し訳ありません。初めまして、エラと申します。よろしくお願いします」
「初めまして、エラ。私が商業ギルドマスターのサミュエル・フォーディアンだ。エラも一緒に食事しよう」
素敵な笑顔でそう言うと給仕係に耳打ちする。
あれよあれよと私のカトラリーセットが目の前に並べられた。
いきなり貴族と食事ですか。
「おんぶしているのは君の弟さんかな?」
「はい、弟のルドです。生後6ヶ月です」
「弟さんは大人しいね。人見知りしなければメイドに預けてもいいかな?」
それはありがたい。
おんぶしながらだと食事しずらいからね。
ゆっくりおろすとルドは寝ていた。
寝る子は育つ!
お姉ちゃん想いの良い弟だ。
余っているソファの端に寝かせてもらうことに。
メイドさんが肌掛けをかけてくれた。
「さあ、まずは食事にしよう。好きなだけどうぞ」
ギルマスは絶やさぬ笑顔でカトラリーを手にして食事を始めた。
「ありがとうございます。いただきます」
ここは子どもらしく遠慮しないでいただくことに。
マナーはちょっと自信ないよ。外側から使えば良いんだよね?
いやでも、テーブルに並べられているものを子どもの私にどうしろというのだ。
困った時のどれにしようかな作戦。
どれも美味しそうだなウフフフフという顔をしてテーブル全体を見渡す。
すると、給仕のお兄さんが適当に選んでお皿をくれたよ。
ありがとう。
次は子どもサイズのスープが置かれた。
またまたありがとう。
大丈夫、スープ用のスプーンはわかるよ。
窪みの深いやつね!
ああこれは!
この世界で初めて美味しいポタージュスープをいただきました。
なんとも久しぶりで懐かしい。
柔らかいパンも、ジューシーなステーキも、フレッシュなサラダも、体や脳みそが喜んでいるような、そんな気がした。
何しにきたのかちょっと忘れそうになっちゃった。
商業ギルドに行くからだ。
朝イチで商業ギルドへ行って午後商談お願いしますと受付のお姉さんに言ってきた。
もちろんギルドマスターとの面談で。
言ってきたっていうけど、返事はもらっていない。
相手にされないだろうと思って言うだけ言ってすぐ回れ右して出てきたんだ。
今日のギルマスの午後の予定は耳強化で把握済み。
昼食後すぐのほんの短い時間だけ手が空いていると。
つまりそれは、彼の休憩時間。
一応アポ取らないとダメかなと思って伝言頼んでみたけど、子ども相手にまともに対応してくれるのか、わからない。
薬草採取を切りのいいところでいつもより早めに終わりにする。
カートの中のルドはおとなしくおもちゃをにぎにぎむしゃむしゃしていた。
よし。
良い子には治癒魔法をもっとかけてあげよう。
カートはなかなか使い勝手が良かった。
薬草の買取りをしてもらってから母乳をもらいに行って、いざ、商業ギルドへ。
ちょうど立ち上がった今朝のお姉さんを捕まえることができた。
「今朝ギルドマスターへ伝言をお願いしましたエラと申します。ほんの少しで構いません、ギルドマスターとお話させてください」
お姉さんはこれから休憩に入るところだったらしい。
一瞬イヤな顔していた。
「んー、ちょっと待っててね」
子どもを追い払うか、丁寧な対応をすべきか少し逡巡していたようだったが、おんぶ紐を見て一度ギルマスに掛け合ってくれるようだ。
そう、今はルドをおんぶしている。
昨日は長時間おんぶして歩く体力がないことがわかったんだけど、魔法でルドを軽くすればいいことに気付いたんだよね。
耳強化で私は知っている。
昨日このおんぶ紐を見た人の話が、この商業ギルドの人間の耳にも入って、興味を持ったということを。
お姉さんが戻ってきて、応接室に通された。
「お会いしてくださるって。良かったね」
優しいお姉さんだった。
お礼を言ってソファに静かに座って待つ。
耳強化でギルマスの情報はすでに得ている。
だがここで1番大事なのは、子ども相手に契約を交わしてくれるかどうかだ。
いくら前世おばあちゃんの私といえども貴族相手に交渉ができるような頭のいい人間ではなかったので、慎重に話をしなければならない。
この5才児を囲った方がいいと思わせる。
でも攫うのは得策ではない、とも。
ガチャ
ドアが開いた音がしたのでソファから立ち上がる。
「待たせたね。今日は昼の時間しか開けられないんだ。食事しながらでいいかい?」
そう言いながら入室してきた紳士は素敵な英国紳士風だった。
さすが貴族、顔がいい。
前世の面食いの私だったらときめいていたと思う。
返事を待たずに給仕係がテーブルに食事を並べていった。
「はい、どうぞ。お忙しい中、貴重な休憩時間をいただいてしまって申し訳ありません。初めまして、エラと申します。よろしくお願いします」
「初めまして、エラ。私が商業ギルドマスターのサミュエル・フォーディアンだ。エラも一緒に食事しよう」
素敵な笑顔でそう言うと給仕係に耳打ちする。
あれよあれよと私のカトラリーセットが目の前に並べられた。
いきなり貴族と食事ですか。
「おんぶしているのは君の弟さんかな?」
「はい、弟のルドです。生後6ヶ月です」
「弟さんは大人しいね。人見知りしなければメイドに預けてもいいかな?」
それはありがたい。
おんぶしながらだと食事しずらいからね。
ゆっくりおろすとルドは寝ていた。
寝る子は育つ!
お姉ちゃん想いの良い弟だ。
余っているソファの端に寝かせてもらうことに。
メイドさんが肌掛けをかけてくれた。
「さあ、まずは食事にしよう。好きなだけどうぞ」
ギルマスは絶やさぬ笑顔でカトラリーを手にして食事を始めた。
「ありがとうございます。いただきます」
ここは子どもらしく遠慮しないでいただくことに。
マナーはちょっと自信ないよ。外側から使えば良いんだよね?
いやでも、テーブルに並べられているものを子どもの私にどうしろというのだ。
困った時のどれにしようかな作戦。
どれも美味しそうだなウフフフフという顔をしてテーブル全体を見渡す。
すると、給仕のお兄さんが適当に選んでお皿をくれたよ。
ありがとう。
次は子どもサイズのスープが置かれた。
またまたありがとう。
大丈夫、スープ用のスプーンはわかるよ。
窪みの深いやつね!
ああこれは!
この世界で初めて美味しいポタージュスープをいただきました。
なんとも久しぶりで懐かしい。
柔らかいパンも、ジューシーなステーキも、フレッシュなサラダも、体や脳みそが喜んでいるような、そんな気がした。
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