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【番外編】シスコン王太子は女性騎士と結婚したい
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サイラスがソラリスと出会ってから2年の月日が流れ、ソラリスはかねてからの希望が叶い、フレイアの護衛騎士となった。
天真爛漫で人懐こいフレイアはすぐにソラリスに懐いて姉のように慕うようになり、また元々フレイアに心酔していたソラリスは、あらためて、命に代えて主を守ることを心に誓った。
騎士団に残っているサイラスがソラリスと会うことは減ってしまったが、たまの休日に王宮に戻ると、生き生きと働くソラリスを見かける。
そしてその1年後、3年に渡る騎士団生活を終えたサイラスはカイトと共に学園に復学することになり、それと同時にフレイアも同じ学園に入学し、ソラリスも護衛を兼ねて入学した。
また、隣国タンタルの第五王子ハロルドが留学してきてサイラスと一緒に通うことになり、ここに、将来夫婦となる2組のカップルが一堂に会することになるのだが、もちろん当事者である彼らはまだ何も知らない。
アルゴンの学園は基本、王族、貴族、平民の区別がない。
もちろん王族は国民にとって尊敬と信奉の対象ではあるが、元々の国風というか、アルゴンの王族は国民にとってかなり近く、親しみやすいものでもあった。
それ故、サイラスやフレイアたちも楽しく学園生活を謳歌していたのである。
しばらくしてサイラスとハロルドは併設されている大学に通い始めた。
行動を共にすることは減ったが、それでも妹とその侍女が楽しそうに過ごす日々を見守ることはサイラスの楽しみであり、様子を見に行くことは日課になった。
しかし、その楽しい時間も長くは続かなかった。
フレイア王女が隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐため、退学することになったのである。
当然ソラリスも退学して、フレイアに付いていく。
覚悟していたことではあるが、サイラスの心は千々に乱れた。
溺愛する妹フレイアを他国に嫁がせるのは辛い。
例え嫁ぐにしても自国ならちょくちょく顔を見られるだろうに、他国の王太子妃になるのでは滅多に会えなくなる。
しかもテルルの王太子セレンは正式に婚約が整ってからも、フレイアに贈り物どころか手紙さえ寄越さない。
一度表敬訪問の折に挨拶したことがあるが、眉目秀麗な男ではあったが冷たい印象しか残っていない。
あんな男に、可愛いフレイアをやるのか?
あんな男に嫁いで、フレイアは本当に幸せになれるのか?
婚姻間近ではあるが、やめさせた方がいいのではないだろうか?
しかしそんな悩める兄の心も知らず、当の妹は舞い上がり、テルルに嫁ぐ日を指折り数えている。
それに…。
サイラスは未だソラリスに、自分の気持ちの欠片さえ伝えてはいなかった。
ソラリスの希望はフレイアの側にいること。
自分の想いを告げればそれはソラリスの夢の邪魔になるかもしれない。
こんな想いには蓋をして、墓場まで持って行くのが良いのだろう。
しかし、王太子であるサイラスに続々と縁談が寄せられているのも事実である。
今まで勉強中の身とのらりくらりと躱し、両親も強制するようなことはなかったため見て見ぬ振りをしてきたが、それだって大学を卒業するまでの執行猶予のようなものだ。
ここ最近、サイラスは生傷が絶えなくなっていた。
むしゃくしゃする気持ちをがむしゃらに剣に乗せて稽古していたためであり、また、こんな不甲斐ない自分を嫌悪してもいた。
そして、従兄弟であり親友でもあるハロルドもまた、行き場のない想いを抱えて懊悩しているようだった。
ハロルドがフレイアへの想いを募らせているのは、サイラスの目から見ても明らかだ。
「ハルも難儀なヤツだな」
サイラスはそっと呟き、気の毒な親友を見やった。
ある意味、自分よりハロルドの方がずっと難儀だと思う。
想う相手は別の男に恋していて、もうすぐ嫁ぐことも決まっているのだから。
フレイアはそんなハロルドの想いには全く気付かず、血の繋がらない兄くらいにしか見ていないだろう。
愛する妹ではあるが、無邪気に結婚に浮かれているフレイアに、『なんて残酷な女なんだ』と腹立たしい思いもある。
ハロルドは、生涯自分の想いを伝えることはないと言い切っている。
初恋相手との結婚に夢見るフレイアに、水を差すような真似はしたくないのだと言うのだ。
嫁入りの準備を楽しそうに話すフレイアを、ハロルドは眩しそうに、笑顔で見つめる。
時には揶揄ったり、そして時には祝福したり。
辛くはないのかと問えば、『恋に恋する可愛い彼女を見ているのが楽しいから』と答える。
そんなハロルドを、サイラスはやはり自分より強いと思う。
天真爛漫で人懐こいフレイアはすぐにソラリスに懐いて姉のように慕うようになり、また元々フレイアに心酔していたソラリスは、あらためて、命に代えて主を守ることを心に誓った。
騎士団に残っているサイラスがソラリスと会うことは減ってしまったが、たまの休日に王宮に戻ると、生き生きと働くソラリスを見かける。
そしてその1年後、3年に渡る騎士団生活を終えたサイラスはカイトと共に学園に復学することになり、それと同時にフレイアも同じ学園に入学し、ソラリスも護衛を兼ねて入学した。
また、隣国タンタルの第五王子ハロルドが留学してきてサイラスと一緒に通うことになり、ここに、将来夫婦となる2組のカップルが一堂に会することになるのだが、もちろん当事者である彼らはまだ何も知らない。
アルゴンの学園は基本、王族、貴族、平民の区別がない。
もちろん王族は国民にとって尊敬と信奉の対象ではあるが、元々の国風というか、アルゴンの王族は国民にとってかなり近く、親しみやすいものでもあった。
それ故、サイラスやフレイアたちも楽しく学園生活を謳歌していたのである。
しばらくしてサイラスとハロルドは併設されている大学に通い始めた。
行動を共にすることは減ったが、それでも妹とその侍女が楽しそうに過ごす日々を見守ることはサイラスの楽しみであり、様子を見に行くことは日課になった。
しかし、その楽しい時間も長くは続かなかった。
フレイア王女が隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐため、退学することになったのである。
当然ソラリスも退学して、フレイアに付いていく。
覚悟していたことではあるが、サイラスの心は千々に乱れた。
溺愛する妹フレイアを他国に嫁がせるのは辛い。
例え嫁ぐにしても自国ならちょくちょく顔を見られるだろうに、他国の王太子妃になるのでは滅多に会えなくなる。
しかもテルルの王太子セレンは正式に婚約が整ってからも、フレイアに贈り物どころか手紙さえ寄越さない。
一度表敬訪問の折に挨拶したことがあるが、眉目秀麗な男ではあったが冷たい印象しか残っていない。
あんな男に、可愛いフレイアをやるのか?
あんな男に嫁いで、フレイアは本当に幸せになれるのか?
婚姻間近ではあるが、やめさせた方がいいのではないだろうか?
しかしそんな悩める兄の心も知らず、当の妹は舞い上がり、テルルに嫁ぐ日を指折り数えている。
それに…。
サイラスは未だソラリスに、自分の気持ちの欠片さえ伝えてはいなかった。
ソラリスの希望はフレイアの側にいること。
自分の想いを告げればそれはソラリスの夢の邪魔になるかもしれない。
こんな想いには蓋をして、墓場まで持って行くのが良いのだろう。
しかし、王太子であるサイラスに続々と縁談が寄せられているのも事実である。
今まで勉強中の身とのらりくらりと躱し、両親も強制するようなことはなかったため見て見ぬ振りをしてきたが、それだって大学を卒業するまでの執行猶予のようなものだ。
ここ最近、サイラスは生傷が絶えなくなっていた。
むしゃくしゃする気持ちをがむしゃらに剣に乗せて稽古していたためであり、また、こんな不甲斐ない自分を嫌悪してもいた。
そして、従兄弟であり親友でもあるハロルドもまた、行き場のない想いを抱えて懊悩しているようだった。
ハロルドがフレイアへの想いを募らせているのは、サイラスの目から見ても明らかだ。
「ハルも難儀なヤツだな」
サイラスはそっと呟き、気の毒な親友を見やった。
ある意味、自分よりハロルドの方がずっと難儀だと思う。
想う相手は別の男に恋していて、もうすぐ嫁ぐことも決まっているのだから。
フレイアはそんなハロルドの想いには全く気付かず、血の繋がらない兄くらいにしか見ていないだろう。
愛する妹ではあるが、無邪気に結婚に浮かれているフレイアに、『なんて残酷な女なんだ』と腹立たしい思いもある。
ハロルドは、生涯自分の想いを伝えることはないと言い切っている。
初恋相手との結婚に夢見るフレイアに、水を差すような真似はしたくないのだと言うのだ。
嫁入りの準備を楽しそうに話すフレイアを、ハロルドは眩しそうに、笑顔で見つめる。
時には揶揄ったり、そして時には祝福したり。
辛くはないのかと問えば、『恋に恋する可愛い彼女を見ているのが楽しいから』と答える。
そんなハロルドを、サイラスはやはり自分より強いと思う。
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