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悪戯は、甘くてスパイシー。

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 執務室のドアに張った結界に、何か引っ掛かった。
 誰かがドアを叩いたのだ。誰かはだいたい予想がつく。
 レグルスはため息を吐いてドアに向かった。
 まだ眠っているルリナを起こさないように、静かに部屋を出る。
 ドアを叩いたのは、予想通りだった。

「よう、レグルス。さっきぶりだな」

 自称親友の副騎士団長オスカーだ。

「陛下がお呼びだ」

「…………分かった」

 断る事が出来ないなら、早く終わらせるしかない。
 ルリナが起きる前に、仕事を終わらせて戻る! そう決めて、レグルスは足早に王城へ向かった。





「いつものレグルス……じゃぁないな」

 陛下の呼び出しだと言うのに、思い切り嫌そうな顔をしていた。仕事を淡々とこなすタイプなのに、珍しい。
 いつも冷たい表情のレグルスが、今日は少しおかしい。
 女達も怒鳴られたと言っていた。何か悩みでもあるのだろうか。
 今も。あんなに苛立って急いでいた。
 執務室を離れたくないのか……?

「親友だからな。確かめて、力になってやらないとな」

 レグルスの執務室のドアには結界がある。女達が勝手に入らないようにだ。エリート魔術師の結界だ。通常、無断で入れる者はいない。
 しかし仕事で必要ならば……と、抜け道が用意されている。

 首から下げた自分の騎士プレートをドアに付けると、カチャリと鍵の開く音がした。

「親友特権に感謝……だな」







「ん……っ」

 息苦しさにルリナは目を覚ました。

 目を開けると、目の前に知らない人間がルリナに覆い被さっていた。
 赤茶色の髪をした、大きな男だ。

「えっ? 誰? レグルスは…っ」

 レグルスはどこ、と言う前に、男はルリナの唇をパクりと食べた。
 男の口にふさがれたまま、舌で唇をなぞられる。

「ん………っ、んんん……っ」

 舌の感触にぞくぞくしながら、男の背中をバンバン叩く。少し唇が離された隙に、止めてと言おうとした瞬間。
 男の舌が唇の隙間をこじ開けた。ぬるりと口内に舌が侵入する。
 レグルスより大きくて肉厚な舌が、ルリナの舌を絡めとり、強く吸われる。

「んんぅ!」

 強く吸われた舌に軽く歯をたてられて、恐怖に涙が溢れた。
 男はルリナの髪を撫で、今度は噛んだ舌を男の舌で撫でるように、擦り合わせた。
 レグルスとのキスも、こうされるのが好きだ。舌の感触が気持ちいい。レグルスにされる時と同じく、甘い声が漏れる。

「ふぅん……っん……もっとぉ」

 気持ち良さに頭が痺れ、キスの催促をしてしまう。
 レグルスのキスは甘酸っぱくて、とろけるほど美味しい。
 男のキスは甘いのに少しスパイシーで、悪くない。……癖になりそうな味。

「ヤバいな。お前、可愛すぎる……」

 もう一度深く口付けて大きな舌がルリナの口内を犯す。舌先で歯列をなぞられ、上顎を擽られ、最後に舌を絡めて、ようやく唇が離れた。二人の間に銀の糸がのびる。

「お前、レグルスの恋人か?」

「……恋、人……?」

 聞き返した言葉をどう受け取ったのか分からないが、男はチッと舌打ちした。

「名前は?」

「ルリナ」

 キスの余韻で頭がボーッとする。身体に力が入らない。

「ルリナか……。レグルス以外の男と、こんなキスをして……ルリナは悪い子だな」

 言いながら、何度もルリナの顔中にキスが止まらない。

「レグルスにバレたら、怒られるぞ。お仕置き……じゃあ済まないだろうな」

「……怒る?」

 レグルスに怒られるのは嫌だ。
 怒って、嫌われて、もう魔力をもらえなかったらどうしよう。
 レグルスの美味しいキスを、してもらえなくなる……?

「……やだぁ。そんなの、やだぁ……っ」

 レグルスに嫌われるかと思うと、涙が溢れる。

「……黙っておいてやろうか?」

 耳を啄みながら、男は言った。

「レグルスにバレなければ、怒られないだろ」

 バレなければ、怒られない?
 本当に?
 またキスして魔力をたくさん貰える?

「……い、言わないでぇ。レグルスに、言わないでぇ」

「分かった。言わない。……ただし条件がある」

 男の話に何度も頷いた。内緒にしてくれるなら、何でもする。

「ルリナの身体を触らせてくれ。そしたら、レグルスに内緒にしてやるよ」

 ルリナは何度も頷く。
 身体に触るくらいで内緒にしてくれるなら。
 男の大きな手が、ルリナの胸の膨らみを撫でた。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※

オスカーさんのターン続きます。
悪い男だ。 
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