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第1章 異世界に立つ
第十一話
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「っ!そこだ!」
俺が左の正拳を虎子の鼻っ柱目掛けて突き出すと、虎子は尻尾で弾いてくる。俺は弾かれた勢いを利用し、虎子の右に回転しながら移動して、虎子の顎目掛けてアッパーを繰り出す。
貰った。異世界に来て半年、地獄など生温いと言い切れるほど辛い生活だった半年間、やっとそれが実った。やっと一撃を与えることが出来た。
パシッ
俺の渾身のアッパーは、虎子の右前足の肉球で受け止められた。そして同時に尻尾でぶっ飛ばされる。
「ガッ!!」
ズザザザザー
地面を数回転がりながら、俺はすぐさま起きあがった。俺も打たれ強くなったものだ。
ちなみにそこいらの虫やら動物、婆さんが初代勇者は万物の声が聞こえたと言うことから、この半年間に岩や木々、さまざまなものに【翻訳】の実験で話しかけてみたが、婆さんのエルフ語と虎子以外には【翻訳】が働いたことはない。対象が人だけなのかとも思ったが、虎子には【翻訳】が働いているのでそれはないはずだ。いつの日か本格的に調べたい。
「へへっ、今、手使ったな」
本当は一撃入れられると思っていた所を止められたので悔しいのだが、それを隠して虎子を煽った。
ちなみに虎子ってあだ名を俺が付けた時、虎子は文句を言ってきたが、「俺の故郷で女のタイガーって意味だ」と言ったら『好きにしろ』と虎子に言われてから虎子呼びになった。
『ふん、少し手を抜いてやれば大口を叩く。これだから人族は』
「ん?なんだ、言い訳か?。おい虎子、初めて手を使わざるを得なかったのに、言い訳しちゃうのか?」
虎子の顔は、今にもグヌヌと聞こえてきそうなほど顔を顰めている。だが、流石三百年を生きる千年虎か、内面も向こうの方が上手だった。
『まあ良い。では妾に手を使わせた褒美を一つやろう。何か言ってみろ』
「褒美?」
まさかの申し出だ。いきなりすぎてビックリしたが、俺は虎子、この見た目完全にデカいチーターのくせに、千年虎と言い張るこいつにどうしても聞いてみたい事がある。
それは何か。
異世界モノの定番、俺がクラス転移モノの主人公になる為の必須キーパーソン、【翻訳】に対するご都合主義とも思えるこの現状のことだ。
「あー、じゃあよ。聞いても良いか?」
『言ってみろ』
「お前、俺の従魔にならないか?」
異世界と言えばチート、だがチートを持たない主人公も小説にはいた。そしてチートを持たない主人公は、高確率でバカ強い従魔がいる。虎子はネット小説に出てくる従魔並みに強い。むしろ【翻訳】が虎子にしか適応されないことを考えても、虎子は俺の従魔になる為にここに居たように思える。それになんだかんだ言って、この半年で虎子も俺とかなり心の距離が縮まったように感じていた。
だが……、虎子の反応は俺の想像を逸脱していた。
『従魔だと?』
「ああ。あー、この世界の言い方はわからないけど、俺はここをそのうち出て行くことに────」
ブワアアアア!!
突然、竜巻が現れたかと思った。だが違う、違うことを知っている。
圧倒的な殺意が渦を作り、溢れ出す魔力と合わさって俺に牙を剥く。いや、ギリギリ歯牙にかかってはいない。だが、千年虎の顎の中にいる気分だ。俺は立って居られなくなり、ふらふらと座り込む。
『貴様、それが何を意味するかわかって言っているのか?』
「……」
何も答えなかったのではない。恐怖で身がすくみ、声を出す事すら出来なかったのだ。千年虎の本気の殺気をもろに受け、俺は全身がガタガタと震え出すほど恐怖していた。虎子は四つ足でしっかり立ち、腰を抜かした俺を絶対的強者の目で見下ろしてくる。
すると、虎子からの殺気がフッと消える。それと同時にまるでやっと呼吸を許されたかのように、俺は慌てて息をした。
「はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!」
『貴様は常識を知らぬからな。今のは聞かなかったことにしてやろう。それが今回の褒美だ』
虎子はその場から去って行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
日が明ける。
俺は一晩中落ち込んだ、いや現在進行中で落ち込んでいる。冷静に考えれば、いくら獣とは言え、一つの人格がある生物に《従う魔物》になれと言ったのだ。虎子が怒るのも無理はない。だが【翻訳】の現状を考えれば、俺は虎子が従魔になるのが絶対だと思い込んでいた。虎子との距離も縮まったと思っていたし、虎子って呼び名をつけたのも、どこかに俺の従魔なのだからって気持ちがあったのだろう。ネット小説に毒されていたのは否定できない。
「はぁ……、俺はバカか……」
「バカと言うよりマヌケですね」
「マヌケはやめろ……」
ここはババアの書斎。いつも魔力の訓練時はこの部屋で行っている。今日はババアの訓練の日だ。
俺は罪悪感を薄める為に、ババアに昨日の出来事を告白してみた。ババアは呆れるようにため息をつき、今日は訓練にならないと思ったからか、テーブルにつっぷしている俺を無視して本を読んでいる。
「つうかよ、ここに来てから訓練訓練で、ほとんど何も教わってねえよ。少しは常識を知る時間も必要じゃねえか?」
ババアは本から目線だけを俺に向け、パタンと本を閉じた。
「あらあら。……そうですね。では前に話したセントブレイブ教の話をしましょうか」
ババアは語り出す。
遥か大昔に魔族と言われる種族が大陸を制覇していた。魔族は主に人間を糧とする。それは物理的に食う者もいれば、精気だけを食らう者、血のみを食らう者、そう言った人間を糧とする様々な種族の総称を魔族と言った。魔族は人間、ここで言う人間は、人族、エルフ族、ドワーフ族、小人族、巨人族だ。特に人族とエルフ族は美味いらしく、魔族に家畜として管理されながら生きている状態だった。
そこにどこから現れたのか、1人の人族が現れた。その人族は強大な力を持つ魔族を駆逐していき、家畜とされている種族を解放していった。そして、その1人の人族を中心として反魔族軍が結成され、魔族の王は討伐された。生き残りの魔族は散り散りになり、一部の魔族以外は今では存在してるのかさえわからないと言う。そして、その中心となった人族の男は勇者と呼ばれるようになった。勇者は解放した人間側の種族たちから、王として大陸を収めてくれと懇願されたが、勇者は頑として受け入れなかった。どうしても自分の国に帰りたいと願ったのだ。
救世主の願いを無碍にするわけにもいかず、各種族は種族の代表を選び、勇者と力を合わせて勇者が帰還する魔法を編み出した。だが、その魔法は簡単には行使出来るものではなかった。
この世界の魔法は魔力だけでは行使できない。それはどんな小さな魔法でさえ、必ず必要になる3つのものがある。《詠唱》《魔力》《触媒》だ。この3つが揃って初めて魔法は行使出来る。そして、帰還魔法の触媒は人間の命だった。人1人を転移させるのに、1人の命が必要だったのだ。勇者は諦めようとしたが、当時魔族側で、大戦後は捕虜となっていた獣人族の代表が、自分の命と引き換えに魔法を行使しろと言ってきた。勇者は強く反対したが、紆余曲折あり、勇者は自分の世界に帰還した。
勇者が帰還したあとも、勇者を崇める者たちが集まり、一つの宗教が出来た。セントブレイブ教だ。そのセントブレイブ教の一部の狂信者が帰還魔法を復活させた。いや、帰還魔法を研究し、召喚魔法として勇者の国から勇者に連なる者を召喚しようとしたのだ。それがどの程度の時間で成功したのかはわからない。だが、次に歴史に現れた5人の勇者は、初代勇者が帰還してから1000年後だった。
召喚された5人の勇者は横暴だった。横暴だったが、絶大な力と未知の知識を持ち、一時は世界に繁栄をもたらした。しかし時が経つにつれ、5人の勇者はその絶大な力を奮い、自らがこの世界の支配者になろうと目論んだ。だがいくら絶大な力を持とうとも、数の力には敵わない。人族、エルフ族、ドワーフ族、小人族、巨人族の五種族が結託し、勇者を滅ぼすことに成功した。
それで終われば良かったのかもしれないが、五種族は再度勇者を召喚することに決めた。勇者の力よりも、その知識が魅力的だったのだ。そこで、セントブレイブ教を中心にして、勇者を召喚して管理することにした。要は力を与えすぎなければ良いのだ。勇者も召喚してすぐならばそこまでの力はない。その時点から管理下に置いておけば、勇者による暴走は防げる。
その為の組織として、セントブレイブ教を母体に、完全なる中立国のセントフォーリア教国が誕生した。これが約900年前だ。
人間五種族もずっと仲が良いわけではない。種族間の戦争もあったし、人族は小国が乱立している状態だったので、人族同士の戦争はしょっちゅうあった。今でも人族同士は戦争している。そして、その戦争の道具としても勇者が売買されているが、いかなる国、いかなる種族とも、このセントフォーリア教国では不戦条約が結ばれている。
「と言う感じですが、聞いたことありましたか?」
「……、簡単には」
この内容を相当端折ったやつを、女神からスキルをもらう時に聞いていた。しかし、俺が知りたいのは歴史ではない。昔のことを知ったからと言っても、これからの俺の生活に役に立つとは思えない。俺たちを召喚する為に、触媒として人間を使ったのはどうかと思うが、別にその人たちの仇討ちをするつもりもないし、召喚されたクラスメイトだって、異世界に来たかった奴ばかりじゃないだろう。ある意味お互い様だ。
それよりも魔法のことが少し出てきた。今の俺はこれをもっと掘り下げたい。
「俺さ、魔力を高める?訓練を半年してるけどよ。まだ具体的な魔法を全く習ってないんだが?」
「あらあら、もう我慢出来なくなったのですか?」
ババアはいたずらっ子のような顔で微笑む。
「いや、そう言うわけじゃないけど」
「ふふっ。意地悪してるわけじゃないんです。実は魔法は簡単なのですよ」
「……そうなの?」
魔法は訓練すれば誰でも習得出来ると女神から聞いている。そしてババアも簡単だと言い切った。
「そうですね、では簡単に説明しましょうか」
やっと具体的な魔法の訓練に、俺は胸が高なった。
俺が左の正拳を虎子の鼻っ柱目掛けて突き出すと、虎子は尻尾で弾いてくる。俺は弾かれた勢いを利用し、虎子の右に回転しながら移動して、虎子の顎目掛けてアッパーを繰り出す。
貰った。異世界に来て半年、地獄など生温いと言い切れるほど辛い生活だった半年間、やっとそれが実った。やっと一撃を与えることが出来た。
パシッ
俺の渾身のアッパーは、虎子の右前足の肉球で受け止められた。そして同時に尻尾でぶっ飛ばされる。
「ガッ!!」
ズザザザザー
地面を数回転がりながら、俺はすぐさま起きあがった。俺も打たれ強くなったものだ。
ちなみにそこいらの虫やら動物、婆さんが初代勇者は万物の声が聞こえたと言うことから、この半年間に岩や木々、さまざまなものに【翻訳】の実験で話しかけてみたが、婆さんのエルフ語と虎子以外には【翻訳】が働いたことはない。対象が人だけなのかとも思ったが、虎子には【翻訳】が働いているのでそれはないはずだ。いつの日か本格的に調べたい。
「へへっ、今、手使ったな」
本当は一撃入れられると思っていた所を止められたので悔しいのだが、それを隠して虎子を煽った。
ちなみに虎子ってあだ名を俺が付けた時、虎子は文句を言ってきたが、「俺の故郷で女のタイガーって意味だ」と言ったら『好きにしろ』と虎子に言われてから虎子呼びになった。
『ふん、少し手を抜いてやれば大口を叩く。これだから人族は』
「ん?なんだ、言い訳か?。おい虎子、初めて手を使わざるを得なかったのに、言い訳しちゃうのか?」
虎子の顔は、今にもグヌヌと聞こえてきそうなほど顔を顰めている。だが、流石三百年を生きる千年虎か、内面も向こうの方が上手だった。
『まあ良い。では妾に手を使わせた褒美を一つやろう。何か言ってみろ』
「褒美?」
まさかの申し出だ。いきなりすぎてビックリしたが、俺は虎子、この見た目完全にデカいチーターのくせに、千年虎と言い張るこいつにどうしても聞いてみたい事がある。
それは何か。
異世界モノの定番、俺がクラス転移モノの主人公になる為の必須キーパーソン、【翻訳】に対するご都合主義とも思えるこの現状のことだ。
「あー、じゃあよ。聞いても良いか?」
『言ってみろ』
「お前、俺の従魔にならないか?」
異世界と言えばチート、だがチートを持たない主人公も小説にはいた。そしてチートを持たない主人公は、高確率でバカ強い従魔がいる。虎子はネット小説に出てくる従魔並みに強い。むしろ【翻訳】が虎子にしか適応されないことを考えても、虎子は俺の従魔になる為にここに居たように思える。それになんだかんだ言って、この半年で虎子も俺とかなり心の距離が縮まったように感じていた。
だが……、虎子の反応は俺の想像を逸脱していた。
『従魔だと?』
「ああ。あー、この世界の言い方はわからないけど、俺はここをそのうち出て行くことに────」
ブワアアアア!!
突然、竜巻が現れたかと思った。だが違う、違うことを知っている。
圧倒的な殺意が渦を作り、溢れ出す魔力と合わさって俺に牙を剥く。いや、ギリギリ歯牙にかかってはいない。だが、千年虎の顎の中にいる気分だ。俺は立って居られなくなり、ふらふらと座り込む。
『貴様、それが何を意味するかわかって言っているのか?』
「……」
何も答えなかったのではない。恐怖で身がすくみ、声を出す事すら出来なかったのだ。千年虎の本気の殺気をもろに受け、俺は全身がガタガタと震え出すほど恐怖していた。虎子は四つ足でしっかり立ち、腰を抜かした俺を絶対的強者の目で見下ろしてくる。
すると、虎子からの殺気がフッと消える。それと同時にまるでやっと呼吸を許されたかのように、俺は慌てて息をした。
「はあ!はあ!はあ!はあ!はあ!」
『貴様は常識を知らぬからな。今のは聞かなかったことにしてやろう。それが今回の褒美だ』
虎子はその場から去って行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
日が明ける。
俺は一晩中落ち込んだ、いや現在進行中で落ち込んでいる。冷静に考えれば、いくら獣とは言え、一つの人格がある生物に《従う魔物》になれと言ったのだ。虎子が怒るのも無理はない。だが【翻訳】の現状を考えれば、俺は虎子が従魔になるのが絶対だと思い込んでいた。虎子との距離も縮まったと思っていたし、虎子って呼び名をつけたのも、どこかに俺の従魔なのだからって気持ちがあったのだろう。ネット小説に毒されていたのは否定できない。
「はぁ……、俺はバカか……」
「バカと言うよりマヌケですね」
「マヌケはやめろ……」
ここはババアの書斎。いつも魔力の訓練時はこの部屋で行っている。今日はババアの訓練の日だ。
俺は罪悪感を薄める為に、ババアに昨日の出来事を告白してみた。ババアは呆れるようにため息をつき、今日は訓練にならないと思ったからか、テーブルにつっぷしている俺を無視して本を読んでいる。
「つうかよ、ここに来てから訓練訓練で、ほとんど何も教わってねえよ。少しは常識を知る時間も必要じゃねえか?」
ババアは本から目線だけを俺に向け、パタンと本を閉じた。
「あらあら。……そうですね。では前に話したセントブレイブ教の話をしましょうか」
ババアは語り出す。
遥か大昔に魔族と言われる種族が大陸を制覇していた。魔族は主に人間を糧とする。それは物理的に食う者もいれば、精気だけを食らう者、血のみを食らう者、そう言った人間を糧とする様々な種族の総称を魔族と言った。魔族は人間、ここで言う人間は、人族、エルフ族、ドワーフ族、小人族、巨人族だ。特に人族とエルフ族は美味いらしく、魔族に家畜として管理されながら生きている状態だった。
そこにどこから現れたのか、1人の人族が現れた。その人族は強大な力を持つ魔族を駆逐していき、家畜とされている種族を解放していった。そして、その1人の人族を中心として反魔族軍が結成され、魔族の王は討伐された。生き残りの魔族は散り散りになり、一部の魔族以外は今では存在してるのかさえわからないと言う。そして、その中心となった人族の男は勇者と呼ばれるようになった。勇者は解放した人間側の種族たちから、王として大陸を収めてくれと懇願されたが、勇者は頑として受け入れなかった。どうしても自分の国に帰りたいと願ったのだ。
救世主の願いを無碍にするわけにもいかず、各種族は種族の代表を選び、勇者と力を合わせて勇者が帰還する魔法を編み出した。だが、その魔法は簡単には行使出来るものではなかった。
この世界の魔法は魔力だけでは行使できない。それはどんな小さな魔法でさえ、必ず必要になる3つのものがある。《詠唱》《魔力》《触媒》だ。この3つが揃って初めて魔法は行使出来る。そして、帰還魔法の触媒は人間の命だった。人1人を転移させるのに、1人の命が必要だったのだ。勇者は諦めようとしたが、当時魔族側で、大戦後は捕虜となっていた獣人族の代表が、自分の命と引き換えに魔法を行使しろと言ってきた。勇者は強く反対したが、紆余曲折あり、勇者は自分の世界に帰還した。
勇者が帰還したあとも、勇者を崇める者たちが集まり、一つの宗教が出来た。セントブレイブ教だ。そのセントブレイブ教の一部の狂信者が帰還魔法を復活させた。いや、帰還魔法を研究し、召喚魔法として勇者の国から勇者に連なる者を召喚しようとしたのだ。それがどの程度の時間で成功したのかはわからない。だが、次に歴史に現れた5人の勇者は、初代勇者が帰還してから1000年後だった。
召喚された5人の勇者は横暴だった。横暴だったが、絶大な力と未知の知識を持ち、一時は世界に繁栄をもたらした。しかし時が経つにつれ、5人の勇者はその絶大な力を奮い、自らがこの世界の支配者になろうと目論んだ。だがいくら絶大な力を持とうとも、数の力には敵わない。人族、エルフ族、ドワーフ族、小人族、巨人族の五種族が結託し、勇者を滅ぼすことに成功した。
それで終われば良かったのかもしれないが、五種族は再度勇者を召喚することに決めた。勇者の力よりも、その知識が魅力的だったのだ。そこで、セントブレイブ教を中心にして、勇者を召喚して管理することにした。要は力を与えすぎなければ良いのだ。勇者も召喚してすぐならばそこまでの力はない。その時点から管理下に置いておけば、勇者による暴走は防げる。
その為の組織として、セントブレイブ教を母体に、完全なる中立国のセントフォーリア教国が誕生した。これが約900年前だ。
人間五種族もずっと仲が良いわけではない。種族間の戦争もあったし、人族は小国が乱立している状態だったので、人族同士の戦争はしょっちゅうあった。今でも人族同士は戦争している。そして、その戦争の道具としても勇者が売買されているが、いかなる国、いかなる種族とも、このセントフォーリア教国では不戦条約が結ばれている。
「と言う感じですが、聞いたことありましたか?」
「……、簡単には」
この内容を相当端折ったやつを、女神からスキルをもらう時に聞いていた。しかし、俺が知りたいのは歴史ではない。昔のことを知ったからと言っても、これからの俺の生活に役に立つとは思えない。俺たちを召喚する為に、触媒として人間を使ったのはどうかと思うが、別にその人たちの仇討ちをするつもりもないし、召喚されたクラスメイトだって、異世界に来たかった奴ばかりじゃないだろう。ある意味お互い様だ。
それよりも魔法のことが少し出てきた。今の俺はこれをもっと掘り下げたい。
「俺さ、魔力を高める?訓練を半年してるけどよ。まだ具体的な魔法を全く習ってないんだが?」
「あらあら、もう我慢出来なくなったのですか?」
ババアはいたずらっ子のような顔で微笑む。
「いや、そう言うわけじゃないけど」
「ふふっ。意地悪してるわけじゃないんです。実は魔法は簡単なのですよ」
「……そうなの?」
魔法は訓練すれば誰でも習得出来ると女神から聞いている。そしてババアも簡単だと言い切った。
「そうですね、では簡単に説明しましょうか」
やっと具体的な魔法の訓練に、俺は胸が高なった。
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