12 / 32
魔女、決意を胸に秘める
しおりを挟む
徐々に覚醒する意識の中で目を開けると、目に見覚えのない天井がメリルの目に入った。部屋を見回し、メリルは、そこが前日に自分がとった宿の一室であることにやっと気づいた。
軽く身じろぎするだけで、体中がひどく痛む。
特にひどいお腹の痛みが、クローディアとその侍従に攫われ、デュークに炎の中を助け出された出来事を思い出させた。
(デュークはどうなったの!?)
がばりと起き上がるが、その瞬間体中に激痛が走り、ふらりと力が抜ける。
「サアヤさん、気が付いてよかったっす!」
隊の副官アランがちょうど部屋に入ってきて、ベッドに沈みかけたメリルの上半身を支えた。
「アラン! デュークは!? デュークは無事なの?」
「落ち着いてください。隊長はまだ寝てますけど、大丈夫です。もうちょっとしたら会いに行きましょう。あなたも今までずっと意識がなかったんっすよ。まずはこれを飲んで落ち着いて下さい。俺たちも今この街へ着いたばかりなんで、状況を教えてほしいっす」
メリルはデュークの無事の知らせを聞いて、ほっと胸をなでおろした。
よく見るとアランは、埃塗れの旅装のままだ。周りの明るさからすると、今はお昼を少し回った時間のようだ。この時間に街に着くということは、大分無理をしてかけつけたに違いない。
メリルは、差し出された水を飲みながら前日の状況をアランに話した。回復薬が混じっていたのか、体が徐々に楽になる。
クローディア嬢達はもうこの街を去ってしまっただろう。あの従者は、明らかに聖女の支配を受けていた。クローディア嬢の身が危ない状況なのに、メリルは助けることができなかったのだ。
そして、自分が捕まってしまったばかりに、アラン達の大事な隊長であるデュークに怪我を負わせてしまった。
メリルは、後悔に唇をかむ。
けれど、アランから返って来たのは予想外の言葉でメリルは一瞬面食らった。
「申し訳ありませんっ!」
「え? なんで」
「なんでじゃありませんよっ。あー、ほんっと、俺が馬鹿だったー。隊長の魔獣の刻印はいつ活性化してもおかしくなかったのに、隊長も俺も見込みが甘かったっす。いくら魔女だからってサアヤさんを隊長と二人だけで行かせるとかしちゃいけなかったっす。それに、サアヤさんを危険から守るために隊長が同行したのに、誘拐なんて目に合わせちゃって、ほんっと、騎士団の面目がないっす」
「違うよ。むしろ私が下手な聞き込みなんてしたせいで、捕まってデュークに迷惑を駆けちゃって……」
「違いません。サアヤさんは、俺達が仕事を依頼した魔女様のお孫さんですけど、今回の件は、完全に善意で手伝ってくれてますよね。本当ならこれは騎士団の仕事っす」
考えてみたら、アランが言うのは当たり前のことだ。メリルは、彼らにとっては部外者で、騎士団にとって、この国の民は等しく守るべき人々で。
「でも、それじゃいやなの」
もう気づいてしまったメリルは割り切ることができなかった。
「私、デュークやアランの事、仲間だって思ってる。だから、――私、役に立ちたいの。あなた達に、必要とされたい」
自分は、この人達の中に居場所が欲しかった。
その理由は、この人たちに好意を持っていたからなんだろう。
裏切られることは、今も怖い。
でも、この人達は、前世でメリルを騙したあの男とは違う。
また、信じてみたいと思う人達だ。
(必要とされるための努力を、またしてみてもいいのかな?)
じっと問うようにアランの顔を見上げると、アランは、顔を隠すように腕を上げた。
「サアヤさん、それやばいっす……これか、隊長もこれにやられたのか? それで俺達が一緒に行くのを拒否したのか?」
「ごめん、よく聞き取れなかったんだけど……あ、やっぱり、騎士団の隊員じゃない私がこんなこと言うのはよくないかな。迷惑なら、」
「いや、そうじゃないっ。そうじゃないっす! すっげえ嬉しいっす。サアヤさんは、すっげえ役に立ってるっす」
「よかった……ありがとう。じゃあ、これからも手伝わせて」
自分の心の落ち着く先を見つけて、メリルは晴れやかな気持ちになり、自然に頬が緩む。
少し頬を赤くして首を縦にぶんぶんと振るアランを見て、メリルはこの人たちの力になりたい、と強く思った。
その時、隊のメンバーが部屋を尋ねてきて、アランははじかれたように席を立つ。応対するアランは厳しい顔になると、メリルの方に向き直った。
「クローディア嬢は、今朝、町の門兵に保護されてたそうっす。――侍従に襲われたところを門兵に助けられ、侍従の方はその場で切り捨てられたそうです」
「え?」
◇◇◇◇◇◇
クローディア嬢は、宿場町の町長の自宅の客室で保護されていた。
目を覚まさないデュークは宿に残したまま、メリルとアランは町長宅へ向かう。公爵家の護衛騎士と使用人が令嬢を追って来たということにして、クローディアとの面会を申し入れた。
「お嬢様、無事でよかったっす」
「イアンはどこ!? 早く連れて来なさい。私を閉じ込めてイアンと引き離すつもりなのね!? そんなの許さないわ!」
アランとメリルを案内した町長によると、クローディア嬢があまりにもひどく取り乱しており、すぐにでもイアンを探しに飛び出そうとするため客室には鍵をかけているそうだ。
公爵家の高い身分の令嬢の扱いに困っていた町長は、さっさと引き取ってほしい(そしてお礼をたっぷりはずんでほしい)という態度で、疑いもせず二人を部屋に通してくれた。お家騒動には関わりたくないとでもいうように、そそくさと席を外す。
「イアン――侍従っすよね。彼はあなたの命を狙い、門兵に切られたと聞いたんっすけど」
「嘘、嘘よ。イアンがそんなことするわけないもの。だからあれは偽物よ!」
昨夜のクローディアは、イアンだけが唯一の味方と信じ、依存しきっているようだった。その人物に命を狙われたという事実がきっと認められないのだろう。
イアンは彼女の目の前で切られたと聞いているが、彼女の中で切られた人物は偽物にすり替わっていた。
「本当のイアンなら、そんなことはしなかったかもしれない。でも、あなたは気づいていたでしょう? 皆がおかしくなっていることに。昨日のイアンはすでに聖女に操られていたわ」
「せい……じょ……ひっ」
「クローディア嬢?」
「……いやああああ! やめて、来ないで。私は何も知らない。知らないのよ! だから、お願い? ねえ、もう見逃して。もう嫌、怖いの。もう嫌なのよ!」
「俺達は味方っす。あなたをお守りすることができます。だから」
「あなた達もあの女に操られているのね! 親切な振りをして、ここから出して私を殺すつもりなんでしょう! いやよ、行かないわ! 来ないで! イアン! イアン!!」
「ご安心ください。俺たちは、今、デューク殿下の元で動いています。クローディア嬢と幼馴染のデューク=シエル=アル=ルフト殿下です。デューク殿下は、聖女の力がきかないので、あなたを守ることができます」
「デューク……が? あの人が、来てくれたの?」
取り乱していたクローディア嬢の瞳の焦点が合い、徐々に落ち着きを取り戻してきた。
(どういうこと? デュークは、クローディア嬢と知り合いだったの?)
けれど、高位貴族であるクローディア嬢が同年代の王族と幼い頃から親交があったというのはよく考えるとなんら不思議のない話だった。
「デューク殿下は、この街に来ています。あなたの力になりたいとおっしゃってました。今は、体調を崩してここに来れないですけど、体調が戻ったらすぐにクローディア嬢に会いに来ますので、ご安心ください」
「デュークが……。あの優しいデュークが。ほんとに、来てくれたのね」
クローディア嬢は、祈るように手を組むと、顔を歪ませる。
その顔は先ほどのように不安に歪むものではなく、安心に緩んでいた。
(そっか、それで、デュークは、同行したいって言ったんだ)
そういえば、と思い出す。デュークは初めから『公爵令嬢への応対も俺がした方がいい』と、そう言っていた。
もちろん、メリルのことを心配してくれたのも嘘ではないだろう。
ただ、それは目的の一つだったということ。
メリルは、むしろ自分がもやもやとした気持ちを感じてしまったことが不思議でならない。
(幼馴染の公爵令嬢を助けたいと思うのは、人として当然だわ。そう、そういう人だから、私はデュークを助けたいと思うの)
メリルは、別にデュークの特別な一人になりたいわけではない。
「彼女の身柄は騎士団で預かることにします。王都の隠れ家へ連れて行きます」
「そうね! 幼馴染なら、きっとデュークの側にいる方が心強いわよね」
アランの言葉に、メリルは力強く頷いた。
◇◇◇◇◇◇
デュークは、宿の一室で静かな眠りについていた。
傾きかけた日の光がデュークの横顔を照らしていた。
ベッドの上にうつぶせに横たわる彼の顔色は悪い。
あれだけ大きな梁が落ちてきたのだ、デュークの背中は、きっとひどいことになっているのだろう。
メリルは、薬草を煎じた回復薬や傷薬を作ることができても、怪我を直す治癒魔術を使うことができない。どうにもできない自分がひどくもどかしい。
「デューク、ありがとう。私を守ってくれて」
その頬に手を伸ばしかけた時、クローディアの安心に緩んだ顔が浮かんできて、メリルは手を引っ込めた。
意識がない時に、勝手に近づくのはよくないだろう。
デュークは治療が終わってすぐに活動を始めようとしたため、医者に強い睡眠薬が使われたらしいとアランに聞いた。骨に異常はなく、やけどと裂傷だという。隊長の回復力はすごいっすから心配ないっすよ、とアランは気軽に言っていたが、それは、今まで幾度となく部下の前で傷を負った証でもあるのだろう。
「いっぱい借りを作っちゃったなあ。――私も、精一杯やるよ」
借りは返す。それがメリルの信条なのだから。
軽く身じろぎするだけで、体中がひどく痛む。
特にひどいお腹の痛みが、クローディアとその侍従に攫われ、デュークに炎の中を助け出された出来事を思い出させた。
(デュークはどうなったの!?)
がばりと起き上がるが、その瞬間体中に激痛が走り、ふらりと力が抜ける。
「サアヤさん、気が付いてよかったっす!」
隊の副官アランがちょうど部屋に入ってきて、ベッドに沈みかけたメリルの上半身を支えた。
「アラン! デュークは!? デュークは無事なの?」
「落ち着いてください。隊長はまだ寝てますけど、大丈夫です。もうちょっとしたら会いに行きましょう。あなたも今までずっと意識がなかったんっすよ。まずはこれを飲んで落ち着いて下さい。俺たちも今この街へ着いたばかりなんで、状況を教えてほしいっす」
メリルはデュークの無事の知らせを聞いて、ほっと胸をなでおろした。
よく見るとアランは、埃塗れの旅装のままだ。周りの明るさからすると、今はお昼を少し回った時間のようだ。この時間に街に着くということは、大分無理をしてかけつけたに違いない。
メリルは、差し出された水を飲みながら前日の状況をアランに話した。回復薬が混じっていたのか、体が徐々に楽になる。
クローディア嬢達はもうこの街を去ってしまっただろう。あの従者は、明らかに聖女の支配を受けていた。クローディア嬢の身が危ない状況なのに、メリルは助けることができなかったのだ。
そして、自分が捕まってしまったばかりに、アラン達の大事な隊長であるデュークに怪我を負わせてしまった。
メリルは、後悔に唇をかむ。
けれど、アランから返って来たのは予想外の言葉でメリルは一瞬面食らった。
「申し訳ありませんっ!」
「え? なんで」
「なんでじゃありませんよっ。あー、ほんっと、俺が馬鹿だったー。隊長の魔獣の刻印はいつ活性化してもおかしくなかったのに、隊長も俺も見込みが甘かったっす。いくら魔女だからってサアヤさんを隊長と二人だけで行かせるとかしちゃいけなかったっす。それに、サアヤさんを危険から守るために隊長が同行したのに、誘拐なんて目に合わせちゃって、ほんっと、騎士団の面目がないっす」
「違うよ。むしろ私が下手な聞き込みなんてしたせいで、捕まってデュークに迷惑を駆けちゃって……」
「違いません。サアヤさんは、俺達が仕事を依頼した魔女様のお孫さんですけど、今回の件は、完全に善意で手伝ってくれてますよね。本当ならこれは騎士団の仕事っす」
考えてみたら、アランが言うのは当たり前のことだ。メリルは、彼らにとっては部外者で、騎士団にとって、この国の民は等しく守るべき人々で。
「でも、それじゃいやなの」
もう気づいてしまったメリルは割り切ることができなかった。
「私、デュークやアランの事、仲間だって思ってる。だから、――私、役に立ちたいの。あなた達に、必要とされたい」
自分は、この人達の中に居場所が欲しかった。
その理由は、この人たちに好意を持っていたからなんだろう。
裏切られることは、今も怖い。
でも、この人達は、前世でメリルを騙したあの男とは違う。
また、信じてみたいと思う人達だ。
(必要とされるための努力を、またしてみてもいいのかな?)
じっと問うようにアランの顔を見上げると、アランは、顔を隠すように腕を上げた。
「サアヤさん、それやばいっす……これか、隊長もこれにやられたのか? それで俺達が一緒に行くのを拒否したのか?」
「ごめん、よく聞き取れなかったんだけど……あ、やっぱり、騎士団の隊員じゃない私がこんなこと言うのはよくないかな。迷惑なら、」
「いや、そうじゃないっ。そうじゃないっす! すっげえ嬉しいっす。サアヤさんは、すっげえ役に立ってるっす」
「よかった……ありがとう。じゃあ、これからも手伝わせて」
自分の心の落ち着く先を見つけて、メリルは晴れやかな気持ちになり、自然に頬が緩む。
少し頬を赤くして首を縦にぶんぶんと振るアランを見て、メリルはこの人たちの力になりたい、と強く思った。
その時、隊のメンバーが部屋を尋ねてきて、アランははじかれたように席を立つ。応対するアランは厳しい顔になると、メリルの方に向き直った。
「クローディア嬢は、今朝、町の門兵に保護されてたそうっす。――侍従に襲われたところを門兵に助けられ、侍従の方はその場で切り捨てられたそうです」
「え?」
◇◇◇◇◇◇
クローディア嬢は、宿場町の町長の自宅の客室で保護されていた。
目を覚まさないデュークは宿に残したまま、メリルとアランは町長宅へ向かう。公爵家の護衛騎士と使用人が令嬢を追って来たということにして、クローディアとの面会を申し入れた。
「お嬢様、無事でよかったっす」
「イアンはどこ!? 早く連れて来なさい。私を閉じ込めてイアンと引き離すつもりなのね!? そんなの許さないわ!」
アランとメリルを案内した町長によると、クローディア嬢があまりにもひどく取り乱しており、すぐにでもイアンを探しに飛び出そうとするため客室には鍵をかけているそうだ。
公爵家の高い身分の令嬢の扱いに困っていた町長は、さっさと引き取ってほしい(そしてお礼をたっぷりはずんでほしい)という態度で、疑いもせず二人を部屋に通してくれた。お家騒動には関わりたくないとでもいうように、そそくさと席を外す。
「イアン――侍従っすよね。彼はあなたの命を狙い、門兵に切られたと聞いたんっすけど」
「嘘、嘘よ。イアンがそんなことするわけないもの。だからあれは偽物よ!」
昨夜のクローディアは、イアンだけが唯一の味方と信じ、依存しきっているようだった。その人物に命を狙われたという事実がきっと認められないのだろう。
イアンは彼女の目の前で切られたと聞いているが、彼女の中で切られた人物は偽物にすり替わっていた。
「本当のイアンなら、そんなことはしなかったかもしれない。でも、あなたは気づいていたでしょう? 皆がおかしくなっていることに。昨日のイアンはすでに聖女に操られていたわ」
「せい……じょ……ひっ」
「クローディア嬢?」
「……いやああああ! やめて、来ないで。私は何も知らない。知らないのよ! だから、お願い? ねえ、もう見逃して。もう嫌、怖いの。もう嫌なのよ!」
「俺達は味方っす。あなたをお守りすることができます。だから」
「あなた達もあの女に操られているのね! 親切な振りをして、ここから出して私を殺すつもりなんでしょう! いやよ、行かないわ! 来ないで! イアン! イアン!!」
「ご安心ください。俺たちは、今、デューク殿下の元で動いています。クローディア嬢と幼馴染のデューク=シエル=アル=ルフト殿下です。デューク殿下は、聖女の力がきかないので、あなたを守ることができます」
「デューク……が? あの人が、来てくれたの?」
取り乱していたクローディア嬢の瞳の焦点が合い、徐々に落ち着きを取り戻してきた。
(どういうこと? デュークは、クローディア嬢と知り合いだったの?)
けれど、高位貴族であるクローディア嬢が同年代の王族と幼い頃から親交があったというのはよく考えるとなんら不思議のない話だった。
「デューク殿下は、この街に来ています。あなたの力になりたいとおっしゃってました。今は、体調を崩してここに来れないですけど、体調が戻ったらすぐにクローディア嬢に会いに来ますので、ご安心ください」
「デュークが……。あの優しいデュークが。ほんとに、来てくれたのね」
クローディア嬢は、祈るように手を組むと、顔を歪ませる。
その顔は先ほどのように不安に歪むものではなく、安心に緩んでいた。
(そっか、それで、デュークは、同行したいって言ったんだ)
そういえば、と思い出す。デュークは初めから『公爵令嬢への応対も俺がした方がいい』と、そう言っていた。
もちろん、メリルのことを心配してくれたのも嘘ではないだろう。
ただ、それは目的の一つだったということ。
メリルは、むしろ自分がもやもやとした気持ちを感じてしまったことが不思議でならない。
(幼馴染の公爵令嬢を助けたいと思うのは、人として当然だわ。そう、そういう人だから、私はデュークを助けたいと思うの)
メリルは、別にデュークの特別な一人になりたいわけではない。
「彼女の身柄は騎士団で預かることにします。王都の隠れ家へ連れて行きます」
「そうね! 幼馴染なら、きっとデュークの側にいる方が心強いわよね」
アランの言葉に、メリルは力強く頷いた。
◇◇◇◇◇◇
デュークは、宿の一室で静かな眠りについていた。
傾きかけた日の光がデュークの横顔を照らしていた。
ベッドの上にうつぶせに横たわる彼の顔色は悪い。
あれだけ大きな梁が落ちてきたのだ、デュークの背中は、きっとひどいことになっているのだろう。
メリルは、薬草を煎じた回復薬や傷薬を作ることができても、怪我を直す治癒魔術を使うことができない。どうにもできない自分がひどくもどかしい。
「デューク、ありがとう。私を守ってくれて」
その頬に手を伸ばしかけた時、クローディアの安心に緩んだ顔が浮かんできて、メリルは手を引っ込めた。
意識がない時に、勝手に近づくのはよくないだろう。
デュークは治療が終わってすぐに活動を始めようとしたため、医者に強い睡眠薬が使われたらしいとアランに聞いた。骨に異常はなく、やけどと裂傷だという。隊長の回復力はすごいっすから心配ないっすよ、とアランは気軽に言っていたが、それは、今まで幾度となく部下の前で傷を負った証でもあるのだろう。
「いっぱい借りを作っちゃったなあ。――私も、精一杯やるよ」
借りは返す。それがメリルの信条なのだから。
6
お気に入りに追加
530
あなたにおすすめの小説
逆行転生した悪役令嬢だそうですけれど、反省なんてしてやりませんわ!
九重
恋愛
我儘で自分勝手な生き方をして処刑されたアマーリアは、時を遡り、幼い自分に逆行転生した。
しかし、彼女は、ここで反省できるような性格ではなかった。
アマーリアは、破滅を回避するために、自分を処刑した王子や聖女たちの方を変えてやろうと決意する。
これは、逆行転生した悪役令嬢が、まったく反省せずに、やりたい放題好き勝手に生きる物語。
ツイッターで先行して呟いています。
貴方の手にしているそのラブレター、本当に貴方あてのものですか?
麻宮デコ@ざまぁSS短編
恋愛
アリスト男爵家のエルヴィとモリーは義理の姉妹だが、エルヴィは義妹のモリーに反感を抱かれてるようだった。
母の連れ子であったエルヴィは以前に会ったことのあるラスター伯爵に憧れていたのだが、彼が恋文を送ってきたのは義妹のモリーの方であった。
手紙の返事すら出さないモリーの代わりにエルヴィがその手紙に返事を書いたことから、エルヴィと伯爵の仲の方が進展していくことになってしまったのだが……。
全4話
息をするように侮辱してくる婚約者に言い返したところ婚約破棄されてしまいました。~黙って耐えているのはもう嫌です~
四季
恋愛
息をするように侮辱してくる婚約者に言い返したところ婚約破棄されてしまいました。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
婚約者の愛した人が聖女ではないと、私は知っています
天宮有
恋愛
私アイラは、3人いる聖女候補の1人だった。
数ヶ月後の儀式を経て聖女が決まるようで、婚約者ルグドは聖女候補のシェムが好きになったと話す。
シェムは間違いなく自分が聖女になると確信して、ルグドも同じ考えのようだ。
そして数日後、儀式の前に私は「アイラ様が聖女です」と報告を受けていた。
【完結】白い結婚はあなたへの導き
白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。
彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。
何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。
先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。
悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。
運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》
濡れ衣を着せられて後宮の端に追いやられた底辺姫。異能も容姿も気味悪がられてますが、これ巫女の証なんです
ととせ
恋愛
辺境に住む小貴族の娘、雪鈴(しゅえりん)は、白髪に紅の瞳であることから家族からも忌み嫌われていた。
しかしその容姿は宝玉の神の巫女である証だった。
不遇な扱いを受けていた雪鈴だが、突如皇帝の後宮へと送られることになる。
新しい場所で静かに暮らそうとしていた雪鈴だが、親切心で告げた一言が正妃候補である美麗(めいりー)の怒りを買い、後宮の隅へと追いやられてしまう。
そんな雪鈴の元に、「藍(らん)」と名乗る不思議な美女が現れて……。
なんちゃって中華風の後宮物語です。
気楽に読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる