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第一部
第11話 血の誓約
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ルークは、息を切らせて円形劇場に入ると、マレの皇女の舞い踊るその姿に目を細めた。
胸を満たす想いがあふれ、頭の芯まで熱くなる。
なんで忘れていられたんだろう?
いつからか、信じられないほどに彼の心を占めてしまった、この異国の舞姫を。
吸い寄せられるように、中央の舞台へと歩を進める。
――僕の黒猫。
一歩、踏み出すたびに記憶があふれてくる。
――僕の舞姫。
初めて出会ったのは、もう、1年も前。マレの祝祭だった。
――僕の女神。
そこで、出会ったバステトに恋をした。
ルークは、ゆっくりと舞台に上がった。
◇◇◇◇◇◇
バステトは、手首を返して、シャン、とシストルムを鳴らし、領巾を翻すと、立ち止まり、ルークを見つめ返した。
ルークの朱金の髪は風に乱れ、浅葱色の瞳が熱をはらんだように潤んでいた。
バステトの、異国の婚約者。
腹黒で、性格が悪くて、いつもバステトのことをからかってひどい言葉を投げかける。
バステトのことをあんなに馬鹿にするのに、そのくせバステトにとても優しい。
馬鹿なバステトが恋してしまった、初恋の王子様。
そして、バステトのせいで記憶を失ってしまった、哀れな王子様。
伝えたいことは、たくさんあった。でも、バステトに言葉は必要ない。
舞が、バステトの全てを語るから。
バステトは、ルークを見つめたままシャムシールを鞘から抜き放った。
陽の光の中、シャムシールの刀身は光を照り返し、輝きを放つ。
光を払う動作からその剣舞は始まった。
その舞に先ほどのような激しさはない。
腕を返し、体をゆらす度に、領巾が翻り、髪が流れる。
剣を用いているのに、たおやかで、甘く、切ない。
身に着けたままのシストルムは、なぜか鳴らない。
さざ波のように静やかなその舞に、人々は声もなく引き込まれていた。
バステトの踊りは、芸や見世物ではなく、神への供物なのだ。
でも、今日は違う。
それは、神ではなく、たった一人の青年に捧げられていた。
その舞が何を告げているのか、わからぬものは、この場にいなかった。
そして。
バステトは、曲刀をを頭上に掲げ、ふわりと円を描くように回り――。
ルークの喉もとにシャムシールの切っ先を突きつけた。
それは、マレの人々しか知らない、剣の舞の求愛だった。
ルークの浅葱色の瞳と、バステトの翠緑の瞳が交差する。
バステトが、ルークに告げたかったことは、想いは、すべてこの舞へのせた。
これが全部、バステトの想いだ。
全部ぶつけてやった。
ルークも気づいたろう。
でも、バステトは、情けなく、お前に愛を乞うたりしない。
全てをここにおいて、マレに帰るのだ。
剣の舞は、相手が求愛への諾否を返すことで、終幕を迎える。
だが、ルークは応え方を知らない。
知らなくていい。ルークの答えなんか必要ない。
それこそが、バステトの答えだ。
バステトは、剣の舞を終えるべく、シャムシールを鞘に戻そうと剣を引いたが、それを最後まですることはできなかった。
ルークが、突きつけられた曲刀の刃に手の平を這わせたのだ。
――なんで。
その手の平に赤い線が走り、血がしたたり落ちる音がした。
ルークは、バステトから目をそらさない。バステトも、目をそらせなかった。
――知るはずないのに。
そして、ルークは、したたり落ちる血を、手の平から舐めとると、ゆっくりと構えられたままの刀の脇をぬけ、バステトの前に一歩踏み出した。
バステトの唇が震える。
それは、マレの人々しか知らないはずの、求愛への応え方。
ルークは応えたのだ。「諾」と。
そして、ルークは、バステトに口づけた。
剣の舞の愛に応え、血の契りを交わすために。
バステトが、力が抜けたように崩れ落ちるのをルークは抱き留めた。
疲れ切って意識を失ってしまったバステトを腕に抱いたまま、ルークは、円形劇場から、学園の生徒に語りかけた。
そのころには、学園の生徒は、ほとんどがこの円形劇場に集まっていた。
「さて、諸君。
君たちにはもうばれてしまったろうから、隠すつもりはないよ。
マレの舞姫の話は君たちも聞いたことがあるだろう?
その姿や出自は公にされることはなくとも、その舞の素晴らしさは近隣諸国へと鳴り響いているからね。
そんな、国に守られ、秘匿されていたマレの至宝を、婚約とは言えマレ皇家が手放すのには、理由があった。
彼女の命が狙われていたんだ。
彼女は命を守るために、国外に出された。
しかし、この国でも彼女を狙う輩は存在してね。
それを出し抜くために、彼女に悪い噂を流して孤立させざるを得なかった。
まあ、ちょっと大変だったけど、それはもう解決した。
彼女の悪い噂は直におさまるだろう。
今後、君達には、マレの至宝にして舞姫たるバステト皇女を、次代の王妃として敬意と恭順を持って遇することを期待しているよ」
ルークは、そこで間をおき、一人一人と目を合わせるように、会場を見渡した。
「それから、もう一つ。諸君に知っておいてほしい。
この僕が、どれほどの手を尽くし、彼女を、この国へ連れてきたのか。
賢明な諸君ならわかってくれるだろう?
このかわいらしい舞姫を手に入れるために僕の払った努力がどう報われるべきかを」
◇◇◇◇◇◇
その後、バステトの日々はあまり変わらなかった。
相変わらずルークは、バステトを構いながら側にいる。
誰も近寄ってこないので、やっぱり友達ができない。
ルークが、あの舞のあと円形劇場で何か言ったらしいが、やっぱり誰も教えてくれないのでよくわからない。
変わったことと言えば、周りから白い目でなく、生暖かい目で見られるようになったことぐらいだ。
今日もルークは、生徒が大勢いる学園のカフェテリアで、バステトにお昼のデザートを食べさせている。
スプーンを口に運ぶのは正直やめてほしい。
ゆっくり食べられないし、時々口の周りが汚れてしまうのだ。
それをふくのに、ルークが指先で唇をなぞるので、それもくすぐったい。
「なんで、これは大丈夫で、あれがだめなのか、距離感がよくわからない」
「なにか、言ったか?」
ベリーのソースのたっぷりかかったケーキを堪能していたバステトはルークが言ったことを聞き逃して尋ねたが、ルークは答えるつもりがないらしい。
バステトは、いつも通り黒そうな笑みを浮かべるルークをみて、ため息をつく。
ルークは、秘密主義でよくわからないことが多いのだ。
でも、まあ仕方ない。
受け入れるしかないのだろう。
もう、バステトは一生ルークの側にいるしかなくなってしまった。
剣の舞の血の誓約は、神への誓約なのだ。
死ぬまで破れない。
ふと思った。
これは、あれだ。最近習った言葉だ。
「バステト、知ってる。これ、飼い殺しっていう」
周りがざわつく。
「また、君はそう誤解を生むことを……」
誰に習ったのそんな言葉、とつぶやくルークの声に、護衛のエルマーがびくりとしたのは、ルークに見えていなかったと思っておこう。
「まあ、いいか。君なら、一生飼ってもいいかもね」
そして、いつものように、甘い、甘い声でルークは囁くのだ。
『僕の黒猫』
(第一部完)
胸を満たす想いがあふれ、頭の芯まで熱くなる。
なんで忘れていられたんだろう?
いつからか、信じられないほどに彼の心を占めてしまった、この異国の舞姫を。
吸い寄せられるように、中央の舞台へと歩を進める。
――僕の黒猫。
一歩、踏み出すたびに記憶があふれてくる。
――僕の舞姫。
初めて出会ったのは、もう、1年も前。マレの祝祭だった。
――僕の女神。
そこで、出会ったバステトに恋をした。
ルークは、ゆっくりと舞台に上がった。
◇◇◇◇◇◇
バステトは、手首を返して、シャン、とシストルムを鳴らし、領巾を翻すと、立ち止まり、ルークを見つめ返した。
ルークの朱金の髪は風に乱れ、浅葱色の瞳が熱をはらんだように潤んでいた。
バステトの、異国の婚約者。
腹黒で、性格が悪くて、いつもバステトのことをからかってひどい言葉を投げかける。
バステトのことをあんなに馬鹿にするのに、そのくせバステトにとても優しい。
馬鹿なバステトが恋してしまった、初恋の王子様。
そして、バステトのせいで記憶を失ってしまった、哀れな王子様。
伝えたいことは、たくさんあった。でも、バステトに言葉は必要ない。
舞が、バステトの全てを語るから。
バステトは、ルークを見つめたままシャムシールを鞘から抜き放った。
陽の光の中、シャムシールの刀身は光を照り返し、輝きを放つ。
光を払う動作からその剣舞は始まった。
その舞に先ほどのような激しさはない。
腕を返し、体をゆらす度に、領巾が翻り、髪が流れる。
剣を用いているのに、たおやかで、甘く、切ない。
身に着けたままのシストルムは、なぜか鳴らない。
さざ波のように静やかなその舞に、人々は声もなく引き込まれていた。
バステトの踊りは、芸や見世物ではなく、神への供物なのだ。
でも、今日は違う。
それは、神ではなく、たった一人の青年に捧げられていた。
その舞が何を告げているのか、わからぬものは、この場にいなかった。
そして。
バステトは、曲刀をを頭上に掲げ、ふわりと円を描くように回り――。
ルークの喉もとにシャムシールの切っ先を突きつけた。
それは、マレの人々しか知らない、剣の舞の求愛だった。
ルークの浅葱色の瞳と、バステトの翠緑の瞳が交差する。
バステトが、ルークに告げたかったことは、想いは、すべてこの舞へのせた。
これが全部、バステトの想いだ。
全部ぶつけてやった。
ルークも気づいたろう。
でも、バステトは、情けなく、お前に愛を乞うたりしない。
全てをここにおいて、マレに帰るのだ。
剣の舞は、相手が求愛への諾否を返すことで、終幕を迎える。
だが、ルークは応え方を知らない。
知らなくていい。ルークの答えなんか必要ない。
それこそが、バステトの答えだ。
バステトは、剣の舞を終えるべく、シャムシールを鞘に戻そうと剣を引いたが、それを最後まですることはできなかった。
ルークが、突きつけられた曲刀の刃に手の平を這わせたのだ。
――なんで。
その手の平に赤い線が走り、血がしたたり落ちる音がした。
ルークは、バステトから目をそらさない。バステトも、目をそらせなかった。
――知るはずないのに。
そして、ルークは、したたり落ちる血を、手の平から舐めとると、ゆっくりと構えられたままの刀の脇をぬけ、バステトの前に一歩踏み出した。
バステトの唇が震える。
それは、マレの人々しか知らないはずの、求愛への応え方。
ルークは応えたのだ。「諾」と。
そして、ルークは、バステトに口づけた。
剣の舞の愛に応え、血の契りを交わすために。
バステトが、力が抜けたように崩れ落ちるのをルークは抱き留めた。
疲れ切って意識を失ってしまったバステトを腕に抱いたまま、ルークは、円形劇場から、学園の生徒に語りかけた。
そのころには、学園の生徒は、ほとんどがこの円形劇場に集まっていた。
「さて、諸君。
君たちにはもうばれてしまったろうから、隠すつもりはないよ。
マレの舞姫の話は君たちも聞いたことがあるだろう?
その姿や出自は公にされることはなくとも、その舞の素晴らしさは近隣諸国へと鳴り響いているからね。
そんな、国に守られ、秘匿されていたマレの至宝を、婚約とは言えマレ皇家が手放すのには、理由があった。
彼女の命が狙われていたんだ。
彼女は命を守るために、国外に出された。
しかし、この国でも彼女を狙う輩は存在してね。
それを出し抜くために、彼女に悪い噂を流して孤立させざるを得なかった。
まあ、ちょっと大変だったけど、それはもう解決した。
彼女の悪い噂は直におさまるだろう。
今後、君達には、マレの至宝にして舞姫たるバステト皇女を、次代の王妃として敬意と恭順を持って遇することを期待しているよ」
ルークは、そこで間をおき、一人一人と目を合わせるように、会場を見渡した。
「それから、もう一つ。諸君に知っておいてほしい。
この僕が、どれほどの手を尽くし、彼女を、この国へ連れてきたのか。
賢明な諸君ならわかってくれるだろう?
このかわいらしい舞姫を手に入れるために僕の払った努力がどう報われるべきかを」
◇◇◇◇◇◇
その後、バステトの日々はあまり変わらなかった。
相変わらずルークは、バステトを構いながら側にいる。
誰も近寄ってこないので、やっぱり友達ができない。
ルークが、あの舞のあと円形劇場で何か言ったらしいが、やっぱり誰も教えてくれないのでよくわからない。
変わったことと言えば、周りから白い目でなく、生暖かい目で見られるようになったことぐらいだ。
今日もルークは、生徒が大勢いる学園のカフェテリアで、バステトにお昼のデザートを食べさせている。
スプーンを口に運ぶのは正直やめてほしい。
ゆっくり食べられないし、時々口の周りが汚れてしまうのだ。
それをふくのに、ルークが指先で唇をなぞるので、それもくすぐったい。
「なんで、これは大丈夫で、あれがだめなのか、距離感がよくわからない」
「なにか、言ったか?」
ベリーのソースのたっぷりかかったケーキを堪能していたバステトはルークが言ったことを聞き逃して尋ねたが、ルークは答えるつもりがないらしい。
バステトは、いつも通り黒そうな笑みを浮かべるルークをみて、ため息をつく。
ルークは、秘密主義でよくわからないことが多いのだ。
でも、まあ仕方ない。
受け入れるしかないのだろう。
もう、バステトは一生ルークの側にいるしかなくなってしまった。
剣の舞の血の誓約は、神への誓約なのだ。
死ぬまで破れない。
ふと思った。
これは、あれだ。最近習った言葉だ。
「バステト、知ってる。これ、飼い殺しっていう」
周りがざわつく。
「また、君はそう誤解を生むことを……」
誰に習ったのそんな言葉、とつぶやくルークの声に、護衛のエルマーがびくりとしたのは、ルークに見えていなかったと思っておこう。
「まあ、いいか。君なら、一生飼ってもいいかもね」
そして、いつものように、甘い、甘い声でルークは囁くのだ。
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