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脅迫状編

出会って50秒でXXX ※

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「貴方は男性ですよね?」

 ラインハルトの声にルイーゼ、否セシルの頭は真っ白になった。
 騙し通せるとは思っていなかったが、ストレートにぶつけられてパニックになった。

 咄嗟とっさに握りしめたスカートのポケットから香油の小瓶が滑り落ちた。
 混乱したセシルの脳裏に双子の妹・ルイーゼが言い放った言葉が浮かび上がった。


『もしグダグダ言うようなら、一発ヤってそれをネタに言う事聞かせちゃえば良いのよ』


 気が付けばセシルは小瓶を拾い上げ、自分よりも12センチ身長の高いラインハルトを押し倒してた。

 喉仏を隠すために巻いていたスカーフで手首を縛り、膝に敷いていたナプキンで彼の口を塞いだ。
 驚きに目を見開くラインハルトを直視できず、その視線から逃れようと彼をうつ伏せにし、2人共ソファに乗り上げた状態になった。

 ラインハルトの指摘通りセシルは男だ。
 女装するのは今日が初めてなので、当然日頃は男の服を着ている。だから、背後から手を回す形でもベルトを外して、下穿きを緩めるのは見なくてもスムーズにできる。
 勢いそのままにトラウザーを引きり下ろすと、小瓶に入っている香油を全ててのひらに出して目的の場所に塗り込んだ。

 初めて触れたラインハルトの体温。
 憧れてやまなかった人の、誰にも見せたことのないであろう姿。
 パニックから覚めても、セシルは凶行を止めなかった。
 何かに突き動かされるかの様に、一心不乱に彼の身体を暴いた。



**



(性別について触れるべきか、触れないべきか)

 明らかに男な見合い相手。

(スルーするにも限界がある)

 ラインハルトに協力できる事なら、力になるし胸襟きょうきんを開くことで新たな選択肢を得る事ができるだろう。
 見て見ぬ振りしてしまえば、この何とも言えない状態のまま縁談が進みかねない。

「貴方は男性ですよね?」

 特に非難も嫌悪も無く、ラインハルトはストレートに指摘した。
 単なる確認の為の問い掛けであり、深い意味は全くなかった。



(何コレどういう事!?)

 自由を奪われた状態で、ラインハルトは混乱していた。
 もじもじしていたルイーゼ嬢()が、突然豹変した。
 縛り上げられたラインハルトは、ソファの上でバック状態で犯された。

 ラインハルトはBLが好きだが、自分が男とどうこうなりたい願望はない。

 彼にとってBLは時に微笑ましく、時に官能的なフィクションだ。
 百合ものAV愛好家が、必ずしも性転換願望があるわけではないのと同じだ。
 ラインハルトの場合は偶々男に転生したが、彼自身に男性への性的欲求はない。
 恋愛に至っていないだけで、その肢体に性的魅力を感じるのは女性だ。
 男の体を触りたいとは思わないが、女の体は触っていてそれなりに楽しいし気持ち良いと思う。



 この世界は同性愛を禁じる宗教も、忌避する社会背景もないが、推奨されたり大っぴらに認められている訳でもない。
 同性愛者は自分の性癖を秘匿する事は無いが、だからと言って積極的に公言する事も無い。
 パートナーと真剣に交際する場合は、家族や親しい友人には紹介する。

 貴族制度が残っている為か後継者問題は慎重にならざるを得ないので、同性婚を認める制度は無い。
 但し内縁状態が証明されれば、爵位継承に口出しする権利は無いが遺産相続の対象にはなる。

 過去ラインハルトに熱を上げる男性がいなかった訳ではない。
 しかし彼にその気は無かったので気付かないフリをして遠ざけた。
 殆どは自然に疎遠となったが、残りの少数に思いを告げられた場合はハッキリ断った。
 故に男を抱いたことも、抱かれたこともない。
 この先もずっとそうだと思ってた。



 相手は潤滑油のようなものを用意していた様で、外気に晒されたラインハルトの臀部にぬるりとした液体が垂らされる。
 相手の動きは見えないが、男同士のセックスの知識は豊富なラインハルト。相手が何をしていて、次にどうするかも容易に想像がついた。
 抵抗する間も無く後孔に指が突き入れられる。
 初めは1本。違和感を感じるが、特に痛みも快感もない。
 人工的な滑りを纏った手が前に伸び、ラインハルトの敏感な場所を刺激する。

 手枷と猿轡という乱暴な行為とは裏腹に、竿を上下に扱き、先端を指先で擦る手の動きは繊細だ。
 一旦手を離したかと思うと、根元に移動してふにふにと感触を堪能するかのように、掌全体を使って転がされる。

 与えられる甘い刺激に耐えていると、後ろに突き入れられた指が2本に増えた。
 本数が増えたことで、狭い入口に余裕がなくなった。
 前で感じる快感を帳消しにする様な後ろの苦しさに、ラインハルトの額に汗が滲む。

「――ッ!」

 まだ充分解していないのに、相手も限界なのか尻の隙間に数回擦り付けると遠慮なく挿入してきた。

 圧迫感が疼痛に塗り替えられる。
 うまく滑らないのか、進みはゆっくり。しかし引き抜く気は無いようで、容赦なく押し切るようにその身を深く埋められる。
 やがて覆い被さるようにラインハルトを抱きしめると抽送が始まった。

 背後から体重をかけられ,体を固定されたラインハルトは逃げる事ができない。
 最初は遠慮がちに抜き差ししていたが、段々スピードが上がる。
 相手には前立腺の知識が無いのか、ラインハルトを気持ち良くしようとする意思は感じられない。
 ただ自分の快楽を追い求めている様な、身勝手な動き。
 それなのに、偶に危うい所を掠める為にラインハルトとしても痛みだけで終わらないのがもどかしい。
 体を揺する程度だったのに、気付けば静かなサロンに肌を打ち付ける音と、どちらのものとも言えない息遣いが響く。

(嘘だろ)

 永遠に続くかに思えた行為は、ラインハルトの中に熱を放って収束した。
 外に出されても後始末に頭を悩ませることになっただろうが、躊躇なく中出しされるとは思わなかった。
 潤滑油を用意するぐらいなので、避妊具を装着していると思っていたがそれも無し。
 身じろぐだけで体の中で形を変える精液の温かさ。

(初対面でいきなり襲われて、生で中出し)

 BL妄想の対象になるような美形には甘いラインハルトだが、目の前の相手に対しては寛容になれる気がしない。
 ラインハルトは無言で相手を押し除けた。

 お互いに決定打になるような失言をする前にと、彼は顔を上げないまま服を整えると足早にマクガーデン邸を後にした。
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