上 下
26 / 50
第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる

第26話 お着替えとなる

しおりを挟む
 あれから馬車に押し込められたボクとアリシアは十分後には王宮の中にいた。

 そのあと、二人は別々の部屋へ連れて行かれる。ボクは四、五人のメイドに囲まれ、着ている服を脱がされた。
 ――えっ? ちょ、ちょっと、下着まで⁉
 さすがにあわてる。

「男でしょ? 堂々としていなさい!」

 メイドの中で一番年配の女性にそう言われた。だけど、メイドの中にはボクより若い女の子もいる。そんな中でスッポンポンになっているのだから、さすがにはずかしい!

 すると、シルクっぽい、薄くてツヤのある、いかにも高価そうな下着をかせられた。「自分で着るから」と言ったのだが、先ほどの年配の女性から、「これは私たちの仕事です」と無下むげに断られる。

 次にヒラヒラの多いシャツを着せられ、その上から臙脂色えんじいろに金色の糸で刺繍された派手なスーツを身にまとった。

 次に、油くさいベトベトしたモノを頭に塗られ、髪の毛をオールバックで固められる。
 最後に胸元のポケットに白いハンカチを差し込まれ、白い手袋を手に持たされると大きな鏡の前に立たされた。

「いかかです? 男前になりましたでしょ?」

 それはアニメとかに登場する貴族の姿だった。ただ、顔が自分……つまり、東洋人の顔なので――
「なんか、似合ってないです――」

 それが本音だった。はっきり言って、こんな姿で人前に出るなんてはずかしい!
 罰ゲームじゃないかと思ってしまう。

「そのうちれてきますよ」とメイドの人は言うのだけど、このまま逃げて帰りたかった。

 部屋の扉が開くと、軍服を着た男性――たぶん、近衛兵というのだろう――が現れる。その人に「待合室にお連れします」と言われ、彼のうしろを歩いた。長い廊下の突き当りで、近衛兵が扉を開ける。「お呼びするまで、こちらでください」と中に案内されると、ボクひとり残し扉が閉められた。

「はあ……くつろげって言われてもなあ……」

 置かれている家具はどれも高価そうなモノばかり。キズつけてはいけないと、触るのを躊躇ためらってしまう。そのうえ、窮屈きゅうくつな服を着ているから、座ることもできない。

「なんか……場違いなところに来ちゃったなぁ」

 憂鬱ゆううつになっていると、突然、扉が開く。

「よう、ヒロト! 男前になったじゃないか!」
 入ってきたのはアーノルドさん。そして、アレンさんだった。二人とも純白の軍服。騎士ナイトの正装だ。二人とも騎士の称号を既にいただいている。

 そして、その後ろから聖職者の祭服を着た男性。勇者パーティの治癒職担当。この世界で、アスタリア聖教の洗礼を受け、司教の位までいただいたロバート・グレンさん。
 ボクが頭を下げると、彼も軽く会釈した。そういえば、ロバートさんが話しているところを見たことないなあ。

 そして、真っ赤なドレス、同じく真っ赤な長い髪。長身だけど恐ろしく、整った美女が最後に入ってくる。第三位階の火、風、水、土、四つの属性魔法をマスターし、現世の大賢者グランドフィロソファーと早くも言われている魔導士、エレーナ・スウェインさん。彼女も爵位としては騎士なのだが、軍服ではないのは彼女の趣味のようだ。

 ロバートさんもエレーナさんも、トップ冒険者パーティ『ブルズ』の正規メンバーなのである。

「ヒロト君、お久しぶり」
 エレーナさんがニッコリ笑って挨拶あいさつするので、顔が熱くなった。

「そんなに緊張しなさんな!」
 アーノルドさんが背中をたたくので、ボクは苦笑いする。だけど、ブルズの方々が来てくれたことで、ちょっとだけ落ち着けた。

 そして、次に扉が開いたとき――

「まあ、キレイ!」
 エレーナさんがそう声をあげた。男たちはその姿に言葉をなくす。もちろん、ボクもだ。

 中に入ってきたのは、ライトグリーンのドレスをまとったアリシアだった。はずかし気に、頬を赤く染めながら、中に入ってくる。
「あ、あのう……私のような者がこのようなドレスを着させてもらって、本当にイイのでしょうか?」
 アリシアはオドオドしながらそんなことを言う。

「なにを言っているのですか? 今日は二人も主役なのですよ」
 アレンさんがニッコリしながら、そう伝える。

 ボクたちも主役のひとり?
 本当に、そんなことでイイのだろうか?

 まだ、自分が置かれている状況を理解できない。
 そうこうしているうちに、近衛兵が呼びにきた。全員、大広間へと移動する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人
ファンタジー
第三王子が趣味で行っている冒険のパーティに所属するマッパー兼食事係の私、アニエスは突然パーティを追放されてしまった。 というのも、新しい食事係の少女をスカウトしたそうで、水魔法しか使えない私とは違い、複数の魔法が使えるのだとか。 私も、好きでもない王子から勝手に婚約者呼ばわりされていたし、追放されたのはありがたいかも。 だけど私が唯一使える水魔法が、実は「飲むと数時間の間、能力を倍増する」効果が得られる神水だったらしく、その効果を失った王子のパーティは、一気に転落していく。 戻ってきて欲しいって言われても、既にモフモフ妖狐や、新しい仲間たちと幸せな日々を過ごしてますから。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...