24 / 60
第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる
第24話 国宝級となる
しおりを挟む
アーノルドさんに「待っていろ」と言われて、二時間が経った。
その間、ボクとアリシアはアーノルドさんからあずかっていた盾を魔盾に改造する作業を行う。ゴブリンキングのモノと言っていた大きな魔石にアリシアが第三階位の強化魔法を封じ込めてもらったのだが、それで彼女が倒れてしまったため、慌てて介護していたところだった。
「ゴメンナサイ。お忙しいのに」
「なに、大丈夫だよ。それより、少しは元気になった?」
「はい、かなり楽になりました――スミマセン、第三位階の強化魔法を魔石に封じ込めたのは、これが初めてだったのですけど、まさかこんなに魔力と体力を消費するとは思いませんでした……」
本当にギリギリの体力だった感じだ。軽い気分で引き受けるんじゃなかったと後悔する。しかし、おかげで第三位階の『魔物の敵意を引き付ける魔法』が封じ込めた魔石ができた。本当にアリシアのガンバリには感謝だ。
魔法の位階が高ければ、それだけ威力は増す。ケルベロスのような上級魔物を相手にするなら、第三位階くらいじゃないと効果が期待できないらしい。それを、修理が終わったばかりの超合金製盾に組み込んだ。
「よし、これで完成だ!」
でき上ったばかりの盾を立てかける。
「うわぁ! カッコイイですね!」
ベッドから起き上がってきたアリシアが生まれ変わった盾を見て、目を輝かせた。
「うん。魔石が似合うように、盾のデザインも変えてみたんだ。どうかな?」
「はい! とってもイイと思います!」
そう言ってもらえると、とってもウレシイ! ちょっと大変だったけどやってみてヨカッタ!
その時、工房の外でなにやら音がした。のぞいてみると馬車が止まっている。見事な装飾はあきらかに貴族の馬車。まさか、ブルームハルト侯爵がまたなにか嫌がらせをしてきた⁉
すると馬車から降りてきたのはアーノルドさんだった。
「えっ? どうして?」
「よ! ヒロト! 何度も顔を出して悪いな」
アーノルドさんの後ろからもう一人、いや二人、男性が下りてくる。ひとりは真っ青なチェーンメイルに白銀の防具を纏った騎士。ボクは彼を何度か見たことがある。アーノルドさんが所属するパーティー『ブルズ』のリーダー、勇者のアレン・パストゥールさんだ。もう一人は真っ白な軍服を着ているのだが、初めて見る。年齢は三十くらいか?
「おひさしぶりです、ヒロト君」
アレンさんは、職人のボクにも敬語を使ってくれる。目上、目下の人にも対等に接してくれるところは、さすが勇者だなと思う。もちろん、この人も召喚人で出身はフランスと聞いていた。年齢は教えてもらっていないのだが、アーノルドさんと同じくらいだと思うので、二十代後半だろう。
ボクは「おひさしぶりです」と頭を下げた。
三人が工房に入ってくると、アーノルドさんはさっそくできたばかりの盾に目が向かう。
「おおっ! これが新しい魔盾か! すげえ――」
三人は盾の前で驚きの表情を見せたままだ。
「こ、これはすばらしい! ぜひ、わが王家のコレクションに加えたい!」
白の軍服の人がそう声を張り上げる――ん? 今、なんて言った?
「殿下、ダメですよ。これはケルベロス討伐のカギとなるモノなのですから」
えっ? 殿下――⁉
「そ、そうだったな……ならば、こうしよう。見事、ケルベロス討伐したあかつきには、この盾を討伐の証として王家へ奉納してほしい。もちろん、相応の褒美を用意する」
白の軍服の人がそう言うと、二人は「それなら、たんまり褒美をもらわないと割に合わないな」と笑っていた。
「あ、あのう……」
戸惑っているボクに気づいたアーノルドさんが、やっと軍服の人を紹介してくれた。
「これはゴメン。あまりにもすばらしい盾だったから、忘れてしまったよ。このお方は、ウィルハース皇太子、スチュワート殿下だよ」
「――えっ?」
その間、ボクとアリシアはアーノルドさんからあずかっていた盾を魔盾に改造する作業を行う。ゴブリンキングのモノと言っていた大きな魔石にアリシアが第三階位の強化魔法を封じ込めてもらったのだが、それで彼女が倒れてしまったため、慌てて介護していたところだった。
「ゴメンナサイ。お忙しいのに」
「なに、大丈夫だよ。それより、少しは元気になった?」
「はい、かなり楽になりました――スミマセン、第三位階の強化魔法を魔石に封じ込めたのは、これが初めてだったのですけど、まさかこんなに魔力と体力を消費するとは思いませんでした……」
本当にギリギリの体力だった感じだ。軽い気分で引き受けるんじゃなかったと後悔する。しかし、おかげで第三位階の『魔物の敵意を引き付ける魔法』が封じ込めた魔石ができた。本当にアリシアのガンバリには感謝だ。
魔法の位階が高ければ、それだけ威力は増す。ケルベロスのような上級魔物を相手にするなら、第三位階くらいじゃないと効果が期待できないらしい。それを、修理が終わったばかりの超合金製盾に組み込んだ。
「よし、これで完成だ!」
でき上ったばかりの盾を立てかける。
「うわぁ! カッコイイですね!」
ベッドから起き上がってきたアリシアが生まれ変わった盾を見て、目を輝かせた。
「うん。魔石が似合うように、盾のデザインも変えてみたんだ。どうかな?」
「はい! とってもイイと思います!」
そう言ってもらえると、とってもウレシイ! ちょっと大変だったけどやってみてヨカッタ!
その時、工房の外でなにやら音がした。のぞいてみると馬車が止まっている。見事な装飾はあきらかに貴族の馬車。まさか、ブルームハルト侯爵がまたなにか嫌がらせをしてきた⁉
すると馬車から降りてきたのはアーノルドさんだった。
「えっ? どうして?」
「よ! ヒロト! 何度も顔を出して悪いな」
アーノルドさんの後ろからもう一人、いや二人、男性が下りてくる。ひとりは真っ青なチェーンメイルに白銀の防具を纏った騎士。ボクは彼を何度か見たことがある。アーノルドさんが所属するパーティー『ブルズ』のリーダー、勇者のアレン・パストゥールさんだ。もう一人は真っ白な軍服を着ているのだが、初めて見る。年齢は三十くらいか?
「おひさしぶりです、ヒロト君」
アレンさんは、職人のボクにも敬語を使ってくれる。目上、目下の人にも対等に接してくれるところは、さすが勇者だなと思う。もちろん、この人も召喚人で出身はフランスと聞いていた。年齢は教えてもらっていないのだが、アーノルドさんと同じくらいだと思うので、二十代後半だろう。
ボクは「おひさしぶりです」と頭を下げた。
三人が工房に入ってくると、アーノルドさんはさっそくできたばかりの盾に目が向かう。
「おおっ! これが新しい魔盾か! すげえ――」
三人は盾の前で驚きの表情を見せたままだ。
「こ、これはすばらしい! ぜひ、わが王家のコレクションに加えたい!」
白の軍服の人がそう声を張り上げる――ん? 今、なんて言った?
「殿下、ダメですよ。これはケルベロス討伐のカギとなるモノなのですから」
えっ? 殿下――⁉
「そ、そうだったな……ならば、こうしよう。見事、ケルベロス討伐したあかつきには、この盾を討伐の証として王家へ奉納してほしい。もちろん、相応の褒美を用意する」
白の軍服の人がそう言うと、二人は「それなら、たんまり褒美をもらわないと割に合わないな」と笑っていた。
「あ、あのう……」
戸惑っているボクに気づいたアーノルドさんが、やっと軍服の人を紹介してくれた。
「これはゴメン。あまりにもすばらしい盾だったから、忘れてしまったよ。このお方は、ウィルハース皇太子、スチュワート殿下だよ」
「――えっ?」
22
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜
あけちともあき
ファンタジー
俺、多摩川奥野はクラスでも浮いた存在でボッチである。
クソなクラスごと異世界へ召喚されて早々に、俺だけステータス制じゃないことが発覚。
どんどん強くなる俺は、ふわっとした正義感の命じるままに世界を旅し、なんか英雄っぽいことをしていくのだ!
俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~
平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。
異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。
途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。
しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。
その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
転生したら死にそうな孤児だった
佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。
保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。
やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。
悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。
世界は、意外と優しいのです。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる