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第一章 盾職人は異世界のゲームチェンジャーとなる
第22話 お断りとなる
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いきなり、部屋に入ってきたマサヒコ。侯爵へ「自分が解雇なんて、何かの間違え」と、訴えてきた。
「おい、これはどういうことだ?」
侯爵は執事に向かってそうたずねる?
「そ、そうですよね? 侯爵、このオレが解雇だなんて――」
マサヒコはホッとした表情を見せるのだが――
「どうして、クビにしたヤツが私の前にいるのだ?」
「――えっ?」
侯爵の言葉にマサヒコの顔面は蒼白となった。
「ウ、ウソでしょ? 侯爵、オ、オレは王国一番の防具職人ですよ。それを解雇だなんて――」
「王国一番の防具職人? はっ! 聞いてあきれる。たしかに、以前はそうだった。だが、今はオマエくらいの職人は王都にいくらでもいる。なまけているからこういうことになるんだ」
「そ、そんな……」
落胆して、ひざを床につくマサヒコ。追い打ちをかけるように――
「それに、できあがった防具は全部こちらが買い取る約束になっていたはずだ。なのに、オマエはこっそりと武具屋へ売っていたというではないか?」
「い、いや、あれは失敗策だから、自分で処分しただけで――」
「あの部材はココのモノだろ? それを作るための工房や道具だってそうだ。それを勝手に売って、自分のカネにした。そうであろう?」
「そ、それは……」
「そもそも、腕の落ちた職人を飼ってやるほど、儂はお人よしではない」
マサヒコはもう、何も言えなくなる。
「オマエの工房はココにいるヒロト・ニジカワが使うこととなった。もうオマエの居場所なんてない」
「――えっ?」
マサヒコはボクの顔を見ると、怒りの形相へと変わる。
「ヒロト! オマエが侯爵をたぶらかしたんだな! このヤロウ! ゆるせねえ!」
「い、いや――ボクは……」
言いがかりをつけるマサヒコにボクは面食らう――
のだが――
「だまれ! たかが防具職人が大きな口をたたくな!」
侯爵が大声をあげると、マサヒコの顔がひきつる。
「た、たかが防具職人――?」
「そうだ。ヒロト君は魔盾という、戦い方を一変させる大変な発明をした。もはや、防具で魔物の攻撃を防ぐなんて時代遅れなのだよ」
「じ、時代遅れ――だなんて――」
がっくりするマサヒコの両側に、屈強な男たちが立つ。
「そいつを敷地の外に捨てて来い。その前に、そいつに貸し与えたモノは全部回収するんだぞ。そう、着ている服もだ。なに一つ、そいつに与えるな!」
男たちが「わかりました」と返事をすると、マサヒコの両腕をつかみ引きずるように部屋から連れ出す。
ボクをさんざんバカにした、ふてぶてしいマサヒコはもういない。いたのは、用なしのレッテルを貼られ、全てを失った残念な男だった。
マサヒコが退場し、部屋の扉がパタンッと閉まると――
「さてヒロト君、とんだ邪魔が入ったが、さっそく返事を聞こうじゃないか?」
返事――つまり、侯爵の工房で働くということだ。
住む場所や生活に必要な品々、仕事に使う道具や材料まですべて侯爵持ち。そのうえ、毎月金貨三十枚!
破格と言わざるを得ない待遇である。
もし断れば――きっと、侯爵はあらゆる手でボクに嫌がらせをしてくるだろう――
つまり、ボクに選択の余地はない。それでも、あえて侯爵は返事を要求しているのだ。
でも……
「侯爵様、お願いがあります」
ボクは侯爵へ顔を向ける。
「なんだね? なんでも要望を言いたまえ。望みどおりに準備してやろう」
侯爵がそう言うので、意を決して――
「魔盾には魔法を封じ込めた魔石が必要です。いままで、それをアリシアがやってくれてました。ですので、アリシアも一緒に雇ってもらえますでしょうか?」
「それはダメだ!」
侯爵の表情が急に変わった。語気も荒々しくなる。
「エルフのことだろ? そんなヤツ、雇うわけがなかろう?」
そう、即答される。
「そんな……」
「大丈夫だ。儂が支援している魔導士にも強化魔法を使える者はおる。魔石の準備はその者がやる。だから、そんな亜人など必要ない」
亜人……だなんて……
アリシアの言う通りだった。現地人は人間以外を『亜人』と言って、差別している。ココに来る前、アリシアの表情を見て、なんか嫌な予感はしていたのだけど……やっぱり、そうだったんだ。
「わかりました……」
「そうか、では――」
「この話はお断りいたします」
「――なに?」
ボクは侯爵の前で深々と頭を下げた。
「ボクとアリシアは、一緒に仕事を続けると約束しました。アリシアを雇わないと言うのであれば、ボクもココで働きません。ですから、この話はなかったことにしてください」
「――なんだと?」
侯爵の顔が真っ赤になるのが見えた。かなり怒っているのだとはっきりわかる。しかし、考えを変えるつもりはない。
「話がそれだけでしたら、ボクはこれで失礼します」
そう言って、扉の方向へ足を向けたとき、侯爵が「待て」と声をあげる。
「おぬし、この儂の誘いを断って、この王都で仕事ができると思うなよ」
そんな脅しを言ってきた。
ボクはそれに応えず、重い扉を押して部屋を出た。
三大貴族と言われる侯爵の要求を断れば、イヤがらせがあることくらいわかっている。王都にいられなくなることも――前世で読んだ異世界モノのラノベではよくあるシチュエーションだ。
それでもアリシアを見捨てて、ボクだけイイ思いをするつもりはない。
今のボクがいるのは、アリシアのおかげなんだから――
帰りは馬車にも乗せてもらえず、徒歩で帰る。
工房に戻るとアリシアが心配そうな顔でボクを待っていた。
「お、おかえりなさい、ヒロトさん」
彼女は「どうでした?」とたずねてきたので、侯爵の誘いを断ったこと、それで、侯爵から脅しがあったことを隠さず話した。
「そんな……私のせいで、ヒロトさんが王都で仕事ができなくなるなんて……」
責任を感じるアリシアに、「ボクが決めたことだ」と伝える。
「なに、仕事なんて王都じゃなくてもできるさ。その時はボクと一緒に来てくれるかい?」
「えっ? その……イイんですか?」
「もちろん、アリシアがイヤなら――」
「そんな、イヤだなんて……私も行きます!」
その言葉でボクは笑顔になる。
そうだ、別におカネを稼ぐことがボクの望みじゃない。アリシアと一緒に仕事をしたいだけだ。
「まあ、それはともかく――アーノルドさんの依頼だけはこなさないとな」
そう言って、盾の修理を始めるのだった。
「おい、これはどういうことだ?」
侯爵は執事に向かってそうたずねる?
「そ、そうですよね? 侯爵、このオレが解雇だなんて――」
マサヒコはホッとした表情を見せるのだが――
「どうして、クビにしたヤツが私の前にいるのだ?」
「――えっ?」
侯爵の言葉にマサヒコの顔面は蒼白となった。
「ウ、ウソでしょ? 侯爵、オ、オレは王国一番の防具職人ですよ。それを解雇だなんて――」
「王国一番の防具職人? はっ! 聞いてあきれる。たしかに、以前はそうだった。だが、今はオマエくらいの職人は王都にいくらでもいる。なまけているからこういうことになるんだ」
「そ、そんな……」
落胆して、ひざを床につくマサヒコ。追い打ちをかけるように――
「それに、できあがった防具は全部こちらが買い取る約束になっていたはずだ。なのに、オマエはこっそりと武具屋へ売っていたというではないか?」
「い、いや、あれは失敗策だから、自分で処分しただけで――」
「あの部材はココのモノだろ? それを作るための工房や道具だってそうだ。それを勝手に売って、自分のカネにした。そうであろう?」
「そ、それは……」
「そもそも、腕の落ちた職人を飼ってやるほど、儂はお人よしではない」
マサヒコはもう、何も言えなくなる。
「オマエの工房はココにいるヒロト・ニジカワが使うこととなった。もうオマエの居場所なんてない」
「――えっ?」
マサヒコはボクの顔を見ると、怒りの形相へと変わる。
「ヒロト! オマエが侯爵をたぶらかしたんだな! このヤロウ! ゆるせねえ!」
「い、いや――ボクは……」
言いがかりをつけるマサヒコにボクは面食らう――
のだが――
「だまれ! たかが防具職人が大きな口をたたくな!」
侯爵が大声をあげると、マサヒコの顔がひきつる。
「た、たかが防具職人――?」
「そうだ。ヒロト君は魔盾という、戦い方を一変させる大変な発明をした。もはや、防具で魔物の攻撃を防ぐなんて時代遅れなのだよ」
「じ、時代遅れ――だなんて――」
がっくりするマサヒコの両側に、屈強な男たちが立つ。
「そいつを敷地の外に捨てて来い。その前に、そいつに貸し与えたモノは全部回収するんだぞ。そう、着ている服もだ。なに一つ、そいつに与えるな!」
男たちが「わかりました」と返事をすると、マサヒコの両腕をつかみ引きずるように部屋から連れ出す。
ボクをさんざんバカにした、ふてぶてしいマサヒコはもういない。いたのは、用なしのレッテルを貼られ、全てを失った残念な男だった。
マサヒコが退場し、部屋の扉がパタンッと閉まると――
「さてヒロト君、とんだ邪魔が入ったが、さっそく返事を聞こうじゃないか?」
返事――つまり、侯爵の工房で働くということだ。
住む場所や生活に必要な品々、仕事に使う道具や材料まですべて侯爵持ち。そのうえ、毎月金貨三十枚!
破格と言わざるを得ない待遇である。
もし断れば――きっと、侯爵はあらゆる手でボクに嫌がらせをしてくるだろう――
つまり、ボクに選択の余地はない。それでも、あえて侯爵は返事を要求しているのだ。
でも……
「侯爵様、お願いがあります」
ボクは侯爵へ顔を向ける。
「なんだね? なんでも要望を言いたまえ。望みどおりに準備してやろう」
侯爵がそう言うので、意を決して――
「魔盾には魔法を封じ込めた魔石が必要です。いままで、それをアリシアがやってくれてました。ですので、アリシアも一緒に雇ってもらえますでしょうか?」
「それはダメだ!」
侯爵の表情が急に変わった。語気も荒々しくなる。
「エルフのことだろ? そんなヤツ、雇うわけがなかろう?」
そう、即答される。
「そんな……」
「大丈夫だ。儂が支援している魔導士にも強化魔法を使える者はおる。魔石の準備はその者がやる。だから、そんな亜人など必要ない」
亜人……だなんて……
アリシアの言う通りだった。現地人は人間以外を『亜人』と言って、差別している。ココに来る前、アリシアの表情を見て、なんか嫌な予感はしていたのだけど……やっぱり、そうだったんだ。
「わかりました……」
「そうか、では――」
「この話はお断りいたします」
「――なに?」
ボクは侯爵の前で深々と頭を下げた。
「ボクとアリシアは、一緒に仕事を続けると約束しました。アリシアを雇わないと言うのであれば、ボクもココで働きません。ですから、この話はなかったことにしてください」
「――なんだと?」
侯爵の顔が真っ赤になるのが見えた。かなり怒っているのだとはっきりわかる。しかし、考えを変えるつもりはない。
「話がそれだけでしたら、ボクはこれで失礼します」
そう言って、扉の方向へ足を向けたとき、侯爵が「待て」と声をあげる。
「おぬし、この儂の誘いを断って、この王都で仕事ができると思うなよ」
そんな脅しを言ってきた。
ボクはそれに応えず、重い扉を押して部屋を出た。
三大貴族と言われる侯爵の要求を断れば、イヤがらせがあることくらいわかっている。王都にいられなくなることも――前世で読んだ異世界モノのラノベではよくあるシチュエーションだ。
それでもアリシアを見捨てて、ボクだけイイ思いをするつもりはない。
今のボクがいるのは、アリシアのおかげなんだから――
帰りは馬車にも乗せてもらえず、徒歩で帰る。
工房に戻るとアリシアが心配そうな顔でボクを待っていた。
「お、おかえりなさい、ヒロトさん」
彼女は「どうでした?」とたずねてきたので、侯爵の誘いを断ったこと、それで、侯爵から脅しがあったことを隠さず話した。
「そんな……私のせいで、ヒロトさんが王都で仕事ができなくなるなんて……」
責任を感じるアリシアに、「ボクが決めたことだ」と伝える。
「なに、仕事なんて王都じゃなくてもできるさ。その時はボクと一緒に来てくれるかい?」
「えっ? その……イイんですか?」
「もちろん、アリシアがイヤなら――」
「そんな、イヤだなんて……私も行きます!」
その言葉でボクは笑顔になる。
そうだ、別におカネを稼ぐことがボクの望みじゃない。アリシアと一緒に仕事をしたいだけだ。
「まあ、それはともかく――アーノルドさんの依頼だけはこなさないとな」
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