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第四話 魔法や剣技を教えてもらえるらしい

その一

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 ここは昔、現地生命体が「地球」と名付けていた星のある世界。


 既にこの世界の知的生命体は絶滅し、ここを管理している女神は暇をもて余していた。


 女神の名はガイアという。最後に残った知的生命体――実際は生命体ではないのだが――を無事異世界に送り込み、自分は録り溜めしたアニメの消費に精を出していた。

「ケ、ケ、ケ! それにしても、アニメに登場する女神ってアホ面ばかりよね?」

 ガイアはソファーにだらしなく寝そべり、買い込んだスナック菓子をベトベトになった手で貪り、無意識にケツを掻いている。
 まるで、週末の独身OL生態そのままだ。


「あー。さすがに一ヶ月もアニメばかり観ていると飽きてきたなあ……どこでもいいから、酒池肉林でチート無双できる世界に転生させてくれないかなあ……」

 そんなこと言っている女神の世界に生を受けた生命体は本当に浮かばれない……

「そういえば……アスタリアのところに送ったあのコ、もう一ヶ月過ぎたけど、どうなったかなぁ……そろそろホームシックになっている頃だよねぇ? 『やっぱりガイアのところじゃないとヤダァ!』って駄々こねている頃かも……あーん、私って罪な女ね」

 ここまでくると妄想でもなんか許せない――

「そうだ、こんなこともあろうかと、追従型監視装置シーカーにあのコを追尾させてたんだっけ?」

 いや、それって立派なストーカー犯罪ですから……

「早速、見てみよっと――」

 ガイアは手元にあるリモコンでディスプレイの入力切り替えを行う。すると、エルとフィスの姿が映った――



 ここはトルトの町から小さな山を二つ越えた場所。

 トルト周辺では珍しい、岩肌が剥き出しになったチャートの地層が広がる場所だ。
 硬い岩盤に、木々など燃えるモノも少ないので、この辺りはフィスの魔法練習場所となっていた。

 ここにエルを連れてきたのは、もちろん魔法を教えるためだ。


 ゴブリンロードとの戦いで、エルは魔法を使っていたのだが、あまりに基本がなっていなかったので、ここで練習しようということになったのだ。

 フィスはエルに杖を渡す。ワンドというより、指揮棒タクトのような大きさだ。

 魔導士によっては大きなスティックを使う者もいる。好みというより、師匠の教えたスタイルがどういうモノか……というのが影響するらしい。それだけ、杖の使い方は繊細で一度習得すると変えることはなかなか難しい――ということなのだろう。

「その杖は私が作ったのだけど、あまり手に馴染まなかったので結局使わなかったモノなの」
 フィスはそう説明する。

 エルは渡された杖を上下左右、いろんな方向で見るが、グリップが取り付けてある以外、いたって普通の棒切れだ。

「今、ただの棒切れだと思ったでしょ? それ『トレント』の枝よ」

 はあ……と、いつものように気の抜けた返事をするエル……正直、トレントが何なのかわからない……あとで、ハーミットに聞いておこうと考える。

「それじゃ、まずはファイアボールね。私が手本を見せるから見ておいて」

 フィスが呪文を唱える。とても地球の言葉では言い表せないような発音だ。言葉というより、モデムが発する電子信号音に近い。
 すると、フィスの前に火の玉が現れ、杖を前方へ向けると火の玉は加速、正面の岩肌にぶち当たる。


 バーン‼


 ずざましい音だ。その音と同時に火柱が飛び散る。

「うーん、ちょっと火力が上がったかな?」

 火の玉が当たった岩肌が黒くなり、欠片がぼろぼろと落ちるのが見えた。ゴブリン程度なら瞬殺できるほどの威力だ。

 そういえば、岩肌の至るところが黒くなっている。フィスが練習した跡なんだとエルは理解した。

「はい、それじゃ同じようにやってみて。一番大事なのは集中力よ。杖の先端に意識を集中して。呪文は補助的なものと考えて」

 エルは言われた通りに呪文を唱えながら、杖の先端に集中する。

 すると、杖の先端から少し離れたところに火の玉が現れた。

「そう、その調子、順調よ……………………えっ?」

 火の玉はだんだん大きくなり、一メートル……二メートル……五メートル……そして十メートルを超えてきた……
 その大きさに唖然とするフィス。我に返る。

「エ……エル! ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとタンマ!」

 しかし、エルの詠唱が完了するのが少しだけ早く、巨大な火の玉が岩肌に向かって行く。



 ぐっっっっっわーーーーーん‼



「きゃあ‼」

 とてつもない風圧が押し寄せ、フィスは後ろ向きでしゃがみ込む。
 なんとか飛ばされずに済んだが、まだ耳がぐわんぐわん言っていた。

 フィスは恐る恐る正面を見た。そして、絶句する。
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