19 / 50
第三話 未曾有の危機は突然やってくるらしい
その四
しおりを挟む
文明を滅ぼすとされる天災級モンスター、ゴブリンロードを前にして、意気消沈する衛兵と冒険者達。ただ一人、希望を捨てようとしない者がいた。
「だからといって、黙って殺られるつもりはない! 君たちもそうではないのか⁉」
エドワースがそう叫ぶ。ここにいる者達を鼓舞するように。
「畜生‼ やってやる!」
「俺もやるぞ!」
冒険者も衛兵も関係無く、自分の気持ちを奮い立たせた。
しかし、その奮起も一瞬で崩れ去る。
ゴブリンロードが吐き出した高熱のブレス。それが、一直線にエドワースへと向かった!
不意を突かれ、エドワースの防御が一瞬遅れる。
辛うじて魔剣で受け止め、ブレスの射線を上空へ向けることに成功――だが、完全な防御とはならない。両手に大きな火傷を負うことになった……
「くっ……」
エドワースは剣を地面に落とし、膝をつく。
「エドワース!」
フィスが叫んだ。衛兵も、冒険者も、エドワースが負傷したことで先程までの覇気が失せてしまい、恐怖が先立つようになる。
ゴブリンロードがもう一度高熱のブレスをエドワースに向けて吐き出した!
火傷を負ったエドワースの両腕に、剣を握れる力は残っていない。
向かってくる炎の塊に対抗する手段はなく、エドワースは黙ってそれが届くのを待った――
バアーーン‼
物凄い爆発音がエドワースの居た位置から発する!
「うわぁーーーーっ‼ もうダメだあ!」
冒険者が一斉に逃げ出す。エドワースが負ければ、もう人間に勝ち目などない。
衛兵と魔導士達はこの国を守ってるという誇りにかけて、その場に留まっていた――が、ゴブリンロードに立ち向かおうという気力はもう残ってなかった。
「ヤハリ、ソノ男ガ人間ドモノ要ダッタカ……シカシ、モウソノ男ハ死ンダ。ドウスル? 人間ドモヨ…………ン?」
エドワースが居た場所に舞い上がった黒煙と土煙が徐々に晴れる――とそこにエドワースがいた。まだ生きている!
そしてフィスが――
ブレスがエドワースにまで到達する僅かな時間に、フィスは魔法障壁を展開した。それも、五重の障壁だ。しかし、三つ目までの障壁は破壊され四つ目も穴が空き、最後の一枚にもヒビが入っていた。
辛うじて防いだというところだ。
相手が死んでいなかったことに少し驚いた表情を見せたゴブリンロードであったが、魔法障壁を展開したのがフィスだと気づき、二人に近づく。
「人間ノ小娘ヨ。ヨクゾ私ノ攻撃ヲ防イダ」
ゴブリンロードは歩みを進めながら、そうフィスに語り掛けた。
「シカシ、残念ダ――モウ、オマエノ頑張リハ無駄ニナル。去ラバダ……」
天災級モンスターは片足を持ち上げると、その大きな足で二人を踏み潰そうとした。
(もうダメ……)
フィスは身を屈める……
しかし、いくら経っても上から押し潰されることはない――
恐る恐る見上げた――すると、そこに立っている者がいる。
黒のスカートとニーソックス。
薄茶色の尻尾がゆっくりと揺れていた。
「エル‼」
「どうも……遅くなりました」
「だからといって、黙って殺られるつもりはない! 君たちもそうではないのか⁉」
エドワースがそう叫ぶ。ここにいる者達を鼓舞するように。
「畜生‼ やってやる!」
「俺もやるぞ!」
冒険者も衛兵も関係無く、自分の気持ちを奮い立たせた。
しかし、その奮起も一瞬で崩れ去る。
ゴブリンロードが吐き出した高熱のブレス。それが、一直線にエドワースへと向かった!
不意を突かれ、エドワースの防御が一瞬遅れる。
辛うじて魔剣で受け止め、ブレスの射線を上空へ向けることに成功――だが、完全な防御とはならない。両手に大きな火傷を負うことになった……
「くっ……」
エドワースは剣を地面に落とし、膝をつく。
「エドワース!」
フィスが叫んだ。衛兵も、冒険者も、エドワースが負傷したことで先程までの覇気が失せてしまい、恐怖が先立つようになる。
ゴブリンロードがもう一度高熱のブレスをエドワースに向けて吐き出した!
火傷を負ったエドワースの両腕に、剣を握れる力は残っていない。
向かってくる炎の塊に対抗する手段はなく、エドワースは黙ってそれが届くのを待った――
バアーーン‼
物凄い爆発音がエドワースの居た位置から発する!
「うわぁーーーーっ‼ もうダメだあ!」
冒険者が一斉に逃げ出す。エドワースが負ければ、もう人間に勝ち目などない。
衛兵と魔導士達はこの国を守ってるという誇りにかけて、その場に留まっていた――が、ゴブリンロードに立ち向かおうという気力はもう残ってなかった。
「ヤハリ、ソノ男ガ人間ドモノ要ダッタカ……シカシ、モウソノ男ハ死ンダ。ドウスル? 人間ドモヨ…………ン?」
エドワースが居た場所に舞い上がった黒煙と土煙が徐々に晴れる――とそこにエドワースがいた。まだ生きている!
そしてフィスが――
ブレスがエドワースにまで到達する僅かな時間に、フィスは魔法障壁を展開した。それも、五重の障壁だ。しかし、三つ目までの障壁は破壊され四つ目も穴が空き、最後の一枚にもヒビが入っていた。
辛うじて防いだというところだ。
相手が死んでいなかったことに少し驚いた表情を見せたゴブリンロードであったが、魔法障壁を展開したのがフィスだと気づき、二人に近づく。
「人間ノ小娘ヨ。ヨクゾ私ノ攻撃ヲ防イダ」
ゴブリンロードは歩みを進めながら、そうフィスに語り掛けた。
「シカシ、残念ダ――モウ、オマエノ頑張リハ無駄ニナル。去ラバダ……」
天災級モンスターは片足を持ち上げると、その大きな足で二人を踏み潰そうとした。
(もうダメ……)
フィスは身を屈める……
しかし、いくら経っても上から押し潰されることはない――
恐る恐る見上げた――すると、そこに立っている者がいる。
黒のスカートとニーソックス。
薄茶色の尻尾がゆっくりと揺れていた。
「エル‼」
「どうも……遅くなりました」
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
俺は5人の勇者の産みの親!!
王一歩
ファンタジー
リュートは突然、4人の美女達にえっちを迫られる!?
その目的とは、子作りを行い、人類存亡の危機から救う次世代の勇者を誕生させることだった!
大学生活初日、巨乳黒髪ロング美女のカノンから突然告白される。
告白された理由は、リュートとエッチすることだった!
他にも、金髪小悪魔系お嬢様吸血鬼のアリア、赤髪ロリ系爆乳人狼のテル、青髪ヤンデレ系ちっぱい娘のアイネからもえっちを迫られる!
クラシックの音楽をモチーフとしたキャラクターが織りなす、人類存亡を賭けた魔法攻防戦が今始まる!
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる