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第二章 ちょいとパーティー組む?

第21話 ボーナス効果

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 戸越を先頭に洞窟の奥へと進んで行く。五分くらい経過したころ――

「ずいぶん、進みましたね」
 ミディアムヘアの住吉さんが少し不安そうな顔を見せながら、そう言う。

「このあたりは、まだ入口エリアだよ」
 そう戸越は言う。たしかに、ゴブリンが現れるのはもう少し先だったと思う。

「まずは、このワープポイントあたりを目指そう」
 スマホに表示されたマップを指差しながら、再び歩き出す。
「あと、百メートルくらい進むとゴブリンがいると思うから、そのあたりから慎重に進むよ」

 途中、男性二人組のパーティーと出会う。
「こんにちは」
「こんにちは」
 挨拶あいさつだけですれ違った。

 休日でも、けっこうお客さんがいるんだな。

そこから二つ先の分かれ道で、戸越が左手を横に広げる。
「いる――」
 そう小声を出した。ゴブリンだ。

 ボクもそーっと先をのぞく。石斧いしおのを持ったゴブリンがいた。

「それじゃ、ユミさん。お願いできますか?」
 戸越が言うと、ユミさんが緊張した顔で、「ハイ――」と応える。

「えーと……戸越さん? もうイイですか?」
「レンでイイよ」
「――えっ?」
「ここでは全員、プレイヤーネームで呼び合うことにしよう!」
 そうだな。戸越もイイことを言う。

「ただし、コイツは豪運星人で――」
「オイ!」

 場がなごんだところで――

「それじゃいきます」
 ユミさんが両手でつかんだ杖を振り上げた。

 ボクたちも剣を構えて、いつでも行けるようにする。

「ファイアボール!」
 ユミさんが杖をゴブリンに向けると、十センチほどの火の玉が飛び出した。
 それが、ゴブリンに直撃する!
「ウマい!」
 戸越がそう声を出す――が!

「あっ!」

 火の玉が直撃したゴブリンは「キィー!」という奇声をあげて、反対方向に逃げてしまった。

「そうか、逃げ出すんだ――」
 ボクもすっかり忘れていた。

「ごめんなさい」とユミさんが謝るので、「こっちの作戦ミスだよ」とボクと戸越は謝り返す。

「――となると、やっぱり、ゴブリンを一発で仕留めるしかないな」
 ボクがそう言うと、戸越が「それじゃ、パーティーを組む意味がないよなぁ……」と頭をく。

 これがMMOなら、パーティーでも楽しめるようにゲームバランスが調整してあるのだろうが――

「ゴブリンに『逃げるな』とは言えないしな……」
 戸越の発言に、ボクも苦笑いする。

「それじゃ、レベルが一番高いことだし、ボクがゴブリンの前に出て、ゴブリンを引き付け、残りの三人で攻撃する――というのはどう?」

 その提案に、三人も了承する。

「よし、それじゃ次をいこう!」
 また、戸越を先頭に先へ向かうと――

「お、リュック持ちだ」
 大きなリュックを背負ったゴブリン。

「と、いうことは、アイテムをドロップするヤツだ」
 そして、ナイフを持っている。当然、石斧より危険だ。

「それじゃ、いくぞ」
 ボクが声を掛けると、「おっけい」と返事される。

「さん、に、いち、ゴー!」
 その合図で、ボクは飛び出す。

「キィィィィッ!」
 ゴブリンがこっちに気づいて、向かってきた。

 ――あれ?

 なんか、前よりゴブリンの動きが遅いように気がする。
 手にしたナイフがよく見えた。

 これなら――

 ガツッ!

 余裕をもって、ゴブリンの攻撃を盾で防いだ。そのタイミングで、戸越がゴブリンの横に回り込む!

 グサッ!

「ギャアァァァァ!」
 そのわき腹に剣を突き刺すと、ゴブリンが悲鳴をあげて倒れた!

 そのまま動かなくなると、スーッと姿が消える。
「おっ、ドロップした。あれ? 二つない?」
 戸越の声に、ボクも「あ、ホントだ」と言ってしまう。

 魔石の他に、片手剣と盾が地べたに転がっていた。
「へえ、複数ドロップすることもあるんだな」
 今後は、見落としがないように、しっかり確認しなければと考える。

 アイテム検索すると、ドロップした剣と盾は、どちらもレア度星ひとつ。それでも、戸越の話では、千ダルの価値があるという。

「それよりも、これを持っておけば、今後、防具をレンタルしなくてもイイしな」
 受付でレンタルすると、剣、盾、防具の三点セットで、一日千ダル――つまり、千円になる。

 ボクは、ひととおりドロップアイテムを手に入れてある。なので、「あとは三人分、そろえよう!」という話になった。

「ところで、なんかゴブリンの動き、遅くなかったか?」
 戸越がそう言うので、「あ、やっぱりそう思った?」とボクも同じ印象があったことを伝える。

「これって、ユミさんの杖の効果かもな」
 そういえば、ユミさんの杖に『時間の経過が十パーセント遅くなる』というボーナススキルがあった。

 つまり、これを持っていれば、ゴブリンの動きがちょっとだけど遅くなる――ということだ。

「それって、なにげにスゴいよな」
「ああ」
 たった一割でも、あのすばしこいゴブリンの動きが遅くなるということは、かなり有利だ。

「そして、パーティーメンバー全員にその効果があるのもスゴい」
 たしかにレア度星三つだ。

「そう考えると、アイテムを二つドロップしたのは、それの効果かもな」
 そう言って、ボクの短剣を指した。
 そう、この剣には『ドロップ率アップ』が付与されていたのだ。

「なにげに、このパーティー。おいしくない?」
 レア度の高いアイテムを持つのは、思っているより有利になりそうだ。

「ヨシ! この調子でドンドンいこう!」
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