3 / 59
第一章 ゲハルトの大森林
第三話
しおりを挟む
『オマエ……ヲ、……ベタイ……』
(……………………えっ?)
なんかしゃべった!
『オマエヲ、タベサセロ……』
うわっ……気持ち悪い……
だんだんと人の形になり、手らしきモノが伸びてきた!
(これって……悪霊?)
ウワサには聞いていた。魔力が満ちた場所で命を落とした者が、悪霊化して人を襲うと……それにしてもデカい! 巨人ほどの大きさだ。
悪霊の手を躱す。カラダがない分、こっちも身軽だ!
『タベタイ!』
なんか、相手の動きも良くなってきた。このまま逃げ回っていてもラチが明かない。
攻撃する方法はないのか? 試しに魔法を使ってみる。
(――フレイム)
ボウッ!
悪霊に炎がまとわり付く!
『ウギャー!!』
悲鳴らしき声が響く! 魔法が効いているようだ。
(良し! いけるぞ!)
何度かフレイムを打ち込むと、相手の『気』が小さくなっていると察した。
(このまま、相手を『消滅』させよう!)
ありったけの魔力を打ち込もうとしたとき、相手の悪霊がボウッと明るくなる――
「……………………」
何かつぶやいている。魔法詠唱っぽいが――次の瞬間、激しい衝撃に襲われる。
(うわあぁっ!)
カミナリの直撃を受けたような――といっても、実際に受けたことはないが……そんな、電撃に似たイメージだ。(これって――)
今の魔法陣、そして光の色。最近、学校の授業で見た覚えがある。
(まさか、ホーリー?)
もう一度、悪霊が詠唱を始めた!
(なんで、悪霊がホーリーを使うんだよ!)
光属性は信仰系魔法と言われるくらい、聖職者が得意とする魔法。その攻撃魔法であるホーリーは、アンデットやゴースト系のモンスターには特に効果があった。
『ウギャー!!』
再びホーリーを受けて、思わず悲鳴をあげてしまう。
(マズい、マズいぞ……何か手を打たないと……)
ホーリーは射程範囲の狭さが欠点なのだが、今、自分は半径十メートル圏内から出られない――つまり、ホーリーの格好な餌食だ。
(逃げられないなら、防御魔法を!)
強化魔法の一つ、防御魔法の『プロテクト』を発動させる。数回なら物理攻撃でも魔法攻撃でも防げる。その間に、相手を弱らせるのだ。何度かフレイムを打ち込む間に、相手もホーリーで攻撃してくる――が、防御魔法の効果で、ダメージはほとんどない。
(良し! 肉体がなくても防御してくれるぞ!)
しだいに相手が疲弊し、攻撃してこなくなった。
(勝負ありだな――)
これで最後――というときに、悪霊が何かをつぶやいているのを聞いた。
『俺ヲ吸収シロ……』
……キュウシュウ?
どういう意味かわからない――もう少し聞いてみる。
『コノママ、消滅ハイヤダ。恨ミヲ晴ラサズニ終ワレナイ――吸収デ俺ヲ取リ込メ』
それって、この悪霊を自分の中に取り込め――っていうこと? そんなことをして、大丈夫なのか? 自分の自我は保てる? そもそも、どうやって取り込む?
もっと、初心者でもわかるように説明してもらえないだろうか? そんなことを考えるが、コミュニケーションが取れるような相手でもない。
(えーい! もうどうなっても知らないからな!)
吸収――取り入れる、摂取、食べると連想する。そこで、口からモノを食べるイメージで悪霊を飲み込んだ。
『アリガトウ――コレデ、オレノ……』
『ワタシノ……』
『ボクノ……』
『オモイトチカラヲキミニ託ス!』
(うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!)
たくさんの記憶が入り込んできて、パニックになる!
(なんなんだぁ!?)
――パーティーを守って大ケガをしたのに、見捨てられた冒険者。
――魔物に追われ、足の速い前衛は逃げてしまい、取り残された後衛。
――最初っから魔物のエサとして連れて行かれた荷物運び役。
さまざまな恨みつらみがいっぺんに取り込まれたのだ!
(これって、全部この悪霊の記憶なのか!?)
何十人というこの世に未練のある魂が、長い年月でひとつひとつ取り込まれ、大きな悪霊となったのだろう――そして、それによってはっきりしたこと――
(僕ってやっぱり――『悪霊』なのか?)
(……………………えっ?)
なんかしゃべった!
『オマエヲ、タベサセロ……』
うわっ……気持ち悪い……
だんだんと人の形になり、手らしきモノが伸びてきた!
(これって……悪霊?)
ウワサには聞いていた。魔力が満ちた場所で命を落とした者が、悪霊化して人を襲うと……それにしてもデカい! 巨人ほどの大きさだ。
悪霊の手を躱す。カラダがない分、こっちも身軽だ!
『タベタイ!』
なんか、相手の動きも良くなってきた。このまま逃げ回っていてもラチが明かない。
攻撃する方法はないのか? 試しに魔法を使ってみる。
(――フレイム)
ボウッ!
悪霊に炎がまとわり付く!
『ウギャー!!』
悲鳴らしき声が響く! 魔法が効いているようだ。
(良し! いけるぞ!)
何度かフレイムを打ち込むと、相手の『気』が小さくなっていると察した。
(このまま、相手を『消滅』させよう!)
ありったけの魔力を打ち込もうとしたとき、相手の悪霊がボウッと明るくなる――
「……………………」
何かつぶやいている。魔法詠唱っぽいが――次の瞬間、激しい衝撃に襲われる。
(うわあぁっ!)
カミナリの直撃を受けたような――といっても、実際に受けたことはないが……そんな、電撃に似たイメージだ。(これって――)
今の魔法陣、そして光の色。最近、学校の授業で見た覚えがある。
(まさか、ホーリー?)
もう一度、悪霊が詠唱を始めた!
(なんで、悪霊がホーリーを使うんだよ!)
光属性は信仰系魔法と言われるくらい、聖職者が得意とする魔法。その攻撃魔法であるホーリーは、アンデットやゴースト系のモンスターには特に効果があった。
『ウギャー!!』
再びホーリーを受けて、思わず悲鳴をあげてしまう。
(マズい、マズいぞ……何か手を打たないと……)
ホーリーは射程範囲の狭さが欠点なのだが、今、自分は半径十メートル圏内から出られない――つまり、ホーリーの格好な餌食だ。
(逃げられないなら、防御魔法を!)
強化魔法の一つ、防御魔法の『プロテクト』を発動させる。数回なら物理攻撃でも魔法攻撃でも防げる。その間に、相手を弱らせるのだ。何度かフレイムを打ち込む間に、相手もホーリーで攻撃してくる――が、防御魔法の効果で、ダメージはほとんどない。
(良し! 肉体がなくても防御してくれるぞ!)
しだいに相手が疲弊し、攻撃してこなくなった。
(勝負ありだな――)
これで最後――というときに、悪霊が何かをつぶやいているのを聞いた。
『俺ヲ吸収シロ……』
……キュウシュウ?
どういう意味かわからない――もう少し聞いてみる。
『コノママ、消滅ハイヤダ。恨ミヲ晴ラサズニ終ワレナイ――吸収デ俺ヲ取リ込メ』
それって、この悪霊を自分の中に取り込め――っていうこと? そんなことをして、大丈夫なのか? 自分の自我は保てる? そもそも、どうやって取り込む?
もっと、初心者でもわかるように説明してもらえないだろうか? そんなことを考えるが、コミュニケーションが取れるような相手でもない。
(えーい! もうどうなっても知らないからな!)
吸収――取り入れる、摂取、食べると連想する。そこで、口からモノを食べるイメージで悪霊を飲み込んだ。
『アリガトウ――コレデ、オレノ……』
『ワタシノ……』
『ボクノ……』
『オモイトチカラヲキミニ託ス!』
(うわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!)
たくさんの記憶が入り込んできて、パニックになる!
(なんなんだぁ!?)
――パーティーを守って大ケガをしたのに、見捨てられた冒険者。
――魔物に追われ、足の速い前衛は逃げてしまい、取り残された後衛。
――最初っから魔物のエサとして連れて行かれた荷物運び役。
さまざまな恨みつらみがいっぺんに取り込まれたのだ!
(これって、全部この悪霊の記憶なのか!?)
何十人というこの世に未練のある魂が、長い年月でひとつひとつ取り込まれ、大きな悪霊となったのだろう――そして、それによってはっきりしたこと――
(僕ってやっぱり――『悪霊』なのか?)
89
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)
丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】
深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。
前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。
そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに……
異世界に転生しても働くのをやめられない!
剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。
■カクヨムでも連載中です■
本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。
中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。
いつもありがとうございます。
◆
書籍化に伴いタイトルが変更となりました。
剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~
↓
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る
世界で俺だけがダンジョンを攻略できるだと?! ピコハン頑張る!
昆布海胆
ファンタジー
村の不作で口減らしにダンジョンに捨てられたピコハンは世界でただ一人、魔物を倒すとその存在力を吸収して強くなれる存在であった。
これは世界に存在するダンジョンを唯一攻略できるピコハンがダンジョンを攻略していく物語。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
魔法公証人~ルロイ・フェヘールの事件簿~
紫仙
ファンタジー
真実を司りし神ウェルスの名のもとに、
魔法公証人が秘められし真実を問う。
舞台は多くのダンジョンを近郊に擁する古都レッジョ。
多くの冒険者を惹きつけるレッジョでは今日も、
冒険者やダンジョンにまつわるトラブルで騒がしい。
魔法公証人ルロイ・フェヘールは、
そんなレッジョで真実を司る神ウェルスの御名の元、
証書と魔法により真実を見極める力「プロバティオ」をもって、
トラブルを抱えた依頼人たちを助けてゆく。
異世界公証人ファンタジー。
基本章ごとの短編集なので、
各章のごとに独立したお話として読めます。
カクヨムにて一度公開した作品ですが、
要所を手直し推敲して再アップしたものを連載しています。
最終話までは既に書いてあるので、
小説の完結は確約できます。
秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話
嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。
【あらすじ】
イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。
しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。
ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。
そんな一家はむしろ互いに愛情過多。
あてられた周りだけ食傷気味。
「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」
なんて養女は言う。
今の所、魔法を使った事ないんですけどね。
ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。
僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。
一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。
生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。
でもスローなライフは無理っぽい。
__そんなお話。
※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。
※他サイトでも掲載中。
※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。
※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。
※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる