異世界で普通に死にたい

翠雲花

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前編

16夢

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  目を覚ますと、そこは 自分の部屋のベッドだった。


  え?なんで僕の部屋。それに二人は。


  僕は父様とジルを探すように起き上がると、二人は母様と喋っていた。


   何喋って……これは寝たふりしてた方がいいかも。


   そう思った頃にはもう遅く、父様とジルが駆け寄ってきた。


「ハル!目が覚めたか、体の具合はどうだ?」


   ジルは僕の体を心配してきた。


「ハル、すまんな無理をさせた」


    そして、父様は謝ってきた。


「だ、大丈夫だよ!僕の体もどこも痛くないし、少し怠さがあるだけ」


   僕が気だるそうにしていると、二人は喉を鳴らした。


「ハ、ハル。色っぽいな」


「ハル、それ以上は色気を出すな」


  ジルと父様に言われたが、僕はそんなの分からないし、怠いものは仕方ない。


「そんな事言われても僕には無理だよ」


  すると、母様が僕の側にきて、何やらウキウキした表情で聞いてきた。


「ハル君!どうだった?気持ちよかった?」


「う、うん」


  僕は慌てて返事をすると、母様は何故か嬉しそうに、「ありがとう」と言って部屋を出ていった。


  母様はやっぱり腐ってたのか。


  部屋に取り残された僕は、猛獣二人がまた発情していた為、流石に今日は無理だから、日替わりで、夜の相手をする事になった。


  毎日も辛いけど、二人一変に相手するよりはいい。


  そして、もう夜になっていたらしく、アイザット家にジルは泊まり、僕はジルと父様に挟まれ、また眠りについた。


   僕は次の日、気持ちよく朝を迎えた。すると、二人は僕の顔を見ていた様で、目を開けると、目の前に父様とジルの顔があった。


「お、おはよう」


「「おはようハル」」


  二人は僕に笑顔で挨拶すると、それぞれに軽くキスされた。


「ハルが寝ている間に決めたが、今日はジル殿下と夜を過ごせ。明日は私とだ」


  父様はそれを言うと、ついでに騎士団の近くに、家を建てたから今日から三人で住むと言われた。


「父様、わざわざ建てたの!?」


「ん?ああ、当たり前だ。ハルが城と家を行き来するなら一緒に住んでしまった方がはやいからな。しかし、私が建てる前に、ルーデンが既に建ててた。だからあれは贈り物だ」


「え?国王陛下が!?」


  まさか、王が直々に贈り物をしてくれるとは、しかも家。


「父上はこうなる事を予想して、前もって建ててたみたいだよ。ほら、騎士団の裏は木々が生い茂っていただろう?そこに建てたらしい」


「そうなんだ。今度、お礼を言わなきゃ」


  そして、僕の今日の仕事はお引越しになった。


  ご飯を食べ終えると、僕は自分の部屋の物を、すべて無限収納にいれた。


「ハルー、どう?終わったー?」


「ジル?僕は終わったんだけど、父様のは入れなくていいのかなー?」


  父様も引っ越すのに大変だろうからなー。


「ショーンさんは、昨日ハルが寝てる間に終わってるよ」


「え!うそっ!」


  父様早くないですかねー。どんだけ楽しみなの。


「ハル、終わったか?」


「父様!僕は終わったけど、父様のはもう全部運び終わったの?」


「ああ、昨日のうちにな。それに私はこっちにも帰ってくる事があるからな、そんなに荷物は多くない」


「そうなんだ。母様もいるもんね」


    母様寂しくないのかな。ミー姉様しかいないし、イル兄様もディー兄様もいるけど、なかなか帰れない時もあるしなー。


「ハルはコーデリアを心配しているのか?優しいな……でも安心しろ、ここだけの話、コーデリアはミーシャとデキてる」


「ハイ?イマナンテ」


「?コーデリアはミーシャと……」


「あーー!分かった、分かったよ。だからもう言わないで!」


  まさかの家で百合が生まれてた。その流れだと、兄様達は……


「ハル、イルとディーはハルが考えてるような事にはなってないぞ。あいつらはどちらかと言うと、ハル好きだ」


   あー。なんとなく知ってました。だから父様もジルも顔に出して不機嫌になるのはやめて。


「え、えっと、僕はもう終わったからさ。移動しよ?」


  あからさま過ぎた?でも、ここで不機嫌になった二人を相手にしたら夜になっちゃうし……


「ああ、そうだな。行こうか」


   そして、僕はローブを着ると二人に連れられた。右手に父様、左手にジル。もはや囚われた宇宙人だ。でなければ、子供のお守りだ。


   ちなみに、リーグが来る事は案の定却下されました。あっちでは、城の使用人が数名つくらしい。もちろん、夜は城の使用人部屋に戻る。


「ねえ、僕流石に見えない視界は慣れたから、手は繋がなくても大丈夫だよ?」


「「ダメだ」」


「転んだらどうするんだ」


「ハルが怪我するのは見たくないな」


  二人は本当に過保護だ。好きだと言うのもあるだろうが……それにしてもだ。


  僕は小さくため息をつき、足を進めると、騎士団にきた。


「どうして騎士団?」


「家は騎士団の裏にあると言っただろ?騎士団の裏口からしか行けないんだ。それにその方が、安全だ。警備は必然的に万全になる」


  そっか、ジルがいるもんね。一応第一王子だし、何かあるといけない。


「ハル、これは私の為ではない。ハルの為だ。ハルに何かあっては困るからな」


  え!ジルはエスパーか?僕は口に出してない筈だ。


「なんで、分かったの?」


「ハルは顔に出やすいからな」


   即答かいっ。


「ほらまた」


  うっ。僕はまだ十歳だから顔の制御が効かないのか?こればっかりは仕方ないか。


   そして、僕は騎士団の裏口…ではなく、訓練場に連れられた。

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