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第5章 新たな従魔探し
57-トリートの提案
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ジョーンズさんの予想通り、朝から雨が降った。
まだ、大したことはないが、ひどくなる可能性もあるということで、ジョーンズさんが出発を躊躇していた。
「ジーンズさん、イリディが雨を防ぐ結界を張りますので、大丈夫ですよ。」
「そんなことができるのか?」
「はい。イリディ、お願い。」
「わかったなのです。」
結界は見えないが、雨が弾かれているので、その存在が確認できた。
それは、徐々に広がっているのがわかる。
「おお!これはすごいな。ユウマ君は何でもありだな。」
「それは、言い過ぎです。」
そもそも、僕がやっているわけじゃないしね。
段々雨がひどくなって来たが、イリディのお蔭で、ゆっくりだが順調に進んだ。
ヴァミリオは、さすがに強い雨の中は飛びにくい様で、僕の肩に戻って来た。
レモンは、相変わらず寝ている。
クレアは、今は先頭の馬に話し掛けている……と思ったら、こっちにやって来た。
「クレア、どうしたの?」
「今日は足場が悪いから、馬たちが少し休みたいらしいわ。」
「なるほど。さすが、クレア。ありがとう。」
「フフン!」
胸を張るクレア。チョロい。
僕は、ジョーンズさんにその事を伝えに行った。
クレアもなぜか付いて来た。
「わかった。クレアさん、伝えてくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
クレア、ジョーンズさんに褒めてもらうために来たのか。
「少し先に休憩所があるから、そこで休もう。」
「はい。クレア、馬たちに伝えて来てくれる?」
「わかったわ。」
しかし、足場が悪いのに、通常休憩する所までは来たということか。
矢張り、あの馬たちは体力あるな。
休憩所は、雨も凌げる様になっているため、イリディも結界を解いた。
「イリディ、お疲れ様。大丈夫?」
「大丈夫だけど、さすがにちょっと疲れたなのです。あなた、抱いてくれなのです。」
「こ、ここで?」
魔力の供給のためだろうけど、皆が見てる所ではさすがに恥ずかしい。
でも、イリディにはこの後も頑張ってもらわないといけないから、そのくらいしても良いかな。
ということで、休憩の間イリディを抱いた。
イリディは大きいので、抱くというよりくっついているだけという感じだが……。
結局、今日も雨が降った以外は何事も無かった。
途中休憩したので、いつもより時間が掛かったが、そこまで到着が遅くなったという訳でもない。
「お疲れ様。」
今日は、さすがに馬たちも疲れただろうから、撫でておいた。
撫でている間、馬たちも気持ち良さそうだった。
これくらいなら、特に問題ないよね?
「やっぱり、私は家にいても良かったわね。」
僕が馬たちから離れると、レモンがそう言いながら近付いて来た。
「いや。結果論だからね。」
レモンを抱き上げながら、僕はそう答えた。
というか、レモン今日もほとんど寝てたよね?
~~~
家に帰ると、またイリディが抱いてくれと言って来た。
皆がいる所で誰かを抱くと、反発があったりするのだが、今日はイリディが頑張ったのは皆わかっていたので、文句を言う者はいなかった。
僕も疲れたから、イリディのモフモフに埋もれて休ませてもらおう。僕は何もしてないけどね。
「ん?誰か来たみたいだな。」
こんな時に訪ねてくるとは、誰だろう?
僕以外は人を迎えることはできないので、仕方無くイリディに断りを入れて、玄関に向かった。
尋ねて来たのはトリートさんだった。
そう言えば、この人が最初に訪ねて来たのも、雨の日だったな。
今のところ、トリートさんは僕たちの味方寄りだとは思うが、完全には信用していない。
皆も同じなのか、若干警戒をしている様だ。
「お久しぶりです。急に訪ねて来て、申し訳ございません。」
「どうかしましたか?」
「実は、お願いが有って来ました。」
『今日は、悪意は感じないわね。』
いつの間にか近くに来ていたクレアが、念話でそう伝えてくれた。
『そう?ありがとう。』
クレアが言うのなら、大丈夫だろう。
心が読めるレモンの方が確実ではあるが、彼女はまだ寝ている。
「お願いとは何ですか?」
「実は、エルミナさんのことを、元飼い主とその父親にしたのですが、信じてもらえなくて……。」
「普通、そうでしょうね。」
僕でも『馬があなたのことをこう言ってた』とか言われても、何を言ってるんだコイツは、みたいに思うだろう。
「しかし、息子の方は矢張り心当たりがあるのでしょう、少しそわそわしてました。それで、エルミナさんの言われることが、正しいと確信しましたよ。あ、もちろん、エルミナさんを信じてなかった訳ではないのですよ。」
「大丈夫です。本人の主観が入ってる以上、そのまま鵜呑みにする訳にはいかないですからね。」
「ご理解いただけて、助かります。それで、エルミナさんに直接話をしていただけないかと思いまして。」
「つまり、トリートさんと一緒にエラスに来いということですか?」
「はい。」
「もしかして、トリートさんは、エラスに僕たちを同行させることで、護衛費用を浮かそうと思っているのではないですか?」
「おや。バレてしまいましたか。」
この人、隠すつもりがないみたいだな。
「失礼ですが、僕たちにメリットはない様に思いますが。」
「いえ。父親の弱みを握ればユウマさんにもメリットが有ります。」
「どんなことですか?」
「彼はエラスでも力を持った商人なので、多少の我が儘は通ります。例えば、街に馬車を入れたいとか。ユウマさんも、例えば御者として街に入るなどということができるかも知れませんよ。」
「そんな事が通るんですか?」
エラスは、馬も入れないはずだけど。
「荷物を運ぶのに使うと言えば、断り難いでしょう。魔動車が行ける場所は限られますから。もちろん、普通の商人なら、当然認められません。」
「でも、弱みにつけこんでというのは、どうも……。」
「ならば、対価を支払うという条件なら良いのではないでしょうか?その場合でも、エルミナさんの件は、相手との交渉はやり易くなりますし。」
「なるほど。そうですね。」
たしかに、その程度なら良い気もする。
でも、エルミナは、元の飼い主には会いたくないんじゃないないかな?
「エルミナにも聞いてみますね。エルミナ、ちょっとこっち来てくれる?」
「エルミナさん、こんにちは。」
エルミナが来ると、トリートさんは、彼女に挨拶をした。
「こんにちは。今の話、聞いてました。ユウマさん、私は構いません。」
「本当に良いの?」
「はい。元の飼い主に会いたくないのは確かですが、逃げて来てしまって申し訳ない気持ちも有ります。今なら直接話もできるので、ちゃんと話をしておきたいと思います。」
「そう?無理してない?」
「大丈夫です。」
「ありがとう、エルミナ。トリートさん、この話お受けしようと思いますが、できれば指名依頼の形にしてもらえないでしょうか。」
「指名依頼ですか?」
「はい。ギルドを通して、依頼としてもらう方がやり易いです。もちろん、報酬は設定しないといけないでしょうが、支払ったことにしてもらうというのでも良いです。」
「わかりました。では、ワーテンのギルドに出しておきます。ちなみに、出発は5日後の朝の予定です。その時は、迎えに来させますので。」
5日後なら、急いでいるのはわかるな。僕が断ったら、護衛依頼を出さないといけない訳だし。
「わざわざ、すみません。」
「いえいえ。それでは、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「エルミナ、本当に良かったの?」
トリートさんが帰った後、改めてエルミナに聞いてみた。
さっきはああ言っていたが、実際には僕のために無理をしているんじゃないかという心配があったからだ。
「さっき言ったのは、本当のことです。でも、何より、私でもユウマさんの役に立てそうなので……。」
「エルミナ、ありがとう!」
思わず、エルミナに抱き付いた。
他の者も見てるけど、ここは空気を読んでくれたのだろう、誰も何も言わない。
「あのー。さっきの続きをお願いできなのです?」
と思ったら、そんなことを言ってくるのがいた。
もちろん、イリデイだ。
後ろで、皆が若干呆れた様に見ていた。
特に、クレアは何か言いたげだ。
後でお説教とかありそうだな。
~~~
翌日は、天気も良くなったので、移動は順調だった。
「間もなく、ワーテンだな。」
ジョーンズさんが、そう呟いた。
「そうですね。今日は良いペースで来ましたからね。」
『ユウマ。少し前の繁みに怪しい人たちが潜んでいるみたい。』
ヴァミリオから念話が入った。
上を見ると、高度を下げたヴァミリオが見えた。
前方に目を移すと、右手にまとまった繁みが有った。
『ヴァミリオ、ありがとう。あの、右前に見える繁みかな?』
『そうだよ。』
『何人位いる?』
『そんなに多くないね。1、2……6人かな。どうする?ボクが燃やしとこうか?』
『いやいや、やめておいてね。』
『そうかー。』
ヴァミリオは残念そうだが、そんなことしたら、辺り一面焼け野原になっちゃうからね。
しかし、6人とは少ないな。そんなに盗賊とは遭遇してないから、平均的な人数はわからないけど……。
『ヴァミリオは、ワーテンに行って、盗賊らしき人たちが現れた事をギルドの人に伝えてくれる?』
『わかったー!』
そう言って高度を上げるヴァミリオ。
ギルドなら、ヴァミリオが行っても対応してくれるだろう。
「ジョーンズさん、あそこの繁みに盗賊らしき奴等が待ち伏せしてるみたいです。」
「そうか。どうする?」
こういう時のためにレモンを連れて来たんだからな。
「お任せください。エルミナ、レモンの所にお願い。」
「わかりました。」
レモンが乗っている最後尾の馬車の所に行くと、レモンは相変わらず寝ていた。
「レモン、起きて!」
「うーん。どうしたの?」
「盗賊らしき人たちが現れたんだ。レモンの出番だよ。」
「フフフ。任せて!」
散々待たせたせいか、殺る気満々みたいだ。
「えーと。やり過ぎないでね。あと、ほぼ確実に盗賊だと思うけど、相手が襲って来るまでは待ってね。」
「わかってるわよ。ちなみに、人数は?」
「6人らしいよ。」
「少ないわね……あ、良い事思い付いた!」
絶対、良からぬ事だと思うけどね。
「ちなみに、どうするの?」
「それは、見てのお楽しみで!あそこの川原にに、岩がいくつも転がっているじゃない?あそこに行って休むように言ってもらえる?」
レモンの視線を辿ると、確かにそれらしい所が有った。
道から大分左に逸れることになるな。
「わかった。エルミナ、ジョーンズさんの所に戻って。」
「はい。」
お楽しみって、不安しかないけど……まあ、相手は盗賊だろうし良いかな。
まだ、大したことはないが、ひどくなる可能性もあるということで、ジョーンズさんが出発を躊躇していた。
「ジーンズさん、イリディが雨を防ぐ結界を張りますので、大丈夫ですよ。」
「そんなことができるのか?」
「はい。イリディ、お願い。」
「わかったなのです。」
結界は見えないが、雨が弾かれているので、その存在が確認できた。
それは、徐々に広がっているのがわかる。
「おお!これはすごいな。ユウマ君は何でもありだな。」
「それは、言い過ぎです。」
そもそも、僕がやっているわけじゃないしね。
段々雨がひどくなって来たが、イリディのお蔭で、ゆっくりだが順調に進んだ。
ヴァミリオは、さすがに強い雨の中は飛びにくい様で、僕の肩に戻って来た。
レモンは、相変わらず寝ている。
クレアは、今は先頭の馬に話し掛けている……と思ったら、こっちにやって来た。
「クレア、どうしたの?」
「今日は足場が悪いから、馬たちが少し休みたいらしいわ。」
「なるほど。さすが、クレア。ありがとう。」
「フフン!」
胸を張るクレア。チョロい。
僕は、ジョーンズさんにその事を伝えに行った。
クレアもなぜか付いて来た。
「わかった。クレアさん、伝えてくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
クレア、ジョーンズさんに褒めてもらうために来たのか。
「少し先に休憩所があるから、そこで休もう。」
「はい。クレア、馬たちに伝えて来てくれる?」
「わかったわ。」
しかし、足場が悪いのに、通常休憩する所までは来たということか。
矢張り、あの馬たちは体力あるな。
休憩所は、雨も凌げる様になっているため、イリディも結界を解いた。
「イリディ、お疲れ様。大丈夫?」
「大丈夫だけど、さすがにちょっと疲れたなのです。あなた、抱いてくれなのです。」
「こ、ここで?」
魔力の供給のためだろうけど、皆が見てる所ではさすがに恥ずかしい。
でも、イリディにはこの後も頑張ってもらわないといけないから、そのくらいしても良いかな。
ということで、休憩の間イリディを抱いた。
イリディは大きいので、抱くというよりくっついているだけという感じだが……。
結局、今日も雨が降った以外は何事も無かった。
途中休憩したので、いつもより時間が掛かったが、そこまで到着が遅くなったという訳でもない。
「お疲れ様。」
今日は、さすがに馬たちも疲れただろうから、撫でておいた。
撫でている間、馬たちも気持ち良さそうだった。
これくらいなら、特に問題ないよね?
「やっぱり、私は家にいても良かったわね。」
僕が馬たちから離れると、レモンがそう言いながら近付いて来た。
「いや。結果論だからね。」
レモンを抱き上げながら、僕はそう答えた。
というか、レモン今日もほとんど寝てたよね?
~~~
家に帰ると、またイリディが抱いてくれと言って来た。
皆がいる所で誰かを抱くと、反発があったりするのだが、今日はイリディが頑張ったのは皆わかっていたので、文句を言う者はいなかった。
僕も疲れたから、イリディのモフモフに埋もれて休ませてもらおう。僕は何もしてないけどね。
「ん?誰か来たみたいだな。」
こんな時に訪ねてくるとは、誰だろう?
僕以外は人を迎えることはできないので、仕方無くイリディに断りを入れて、玄関に向かった。
尋ねて来たのはトリートさんだった。
そう言えば、この人が最初に訪ねて来たのも、雨の日だったな。
今のところ、トリートさんは僕たちの味方寄りだとは思うが、完全には信用していない。
皆も同じなのか、若干警戒をしている様だ。
「お久しぶりです。急に訪ねて来て、申し訳ございません。」
「どうかしましたか?」
「実は、お願いが有って来ました。」
『今日は、悪意は感じないわね。』
いつの間にか近くに来ていたクレアが、念話でそう伝えてくれた。
『そう?ありがとう。』
クレアが言うのなら、大丈夫だろう。
心が読めるレモンの方が確実ではあるが、彼女はまだ寝ている。
「お願いとは何ですか?」
「実は、エルミナさんのことを、元飼い主とその父親にしたのですが、信じてもらえなくて……。」
「普通、そうでしょうね。」
僕でも『馬があなたのことをこう言ってた』とか言われても、何を言ってるんだコイツは、みたいに思うだろう。
「しかし、息子の方は矢張り心当たりがあるのでしょう、少しそわそわしてました。それで、エルミナさんの言われることが、正しいと確信しましたよ。あ、もちろん、エルミナさんを信じてなかった訳ではないのですよ。」
「大丈夫です。本人の主観が入ってる以上、そのまま鵜呑みにする訳にはいかないですからね。」
「ご理解いただけて、助かります。それで、エルミナさんに直接話をしていただけないかと思いまして。」
「つまり、トリートさんと一緒にエラスに来いということですか?」
「はい。」
「もしかして、トリートさんは、エラスに僕たちを同行させることで、護衛費用を浮かそうと思っているのではないですか?」
「おや。バレてしまいましたか。」
この人、隠すつもりがないみたいだな。
「失礼ですが、僕たちにメリットはない様に思いますが。」
「いえ。父親の弱みを握ればユウマさんにもメリットが有ります。」
「どんなことですか?」
「彼はエラスでも力を持った商人なので、多少の我が儘は通ります。例えば、街に馬車を入れたいとか。ユウマさんも、例えば御者として街に入るなどということができるかも知れませんよ。」
「そんな事が通るんですか?」
エラスは、馬も入れないはずだけど。
「荷物を運ぶのに使うと言えば、断り難いでしょう。魔動車が行ける場所は限られますから。もちろん、普通の商人なら、当然認められません。」
「でも、弱みにつけこんでというのは、どうも……。」
「ならば、対価を支払うという条件なら良いのではないでしょうか?その場合でも、エルミナさんの件は、相手との交渉はやり易くなりますし。」
「なるほど。そうですね。」
たしかに、その程度なら良い気もする。
でも、エルミナは、元の飼い主には会いたくないんじゃないないかな?
「エルミナにも聞いてみますね。エルミナ、ちょっとこっち来てくれる?」
「エルミナさん、こんにちは。」
エルミナが来ると、トリートさんは、彼女に挨拶をした。
「こんにちは。今の話、聞いてました。ユウマさん、私は構いません。」
「本当に良いの?」
「はい。元の飼い主に会いたくないのは確かですが、逃げて来てしまって申し訳ない気持ちも有ります。今なら直接話もできるので、ちゃんと話をしておきたいと思います。」
「そう?無理してない?」
「大丈夫です。」
「ありがとう、エルミナ。トリートさん、この話お受けしようと思いますが、できれば指名依頼の形にしてもらえないでしょうか。」
「指名依頼ですか?」
「はい。ギルドを通して、依頼としてもらう方がやり易いです。もちろん、報酬は設定しないといけないでしょうが、支払ったことにしてもらうというのでも良いです。」
「わかりました。では、ワーテンのギルドに出しておきます。ちなみに、出発は5日後の朝の予定です。その時は、迎えに来させますので。」
5日後なら、急いでいるのはわかるな。僕が断ったら、護衛依頼を出さないといけない訳だし。
「わざわざ、すみません。」
「いえいえ。それでは、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「エルミナ、本当に良かったの?」
トリートさんが帰った後、改めてエルミナに聞いてみた。
さっきはああ言っていたが、実際には僕のために無理をしているんじゃないかという心配があったからだ。
「さっき言ったのは、本当のことです。でも、何より、私でもユウマさんの役に立てそうなので……。」
「エルミナ、ありがとう!」
思わず、エルミナに抱き付いた。
他の者も見てるけど、ここは空気を読んでくれたのだろう、誰も何も言わない。
「あのー。さっきの続きをお願いできなのです?」
と思ったら、そんなことを言ってくるのがいた。
もちろん、イリデイだ。
後ろで、皆が若干呆れた様に見ていた。
特に、クレアは何か言いたげだ。
後でお説教とかありそうだな。
~~~
翌日は、天気も良くなったので、移動は順調だった。
「間もなく、ワーテンだな。」
ジョーンズさんが、そう呟いた。
「そうですね。今日は良いペースで来ましたからね。」
『ユウマ。少し前の繁みに怪しい人たちが潜んでいるみたい。』
ヴァミリオから念話が入った。
上を見ると、高度を下げたヴァミリオが見えた。
前方に目を移すと、右手にまとまった繁みが有った。
『ヴァミリオ、ありがとう。あの、右前に見える繁みかな?』
『そうだよ。』
『何人位いる?』
『そんなに多くないね。1、2……6人かな。どうする?ボクが燃やしとこうか?』
『いやいや、やめておいてね。』
『そうかー。』
ヴァミリオは残念そうだが、そんなことしたら、辺り一面焼け野原になっちゃうからね。
しかし、6人とは少ないな。そんなに盗賊とは遭遇してないから、平均的な人数はわからないけど……。
『ヴァミリオは、ワーテンに行って、盗賊らしき人たちが現れた事をギルドの人に伝えてくれる?』
『わかったー!』
そう言って高度を上げるヴァミリオ。
ギルドなら、ヴァミリオが行っても対応してくれるだろう。
「ジョーンズさん、あそこの繁みに盗賊らしき奴等が待ち伏せしてるみたいです。」
「そうか。どうする?」
こういう時のためにレモンを連れて来たんだからな。
「お任せください。エルミナ、レモンの所にお願い。」
「わかりました。」
レモンが乗っている最後尾の馬車の所に行くと、レモンは相変わらず寝ていた。
「レモン、起きて!」
「うーん。どうしたの?」
「盗賊らしき人たちが現れたんだ。レモンの出番だよ。」
「フフフ。任せて!」
散々待たせたせいか、殺る気満々みたいだ。
「えーと。やり過ぎないでね。あと、ほぼ確実に盗賊だと思うけど、相手が襲って来るまでは待ってね。」
「わかってるわよ。ちなみに、人数は?」
「6人らしいよ。」
「少ないわね……あ、良い事思い付いた!」
絶対、良からぬ事だと思うけどね。
「ちなみに、どうするの?」
「それは、見てのお楽しみで!あそこの川原にに、岩がいくつも転がっているじゃない?あそこに行って休むように言ってもらえる?」
レモンの視線を辿ると、確かにそれらしい所が有った。
道から大分左に逸れることになるな。
「わかった。エルミナ、ジョーンズさんの所に戻って。」
「はい。」
お楽しみって、不安しかないけど……まあ、相手は盗賊だろうし良いかな。
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