異世界でも馬とともに

ひろうま

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第5章 新たな従魔探し

50-セルリアVSレッドドラゴン1

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タルトから帰って来た僕は、セルリアと話しをした。
「イリディのお蔭で、結界も何とかなりそうだけど、レッドドラゴンとの戦闘は明日とかだと急すぎるかな?」
「我はいつでも構わないぞ。奴もすぐにでも戦いたいみたいだったから、いきなりでも断らないだろう。」
イリディというのは、ファー・ドラゴンのことだ。
名前がないと呼び辛いので、虹色の意味を持つイリディセントを元に、そう名付けた。
仮の名前を付けただけで、今のところ従魔にするつもりはなかったのだが、セルリアの提案を受け入れる形で、彼女も従魔になってくれた。
なので、イリディは正式に彼女の名前となっている。
「訓練施設を確保しておいてくれるみたいだから、できれば早くしたいね。」
「まだ時間はあるし、奴に聞きにいくか。」
「そうだね。あ、そういえば、レッドドラゴンは小型化はできないの?」
「多分できると思うぞ。神獣ではないが、我と同格に近い種族だからな。」
「できないと困るよね。施設内であの大きさだと、さすがに厳しいから。」

「レッドドラゴンさん、お邪魔します。」
「何だ、ブルードラゴンと人間か。どうした?」
「戦闘の場所が確保できたけど、明日午後から大丈夫?」
「お、そうか。俺は大丈夫だ。」
「じゃあ、明日午後迎えに来るからね。あ、そうそう。レッドドラゴンさんは、小型化できる?」
「もちろん、できるぞ。やって見せよう。」
そう言うと、高さ2m位に小さくなった。
「凄いね。」
「フフン。そうだろう。」
セルリアよりは大きいけど、訓練施設ではもう少し大きくても問題ないだろうから、十分だな。
「戦闘は建物の中だから、ある程度小さくなった方がやり易いと思うよ。あと、ブレスは禁止でお願いするよ。」
「わかった。」
「随分素直だな。」
セルリアが横から口を出した。
「そ、それは、折角お前と戦えることになったのに、無理を言ってダメになったら困るからだ。」
何か知らないけど、必死に言い訳してるみたいだな。
「レッドドラゴンさんが条件を受け入れてくれて、助かったよ。」
「べ、別にお前の言うことだから従った訳ではないからな。勘違いするなよ。」
僕に向かって、そう言うレッドドラゴン。
また、ツンデレ的発言をしてるが、そういうセリフはセルリアに言う方が良いんじゃないかな。
僕にそっちの趣味はないからね。

~~~
翌日、午前中は乗馬施設へ行った。
今回は、前回に引き続きプーラに乗ることになった。
そして、今日はルナの指導付きだ。
ルナが昨日迄見ていた牝馬も一区切り付いたし、昨日の様子を見る限りルナが近くに居てもプーラが欲情することはないと思われるからだが……。
「プ、プーラです。よ、よろしくお願いします。」
「ルナです。よろしくお願いします。。」
「は、はい。」
プーラは、無茶苦茶緊張していた。
こんなんでは、まともに運動できない気がする。
「私が見ない方が良いかしら?」
「い、いえ、そんなことは!ちゃんとやりますから!」

最初は緊張で硬くなっていたプーラだが、徐々に運動に集中し始め、硬さも取れてきた。
「今の動き良いわよ。」
「は、はい。」
あ、ルナに誉められて、また少し硬くなった。
それでも、運動し始めよりは随分良い感じだ。
もう少し力が抜けて欲しいところであるが、今のところは仕方ないだろう。

「お疲れ様でした。」
プーラから降りて、ルナと一緒に戻ると、ベルタスさんが声を掛けてきた。
「ありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。あの馬があんなに真面目に指導を受けるとは、さすがルナさんですね。」
「いえいえ。彼は根は真面目なので、良くなりますよ。」
ルナが、そう答えた。
「明日も来れたら同じ様にお願いします。すみませんが、私は明日お休みを頂くので……。」
「そうなんですか。わかりました。」
そういえば、これまで僕が来た日に、ベルタスさんがいなかったことはないな。
僕は来れる時に来るということにしているので、気にしなかったが、他のスタッフの休みはどうなってるんだろうか。
「今更ですが、皆さんのお休みはどうなってるんですか?」
「基本交代で取ってます。任意の休みも取れますが、人があまり減らない様にスタッフ同士で調整してもらっています。」
「そうなんですね。」
馬の世話もあるし、人が少ないと大変だからな。
「でも、ここのスタッフは皆馬好きなので、通常の休み以外は休まないですね。あ、好きと言っても、ユウマさんの好きとは意味が違いますよ。」
「その補足、要ります?」

~~~
午後、セルリアにレッドドラゴンを呼びに行ってもらっている間に、ワーテンのギルドを訪ねた。
「コリーさん、居ますか?」
「少々お待ち下さい。」
ワーテンに住んでいるのに、ここに来るのは久しぶりだ。
なぜか、セラネスのギルドの方がよく行っているな。
「お待たせいたしました。どうそ。」
「ありがとうございます。」
ギルドの職員らしき人が、コリーさんの部屋まで案内してくれた。
「コリーさん、お久しぶりです。相変わらず、モフモフですね。」
コリーさんの毛並みを堪能したい衝動に駆られるが、コリーさんは男だしダメだろう。
いや、女の人だったら良いという訳ではないよ?
「さ、触らせませんよ!ところで、また問題を起こしたんですか?」
「あ、そうでした。問題という訳では……いや、問題と言えば問題ですかね?」
「何か凄く嫌な予感がするのですが……。」
「大丈夫です。もうすぐ、セルリアがレッドドラゴンを連れて来ますが、襲撃ではないので安心してください。間違って、迎撃しないようにお願いします。」
「えっと……何を連れて来るって言いました?」
「レッドドラゴンです。」
「えっー!!」
コリーさんは、慌てて人を呼んで、今の話を伝えていた。

「全く、ユウマさんは……ん?」
外が騒がしくなったため、コリーさんは、窓を開けて外を見た。
僕も、一緒に外を見ると、セルリアとレッドドラゴンが飛んで来るのが見えた。
「ユウマさん、せめて、もっと早く連絡して下さいよ。」
「すみません。」
「まあ、反省している様なので今回は許します。今度から、気を付けて下さい。」
「わかりました。ありがとうございます。それで、モフモフの件ですが……。」
「だから、ダメですって!」
コリーさんに、怒られてしまった。
まあ、考えてみれば当然か……。
セルリアといつも一緒なので、感覚がおかしくなっているのだろう。

家に戻って、ステラにタルトまでテレポートしてもらった。
クレアが行きたがったが、イリディも連れていかなければ行けないし、あまり大勢で行くのも迷惑だろうから辛抱してもらった。
「仕方ないわね。帰って来たら、戦闘の様子を聞かせてよ?」
「わかったよ。」

~~~
タルトに着くと、カイトさんが出迎えてくれた。
「ユウマさん、お待ちしてました。そちらが、レッドドラゴンですね。」
「そうです。僕の従魔ではないので言葉は通じないと思いますから、伝えたい事があれば僕に言ってください。」
「では、こう伝えてください。『ようこそ、タルトへ。これから施設に案内します。』」
カイトさんって、律儀な人だな。
僕は、その言葉をレッドドラゴンに伝えた。
「うむ。人間に歓迎されるというのも、悪くないものだな。」
レッドドラゴンは、機嫌が良さそうだ。
カイトさんの言葉は社交辞令だろうが、それをわざわざ言う必要はないよね。

セルリアとレッドドラゴンは、フィールドで向かい合った。
大きさも動き易い大きさに調整したみたいだし、いつでも戦闘開始できる感じだ。
今日は結界に色が付いてないのでわからないが、今正にイリディによって強化されつつあるはずだ。
『主、今回の戦闘も解説しながらやるから、周りの奴等に説明してやってくれ。』
『了解。よろしくね。』
セルリアは随分余裕だな。
まあ、ダメージ受けることはないから当然か。
「カイトさん、戦闘はセルリアが解説してくれるので、僕がそれを皆さんに伝えますね。」
「ありがとうございます!それは、助かります!」
「ただ、僕が付いていけなくなるかも知れませんが……。」
その言葉に、カイトさんは苦笑いをした。頑張らなければ。

少しすると、イリディの側に居たステラがやって来た。
「結界はオーケーらしいわよ。」
「ステラ、ありがとう。カイトさん、始めますね。」
「お願いします。」
『セルリア、準備できたから、始めて良いよ。』
『うむ。では、最初は奴の攻撃を見よう。』
「レッドドラゴンに先に攻撃してもらうみたいです。」
セルリアの言葉を受けて、カイトさんに伝えると、皆がレッドドラゴンに注目した。
ちなみに、ここで観ているの人は10人以上いる。仕事は大丈夫なのだろうか。

突然、辺り一面に火の矢が生まれ、セルリアに降り注いだ。
これは、セルリアのいつものヤツの炎版かな?
『ファイアアローだ。基本的な炎魔法だな。』
セルリアの前に水の壁が現れ、炎の矢が消滅した。
『アロー系の魔法は基本ではあるが、あれだけの本数を扱うのは、単に魔力をつぎ込めば良い訳ではなく、繊細な魔力操作も必要だ。確かに、奴は腕を上げていると見える。ウォーターウォールで防いだのは、奴に敬意を払ったからだ。』
確かに、そのまま受けても問題なかったからな。
あ、カイトさんに伝えないと。
『では、お返しといこう。』
今度は、お馴染みの氷の矢がレッドドラゴンを襲い、レッドドラゴンが炎の壁で防ぐ。
『我の真似をして、ファイアウォールで防いだか。なかなかやるな。』
セルリア楽しそうだな。
しかし、ファイアウォールっていうと、別のものが思い浮かぶな。

その後、徐々に戦闘は激しくなり、動きも大きくなってきた。
正直、既に目で追えなくなり、セルリアの解説がないと何が起こってるのかわからなくなっていた。
カイトさんたちは、さすがに見えているのか、興奮した様子だ。
ところで、この戦闘いつまで続くんだろうか。
『セルリア、これいつまでやるの?』
『ん?奴が満足するまでかな?お、今のはなかなかだったな。近接攻撃と見せ掛けて、躱す先を狙うとは。』
満足するまでって……。
カイトさんに、セルリアの言葉を伝えていたら、またセルリアから念話が来た。
『おお。今のは以前なら少しダメージを食らってたな。ヒートで地面を通して熱を当てて来るとは。直ぐに、冷気で冷やしたが……。しかし、今のはかなり魔力を消費したみたいだぞ。』
カイトさんにそれも伝える。
「確かに、レッドドラゴンの動きが急に鈍くなりましたね。」
「そうなんですか?」
情けないことに、目で追えてない僕には、そう言われてもわからなかった。
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