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第4章 大侵略の前兆
46-神獣の力
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翌日、セラネスのギルドに連れて行ったのは、レモンとヴァミリオ。この二人なら場所は取らなくて済むからだ。
ステラは、申し訳ないが家に帰ってもらった。せめてギルドまで乗せて行きたいと言うので、ありがたく乗せてもらったが……。
「ロートスさん。おはようございます。」
既にギルドに来ていたロートスさんを見付けたので、声を掛けた。
キョロキョロしていたから、もしかしたら僕を探していたのかも知れない。
「あ、ユウマさん、おはようございます。明日はよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あのー、ルナのことでちょっと相談があるんですが。時間、まだ大丈夫ですかね。」
「ギルドマスターの話が始まるまで、まだ少しあるようですよ。それで、相談とは何でしょうか。」
「実は、ルナが妊娠しまして……。」
「そうなんですか。おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「もしかして、明日来ることができないとか?」
「いえ。まだ、妊娠したばかりなので大丈夫です。相談というのは、その事をファンに発表するかどうかということなんです。」
「ああ、なるほど。確かに、ルナさんが妊娠したら残念がるファンもいそうですね。」
「ですよね。」
「でも、いずれ伝えないといけないですし、早い方が良いでしょう。ユウマさんと結婚しているのは皆知っていますし、多くのファンは祝福してくれると思いますよ。」
「そうですか。では、明日発表するとして、誰から言うかですが……。」
「やっぱり、ルナさん本人に言ってもらうのが良いでしょうね。」
「わかりました。帰ったらルナに伝えておきます。ありがとうございました。」
「いえいえ。では、明日お願いします。前回と同じ時間にしてますが、大丈夫ですか?」
「はい。問題ありません。」
「ところで、今日は竜人パーティのお二人が見当たらないのですが……。」
残念そうなロートスさん。
キョロキョロしていたのは、アリスさんとエレンさんを探していたのか。
「昨日家に来てましたから、今日はまだセラネスにはいないと思いますよ。」
「そうなんですか!?」
ロートスさんは、驚きつつも残念そうな顔でそう言った。
少しして、ボルムさんが姿を現した。
集まっていた冒険者たちが静まり、ボルムさんに視線が集まった。
「皆、今日はご足労をお掛けした。既に知っている者もいると思うが、話というのは、異世界からの侵略者についてだ。」
ボルムさんの言葉に、冒険者たちが少しざわついた。
「最近高ランクの冒険者たちが戻って来ているのは皆も知っての通りだと思う。これは、侵略者との戦闘に行っていたものが帰って来ているためだ。」
その後の話は、数日前から侵略者の目撃が途絶えており、過去の記録によると近いうちに大侵略があるだろうという内容だった。
「まだ時間はあるので、冒険者の皆には、各自できることについて考えて欲しい。直接戦闘できる者は限られるが、後方支援や街の住民の安全確保等できることは多くあるはずだ。」
「近いうちというのはいつ頃なのですか?」
冒険者の一人から質問が上がった。確かに、それは皆気になるだろう。
「正確にはわからないが、記録上では4ヶ月から1年の間だ。それより早くなる可能性もあるが、過去記録を見ると、どちらかというと長くなっていく傾向があようるので、可能性は低いだろう。」
皆が解散した後、ボルムさんに時間を取ってもらった。
「どうした?」
「昨日、アリスさんとエレンさんが訪ねて来ました。」
「そうか……。」
「ボルムさんはご存じだったんですか?」
「いや。ただ、少し前に彼女たちと、神獣の力を借りるならユウマに協力してもらわないといけない、と話をしていたからな。今日来ていなかったから、もしかしたら、ユウマを訪ねたのかも知れないとは思っていた。」
「そうなんですね。」
「私は、ユウマは戦いを好まないから、厳しいかも知れないとは言ったのだが……。」
「僕も正直戸惑っています。」
「ただ、神獣の力は絶大だ。」
「……。」
ボルムさんは、僕の両肩に乗っているヴァミリオとレモンを見た。
「そのことは、頭の片隅にでも置いておいてくれ。」
「わかりました。あ、そういえば、ボルムさんが言われた場所に向かったらドラゴンが居ましたよ。」
「ドラゴン?どんな奴だった?」
僕は、ボルムさんに昨日見たドラゴンの様子とセルリアと話した内容を伝えた。
「という訳で、しばらく様子見にしようと思っています。」
「わかった。街を襲ったりしないとは思うが、念のため気を付けておこう。」
「よろしくお願いします。あ、そうだ!ドラゴン同士の戦闘に耐えられる決壊を張ることはできますか?」
「……さては、また良からぬことを考えているな?」
「え?い、いえ。単に、そのドラゴンがセルリアを襲って来た場合を考えてのことです。」
「怪しいが、まあ良いか。タルトの戦闘施設なら、ある程度いけるかも知れないが、長時間は無理だな。」
「そうなんですね。」
やはり、戦闘は避けた方が良いな。
~~~
ギルドを出た後、気まずい雰囲気になってしまった。
ボルムさんのの話について、ヴァミリオとレモンに聞きたい気持ちもあるが、さすがに聞きにくい。
そもそも、彼女たちに聞かせて良かったのだろうか……。
たまりかねたのか、レモンが口を開いた。
「ユウマらしくないわね。まだ先のことを考えても仕方ないでしょう?」
「そうなんだけどね。」
「まずは、今やるべきことの方を考えるべきだと思うけど。」
「うん、そうだね。レモン、ありがとう。」
「あ、レモンだけ得点稼いでずるい!」
「ヴァミリオが黙っているからよ。そもそも、あなたユウマの奥さんなんだから、しっかりしないと。」
「そ、それは……。」
ヴァミリオは言い返そうとして、できなかった様だ。
しかし、得点稼ぐって何?競争でもしてるのか?
午後からヴァミリオとの飛行訓練だが、どうするか迷った。
昨日のドラゴン遭遇すると碌な事にならないだろうが、動きが気になるのは確かだ。
「一応昨日ドラゴンがいた辺りに様子を見に行ってみるか。ヴァミリオ、あっちの方向に飛んでくれる?」
「わかった!」
ボクはステラの様に正確な方向がわからないが、昨日向かった方向に目印になる山が有ったので、それをヴァミリオに指し示した。
昨日ステラと話しをしたと思われる川を過ぎて、しばらく飛んだが、ドラゴンはいないようだった。
しかし、動物や魔物もいない。まだ戻って来ていないのか、この辺りには元々いないのかわからないが。
暇だし、昨日セルリアから聞いた神獣のことについてヴァミリオに聞いてみようかな。
『ところで、ヴァミリオ。』
『何?』
『神獣ってどうやって選ばれたの?』
『選んだのは獣神様だから詳しいことはわからないけど、種族と属性が被らない様に選んだというのは聞いたことがあるよ。』
『そうなんだ。』
炎属性はフェニックスを選んだため、レッドドラゴンは選ばれなかったということかな。
もちろん、ブルードラゴンの方が強いというのも有ったのだろうが……。
矢張り、正解は獣神様に聞くしかなさそうだ。
大分飛んだのでそろそろ引き上げようかと思った途端、ヴァミリオが何かに気づいた様子を見せた。
『ヴァミリオ、どうしたの?』
『何かいるみたいだよ。この大きさから、ユウマが言っていたドラゴンかな?』
『多分そうだろうね。これ以上近付きたくないから、引き返そうか。』
『わかった。』
ドラゴンは、昨日より大分リーソン寄りにいた。
ということは、リーソン方面を目指しているのだろうか。
いや、たまたま今日はこっちにいただけかも知れないし、もう少し様子を見よう。
家に帰って、セルリアにドラゴンがリーソン寄りに移動していたことを伝えた。
「奴の目的がわからんな。」
「ちなみに、そのドラゴンって元々どこに棲んでいたの?」
「我が言えるのは、我の近くにはいなかったということくらいだな。」
どこからどこに向かっているのかもわからないし、目的もわからない。
これは、リスクはあるものの、セルリアと話しをしてもらった方が良いかも知れないな。
明日、ミノンのリクエストがなければセルリアの飛行訓練だから、もう一度ドラゴンの位置を確認した上でどうするか決めよう。
~~~
ルナのキス会があるため、今日も乗馬レッスンは休ませてもらった。
大分サボってるので、ベルタスさんには申し訳なく思う。
明日からは、ちゃんと通って取り返さないといけないな。
ルナの妊娠は、会の初めにルナから発表してもらった。
皆お祝いの言葉を掛けてくれたが、何人かは明らかに残念そうだ。
おそらく、ルナと結婚したがっている人だろう。
もちろん子供がいても結婚はできるだろうけど、心情的に微妙なんだと思う。僕が逆の立場でも、同じ様な感じになるだろう。
まあ、動物や魔物の場合は、そういう感覚は無さそうだけど。
今回は、高いお金を払ってルナに乗る人も少しいた。
主に、先ほど残念がっていた人たちだ。
妊娠していても、人を乗せて歩く位は問題ないだろう。
そもそも、草食動物が妊娠しているから走れないとか言ってたら、自然界で生きていけないだろうから、ルナは過保護にし過ぎという認識はある。
でも、やっぱり初めてできた子供だから、大事にしたいよね。
「ユウマさん、お疲れ様でした。今日はありがとうございました。」
「お疲れ様でした。こちらこそ、ありがとうございました。」
会が無事終わった後、ロートスさんが話し掛けてきた。
「今回は、ルナさんに乗る人も予想以上にいて、かなり収入が有りました。」
「そうですね。ロートスさんは乗られないんですか?」
「乗りたいのはやまやまですが、簡単に出せる金額ではないので……。」
「確かに……。」
ルナが吹っ掛けてるからな。
でも、ロートスさんはお世話になってるし、乗せてあげても良いんじゃないかな?
『ルナ。ロートスさんをサービスで乗せてあげても良い?』
『少しなら良いわよ。』
「ロートスさん、少しだけならルナがサービスで乗せてくれるみたいですよ。」
「本当ですか!?あ、ちょっと待ってください。妻に聞いて来ますので。」
「わかりました。」
まあ、奥さんに黙ってルナに乗せてもらったら、後で責められそうだしね。
少し待っていると、ロートスさんは奥さんのルナさんと一緒に戻って来た。
「ユウマさん、お疲れ様でした。エルミナさんのぬいぐるみ、遅くなっていて申し訳ありません。」
「とんでもないです。作ってもらえるだけでもありがたいですから。ルナのぬいぐるみ作りも大変でしょう。」
今日もルナのぬいぐるみは完売していた。
量産できないのでそこそこの値段なのだが、希望者が多くて購入するための抽選が行われたくらいだ。
「好きでやってるので、大変ではないですよ。売上の一部はちゃんと頂いてますし。」
「それなら良いですが、無理しないでくださいね。」
「ありがとうございます。ところで、ルナさんが主人をサービスで乗せてくれると言われた様ですが……。」
「はい。ロートスさんにはお世話になっていますし、個人的に乗せても良いかと思っています。ねえ、ルナ。」
「ええ。私も問題有りません。」
「申し出はありがたいですが、ファンクラブの会長として、それを受け入れるのは良くないかと思います。」
「そういうものですか。」
ルナさん、律儀な人だな。
ロートスさんを見ると、かなり残念そうだ。
「はい。ですので、お金を貯めて、正規の料金を払って乗せてもらいます。」
「えっ!?」
意外な発言だな。ロートスさんも、驚いている。
「その時は、私もお願いしますね。」
「ルナ、君も乗せてもらうのかい?」
「当然よ。あなただけ良い思いはさせないわ。だから、節約して、二人分払えるまでお金を貯めるわよ。」
「わ、わかった。」
ロートスさん、これから大変になりそうだな。
ステラは、申し訳ないが家に帰ってもらった。せめてギルドまで乗せて行きたいと言うので、ありがたく乗せてもらったが……。
「ロートスさん。おはようございます。」
既にギルドに来ていたロートスさんを見付けたので、声を掛けた。
キョロキョロしていたから、もしかしたら僕を探していたのかも知れない。
「あ、ユウマさん、おはようございます。明日はよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あのー、ルナのことでちょっと相談があるんですが。時間、まだ大丈夫ですかね。」
「ギルドマスターの話が始まるまで、まだ少しあるようですよ。それで、相談とは何でしょうか。」
「実は、ルナが妊娠しまして……。」
「そうなんですか。おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「もしかして、明日来ることができないとか?」
「いえ。まだ、妊娠したばかりなので大丈夫です。相談というのは、その事をファンに発表するかどうかということなんです。」
「ああ、なるほど。確かに、ルナさんが妊娠したら残念がるファンもいそうですね。」
「ですよね。」
「でも、いずれ伝えないといけないですし、早い方が良いでしょう。ユウマさんと結婚しているのは皆知っていますし、多くのファンは祝福してくれると思いますよ。」
「そうですか。では、明日発表するとして、誰から言うかですが……。」
「やっぱり、ルナさん本人に言ってもらうのが良いでしょうね。」
「わかりました。帰ったらルナに伝えておきます。ありがとうございました。」
「いえいえ。では、明日お願いします。前回と同じ時間にしてますが、大丈夫ですか?」
「はい。問題ありません。」
「ところで、今日は竜人パーティのお二人が見当たらないのですが……。」
残念そうなロートスさん。
キョロキョロしていたのは、アリスさんとエレンさんを探していたのか。
「昨日家に来てましたから、今日はまだセラネスにはいないと思いますよ。」
「そうなんですか!?」
ロートスさんは、驚きつつも残念そうな顔でそう言った。
少しして、ボルムさんが姿を現した。
集まっていた冒険者たちが静まり、ボルムさんに視線が集まった。
「皆、今日はご足労をお掛けした。既に知っている者もいると思うが、話というのは、異世界からの侵略者についてだ。」
ボルムさんの言葉に、冒険者たちが少しざわついた。
「最近高ランクの冒険者たちが戻って来ているのは皆も知っての通りだと思う。これは、侵略者との戦闘に行っていたものが帰って来ているためだ。」
その後の話は、数日前から侵略者の目撃が途絶えており、過去の記録によると近いうちに大侵略があるだろうという内容だった。
「まだ時間はあるので、冒険者の皆には、各自できることについて考えて欲しい。直接戦闘できる者は限られるが、後方支援や街の住民の安全確保等できることは多くあるはずだ。」
「近いうちというのはいつ頃なのですか?」
冒険者の一人から質問が上がった。確かに、それは皆気になるだろう。
「正確にはわからないが、記録上では4ヶ月から1年の間だ。それより早くなる可能性もあるが、過去記録を見ると、どちらかというと長くなっていく傾向があようるので、可能性は低いだろう。」
皆が解散した後、ボルムさんに時間を取ってもらった。
「どうした?」
「昨日、アリスさんとエレンさんが訪ねて来ました。」
「そうか……。」
「ボルムさんはご存じだったんですか?」
「いや。ただ、少し前に彼女たちと、神獣の力を借りるならユウマに協力してもらわないといけない、と話をしていたからな。今日来ていなかったから、もしかしたら、ユウマを訪ねたのかも知れないとは思っていた。」
「そうなんですね。」
「私は、ユウマは戦いを好まないから、厳しいかも知れないとは言ったのだが……。」
「僕も正直戸惑っています。」
「ただ、神獣の力は絶大だ。」
「……。」
ボルムさんは、僕の両肩に乗っているヴァミリオとレモンを見た。
「そのことは、頭の片隅にでも置いておいてくれ。」
「わかりました。あ、そういえば、ボルムさんが言われた場所に向かったらドラゴンが居ましたよ。」
「ドラゴン?どんな奴だった?」
僕は、ボルムさんに昨日見たドラゴンの様子とセルリアと話した内容を伝えた。
「という訳で、しばらく様子見にしようと思っています。」
「わかった。街を襲ったりしないとは思うが、念のため気を付けておこう。」
「よろしくお願いします。あ、そうだ!ドラゴン同士の戦闘に耐えられる決壊を張ることはできますか?」
「……さては、また良からぬことを考えているな?」
「え?い、いえ。単に、そのドラゴンがセルリアを襲って来た場合を考えてのことです。」
「怪しいが、まあ良いか。タルトの戦闘施設なら、ある程度いけるかも知れないが、長時間は無理だな。」
「そうなんですね。」
やはり、戦闘は避けた方が良いな。
~~~
ギルドを出た後、気まずい雰囲気になってしまった。
ボルムさんのの話について、ヴァミリオとレモンに聞きたい気持ちもあるが、さすがに聞きにくい。
そもそも、彼女たちに聞かせて良かったのだろうか……。
たまりかねたのか、レモンが口を開いた。
「ユウマらしくないわね。まだ先のことを考えても仕方ないでしょう?」
「そうなんだけどね。」
「まずは、今やるべきことの方を考えるべきだと思うけど。」
「うん、そうだね。レモン、ありがとう。」
「あ、レモンだけ得点稼いでずるい!」
「ヴァミリオが黙っているからよ。そもそも、あなたユウマの奥さんなんだから、しっかりしないと。」
「そ、それは……。」
ヴァミリオは言い返そうとして、できなかった様だ。
しかし、得点稼ぐって何?競争でもしてるのか?
午後からヴァミリオとの飛行訓練だが、どうするか迷った。
昨日のドラゴン遭遇すると碌な事にならないだろうが、動きが気になるのは確かだ。
「一応昨日ドラゴンがいた辺りに様子を見に行ってみるか。ヴァミリオ、あっちの方向に飛んでくれる?」
「わかった!」
ボクはステラの様に正確な方向がわからないが、昨日向かった方向に目印になる山が有ったので、それをヴァミリオに指し示した。
昨日ステラと話しをしたと思われる川を過ぎて、しばらく飛んだが、ドラゴンはいないようだった。
しかし、動物や魔物もいない。まだ戻って来ていないのか、この辺りには元々いないのかわからないが。
暇だし、昨日セルリアから聞いた神獣のことについてヴァミリオに聞いてみようかな。
『ところで、ヴァミリオ。』
『何?』
『神獣ってどうやって選ばれたの?』
『選んだのは獣神様だから詳しいことはわからないけど、種族と属性が被らない様に選んだというのは聞いたことがあるよ。』
『そうなんだ。』
炎属性はフェニックスを選んだため、レッドドラゴンは選ばれなかったということかな。
もちろん、ブルードラゴンの方が強いというのも有ったのだろうが……。
矢張り、正解は獣神様に聞くしかなさそうだ。
大分飛んだのでそろそろ引き上げようかと思った途端、ヴァミリオが何かに気づいた様子を見せた。
『ヴァミリオ、どうしたの?』
『何かいるみたいだよ。この大きさから、ユウマが言っていたドラゴンかな?』
『多分そうだろうね。これ以上近付きたくないから、引き返そうか。』
『わかった。』
ドラゴンは、昨日より大分リーソン寄りにいた。
ということは、リーソン方面を目指しているのだろうか。
いや、たまたま今日はこっちにいただけかも知れないし、もう少し様子を見よう。
家に帰って、セルリアにドラゴンがリーソン寄りに移動していたことを伝えた。
「奴の目的がわからんな。」
「ちなみに、そのドラゴンって元々どこに棲んでいたの?」
「我が言えるのは、我の近くにはいなかったということくらいだな。」
どこからどこに向かっているのかもわからないし、目的もわからない。
これは、リスクはあるものの、セルリアと話しをしてもらった方が良いかも知れないな。
明日、ミノンのリクエストがなければセルリアの飛行訓練だから、もう一度ドラゴンの位置を確認した上でどうするか決めよう。
~~~
ルナのキス会があるため、今日も乗馬レッスンは休ませてもらった。
大分サボってるので、ベルタスさんには申し訳なく思う。
明日からは、ちゃんと通って取り返さないといけないな。
ルナの妊娠は、会の初めにルナから発表してもらった。
皆お祝いの言葉を掛けてくれたが、何人かは明らかに残念そうだ。
おそらく、ルナと結婚したがっている人だろう。
もちろん子供がいても結婚はできるだろうけど、心情的に微妙なんだと思う。僕が逆の立場でも、同じ様な感じになるだろう。
まあ、動物や魔物の場合は、そういう感覚は無さそうだけど。
今回は、高いお金を払ってルナに乗る人も少しいた。
主に、先ほど残念がっていた人たちだ。
妊娠していても、人を乗せて歩く位は問題ないだろう。
そもそも、草食動物が妊娠しているから走れないとか言ってたら、自然界で生きていけないだろうから、ルナは過保護にし過ぎという認識はある。
でも、やっぱり初めてできた子供だから、大事にしたいよね。
「ユウマさん、お疲れ様でした。今日はありがとうございました。」
「お疲れ様でした。こちらこそ、ありがとうございました。」
会が無事終わった後、ロートスさんが話し掛けてきた。
「今回は、ルナさんに乗る人も予想以上にいて、かなり収入が有りました。」
「そうですね。ロートスさんは乗られないんですか?」
「乗りたいのはやまやまですが、簡単に出せる金額ではないので……。」
「確かに……。」
ルナが吹っ掛けてるからな。
でも、ロートスさんはお世話になってるし、乗せてあげても良いんじゃないかな?
『ルナ。ロートスさんをサービスで乗せてあげても良い?』
『少しなら良いわよ。』
「ロートスさん、少しだけならルナがサービスで乗せてくれるみたいですよ。」
「本当ですか!?あ、ちょっと待ってください。妻に聞いて来ますので。」
「わかりました。」
まあ、奥さんに黙ってルナに乗せてもらったら、後で責められそうだしね。
少し待っていると、ロートスさんは奥さんのルナさんと一緒に戻って来た。
「ユウマさん、お疲れ様でした。エルミナさんのぬいぐるみ、遅くなっていて申し訳ありません。」
「とんでもないです。作ってもらえるだけでもありがたいですから。ルナのぬいぐるみ作りも大変でしょう。」
今日もルナのぬいぐるみは完売していた。
量産できないのでそこそこの値段なのだが、希望者が多くて購入するための抽選が行われたくらいだ。
「好きでやってるので、大変ではないですよ。売上の一部はちゃんと頂いてますし。」
「それなら良いですが、無理しないでくださいね。」
「ありがとうございます。ところで、ルナさんが主人をサービスで乗せてくれると言われた様ですが……。」
「はい。ロートスさんにはお世話になっていますし、個人的に乗せても良いかと思っています。ねえ、ルナ。」
「ええ。私も問題有りません。」
「申し出はありがたいですが、ファンクラブの会長として、それを受け入れるのは良くないかと思います。」
「そういうものですか。」
ルナさん、律儀な人だな。
ロートスさんを見ると、かなり残念そうだ。
「はい。ですので、お金を貯めて、正規の料金を払って乗せてもらいます。」
「えっ!?」
意外な発言だな。ロートスさんも、驚いている。
「その時は、私もお願いしますね。」
「ルナ、君も乗せてもらうのかい?」
「当然よ。あなただけ良い思いはさせないわ。だから、節約して、二人分払えるまでお金を貯めるわよ。」
「わ、わかった。」
ロートスさん、これから大変になりそうだな。
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