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第4章 大侵略の前兆
37-竜人パーティー
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一旦家に戻り、ジョーンズさんを訪ねるから、皆に家にいるように言った。
「私も一緒に行って良い?私にも関係ある話をするんでしょう?」
そう主張したのは、ルナだ。
「確かにルナにも来て欲しいところなんだけど、雨に濡れさせたくないからね。申し訳ないけど、家で留守番をお願いするよ。」
「仕方ないわね。早く戻って来てよ。」
「わかったよ。」
ジョーンズさんの所で、トリートさんが来たことを話した。
「なるほど、エルミナの元飼い主の話を出して、反応を見たんだな。」
「エルミナが殺気を放ってましたけどね。」
「それは、トリートも災難だったな。」
苦笑いするジョーンズさん。
「あと、カーブスさんのことですが……。」
「カーブスがどうした?」
「カーブスさんは、トリートさんがジョーンズさんの所に送り込んだスパイでした。」
「何だと!?……そういうことか!」
「ただ、カーブスさんがルナに取った行動は、トリートさんの指示ではなさそうです。」
「カーブスの独断ということか。」
「はい。それで、カーブスさんがルナにプレゼントしようとしたのは、このペンダントらしいのですが……。」
そう言って、パンフレットを見せた。
「私は見てなかったが、これだったのか。」
「これは、何なんですか?」
「これは、通信用の魔道具なんだが……実は盗聴用にも使われるらしい。」
「そうなんですか。」
「盗聴に使う場合は、ずっと通信してる状態なので、長い時間は持たないらしいがな。」
「ということは、カーブスさんは、ルナに持たせて盗聴しようとしたんでしょうか。」
「恐らく、そうだろうな。まあ、それについてもカーブスに話を聞かないといけないがな。」
カーブスさんの扱いは、ジョーンズさんにお任せするしかないな。
「ところで、少々変なことを聞くのですが……。」
「ん?何だ?」
「魔獣の尿に誘引効果がありますよね。」
「そうだな。媚薬の材料にもなるからな。それがどうした?」
「その効果を軽減する手段がないものかと……。」
ジョーンズさんは、一瞬『何を言っているんだ』みたいな顔をしたが、次の瞬間ニヤリとした。
「なるほど。効果が強すぎて楽しめないということだな。」
「は、はい。その通りです……。」
僕は俯きながら、辛うじて返事をした。
ジョーンズさん、さすがに鋭いな。
「そういう魔道具もあるにはある。冒険者が、発情した魔獣に遭遇したとき、誘引をレジストするための物だ。誘引されている時は無防備になるし、正気に戻った時に精神的ダメージ受けるからな……一部の特殊な性癖の者は別だが。」
「はあ。」
特殊な性癖ですみません……というか、最後の一言要らないよね?
「だが、そんな場所に行く必要があるのは希だし、行くとしたら高ランクの冒険者だ。そのため、特注品でかなり高価になっている。しかも、一回レジストが発動すると、魔力を溜めるためにまたお金が掛かる。」
「それは厳しいですね。ちなみに、どれ位の金額ですか?」
「通常の物なら2,000G位だな。」
「高っ!」
「ユウマ君が求めてるのは効果軽減だけなので、劣化版で良いと思う。こちらは、1,000G位だ。」
「それでも結構高いですね。さすがに、簡単に買える金額ではないです。」
「だろう?」
「諦めて、もう少し様子を見ることにします。」
~~
エルミナの発情は収まったようだ。
「ということで、今日はレモンと寝る番だから、よろしくね。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
ん?何で丁寧な言葉……緊張してるのかな?
「ところで、レモンは水に濡れるのは大丈夫?」
「濡れるのは苦手ね。」
「やっぱり……じゃあ、お風呂はなしにするかな。」
「おフロ?」
お風呂は知らないか。
口だけで説明するのは難しいので、レモンを抱えて風呂に行き、実際に見てもらいながら説明した。
「このシャワーっていうの?これは嫌だけど、お湯に浸かるのはやってみたいわ。」
「そう?じゃあ、今夜一緒に入ってみよう。」
レモンがお風呂に興味を示したのは意外だな。
皆の所に戻りながら、レモンに話し掛ける。
「あと、午後からは基本的にセルリアとの飛行訓練だけど、レモンと寝る日は希望が有れば変えるけどどう?」
「どういうこと?」
「わかりにくくてごめん。例えば、ヴァミリオと寝る日はヴァミリオとの飛行訓練で、ステラと寝る日はステラの野外走行訓練にしてる。訓練になっているかは、怪しいけど。」
「要はユウマと二人きりの時間を確保できるということね。」
「まあ、そういう感じだね。」
さすがレモン、察しが良い。
「うーん。一緒にいられる時間が増えるのは魅力的だけど、今は思い付くことがないわね。」
「そう?もし、何かやりたくなったら、言ってね。」
「わかったわ。」
今日は雨なので、セルリアの飛行訓練はやめて、今後について話をすることにした。
「まず、エルミナは明日から乗馬練習に復帰ということで良いかな?もちろん、雨がやんだらだけど。」
「はい。大丈夫です。」
「それから、今日ボルムさんの所で話をしたんだけど、西の神獣が封印されている所に辿り着くのは簡単じゃあないみたい。なので、まずはエラスの北東にある街に行ってみようと思う。」
「我が乗せて行けば良いのか?」
「もちろんセルリアにはお願いしたいけど、ここからだと方向がわからないから、一旦ステラにカラドリウスの山に転移してもらって、そこから海岸に飛んでもらおうと思う。」
「わかったわ。」
「うむ。」
「明日、晴れたらお願いするね。一日で着けなかったら、一時的にテレポートポイントを設定して翌日再スタートするということで……。それともう一つ。タルトのクラルさんに、薬用朱菊を根ごと採って来るように言われているんだけど、まだ行けてない。そろそろ行こうと思うから、ヴァミリオ、次の飛行訓練の時お願いするよ。」
「わかった!」
ベッドでちょっとだけ休もうと思ったのだが、気付いたら、薄暗くなっていた。
最近ゆっくりする時間が無かったから、疲れていたのだろう。
起きようとして、ヴァミリオとレモンが僕の上で眠っているのに気付いた。ちゃっかりしてるな。
「ヴァミリオ、レモン、起きるよ。」
「「うーん……。」」
皆がいる部屋に戻ると、既に明かりが点いていた。多分、ルナが点けたのだろう。
この家の明かりは、魔力を流すとしばらく点いている。点いている時間は、流した魔力量によるようだ。
充電池の魔力版みたいなのが組み込まれているんだろうが、一般的な魔鉱石を使用するより高度な技術が用いられていると思われる。
話が逸れてしまった……。
もう良い時間なので、レモンとお風呂に入ることにした。
「クレア、レモンにクリーン掛けてくれるかな。」
「良いわよ。あら?レモンもお風呂入るんじゃないの?」
「レモンはシャワーは苦手らしいから、直接湯槽に浸かれるようにね。」
「そういうことね。『クリーン』」
ついでに僕にも掛けてもらったので、シャワーは浴びずにレモンと湯槽に浸ろう。
クリーンを掛けたのに、風呂に入る意味があるのか?ま、まあ、お風呂浸かるのは気持ち良いから、意味はあるだろう。
「レモン、僕の上から降りてもらえないかな……。」
レモンは、僕が湯槽に浸かると、僕の膝の上に乗った。
飼い犬とか膝に乗るのを認めるのは、主従関係的に良くないと聞いた気がする。レモンは、飼い犬じゃないけど……。
あと、別の問題が……。
「ん?嫌なの?」
「嫌という訳じゃないんだけど、微妙な場所が当たってて……。」
「……。」
レモンも気付いたらしく、気まずそうに僕の膝から降りながら、僕と同じくらいまで大きくなった。
「レモン、今は読心術使ってないの?」
「使うには集中力が要るのよ。ここぞという時以外、使わないようにしてるわ。」
風呂からあがると、レモンに小さくなってもらい、タオルで拭いた。
小さくなってもらったのは、その方が拭きやすいからだ。
その後、いつもの様にヴァミリオに乾かしてもらった。
「ユウマ、不死鳥に何てことさせてるの!?」
「えっ?ダメだった?」
「これはボクの仕事だから、問題ないよ!」
「……。」
呆れた顔をする、レモン。
「僕より少し小さいくらいになってくれる?」
ベッドに入る前に、レモンに頼んだ。
「まさか、変なことを考えているんじゃないでしょうね。」
「変なことって?」
「いえ、何でもないわ……。」
大きくなる、レモン。
「うん、良いサイズだ。じゃあ、寝ようか。」
ベッドに入ると、レモンを抱いた。
「えっ?!ちょっと!」
モフモフで気持ち良い!
少し涼しくなって来たから、このモフモフ感はちょうど良いな。良く眠れそうだ。
「おやすみ、レモン。」
僕は、そう言うと、レモンの頬に顔を埋めた。
~~~
「レモン、おはよう。」
「……おはよう。」
「レモンのお蔭でぐっすり眠れたよ。ありがとう。」
昨夜は、レモンにおやすみを言ってから、即座に寝てしまったようだ。
「おはよう、ユウマ。」
クレアがやって来た。
「おはよう。また、確認しに来たの?」
「まあ、そんなところね。レモン、残念だったわね。」
「な、何が?」
レモンは哺乳類系魔物のトップみたいなものだから、クレアも最初は遠慮がちだったが、レモンが気にしなくて良いと言ったので、すぐに普通に話すようになっていた。
ん?哺乳類?
「レモン、そういえばレモンもお乳あったよね。」
「な、何を言い出すの!?この変態!」
「アース・ヴィクセンは神獣だけど、子供は母乳飲むの?」
神獣は食事は摂らないはずなのに、子供は違うのか気になったのだ。
「続けるの!?……そうね。子供の内は魔力を外部からあまり取り込めないみたいだから、母乳から魔力を補うみたい。」
「そうなんだ。」
レモンの答えに、僕はすごく納得した。
窓を開けると、雨が降っていた。
今日も乗馬は休みだな……。
竜人パーティの話をしたら、セルリアも興味を持った様で、一緒にギルドに行くことになった。
皆は、なぜセルリアだけと不満そうだったが、午後からの飛行訓練は休みにするからその代わりということで納得してもらった。
せっかくだから、服を着て行ってもらおうかな……濡れるのが気になるけど。
ルナも行きたいと駄々をこねたが、午後からはルナと一緒にいるからと宥めて、何とか留守番してもらえることになった。
ステラも、テレポートしてもらった後、家で待機してもらうことにした。
ギルドはかなり混雑することが予想されたからだ。
セラネスのギルドに行くと、予想通り人が多かった。
いつもの倍以上の人がいる感じで、ざわついていた。
「あ、ユウマさん、おはようございます。」
「ロートスさん、おはようございます。お久しぶりです。」
「お久しぶりです。そちらのドラゴンさんは?」
「セルリアといいます。」
「可愛いですね。今日はルナさんは来られてないのですか?」
セルリアは、服を着て可愛さがさらにアップしているからな。
ちなみに、セルリアの服は濡れても大丈夫のようだ。耐水性もあるのだろうか。
「雨なので留守番してもらってます。」
「そうですか。残念です。」
あからさまにガッカリした感じだ。
本当にルナのこと好きなんだな。
「ロートスさんも竜人パーティに会いに来たんですか?」
「会いになんてそんな大それたことを……見に来ただけです。ちょっと興味あるだけですからね!あ、ルナさんに比べたら、全然興味ないです!」
急にかなり焦った様子になるロートスさん。必死に言い訳している感じだ。
「ロートスさん、もしかして……。」
「そうだ!今月もルナさんのキス会予定してるんで、よろしくお願いします!」
あからさまに話題を変えるとか、『やましいこと有ります』と言ってる様なものだな。
恐らく、ロートスさんは竜人パーティのファンなのだろう。
「よろしくお願いします。竜人パーティには、女性がいるんですか?」
「詳細はまたお知らせします。」
聞いてない?というより、話題を逸らし続けてるんだろう。
竜人パーティについては触れないでおいてあげた方が良いかな?
「わかりました。」
「私も一緒に行って良い?私にも関係ある話をするんでしょう?」
そう主張したのは、ルナだ。
「確かにルナにも来て欲しいところなんだけど、雨に濡れさせたくないからね。申し訳ないけど、家で留守番をお願いするよ。」
「仕方ないわね。早く戻って来てよ。」
「わかったよ。」
ジョーンズさんの所で、トリートさんが来たことを話した。
「なるほど、エルミナの元飼い主の話を出して、反応を見たんだな。」
「エルミナが殺気を放ってましたけどね。」
「それは、トリートも災難だったな。」
苦笑いするジョーンズさん。
「あと、カーブスさんのことですが……。」
「カーブスがどうした?」
「カーブスさんは、トリートさんがジョーンズさんの所に送り込んだスパイでした。」
「何だと!?……そういうことか!」
「ただ、カーブスさんがルナに取った行動は、トリートさんの指示ではなさそうです。」
「カーブスの独断ということか。」
「はい。それで、カーブスさんがルナにプレゼントしようとしたのは、このペンダントらしいのですが……。」
そう言って、パンフレットを見せた。
「私は見てなかったが、これだったのか。」
「これは、何なんですか?」
「これは、通信用の魔道具なんだが……実は盗聴用にも使われるらしい。」
「そうなんですか。」
「盗聴に使う場合は、ずっと通信してる状態なので、長い時間は持たないらしいがな。」
「ということは、カーブスさんは、ルナに持たせて盗聴しようとしたんでしょうか。」
「恐らく、そうだろうな。まあ、それについてもカーブスに話を聞かないといけないがな。」
カーブスさんの扱いは、ジョーンズさんにお任せするしかないな。
「ところで、少々変なことを聞くのですが……。」
「ん?何だ?」
「魔獣の尿に誘引効果がありますよね。」
「そうだな。媚薬の材料にもなるからな。それがどうした?」
「その効果を軽減する手段がないものかと……。」
ジョーンズさんは、一瞬『何を言っているんだ』みたいな顔をしたが、次の瞬間ニヤリとした。
「なるほど。効果が強すぎて楽しめないということだな。」
「は、はい。その通りです……。」
僕は俯きながら、辛うじて返事をした。
ジョーンズさん、さすがに鋭いな。
「そういう魔道具もあるにはある。冒険者が、発情した魔獣に遭遇したとき、誘引をレジストするための物だ。誘引されている時は無防備になるし、正気に戻った時に精神的ダメージ受けるからな……一部の特殊な性癖の者は別だが。」
「はあ。」
特殊な性癖ですみません……というか、最後の一言要らないよね?
「だが、そんな場所に行く必要があるのは希だし、行くとしたら高ランクの冒険者だ。そのため、特注品でかなり高価になっている。しかも、一回レジストが発動すると、魔力を溜めるためにまたお金が掛かる。」
「それは厳しいですね。ちなみに、どれ位の金額ですか?」
「通常の物なら2,000G位だな。」
「高っ!」
「ユウマ君が求めてるのは効果軽減だけなので、劣化版で良いと思う。こちらは、1,000G位だ。」
「それでも結構高いですね。さすがに、簡単に買える金額ではないです。」
「だろう?」
「諦めて、もう少し様子を見ることにします。」
~~
エルミナの発情は収まったようだ。
「ということで、今日はレモンと寝る番だから、よろしくね。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
ん?何で丁寧な言葉……緊張してるのかな?
「ところで、レモンは水に濡れるのは大丈夫?」
「濡れるのは苦手ね。」
「やっぱり……じゃあ、お風呂はなしにするかな。」
「おフロ?」
お風呂は知らないか。
口だけで説明するのは難しいので、レモンを抱えて風呂に行き、実際に見てもらいながら説明した。
「このシャワーっていうの?これは嫌だけど、お湯に浸かるのはやってみたいわ。」
「そう?じゃあ、今夜一緒に入ってみよう。」
レモンがお風呂に興味を示したのは意外だな。
皆の所に戻りながら、レモンに話し掛ける。
「あと、午後からは基本的にセルリアとの飛行訓練だけど、レモンと寝る日は希望が有れば変えるけどどう?」
「どういうこと?」
「わかりにくくてごめん。例えば、ヴァミリオと寝る日はヴァミリオとの飛行訓練で、ステラと寝る日はステラの野外走行訓練にしてる。訓練になっているかは、怪しいけど。」
「要はユウマと二人きりの時間を確保できるということね。」
「まあ、そういう感じだね。」
さすがレモン、察しが良い。
「うーん。一緒にいられる時間が増えるのは魅力的だけど、今は思い付くことがないわね。」
「そう?もし、何かやりたくなったら、言ってね。」
「わかったわ。」
今日は雨なので、セルリアの飛行訓練はやめて、今後について話をすることにした。
「まず、エルミナは明日から乗馬練習に復帰ということで良いかな?もちろん、雨がやんだらだけど。」
「はい。大丈夫です。」
「それから、今日ボルムさんの所で話をしたんだけど、西の神獣が封印されている所に辿り着くのは簡単じゃあないみたい。なので、まずはエラスの北東にある街に行ってみようと思う。」
「我が乗せて行けば良いのか?」
「もちろんセルリアにはお願いしたいけど、ここからだと方向がわからないから、一旦ステラにカラドリウスの山に転移してもらって、そこから海岸に飛んでもらおうと思う。」
「わかったわ。」
「うむ。」
「明日、晴れたらお願いするね。一日で着けなかったら、一時的にテレポートポイントを設定して翌日再スタートするということで……。それともう一つ。タルトのクラルさんに、薬用朱菊を根ごと採って来るように言われているんだけど、まだ行けてない。そろそろ行こうと思うから、ヴァミリオ、次の飛行訓練の時お願いするよ。」
「わかった!」
ベッドでちょっとだけ休もうと思ったのだが、気付いたら、薄暗くなっていた。
最近ゆっくりする時間が無かったから、疲れていたのだろう。
起きようとして、ヴァミリオとレモンが僕の上で眠っているのに気付いた。ちゃっかりしてるな。
「ヴァミリオ、レモン、起きるよ。」
「「うーん……。」」
皆がいる部屋に戻ると、既に明かりが点いていた。多分、ルナが点けたのだろう。
この家の明かりは、魔力を流すとしばらく点いている。点いている時間は、流した魔力量によるようだ。
充電池の魔力版みたいなのが組み込まれているんだろうが、一般的な魔鉱石を使用するより高度な技術が用いられていると思われる。
話が逸れてしまった……。
もう良い時間なので、レモンとお風呂に入ることにした。
「クレア、レモンにクリーン掛けてくれるかな。」
「良いわよ。あら?レモンもお風呂入るんじゃないの?」
「レモンはシャワーは苦手らしいから、直接湯槽に浸かれるようにね。」
「そういうことね。『クリーン』」
ついでに僕にも掛けてもらったので、シャワーは浴びずにレモンと湯槽に浸ろう。
クリーンを掛けたのに、風呂に入る意味があるのか?ま、まあ、お風呂浸かるのは気持ち良いから、意味はあるだろう。
「レモン、僕の上から降りてもらえないかな……。」
レモンは、僕が湯槽に浸かると、僕の膝の上に乗った。
飼い犬とか膝に乗るのを認めるのは、主従関係的に良くないと聞いた気がする。レモンは、飼い犬じゃないけど……。
あと、別の問題が……。
「ん?嫌なの?」
「嫌という訳じゃないんだけど、微妙な場所が当たってて……。」
「……。」
レモンも気付いたらしく、気まずそうに僕の膝から降りながら、僕と同じくらいまで大きくなった。
「レモン、今は読心術使ってないの?」
「使うには集中力が要るのよ。ここぞという時以外、使わないようにしてるわ。」
風呂からあがると、レモンに小さくなってもらい、タオルで拭いた。
小さくなってもらったのは、その方が拭きやすいからだ。
その後、いつもの様にヴァミリオに乾かしてもらった。
「ユウマ、不死鳥に何てことさせてるの!?」
「えっ?ダメだった?」
「これはボクの仕事だから、問題ないよ!」
「……。」
呆れた顔をする、レモン。
「僕より少し小さいくらいになってくれる?」
ベッドに入る前に、レモンに頼んだ。
「まさか、変なことを考えているんじゃないでしょうね。」
「変なことって?」
「いえ、何でもないわ……。」
大きくなる、レモン。
「うん、良いサイズだ。じゃあ、寝ようか。」
ベッドに入ると、レモンを抱いた。
「えっ?!ちょっと!」
モフモフで気持ち良い!
少し涼しくなって来たから、このモフモフ感はちょうど良いな。良く眠れそうだ。
「おやすみ、レモン。」
僕は、そう言うと、レモンの頬に顔を埋めた。
~~~
「レモン、おはよう。」
「……おはよう。」
「レモンのお蔭でぐっすり眠れたよ。ありがとう。」
昨夜は、レモンにおやすみを言ってから、即座に寝てしまったようだ。
「おはよう、ユウマ。」
クレアがやって来た。
「おはよう。また、確認しに来たの?」
「まあ、そんなところね。レモン、残念だったわね。」
「な、何が?」
レモンは哺乳類系魔物のトップみたいなものだから、クレアも最初は遠慮がちだったが、レモンが気にしなくて良いと言ったので、すぐに普通に話すようになっていた。
ん?哺乳類?
「レモン、そういえばレモンもお乳あったよね。」
「な、何を言い出すの!?この変態!」
「アース・ヴィクセンは神獣だけど、子供は母乳飲むの?」
神獣は食事は摂らないはずなのに、子供は違うのか気になったのだ。
「続けるの!?……そうね。子供の内は魔力を外部からあまり取り込めないみたいだから、母乳から魔力を補うみたい。」
「そうなんだ。」
レモンの答えに、僕はすごく納得した。
窓を開けると、雨が降っていた。
今日も乗馬は休みだな……。
竜人パーティの話をしたら、セルリアも興味を持った様で、一緒にギルドに行くことになった。
皆は、なぜセルリアだけと不満そうだったが、午後からの飛行訓練は休みにするからその代わりということで納得してもらった。
せっかくだから、服を着て行ってもらおうかな……濡れるのが気になるけど。
ルナも行きたいと駄々をこねたが、午後からはルナと一緒にいるからと宥めて、何とか留守番してもらえることになった。
ステラも、テレポートしてもらった後、家で待機してもらうことにした。
ギルドはかなり混雑することが予想されたからだ。
セラネスのギルドに行くと、予想通り人が多かった。
いつもの倍以上の人がいる感じで、ざわついていた。
「あ、ユウマさん、おはようございます。」
「ロートスさん、おはようございます。お久しぶりです。」
「お久しぶりです。そちらのドラゴンさんは?」
「セルリアといいます。」
「可愛いですね。今日はルナさんは来られてないのですか?」
セルリアは、服を着て可愛さがさらにアップしているからな。
ちなみに、セルリアの服は濡れても大丈夫のようだ。耐水性もあるのだろうか。
「雨なので留守番してもらってます。」
「そうですか。残念です。」
あからさまにガッカリした感じだ。
本当にルナのこと好きなんだな。
「ロートスさんも竜人パーティに会いに来たんですか?」
「会いになんてそんな大それたことを……見に来ただけです。ちょっと興味あるだけですからね!あ、ルナさんに比べたら、全然興味ないです!」
急にかなり焦った様子になるロートスさん。必死に言い訳している感じだ。
「ロートスさん、もしかして……。」
「そうだ!今月もルナさんのキス会予定してるんで、よろしくお願いします!」
あからさまに話題を変えるとか、『やましいこと有ります』と言ってる様なものだな。
恐らく、ロートスさんは竜人パーティのファンなのだろう。
「よろしくお願いします。竜人パーティには、女性がいるんですか?」
「詳細はまたお知らせします。」
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竜人パーティについては触れないでおいてあげた方が良いかな?
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