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第3章 平和な日常
閑話8~思惑~(トリート視点)
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「あのユウマという男、なんとかこちらに取り込みたいな。」
「そうですね。」
今目の前にいるのは、ジョーンズの所に潜り込ませているカーブスという者だ。
この者によると、ユウマはユニコーンの角も売ろうとしているということだし、しかも、バイコーンはテレポートが使えるらしい。
ドラゴンまで従えているというし、彼を味方に着ければ非常に心強い。逆に絶対的に回したくないとも言える。
「ジョーンズは、うまく彼を取り込んだようだが、奴だけに良い思いをさせるわけにはいかないな。」
「そうですね。しかし、彼を惹き付ける何かが必要でしょうね。ジョーンズは、家を世話したようですが。」
「とすると、女か酒か金か……。」
「彼は、馬と魔獣を嫁にしている変態ですから、人間の女には興味持たないでしょう。かといって、牝馬を……というわけにもいかないでしょうね。ルナとかいう馬は、普通の人間でも見とれるほどなので、あれ以上の馬がいるとは思えません。」
「酒はどうだ?」
「飲んでいるのは見たことないですね。そもそも、食べること自体付き合い程度みたいです。」
「とすると、矢張り金か。」
「家を購入するということで、金は必要ですからね。しかし、ジョーンズがユニコーンの角を売るルートを確立させようとしているので、そうなると金で動かすのも厳しくなりますね。」
「うーん。ジョーンズの奴め……。とりあえず、挨拶だけでもしておいて、機会を伺うしかないか。何か欲しいものとか、わかれば良いのだが……。」
「探ってみますか?」
「無理しない程度にな。」
~~~
カーブスが、情報を持ってやってきた。
ジョーンズの目を盗んで、やっと来ることができたということだった。
カーブスがジョーンズから謹慎を言い渡されたと聞いたときは焦った。
私との繋がりを疑われると不味いと思ったからだ。
あれは私が指示したことではないのも事実なので、私に疑いが来た場合は、彼との繋がりを絶って白を切ることも考えた。
しかし、彼はしばらく大人していたら、何とか復帰できそうだということだった。
まだ怪しまれている可能性はあるが、当面様子見ということにした。
それが功を奏して、面白い情報を入手できた。
情報というのは、ユウマが連れているという黒い馬のことだ。
カーブスによると、以前、その馬をエラスで見たらしい。
ある大商人の息子が自慢して見せてくれたということだった。その時、私も一緒だったという。
確かに、それは覚えている。『なんだ、こいつ』と思いながら、話半分で聞いたものだ。
「違う馬とかではないんだな?」
「間違いありません。全く白が無い青毛も珍しいですが、何よりルナに匹敵する程美しい馬はそうそう居ません。トリート様も、見ればわかると思います。」
「そうか。ところで、お前ルナという馬のことが本当に好きになったのか?」
「え?な、なぜそんなことを?」
「美しい馬として、そのルナを引き合いに出してたからな。それに、前はそんなに馬を気にすることなかっただろう。」
「そ、それは……。」
かなり動揺している。これは、間違い無いな。
「ルナという馬はユウマにしか興味無いだろうから厳しいと思うが、まあ頑張れ。」
「だから違いますって!」
「そうか。まあ、そういうことにしといてやろう。」
「……。」
「それは置いておいて、これは一度ユウマに揺さぶりを掛けてみた方が良いか……。」
下手に動いて、従魔を怒らせるようなことになると不味いが、このチャンスを逃すのも勿体無い。
私は、しばし考えを巡らすのだった。
~~~
ユウマの家に行くに当たり、Bランクの冒険者を護衛として雇った。
もし、ユウマの従魔を怒らせるようなことがあった場合のことを考えてである。
Bランクでは、ユウマの従魔に勝てるとは思えないが、逃げ出す猶予位は与えてくれるのではないかと思ったのだ。
ユウマの所に居た青毛馬は、私も一目見て、エラスで見た馬に間違いないと確信した。
しかし、馬ではなく、魔物だったとは……。
しかも、おそらく上位の魔物だ。殺気でBランク冒険者が動けなくなった程だ。
むしろ、よく気を失わずに耐えたと思う。
私は冒険者ではないが、これまで修羅場をくぐり抜けた経験から、何とか耐えることができたのだと思う。
しかも、側に居るバイコーンの方が更に強いのは私でもわかる。
私は、自分の考えが甘かったことを思い知らされた。
そんな状態でペンダントのことを持ち出されたため、普段ならあり得ない程動揺して、うっかりカーブスの名前を出してしまった。
しかし、彼には申し訳ないが、その代わりに面白い話を聞かせてもらえた。
ユウマがこれを私に教えたのは、私を利用して元の飼い主を牽制するためだと思う。
利用されるのは気に入らないが、上手くいけば大商人の弱みを握ることができるし、ここはユウマの思惑に乗るのが得策だろう。
今度ユウマに反感を買うようなことがあれば、無事では居られないだろうから……。
「そうですね。」
今目の前にいるのは、ジョーンズの所に潜り込ませているカーブスという者だ。
この者によると、ユウマはユニコーンの角も売ろうとしているということだし、しかも、バイコーンはテレポートが使えるらしい。
ドラゴンまで従えているというし、彼を味方に着ければ非常に心強い。逆に絶対的に回したくないとも言える。
「ジョーンズは、うまく彼を取り込んだようだが、奴だけに良い思いをさせるわけにはいかないな。」
「そうですね。しかし、彼を惹き付ける何かが必要でしょうね。ジョーンズは、家を世話したようですが。」
「とすると、女か酒か金か……。」
「彼は、馬と魔獣を嫁にしている変態ですから、人間の女には興味持たないでしょう。かといって、牝馬を……というわけにもいかないでしょうね。ルナとかいう馬は、普通の人間でも見とれるほどなので、あれ以上の馬がいるとは思えません。」
「酒はどうだ?」
「飲んでいるのは見たことないですね。そもそも、食べること自体付き合い程度みたいです。」
「とすると、矢張り金か。」
「家を購入するということで、金は必要ですからね。しかし、ジョーンズがユニコーンの角を売るルートを確立させようとしているので、そうなると金で動かすのも厳しくなりますね。」
「うーん。ジョーンズの奴め……。とりあえず、挨拶だけでもしておいて、機会を伺うしかないか。何か欲しいものとか、わかれば良いのだが……。」
「探ってみますか?」
「無理しない程度にな。」
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カーブスが、情報を持ってやってきた。
ジョーンズの目を盗んで、やっと来ることができたということだった。
カーブスがジョーンズから謹慎を言い渡されたと聞いたときは焦った。
私との繋がりを疑われると不味いと思ったからだ。
あれは私が指示したことではないのも事実なので、私に疑いが来た場合は、彼との繋がりを絶って白を切ることも考えた。
しかし、彼はしばらく大人していたら、何とか復帰できそうだということだった。
まだ怪しまれている可能性はあるが、当面様子見ということにした。
それが功を奏して、面白い情報を入手できた。
情報というのは、ユウマが連れているという黒い馬のことだ。
カーブスによると、以前、その馬をエラスで見たらしい。
ある大商人の息子が自慢して見せてくれたということだった。その時、私も一緒だったという。
確かに、それは覚えている。『なんだ、こいつ』と思いながら、話半分で聞いたものだ。
「違う馬とかではないんだな?」
「間違いありません。全く白が無い青毛も珍しいですが、何よりルナに匹敵する程美しい馬はそうそう居ません。トリート様も、見ればわかると思います。」
「そうか。ところで、お前ルナという馬のことが本当に好きになったのか?」
「え?な、なぜそんなことを?」
「美しい馬として、そのルナを引き合いに出してたからな。それに、前はそんなに馬を気にすることなかっただろう。」
「そ、それは……。」
かなり動揺している。これは、間違い無いな。
「ルナという馬はユウマにしか興味無いだろうから厳しいと思うが、まあ頑張れ。」
「だから違いますって!」
「そうか。まあ、そういうことにしといてやろう。」
「……。」
「それは置いておいて、これは一度ユウマに揺さぶりを掛けてみた方が良いか……。」
下手に動いて、従魔を怒らせるようなことになると不味いが、このチャンスを逃すのも勿体無い。
私は、しばし考えを巡らすのだった。
~~~
ユウマの家に行くに当たり、Bランクの冒険者を護衛として雇った。
もし、ユウマの従魔を怒らせるようなことがあった場合のことを考えてである。
Bランクでは、ユウマの従魔に勝てるとは思えないが、逃げ出す猶予位は与えてくれるのではないかと思ったのだ。
ユウマの所に居た青毛馬は、私も一目見て、エラスで見た馬に間違いないと確信した。
しかし、馬ではなく、魔物だったとは……。
しかも、おそらく上位の魔物だ。殺気でBランク冒険者が動けなくなった程だ。
むしろ、よく気を失わずに耐えたと思う。
私は冒険者ではないが、これまで修羅場をくぐり抜けた経験から、何とか耐えることができたのだと思う。
しかも、側に居るバイコーンの方が更に強いのは私でもわかる。
私は、自分の考えが甘かったことを思い知らされた。
そんな状態でペンダントのことを持ち出されたため、普段ならあり得ない程動揺して、うっかりカーブスの名前を出してしまった。
しかし、彼には申し訳ないが、その代わりに面白い話を聞かせてもらえた。
ユウマがこれを私に教えたのは、私を利用して元の飼い主を牽制するためだと思う。
利用されるのは気に入らないが、上手くいけば大商人の弱みを握ることができるし、ここはユウマの思惑に乗るのが得策だろう。
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