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第3章 平和な日常
32-カラドリウス
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続いて、ヴァミリオとセルリアのステータスを確認してみた。
================
名前:ヴァミリオ
種族:フェニックス
年齢:―
性別:♀
HP :―
MP :―
能力値:▼
スキル:炎魔法、蘇生、飛行、小型化、念話、MP消費防御、翻訳、魅了耐性
加護:獣神の加護
夫:ユウマ
契約主:ユウマ
================
================
名前:セルリア
種族:ブルードラゴン
年齢:1,999歳
性別:♀
HP :―
MP :―
能力値:▼
スキル:水魔法、氷魔法、ブレス(氷)、飛行、小型化、念話、MP消費防御、翻訳、魅了耐性
加護:獣神の加護
夫:ユウマ
契約主:ユウマ
================
予測通りではあるが、二人ともとんでもないな。
ヴァミリオなんか、これまでMP尽きさせるしか倒す手段無かったのに、MP上限なしって……。
セルリアも、MP消費激しいと思われるブレスも使い放題だ。
「しかし、こんなに簡単に結婚ができるとは……僕が考え過ぎてたのが、よくわかったよ。」
僕は改めて思ったことを、側にいたクレアに言った。
「でしょう?そうだ!いっそのこと、エルミナとも結婚しちゃったら?そうすれば、毎回寝る度に葛藤する必要がなくなるわよ。」
「確かに……。でも、エルミナはどうなのかな?」
「それは、本人に聞いてみれば?」
「そうか。エルミナ、僕と結婚してくれるかな?」
「もちろん、良いですよ!」
≪お互いの意思を確認しました。結婚を承認します。≫
うゎ。あっさり、結婚が認められたよ……。
~~~
「ステラ。暗くならないうちに、行こうか。」
「ええ。思い切り走るわ!」
今日は、ステラが僕を乗せて走る日だ。
ステラは、僕を乗せてもかなり速く走れるようになった。
彼女が独りで走るのに比べたらかなり遅いと思うが、普通の馬より断然速い。
速すぎて、話しをする余裕がないのが難点だが……。
しばらく走ると、彼女は走るのをやめて歩き出した。
「ふう。久しぶりに思い切り走ったわ。」
「ステラ、僕を乗せて走るのに大分慣れたね。」
「そうね。でも、できれば、乗せてない時と同じくらい走れるようになりたいの。」
「そう?無理しないでね。」
「うん。ユウマ、ちょっと、降りてアタシの前に来てくれる?」
「ん?わかった。」
言われた通り、降りて彼女の前に立った。
彼女は僕を見つめながら言った。
「ユウマ。アタシね、独りだった時は、こんなに楽しく走れる日が来るとは思わなかったの。ユウマには感謝してるし、愛してるわ。」
「僕もステラを愛してるよ。」
目を閉じた彼女の唇に、僕はそっと自分の唇を合わせた。
「……じゃ、じゃあ、帰りも思い切り走るわよ!」
「うん。お願い。」
少し恥ずかしさを感じながら、また彼女に乗った。
~~~
次の日、やっと乗馬施設に行くことができた。
「おはようございます。ベルタスさんはおられますか?」
「おはようございます、ユウマさん。少々お待ちください。」
受付の人は、そう言うと奥に入って行った。
少しすると、ベルタスさんが現れた。
「ユウマさん、お待ちしてました。」
「遅くなって、すみません。依頼のレッスンは、いつにしますか?」
「明日お願いできますか?」
「私は大丈夫です。ルナは大丈夫?」
「私はいつでも良いわよ。」
「では、明日のこの時間でお願いします。」
「わかりました。あ、そう言えば単位時間って何ですか?ここに来た最初の時にも言われたのですが、会員になったので気にしてませんでした。」
「説明しておらず、申し訳ございません。1レッスンの時間です。鐘の鳴る時間は季節によって変わるので、鐘を基準としない一定時間に設定してあるのです。」
「どうやって計っているんですか?」
「そこにある装置で計ってます。」
示された方を見ると、砂時計みたいな物が有った。こんな物も有るんだな。
「初めて見ました。」
「通常は鐘を基準にするので、あまりこういう時間の管理を必要としませんからね。あと、こういう魔力に依存しない装置は、普段あまり使うことがないでしょうし。」
確かに、これまで見た物は、ほとんど魔力で動く物だった。
「色々教えてもらって、ありがとうございました。では、明日よろしくお願いします。今日は、いつものようにルナとエルミナを運動させます。」
「はい。よろしくお願いします。」
「久しぶりなので、私は自分でウォーミングアップしとくわ。あなたは、エルミナにを軽く運動させておいて。後で私が見るから。」
「わかった。」
最近、ここではルナが主導権を握っていて、僕は指示に従う感じになっている。
「エルミナ、乗せてもらうね。」
「はい。よろしくお願いします。」
いつものように、毛布だけ着けて、エルミナに乗った。
速歩と駈歩を少しやった後、休みに入ったら、周りの様子がおかしいことに気付いた。
皆運動を止めて、人も馬も同じ方を見ている。
僕もそちらを見ると、ルナが運動していた。
どうやら、ウォーミングアップを終えて、強めの運動を始めたらしい。
ルナが運動するのを客観的に見ることはないから新鮮だ。
それにしても、美しい。思わず見とれてしまった。
『エルミナ、ごめんね。ついつい、ルナを見てしまってた。』
『ルナさんの動きは美しいから、仕方ないですよ。私もあんなに運動できるようになりたいです。』
『じゃあ、一緒に頑張ろうね。』
『はい!』
ルナが戻ってきたので、エルミナのレッスンをしてもらった。
エルミナの気合いが入っていたので、少し長めになってしまった。
運動を終わってエルミナの手入れを始めたのだが……。
「エルミナ、どうしたの?」
「何かぼーっとする感じで……。」
どうも様子が変なので聞いてみると、そう返ってきた。熱でも有るのかな?
そう言えば、こっちに来て、体温計は人のも馬のも見たことがない。
「どうしたの?」
ルナが、気になってようで、こちらにやって来た。
「エルミナの様子が変なんだ。久しぶりなのに、長めに運動したせいかも知れない。」
「ちょっとやり過ぎたからかしら?早く帰って、休んだ方が良いわね。」
「何かあったの?」
続いて、ステラもやって来た。
「エルミナの調子が悪いみたい。ステラ、悪いけど連れて帰ってもらえるかな。」
「わかったわ。エルミナ、テレポートポイントまで歩ける?」
「はい。歩けます。」
「僕も付いて行った方が良いかな。」
「大丈夫よ。エルミナを休ませたら、クレアに診てもらうように頼んで、また戻って来るわ。」
「そう?頼むよ。」
ステラとエルミナを見送っていたら、ベルタスさんが声を掛けて来た。
「どうしたのですか?」
「エルミナの調子が悪いみたいなので、先に家に帰しました。」
「心配ですね。」
「はい。でも、家に帰ればユニコーンもいるし、大丈夫でしょう。」
「なるほど。それは心強いですね。」
せっかくステラが気を遣ってくれたので、ルナに乗って運動したが、エルミナのことが心配で集中できなかった。
ルナも同じような感じだったし、早めに切り上げてステラを待った。
「あら?もう終わったの?」
「うん。やっぱり、エルミナが心配でね。」
「そう。取り敢えず、戻りましょうか。」
~~~
「クレア、どう?」
家に戻ると、さっそくクレアにエルミナの様子を聞いてみた。
「一先ず、キュアを掛けて、今休ませてるわ。落ち着いた様だけど、念のためね。」
「ありがとう。」
「ううん。でも、そんなに運動したの?」
「そこまでではないけど、久しぶりだから堪えたのかも知れない。」
「そう。もしかしたら……。」
「ん?どうかした?」
「いえ……。取り敢えず、明日まで様子を見ましょう。」
午後からのヴァミリオの飛行練習も、休みにしてもらおうかと思ったが、今日を逃すと当分機会がないので、前言ってたカラドリウスを所へ行ってもらうことにした。
「ところで、その場所までどれくらい掛かるの?」
「ここからだと、暗くなる前には着けると思うけど。」
「えっ?それじゃ帰れないよね。方角からすると、セラネスの方が近そうだけど、それでも往復は厳しいよね。」
「ユウマ、私のスキル使えるのよね。」
困っていると、ステラがそう声を掛けてきた。
「ん?ステラのスキル?そうか!テレポートで戻れば良いのか……って、ちょっと待って。テレポートポイント設定するだけで、帰ってこれないんじゃない?」
「ユウマが設定したポイントに、私がテレポートすれば良いのよ。」
「自分で設定したしたポイントでなくても良いの?」
「そういう制限はないわ。場所が大体把握できれば検出できるから、ポイント設定したら念話で連絡して。」
なんて高性能な……。遠隔念話も、凄く便利だし。
「悪いけど、頼むよ。先ず、セラネスにテレポートしてもらえる?」
「わかったわ。」
ステラに、セラネスまで僕とヴァミリオを送ってもらい、そこからヴァミリオに乗って目的地に向かった。
「ちょっと急ぐね。」
「わかった。お願いね。」
前の訓練よりかなり速く飛んでいるが、ヴァミリオからすればゆっくりなのだろう。
速すぎて話もできないのが辛いな。
「見えて来たよ!」
「ん?ごめん、寝てた。」
いつの間にか寝ていた様だ。
ヴァミリオは飛ぶ速度を徐々に落としている。
「構わないけど、よく落ちなかったね。」
「自分でも、そう思うよ。」
落ちてたらと思うとゾッとする。
「落ちても、ボクが何とかするけどね。」
「ありがとう。その時は、お願いね。」
~~~
「あれ?ここのはずなんだけど……。」
「どうしたの?」
「ここに結界が有るみたいで、中に入れないんだ。」
「取り敢えず、下に降りてみない?」
「そうだね。あそこが登り口かな?」
ヴァミリオが下に降りていくと、鳥居が見えて来た。
ん?鳥居?
気になるけど、今は置いておこう
あと、はっきりとではないが、人が2人いるように見えた。
地面に近付くと、その人たちが警戒してるのがわかった。
『ヴァミリオ、僕を降ろしても小型化はしないでね。』
『わかった。』
地面に着き、僕がヴァミリオから降りると、その人たちが寄って来た。が、ある程度距離を取っている。
あ、よく見たら、着ている服が和服っぽい。
鳥居と言い、過去日本から転移した者が広めたとしか思えない。
「何者だ!」
「僕はユウマという冒険者です。カラドリウスに会いに来たのですが。」
「巫女様に許可を貰ったのか?」
「巫女様?」
「巫女様に許可を得ていない者は、ここを通す訳にはいかない。出直して来い。」
「そうなんですか!?」
何それ、聞いてないよ。僕は、思わずヴァミリオを見た。
『ボクも、そんな話聞いたことないけど……。』
『そうなんだ。でも、困ったね。』
『あ、今、カラドリウスから念話入ったよ!コッチに向かってるって!』
直ぐに、金色の鳥が向かってくるのが見えた。すごいスピードだ。
『あれがそう?』
『そうだよ!』
「不死鳥様!」
「「えっ?不死鳥!?」」
カラドリウスが発した言葉に、2人が驚いたようだ。
「カラドリウス、久しぶり!」
「お久しぶりです。どうしたのです?」
「カラドリウスに会いに来たんだけど、ここを通してもらえなくて……。」
「なんと!」
カラドリウスが、僕らを止めていた人たちを睨んだ。
皆、固まってる。
ちょっと、カラドリウスのステータスを見せてもらおう。
================
【カラドリウス】
鳥神の分身であるが、独立した意思を持つ。
具現化しているものの、物質的肉体は持たず、能力値は無い。
獣神やその配下の神と下界とを繋ぐ役目を担っているため、翻訳および念話に相当する擬似スキルを持つ。
================
すみません。ちょっと言っていることわからないです……。
取り敢えず、魔物ではないらしい。ステータスが見えないのは、そのためだろう。
「不死鳥様、失礼しました。門番のお前たちも謝れ!」
「「申し訳ありませんでした!」」
「こちらこそ、突然お邪魔してすみません。」
「あなたは?」
カラドリウスが尋ねて来た。
「これは、ユウマ!ボクの夫だよ!」
一瞬反射的に否定しかけたけど、結婚したから、夫で合っているんだった。
「初めまして。ユウマといいます。」
「カラドリウスです。もしかして、あなたが不死鳥様の封印を解いたのですか?」
「そうみたいです。」
「エヘン!凄いでしょう!ブルードラゴンの封印も解いたんだよ!」
なぜか、ヴァミリオが威張っている。
そういえば、相手は神の分身なんだから、ヴァミリオより上の立場だと思うんだけど、なぜか相手の方がヴァミリオを敬っているな。
「神竜の封印も?なるほど。実は、鳥神様から、不死鳥様と神竜の封印を解いた者が来ると聞いていました。」
「そうなんですか?」
「それで、鳥神様を通じて獣神様からの伝言を預かっています。」
「えっ?」
「『四体の神獣について封印を解いた時、すべてを語る。』ということです。」
「……。」
封印を解くヒントは教えてくれないのね。
「伝言は以上です。あ、そうだ。北の神獣が封印されている場所が、この上から見えます。見てみます?」
「是非、お願いします。」
「では、付いて来てください。門番、この人は私の客なので、通してくれ。」
「「承知しました!」」
門番さん、お勤めご苦労様です。
================
名前:ヴァミリオ
種族:フェニックス
年齢:―
性別:♀
HP :―
MP :―
能力値:▼
スキル:炎魔法、蘇生、飛行、小型化、念話、MP消費防御、翻訳、魅了耐性
加護:獣神の加護
夫:ユウマ
契約主:ユウマ
================
================
名前:セルリア
種族:ブルードラゴン
年齢:1,999歳
性別:♀
HP :―
MP :―
能力値:▼
スキル:水魔法、氷魔法、ブレス(氷)、飛行、小型化、念話、MP消費防御、翻訳、魅了耐性
加護:獣神の加護
夫:ユウマ
契約主:ユウマ
================
予測通りではあるが、二人ともとんでもないな。
ヴァミリオなんか、これまでMP尽きさせるしか倒す手段無かったのに、MP上限なしって……。
セルリアも、MP消費激しいと思われるブレスも使い放題だ。
「しかし、こんなに簡単に結婚ができるとは……僕が考え過ぎてたのが、よくわかったよ。」
僕は改めて思ったことを、側にいたクレアに言った。
「でしょう?そうだ!いっそのこと、エルミナとも結婚しちゃったら?そうすれば、毎回寝る度に葛藤する必要がなくなるわよ。」
「確かに……。でも、エルミナはどうなのかな?」
「それは、本人に聞いてみれば?」
「そうか。エルミナ、僕と結婚してくれるかな?」
「もちろん、良いですよ!」
≪お互いの意思を確認しました。結婚を承認します。≫
うゎ。あっさり、結婚が認められたよ……。
~~~
「ステラ。暗くならないうちに、行こうか。」
「ええ。思い切り走るわ!」
今日は、ステラが僕を乗せて走る日だ。
ステラは、僕を乗せてもかなり速く走れるようになった。
彼女が独りで走るのに比べたらかなり遅いと思うが、普通の馬より断然速い。
速すぎて、話しをする余裕がないのが難点だが……。
しばらく走ると、彼女は走るのをやめて歩き出した。
「ふう。久しぶりに思い切り走ったわ。」
「ステラ、僕を乗せて走るのに大分慣れたね。」
「そうね。でも、できれば、乗せてない時と同じくらい走れるようになりたいの。」
「そう?無理しないでね。」
「うん。ユウマ、ちょっと、降りてアタシの前に来てくれる?」
「ん?わかった。」
言われた通り、降りて彼女の前に立った。
彼女は僕を見つめながら言った。
「ユウマ。アタシね、独りだった時は、こんなに楽しく走れる日が来るとは思わなかったの。ユウマには感謝してるし、愛してるわ。」
「僕もステラを愛してるよ。」
目を閉じた彼女の唇に、僕はそっと自分の唇を合わせた。
「……じゃ、じゃあ、帰りも思い切り走るわよ!」
「うん。お願い。」
少し恥ずかしさを感じながら、また彼女に乗った。
~~~
次の日、やっと乗馬施設に行くことができた。
「おはようございます。ベルタスさんはおられますか?」
「おはようございます、ユウマさん。少々お待ちください。」
受付の人は、そう言うと奥に入って行った。
少しすると、ベルタスさんが現れた。
「ユウマさん、お待ちしてました。」
「遅くなって、すみません。依頼のレッスンは、いつにしますか?」
「明日お願いできますか?」
「私は大丈夫です。ルナは大丈夫?」
「私はいつでも良いわよ。」
「では、明日のこの時間でお願いします。」
「わかりました。あ、そう言えば単位時間って何ですか?ここに来た最初の時にも言われたのですが、会員になったので気にしてませんでした。」
「説明しておらず、申し訳ございません。1レッスンの時間です。鐘の鳴る時間は季節によって変わるので、鐘を基準としない一定時間に設定してあるのです。」
「どうやって計っているんですか?」
「そこにある装置で計ってます。」
示された方を見ると、砂時計みたいな物が有った。こんな物も有るんだな。
「初めて見ました。」
「通常は鐘を基準にするので、あまりこういう時間の管理を必要としませんからね。あと、こういう魔力に依存しない装置は、普段あまり使うことがないでしょうし。」
確かに、これまで見た物は、ほとんど魔力で動く物だった。
「色々教えてもらって、ありがとうございました。では、明日よろしくお願いします。今日は、いつものようにルナとエルミナを運動させます。」
「はい。よろしくお願いします。」
「久しぶりなので、私は自分でウォーミングアップしとくわ。あなたは、エルミナにを軽く運動させておいて。後で私が見るから。」
「わかった。」
最近、ここではルナが主導権を握っていて、僕は指示に従う感じになっている。
「エルミナ、乗せてもらうね。」
「はい。よろしくお願いします。」
いつものように、毛布だけ着けて、エルミナに乗った。
速歩と駈歩を少しやった後、休みに入ったら、周りの様子がおかしいことに気付いた。
皆運動を止めて、人も馬も同じ方を見ている。
僕もそちらを見ると、ルナが運動していた。
どうやら、ウォーミングアップを終えて、強めの運動を始めたらしい。
ルナが運動するのを客観的に見ることはないから新鮮だ。
それにしても、美しい。思わず見とれてしまった。
『エルミナ、ごめんね。ついつい、ルナを見てしまってた。』
『ルナさんの動きは美しいから、仕方ないですよ。私もあんなに運動できるようになりたいです。』
『じゃあ、一緒に頑張ろうね。』
『はい!』
ルナが戻ってきたので、エルミナのレッスンをしてもらった。
エルミナの気合いが入っていたので、少し長めになってしまった。
運動を終わってエルミナの手入れを始めたのだが……。
「エルミナ、どうしたの?」
「何かぼーっとする感じで……。」
どうも様子が変なので聞いてみると、そう返ってきた。熱でも有るのかな?
そう言えば、こっちに来て、体温計は人のも馬のも見たことがない。
「どうしたの?」
ルナが、気になってようで、こちらにやって来た。
「エルミナの様子が変なんだ。久しぶりなのに、長めに運動したせいかも知れない。」
「ちょっとやり過ぎたからかしら?早く帰って、休んだ方が良いわね。」
「何かあったの?」
続いて、ステラもやって来た。
「エルミナの調子が悪いみたい。ステラ、悪いけど連れて帰ってもらえるかな。」
「わかったわ。エルミナ、テレポートポイントまで歩ける?」
「はい。歩けます。」
「僕も付いて行った方が良いかな。」
「大丈夫よ。エルミナを休ませたら、クレアに診てもらうように頼んで、また戻って来るわ。」
「そう?頼むよ。」
ステラとエルミナを見送っていたら、ベルタスさんが声を掛けて来た。
「どうしたのですか?」
「エルミナの調子が悪いみたいなので、先に家に帰しました。」
「心配ですね。」
「はい。でも、家に帰ればユニコーンもいるし、大丈夫でしょう。」
「なるほど。それは心強いですね。」
せっかくステラが気を遣ってくれたので、ルナに乗って運動したが、エルミナのことが心配で集中できなかった。
ルナも同じような感じだったし、早めに切り上げてステラを待った。
「あら?もう終わったの?」
「うん。やっぱり、エルミナが心配でね。」
「そう。取り敢えず、戻りましょうか。」
~~~
「クレア、どう?」
家に戻ると、さっそくクレアにエルミナの様子を聞いてみた。
「一先ず、キュアを掛けて、今休ませてるわ。落ち着いた様だけど、念のためね。」
「ありがとう。」
「ううん。でも、そんなに運動したの?」
「そこまでではないけど、久しぶりだから堪えたのかも知れない。」
「そう。もしかしたら……。」
「ん?どうかした?」
「いえ……。取り敢えず、明日まで様子を見ましょう。」
午後からのヴァミリオの飛行練習も、休みにしてもらおうかと思ったが、今日を逃すと当分機会がないので、前言ってたカラドリウスを所へ行ってもらうことにした。
「ところで、その場所までどれくらい掛かるの?」
「ここからだと、暗くなる前には着けると思うけど。」
「えっ?それじゃ帰れないよね。方角からすると、セラネスの方が近そうだけど、それでも往復は厳しいよね。」
「ユウマ、私のスキル使えるのよね。」
困っていると、ステラがそう声を掛けてきた。
「ん?ステラのスキル?そうか!テレポートで戻れば良いのか……って、ちょっと待って。テレポートポイント設定するだけで、帰ってこれないんじゃない?」
「ユウマが設定したポイントに、私がテレポートすれば良いのよ。」
「自分で設定したしたポイントでなくても良いの?」
「そういう制限はないわ。場所が大体把握できれば検出できるから、ポイント設定したら念話で連絡して。」
なんて高性能な……。遠隔念話も、凄く便利だし。
「悪いけど、頼むよ。先ず、セラネスにテレポートしてもらえる?」
「わかったわ。」
ステラに、セラネスまで僕とヴァミリオを送ってもらい、そこからヴァミリオに乗って目的地に向かった。
「ちょっと急ぐね。」
「わかった。お願いね。」
前の訓練よりかなり速く飛んでいるが、ヴァミリオからすればゆっくりなのだろう。
速すぎて話もできないのが辛いな。
「見えて来たよ!」
「ん?ごめん、寝てた。」
いつの間にか寝ていた様だ。
ヴァミリオは飛ぶ速度を徐々に落としている。
「構わないけど、よく落ちなかったね。」
「自分でも、そう思うよ。」
落ちてたらと思うとゾッとする。
「落ちても、ボクが何とかするけどね。」
「ありがとう。その時は、お願いね。」
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「あれ?ここのはずなんだけど……。」
「どうしたの?」
「ここに結界が有るみたいで、中に入れないんだ。」
「取り敢えず、下に降りてみない?」
「そうだね。あそこが登り口かな?」
ヴァミリオが下に降りていくと、鳥居が見えて来た。
ん?鳥居?
気になるけど、今は置いておこう
あと、はっきりとではないが、人が2人いるように見えた。
地面に近付くと、その人たちが警戒してるのがわかった。
『ヴァミリオ、僕を降ろしても小型化はしないでね。』
『わかった。』
地面に着き、僕がヴァミリオから降りると、その人たちが寄って来た。が、ある程度距離を取っている。
あ、よく見たら、着ている服が和服っぽい。
鳥居と言い、過去日本から転移した者が広めたとしか思えない。
「何者だ!」
「僕はユウマという冒険者です。カラドリウスに会いに来たのですが。」
「巫女様に許可を貰ったのか?」
「巫女様?」
「巫女様に許可を得ていない者は、ここを通す訳にはいかない。出直して来い。」
「そうなんですか!?」
何それ、聞いてないよ。僕は、思わずヴァミリオを見た。
『ボクも、そんな話聞いたことないけど……。』
『そうなんだ。でも、困ったね。』
『あ、今、カラドリウスから念話入ったよ!コッチに向かってるって!』
直ぐに、金色の鳥が向かってくるのが見えた。すごいスピードだ。
『あれがそう?』
『そうだよ!』
「不死鳥様!」
「「えっ?不死鳥!?」」
カラドリウスが発した言葉に、2人が驚いたようだ。
「カラドリウス、久しぶり!」
「お久しぶりです。どうしたのです?」
「カラドリウスに会いに来たんだけど、ここを通してもらえなくて……。」
「なんと!」
カラドリウスが、僕らを止めていた人たちを睨んだ。
皆、固まってる。
ちょっと、カラドリウスのステータスを見せてもらおう。
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【カラドリウス】
鳥神の分身であるが、独立した意思を持つ。
具現化しているものの、物質的肉体は持たず、能力値は無い。
獣神やその配下の神と下界とを繋ぐ役目を担っているため、翻訳および念話に相当する擬似スキルを持つ。
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すみません。ちょっと言っていることわからないです……。
取り敢えず、魔物ではないらしい。ステータスが見えないのは、そのためだろう。
「不死鳥様、失礼しました。門番のお前たちも謝れ!」
「「申し訳ありませんでした!」」
「こちらこそ、突然お邪魔してすみません。」
「あなたは?」
カラドリウスが尋ねて来た。
「これは、ユウマ!ボクの夫だよ!」
一瞬反射的に否定しかけたけど、結婚したから、夫で合っているんだった。
「初めまして。ユウマといいます。」
「カラドリウスです。もしかして、あなたが不死鳥様の封印を解いたのですか?」
「そうみたいです。」
「エヘン!凄いでしょう!ブルードラゴンの封印も解いたんだよ!」
なぜか、ヴァミリオが威張っている。
そういえば、相手は神の分身なんだから、ヴァミリオより上の立場だと思うんだけど、なぜか相手の方がヴァミリオを敬っているな。
「神竜の封印も?なるほど。実は、鳥神様から、不死鳥様と神竜の封印を解いた者が来ると聞いていました。」
「そうなんですか?」
「それで、鳥神様を通じて獣神様からの伝言を預かっています。」
「えっ?」
「『四体の神獣について封印を解いた時、すべてを語る。』ということです。」
「……。」
封印を解くヒントは教えてくれないのね。
「伝言は以上です。あ、そうだ。北の神獣が封印されている場所が、この上から見えます。見てみます?」
「是非、お願いします。」
「では、付いて来てください。門番、この人は私の客なので、通してくれ。」
「「承知しました!」」
門番さん、お勤めご苦労様です。
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何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
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