異世界でも馬とともに

ひろうま

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第3章 平和な日常

29-ヴァミリオの活躍

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午後、ヴァミリオに元の大きさに戻ってもらい、乗せてもらった。
首に跨がるのが、一番安定するが、ヴァミリオは大丈夫だろうか。
「ヴァミリオ、邪魔じゃない?」
「そこなら大丈夫と思うよ。試しに少し飛んでみるね。」
そう言うと、ヴァミリオは大きく円を描くように飛んだ。
鳥に乗って飛ぶとか昔憧れてたから、感動した。少し怖いが、慣れるしか無いか。
「大丈夫そうだね。様子を見ながら、少しずつ速度を上げるね。」
「うん。それでお願い。セルリア、案内お願いね。」
「うむ。」
セルリアが飛び立ち、ヴァミリオが続いて、セルリアの斜め後ろに付いた。
「ユウマ、もう少し早くても大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。」
「じゃあ、速度上げるね。ドラ……セルリアちゃん、お願い。」
「あ、ああ。」
セルリアが名前を呼ばれて戸惑っているみたいだ。
「ヴァミリオ、これくらいで良いか?」
「バッチリ!」
セルリアも初めてヴァミリオのことを名前で呼んだな。良いことだ。

その後も少しずつ速度を上げながら進み、目的地に着いた。
「ここ?」
「この山の中だよ。」
「では、我は先に帰るが大丈夫か?」
「大丈夫だよ!」
「わかった。」
セルリアは飛び去って行った。
「ヴァミリオ、お願いね。」
「了解!」
ヴァミリオは山の中に降りていった。
「ヴァミリオ、なんでここはこんなに暑いかわかる?」
「ここの地面の下に熱源が有るみたいだけど、それが何なのかまではわからない。」
「そうか……。」
クラルさんは知っているのかな。
地面に降りて中を見回すと、花が群れて咲いている場所が有った。
「あれかな?」

================
種族:薬用朱菊
================

================
【薬用朱菊】
魔力が豊富な高温の場所に群生する。
花は上級ポーションの原料となる。
なお、花が開ききった後の方が、薬用成分が多く抽出できる。
================

間違いないようだ。
僕はその場所に近付いて行ったが。
「熱っ!」
ある程度近付くと急に地面が熱くなった。靴を履いているのに、かなり熱い。
もしかすると、あの花は地面が熱い所に群れているのかも。
そう思った僕は、別の群れている場所に近付いてみた。
「やっぱり、そうだな。」
「何が?」
「この花は、地面が熱い所に咲いているみたいなんだ。だから、近付けなくて。」
「じゃあ、ボクが採ってきてあげるよ。」
「いいの?」
「もちろん!」
「助かるよ。花が大きく開いているのが10本欲しいんだけど。」
「任せて!」
ヴァミリオは、花を摘んでは持って来てを繰り返した。炎属性だけあって、熱さには強いようだ。
見る間に10本集まった。
ちなみに、薬用朱菊の花はヴァミリオとほぼ同じ色をしている。
「ヴァミリオ、ありがとう。」
「えへん!」
ヴァミリオが褒めて欲しそうに頭を近付けて来たから、撫でてやると、嬉しそうにしている。
こういう所は可愛いな。子供っぽいけど……。
「じゃあ、このまま、タルトのギルドに行こう。そんなに遠くないから。」
「わかった!」

~~~
ヴァミリオにタルトまで飛んでもらい、街の入り口に降りた。
すると、門の中からクラルさんが走って来るのが見えた。
「あ、またやったかな?」
「はぁはぁ。、ユウマさんでしたか。」
「度々すみません。今日はセルリアでないから大丈夫かと思ったんですが。」
「そんな大きな鳥も普通いないですからね!」
「申し訳ありません。こちらは……。」
「ヴァミリオ、ユウマの嫁だよ!」
クラルさんが、驚いた顔をしている。
「すみません、嫁は嘘です。」
「そこですか!?兎に角、ギルドに行きましょう。」

ギルドに向かうのに目立たないように、ヴァミリオには小さくなって肩にとまってもらった。
「それで、ご用件は何でしょう。」
「例の花を採って来たので、持ってきました。」
「えっ?もうですか?」
「あそこは暑くてセルリアは近付けなかったんですが、このヴァミリオが行ってくれました。」
「そうなんですか。その……ヴァミリオさんは、もしかしてフェニックスですか?」
「よくわかりましたね。」
「大きさを変えられるのは、神獣かそれに準ずる魔物くらいですからね。なので、あまり人前で大きさを変えない方が良いですよ。」
「そうなんですか。ご忠告ありがとうございます。ところで、あの場所はなぜあんなに暑いんですか?ヴァミリオは、地面の下に熱源が有ると言ってましたが。」
「あそこは、昔火山だったらしいです。今は活動してないですが、その名残ではないかと言われています。」
「成る程。」
地表に近い所に、マグマ溜りみたいなのがあるのかも知れないな。
「そういえば、この花は地面が熱い所を選んで群れているようでしたね。」
「えっ?」
ん?それは知られてなかったのかな?
クラルさんは考え込んでいるようだ。
「クラルさんがさん、どうされました?」
「あ、すみません。あのですね。この花を栽培しようとして、温室とか作ってみたことがあるんですよ。しかし、あの場所の温度に合わせてみても、上手くいきませんでした。」
「そうですか。」
「でも、今の話からすると、大事なのは気温じゃなくて土の温度なのかも知れません。これは、試してみる価値があるかも。ユウマさん、今度少しで良いので根ごと採ってきてもらえませんか?」
「それが地面が熱くて近付けないんですよ。これは、ヴァミリオが採って来てくれたんです。」
「ああ、それなら、これをお貸ししましょう。」
「靴ですか?」
「これは耐熱性の靴で、火が着いた炭の上を歩いても大丈夫です。」
「それは凄い!それならいけそうですね。」
「はい。でも、前はそこまで熱くなかったんですが……。」
もしかしたら、火山活動を再開したんじゃないかな。
「わかりました。今日は無理ですが、機会ある時に採って来ましょう。」
「ありがとうございます。取り敢えず、今回の依頼達成手続きをしましょう。」
僕のカードを出すと、ルナのカードも出すように言われた。
「今回は僕だけが動いたんですが。」
「ユウマさんとルナさんはパーティーとして登録されてるので、事前に言っていない限り、パーティー全員で達成したとみなされるんです。」
「そうでしたか。その方がありがたいです。」

~~~
翌朝早く、セラネスの入り口に行ったら、既に荷物の積み込み中だった。
「おはようございます。」
「おはよう、ユウマ君。早いね。」
「今回は馬車3台ですか?」
「ああ、そうだ。」
「他の護衛は?」
「ギザール君たちのパーティーが復活したということなのでお願いした。」
「そうなんですね。」
「そろそろ来ると思うが……。おっ、来たみたいだな。」

「「おはようございます。」」
「おはよう。」
「皆さん、おはようございます。今回も、よろしくお願いします。」
「ユウマさんと一緒だと、また何もすること無いかも知れないですけどね。」
「そんなことないですよ。ギザールさんたちと一緒だと心強いです。」
「ステラちゃん!」
ライアさんは、もうステラの所に行っていた。
「ライアさん、おはよう。」
「喋った!?」
ライアさん、驚いてるな。
「色々有って、ウチのたちは皆普通に話ができるようになりました。」
「直接、ステラちゃんと喋ることができるなんて!嬉しい!」
「この場をお借りして、新しい仲間を紹介します。こちらが、エルミナです。ジョーンズさんには前紹介しましたが……。エルミナ、喋っても大丈夫だから挨拶してね。」
「エルミナです。よろしくお願いします。」
「あと、肩にとまっているのがヴァミリオです。」
「ボクはヴァミリオ。ユウマの嫁だよ!よろしくね!」
「嫁ではないです。」
ジョーンズさんが苦笑いしている。

しばらくして、馬たちが連れて来られた。今回は皆牡馬のようだ……残念。
牡馬たちは、大人しく馬車に繋がれて行くが、皆こっちを見ている。どうやら、エルミナが気になるようだ。
エルミナは美人だからな。気持ちはよくわかる。
でも、エルミナは怖がってステラの陰に隠れるようにしている。
「あなた、今回も身体強化掛けるでしょう?」
「う、うん。お願いするよ。」
なんかルナが怒っているように見えるが……。
ルナは、先頭の馬車に繋がれている馬の所に向かった。
「失礼するわよ。」
「は、はい!」
やっぱり、ルナが近寄ると緊張するみたいだ。額をくっ付けられると、固まってしまった。
「これで良いわ。それから、あの黒い子は美人だから気になるとは思うけど、ジロジロ見ないようにしてね。」
「わかりました!」
残りの2頭にも同じことを言うルナ。
ルナも牡馬たちの視線に気付いてたんだな。

ギザールさんたちは、それぞれの馬車に付くので、僕たちは適当に散らばった。
セルリアが空から偵察してくれるので、奇襲されることはまずない。僕はルナに乗って、ヴァミリオは僕の肩にとまっている。
ヴァミリオは、相変わらずマイペースだ。

その日は何事もなく、昼には宿場町に着いた。
「皆、お疲れ様。」
「僕たち、何もしてないですけどね。」
「私たちもです。」
「いつも言っているが、何もないのが一番だ。では、昼食にしよう。」
「わかりました。ルナはどうする?」
「皆と一緒に外に居るわ。ステラは捕まったようだけど、もう通訳要らないし。」
「わかった。」
ステラを見ると。既にライアさんが確保している。ライアさん、本当にステラのこと好きだな。
昼食中も、ライアさんはステラと楽しそうに会話していた。ステラも直接話ができて、嬉しそうだ。
「ジョーンズさん、この後少しお時間頂けますか?」
「ん?わかった。」

~~~
食事の後、ジョーンズさんが話をする場を設けてくれた。
「お時間取って頂いて、済みません。」
「構わないが、例の話か?」
「それも有るんですが、これを見てください。」
「これは……。もしかして、フェニックスの羽か?」
「そうです。これって売れますかね。」
「間違いなく売れるだろうが、相場は全くわからんな。取り敢えず、同じ鑑定士に見てもらおう。」
「ありがとうございます。」
「しかし、ユウマ君は大変な物を持って来るな。そのうち、ドラゴンの鱗も持って来そうだな。」
「そ、そうですね。」
確かに、セルリアも鱗が剥がれる時も有りそうだ。
「ついでに伝えておくが、鑑定士は3日後に来てもらうことになっている。ワーテンに着く翌日だな。」
「わかりました。」
メモしとかないと。
「お、手帳使ってるな。」
「あ、これ凄く役に立ってます。良いものをありがとうございました。」
「いや。役に立って何よりだ。」
「それでは、お疲れ様でした。この後も、今日のように順調だと良いですね。」
「このまま行くんじゃないかな。魔物が寄って来ると思えないし、これは噂だが、盗賊の間では私たちの商隊に近付かないのが常識みないになっているらしい。」
「そうなんですか!?」
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