27 / 94
第2章 神獣の解放
22-母娘の対決
しおりを挟む
クレアは明日はお母さんとの決戦が有るため、早めに寝に行った。セルリアも一緒だ。
僕はルナとお風呂に入る前に、青毛の娘に話を聞いてみることにした。
ルナとステラも一緒に聞くと言って、そこに残った。
彼女は物心着いた時には馬の群れに居たので、自分が馬であることを疑いもしなかったとのことだった。
一年前くらいに、人間に捕らえられて乗馬用の馬になったらしい。
捕らえられたのは、恐らくこの美しさのせいだろう。
「ところで、名前は有るの?」
「飼い主は着けてくれてましたが、覚えていません。」
「そうなんだ。ところで、何が嫌だったの?」
「その人重いし、バランス悪いし、やたらと怒るけど誉めてくれたことないし……。」
「……。」
「手入れは人任せなのは良いけど、手入れが悪いと手入れした人に怒るし……。」
「……。」
「しかも、夜中忍び込んで来て、私の身体をベタベタ触るし。その……微妙な所まで触ろうとするんですよ!とにかく、何もかも嫌なんです!」
「うっ!」
最後のところ、心当たり有りすぎてヤバい。思わず、ルナをチラッと見てしまった。
「私は、あなたにどこを触られても平気よ。」
「ちょ、ちょっと、ルナ!」
その発言、僕がそういうことをやったって言ってるようなもんなんだけど……。
「ルナさんもされたんですか?でも、好きな人にされるのなら、良いんですよ。私も、ユウマさんだったら触られても良いです。」
「えっ?いや、その……僕のことは置いといて、君は大人しく触られてたの?」
「いえ。本当は蹴飛ばして殺りたかったんですけど、一応飼い主ですから、避けるに留めました。」
今、一瞬殺気を感じたけど……。
「それで、ユウマ、従魔契約するのよね?」
これまで黙っていたステラが、そう聞いてきた。
「ん?彼女がそれで良いなら……。もしかして、ステラ、そのために待っててくれたの?」
「別にそのためにという訳でもないんだけど……。あなた、ユウマの従魔になる?」
「えっ?どうやったらなれるんですか?」
ステラが説明を始めた。最近、ステラ、従魔になる方法を教える係みたいになりつつあるな。
「……でも、オススメはキスをすることね。」
「えっ?」
お決まりの説明、お疲れ様です。
「じゃあ、早速どうぞ。」
「あ、はい。ユウマさん、よろしくお願いします。」
「う、うん。」
この娘、被毛で顔色わからないけど、絶対赤くなってるよね。こっちまで、恥ずかしくなるんだけど……。
いつものように目を閉じて待つことにする。
唇に何か触れたと思ったら、例によって、アナウンスが流れた。
≪従魔契約が成立しました。≫
「名前付けないとね。」
「お願いします。」
「えーっと……。」
最初は黒から連想しようと思ったが、良い名前が思い付かなかった。
そこで、輝きからイルミネーションを連想したところで、ふと閃いた。
「エルミナでどう?」
「良い名前です!ありがとうございます。」
================
名前:エルミナ
種族:フォールン・ペガサス
年齢:5歳
性別:♀
HP:2,000/2,000
MP:15,000/15,000
能力値:▼
スキル:浮遊、魅了、翻訳
契約主:ユウマ
================
うん、ちゃんと正式に名前が付いている。
クレアの件が片付いたら、ギルドに登録に行かないとね。
~~~
「ルナ、待たせてごめんね。」
エルミナとの話が終わったので、お風呂に入ろうと思い、ルナに声をかけた。
「大丈夫よ。そうだ、エルミナもお風呂どう?」
「お風呂?」
「あ、わからないわよね。とりあえず、一緒に来て。」
あれ?そういう流れなの?
「先ずルナにシャワー掛けるから見ててね。」
「あ、これなら掛けてもらったこと有ります。」
「なら、大丈夫だね。」
ルナのシャワーが終わって、エルミナにシャワーを掛ける。
ルナは先に浴槽に浸かりに行った。
「これ、暖かくて気持ち良いですね。」
「そう?それは良かった。えーっと、股とか、その……後ろの方とか洗っても良い?嫌ならやめとくけど。」
「いえ。大丈夫なので、お願いします。」
「次は浴槽に浸かるんだけど、今ルナがしているようにやってみて。」
「はい。」
ルナを見ながら、前後肢を畳んで浴槽に浸かるエルミナ。
「それで良いわ。じゃあ、私はベッドで待ってるわ。」
「ちょっと、ルナ、拭かないと。」
出て行こうとするルナを慌てて追いかけた。
ルナを見送って、僕も湯槽に浸かる。
「この後、ルナさんと何かするんですか?」
「え?いや、その……。」
そんな答え難い質問をされると困るんだけど……。
「あ、変なこと聞いてすみません!」
「い、いや、気を遣ってくれてありがとう。それより、お風呂はどう?」
「お湯に浸かるのは初めてですけど、シャワーより気持ち良いし、落ち着きますね。」
「気に入ってくれて良かったよ。」
お風呂から上がり、エルミナをステラが居る部屋まで送ってから、ルナの所に向かった。
「ルナ、お待たせ!」
「おかえりなさい。エルミナ、どうだった?」
「お風呂を気に入ってくれたみたいだよ。」
「それは良かったわ。しかし、エルミナも酷い飼い主に捕まったものね。」
「確かに。その飼い主って、変態だったんだな。」
「その人も、あなたにだけは、言われたくないと思うわ。」
「……。」
ルナ、痛いところをついてくるな。
「彼女の話はこれくらいにして、夜を楽しみましょう。」
「そ、そうだね。」
~~~
昨夜は頑張りすぎて、ちょっと寝不足だ。何をとは言わないけど。
ルナには言えないが、エルミナとお風呂に入ったせいで、ヤル気がアップしてしまった。
もしかしたら、ルナはそれを狙って、エルミナとお風呂に入らせたのかも知れない。考えすぎだろうか……。
「ユウマ、ルナさん、おはよう。エルミナ、こういうときは、『ゆうべはお楽しみでしたね』って言うのよ。」
「そうなんですか?ユウマさん、ルナさん、ゆうべはお楽しみでしたね。」
「あ、ありがとう。」
ステラ、それ教えなくて良いからね!
しかし、なんかステラがエルミナのお姉さんみたいになってるけど、違和感ないな。
「クレア、今日は頑張ってね。もう行ける?」
「ありがとう。今からでも、大丈夫よ。」
今日は僕も一緒に歩いていくことになった。
「昨日も言ったけど、ここから先は、母が守っているエリアになるの。恐らく、もう私が来たことは気付かれると思うわ。母は奇襲掛けてくるようなタイプじゃないけど、念のため警戒してね。」
「わかった。」
少し歩いた後、クレアが立ち止まった。
「あそこに母が居るわ。」
「あれがお母さん?」
大きさは、小柄なサラブレッドくらい……エルミナと大体同じだろうか。
「ここに、擬似結界が張ってあって、これ以上進めないの。」
「擬似結界?」
「母は結界魔法使えないけど、光魔法で結界に近いものを作っているらしいわ。母のオリジナルみたい。」
「そうなの?」
クレアのお母さん、物凄く頭良いのではないだろうか?
「ただ、光魔法で打ち消されるから、私のような光魔法持ちには効果がないという欠点はあるわ。じゃあ、行って来るわね。」
「行ってらっしゃい!」
試しに進もうとしたら、壁に当たったような感覚が有った。
「お母さん、ただいま。」
「おや。勝手に家を出ておきながら、今頃のこのこ帰ってくるとは。何しに来たんだい。」
「家を飛び出したのは、後悔してる。なぜなら、お母さんの影が常に有ったから。だから、お母さんに認めてもらって、堂々と生きていくのよ!」
「ふぅん。どうやって認めてもらうつもりだい?」
「お母さんに、闘いを挑むわ!」
「へえ、私に勝てるとでも?面白い。私に勝てたら、お前を認めてやろう。先手は譲ってやるよ。」
「じゃあ、行くわよ!」
クレアのお母さんは、思った以上に強い。クレアも強くなったけど、所詮急造だ。年季が違うという感じがする。
セルリアは、僕の横で黙ってずっと戦況を見つめている。何を思っているのだろうか。
ステータスを確認するまでもなく、クレアにダメージが蓄積されていっているのがわかる。既にヒールを掛けるMPも残っていない感じなのだろう。
あ、クレアのお母さんが、こちらをちらっと見た。
「大きな口を叩いておいて、その程度か?そろそろ終わらせてやろう。」
お母さんが強い光を放つと、クレアは吹き飛んだ。それでも、クレアは立ち上がろうとするが……。
「止めだ。」
「クレア!」
思わずクレアの側に駆け寄り、クレアを庇っていた。
「お前が、娘をたぶらかしたのだな。どうせ、娘の力を利用しようというのだろう。」
「違うわ!」
クレアが、力を振り絞って叫ぶ。
「マスターは、そんな人じゃない!マスターは、私が選んだ人なの!私はずっと付いて行くわ!お母さんに邪魔はさせない!!」
「クレア……。」
≪お互いの意思を確認しました。結婚を承認します。≫
≪条件を満たしたため、馬女神の加護の効果が解放されました。≫
え?結婚が承認された?
あと、別のメッセージも流れたんだけど……。慌てて、ステータスを確認した。
================
名前:ユウマ
種族:ハイ・ヒューマン
性別:♂
年齢:35歳
HP:1,200/1,200
MP:-
能力値:▼
スキル:閲覧、MP消費防御、翻訳、念話、MP共有(馬または馬系魔物限定)
加護:調停者の加護、獣神の加護、馬女神の加護、神竜の加護
妻:ルナ、ステラ、クレア
従魔:クレア(ユニコーン)、ステラ(バイコーン)、セルリア(ブルードラゴン)、エルミナ(フォールン・ペガサス)
================
================
【MP共有(馬または馬系魔物限定)】(アクティブ)
対象の相手とMPを共有する。残りMPおよび最大MPは、使用者と対象者の合計となる。
ただし、効果は短時間で、効果が切れた後は使用者と対象者の残りMPは0となる。
※対象は馬または馬系魔物の妻または夫に限られる。
================
これは、今こそ使うべきスキルだ!
『クレア、最大出力で魔法を!』
僕はMP共有を発動させて、クレアに念話でそう伝えた。
『えっ?何これ!?』
クレアは、一瞬戸惑ったが、すぐにお母さんに向けて巨大な光の矢を放った。
「何!?」
クレアのお母さんは油断してたのか、それをまともに受けて倒れた。
「マスター、やったわ……。」
クレアもその場で崩れた。
================
名前:クレア
種族:ユニコーン
性別:♀
年齢:221歳
状態異常:気絶
HP:180/5,200
MP:0/55,000
能力値:▼
スキル:光魔法、回復魔法、念話
加護:神竜の加護
夫:ユウマ
契約主:ユウマ
================
やはり、MPが0になっていた。僕は最大MPがないため、この原則に当てはまらないらしい。
~~~
しばらく抱きかかえていると、クレアが気が付いた。
クレアはよろよろと立ち上がり、おぼつかない足取りでお母さんの所へ向かった。僕も、クレアに寄り添って一緒に向かった。
クレアのお母さんは、目を閉じている。
僕は、お母さんを起こそうと触れかけたが、すぐに手を引いた。すると、クレアのお母さんは目を開けた。
「人間、そなた、名は何という?」
「ユウマと言います。」
「ユウマ、娘をよろしくな。」
「はい。お義母さん!」
「お母さん、それじゃあ!」
「私を倒したのだから、約束通りお前を一人前として認めよう。」
「ありがとう、お母さん。」
「お義母さん、お願いが有るのですが。」
「何だ?」
「僕は小さい頃に亡くしたので、母に甘えたことがありません。お義母さんに甘えさせてもらえませんか?」
「そなたは娘の婿だからな。息子も同然だ。遠慮無く甘えるが良い。」
「ありがとうございます。」
僕は、お義母さんに抱きつき、胸に顔を押し当てた。温かくて、心安らぐ感じだった。
僕はルナとお風呂に入る前に、青毛の娘に話を聞いてみることにした。
ルナとステラも一緒に聞くと言って、そこに残った。
彼女は物心着いた時には馬の群れに居たので、自分が馬であることを疑いもしなかったとのことだった。
一年前くらいに、人間に捕らえられて乗馬用の馬になったらしい。
捕らえられたのは、恐らくこの美しさのせいだろう。
「ところで、名前は有るの?」
「飼い主は着けてくれてましたが、覚えていません。」
「そうなんだ。ところで、何が嫌だったの?」
「その人重いし、バランス悪いし、やたらと怒るけど誉めてくれたことないし……。」
「……。」
「手入れは人任せなのは良いけど、手入れが悪いと手入れした人に怒るし……。」
「……。」
「しかも、夜中忍び込んで来て、私の身体をベタベタ触るし。その……微妙な所まで触ろうとするんですよ!とにかく、何もかも嫌なんです!」
「うっ!」
最後のところ、心当たり有りすぎてヤバい。思わず、ルナをチラッと見てしまった。
「私は、あなたにどこを触られても平気よ。」
「ちょ、ちょっと、ルナ!」
その発言、僕がそういうことをやったって言ってるようなもんなんだけど……。
「ルナさんもされたんですか?でも、好きな人にされるのなら、良いんですよ。私も、ユウマさんだったら触られても良いです。」
「えっ?いや、その……僕のことは置いといて、君は大人しく触られてたの?」
「いえ。本当は蹴飛ばして殺りたかったんですけど、一応飼い主ですから、避けるに留めました。」
今、一瞬殺気を感じたけど……。
「それで、ユウマ、従魔契約するのよね?」
これまで黙っていたステラが、そう聞いてきた。
「ん?彼女がそれで良いなら……。もしかして、ステラ、そのために待っててくれたの?」
「別にそのためにという訳でもないんだけど……。あなた、ユウマの従魔になる?」
「えっ?どうやったらなれるんですか?」
ステラが説明を始めた。最近、ステラ、従魔になる方法を教える係みたいになりつつあるな。
「……でも、オススメはキスをすることね。」
「えっ?」
お決まりの説明、お疲れ様です。
「じゃあ、早速どうぞ。」
「あ、はい。ユウマさん、よろしくお願いします。」
「う、うん。」
この娘、被毛で顔色わからないけど、絶対赤くなってるよね。こっちまで、恥ずかしくなるんだけど……。
いつものように目を閉じて待つことにする。
唇に何か触れたと思ったら、例によって、アナウンスが流れた。
≪従魔契約が成立しました。≫
「名前付けないとね。」
「お願いします。」
「えーっと……。」
最初は黒から連想しようと思ったが、良い名前が思い付かなかった。
そこで、輝きからイルミネーションを連想したところで、ふと閃いた。
「エルミナでどう?」
「良い名前です!ありがとうございます。」
================
名前:エルミナ
種族:フォールン・ペガサス
年齢:5歳
性別:♀
HP:2,000/2,000
MP:15,000/15,000
能力値:▼
スキル:浮遊、魅了、翻訳
契約主:ユウマ
================
うん、ちゃんと正式に名前が付いている。
クレアの件が片付いたら、ギルドに登録に行かないとね。
~~~
「ルナ、待たせてごめんね。」
エルミナとの話が終わったので、お風呂に入ろうと思い、ルナに声をかけた。
「大丈夫よ。そうだ、エルミナもお風呂どう?」
「お風呂?」
「あ、わからないわよね。とりあえず、一緒に来て。」
あれ?そういう流れなの?
「先ずルナにシャワー掛けるから見ててね。」
「あ、これなら掛けてもらったこと有ります。」
「なら、大丈夫だね。」
ルナのシャワーが終わって、エルミナにシャワーを掛ける。
ルナは先に浴槽に浸かりに行った。
「これ、暖かくて気持ち良いですね。」
「そう?それは良かった。えーっと、股とか、その……後ろの方とか洗っても良い?嫌ならやめとくけど。」
「いえ。大丈夫なので、お願いします。」
「次は浴槽に浸かるんだけど、今ルナがしているようにやってみて。」
「はい。」
ルナを見ながら、前後肢を畳んで浴槽に浸かるエルミナ。
「それで良いわ。じゃあ、私はベッドで待ってるわ。」
「ちょっと、ルナ、拭かないと。」
出て行こうとするルナを慌てて追いかけた。
ルナを見送って、僕も湯槽に浸かる。
「この後、ルナさんと何かするんですか?」
「え?いや、その……。」
そんな答え難い質問をされると困るんだけど……。
「あ、変なこと聞いてすみません!」
「い、いや、気を遣ってくれてありがとう。それより、お風呂はどう?」
「お湯に浸かるのは初めてですけど、シャワーより気持ち良いし、落ち着きますね。」
「気に入ってくれて良かったよ。」
お風呂から上がり、エルミナをステラが居る部屋まで送ってから、ルナの所に向かった。
「ルナ、お待たせ!」
「おかえりなさい。エルミナ、どうだった?」
「お風呂を気に入ってくれたみたいだよ。」
「それは良かったわ。しかし、エルミナも酷い飼い主に捕まったものね。」
「確かに。その飼い主って、変態だったんだな。」
「その人も、あなたにだけは、言われたくないと思うわ。」
「……。」
ルナ、痛いところをついてくるな。
「彼女の話はこれくらいにして、夜を楽しみましょう。」
「そ、そうだね。」
~~~
昨夜は頑張りすぎて、ちょっと寝不足だ。何をとは言わないけど。
ルナには言えないが、エルミナとお風呂に入ったせいで、ヤル気がアップしてしまった。
もしかしたら、ルナはそれを狙って、エルミナとお風呂に入らせたのかも知れない。考えすぎだろうか……。
「ユウマ、ルナさん、おはよう。エルミナ、こういうときは、『ゆうべはお楽しみでしたね』って言うのよ。」
「そうなんですか?ユウマさん、ルナさん、ゆうべはお楽しみでしたね。」
「あ、ありがとう。」
ステラ、それ教えなくて良いからね!
しかし、なんかステラがエルミナのお姉さんみたいになってるけど、違和感ないな。
「クレア、今日は頑張ってね。もう行ける?」
「ありがとう。今からでも、大丈夫よ。」
今日は僕も一緒に歩いていくことになった。
「昨日も言ったけど、ここから先は、母が守っているエリアになるの。恐らく、もう私が来たことは気付かれると思うわ。母は奇襲掛けてくるようなタイプじゃないけど、念のため警戒してね。」
「わかった。」
少し歩いた後、クレアが立ち止まった。
「あそこに母が居るわ。」
「あれがお母さん?」
大きさは、小柄なサラブレッドくらい……エルミナと大体同じだろうか。
「ここに、擬似結界が張ってあって、これ以上進めないの。」
「擬似結界?」
「母は結界魔法使えないけど、光魔法で結界に近いものを作っているらしいわ。母のオリジナルみたい。」
「そうなの?」
クレアのお母さん、物凄く頭良いのではないだろうか?
「ただ、光魔法で打ち消されるから、私のような光魔法持ちには効果がないという欠点はあるわ。じゃあ、行って来るわね。」
「行ってらっしゃい!」
試しに進もうとしたら、壁に当たったような感覚が有った。
「お母さん、ただいま。」
「おや。勝手に家を出ておきながら、今頃のこのこ帰ってくるとは。何しに来たんだい。」
「家を飛び出したのは、後悔してる。なぜなら、お母さんの影が常に有ったから。だから、お母さんに認めてもらって、堂々と生きていくのよ!」
「ふぅん。どうやって認めてもらうつもりだい?」
「お母さんに、闘いを挑むわ!」
「へえ、私に勝てるとでも?面白い。私に勝てたら、お前を認めてやろう。先手は譲ってやるよ。」
「じゃあ、行くわよ!」
クレアのお母さんは、思った以上に強い。クレアも強くなったけど、所詮急造だ。年季が違うという感じがする。
セルリアは、僕の横で黙ってずっと戦況を見つめている。何を思っているのだろうか。
ステータスを確認するまでもなく、クレアにダメージが蓄積されていっているのがわかる。既にヒールを掛けるMPも残っていない感じなのだろう。
あ、クレアのお母さんが、こちらをちらっと見た。
「大きな口を叩いておいて、その程度か?そろそろ終わらせてやろう。」
お母さんが強い光を放つと、クレアは吹き飛んだ。それでも、クレアは立ち上がろうとするが……。
「止めだ。」
「クレア!」
思わずクレアの側に駆け寄り、クレアを庇っていた。
「お前が、娘をたぶらかしたのだな。どうせ、娘の力を利用しようというのだろう。」
「違うわ!」
クレアが、力を振り絞って叫ぶ。
「マスターは、そんな人じゃない!マスターは、私が選んだ人なの!私はずっと付いて行くわ!お母さんに邪魔はさせない!!」
「クレア……。」
≪お互いの意思を確認しました。結婚を承認します。≫
≪条件を満たしたため、馬女神の加護の効果が解放されました。≫
え?結婚が承認された?
あと、別のメッセージも流れたんだけど……。慌てて、ステータスを確認した。
================
名前:ユウマ
種族:ハイ・ヒューマン
性別:♂
年齢:35歳
HP:1,200/1,200
MP:-
能力値:▼
スキル:閲覧、MP消費防御、翻訳、念話、MP共有(馬または馬系魔物限定)
加護:調停者の加護、獣神の加護、馬女神の加護、神竜の加護
妻:ルナ、ステラ、クレア
従魔:クレア(ユニコーン)、ステラ(バイコーン)、セルリア(ブルードラゴン)、エルミナ(フォールン・ペガサス)
================
================
【MP共有(馬または馬系魔物限定)】(アクティブ)
対象の相手とMPを共有する。残りMPおよび最大MPは、使用者と対象者の合計となる。
ただし、効果は短時間で、効果が切れた後は使用者と対象者の残りMPは0となる。
※対象は馬または馬系魔物の妻または夫に限られる。
================
これは、今こそ使うべきスキルだ!
『クレア、最大出力で魔法を!』
僕はMP共有を発動させて、クレアに念話でそう伝えた。
『えっ?何これ!?』
クレアは、一瞬戸惑ったが、すぐにお母さんに向けて巨大な光の矢を放った。
「何!?」
クレアのお母さんは油断してたのか、それをまともに受けて倒れた。
「マスター、やったわ……。」
クレアもその場で崩れた。
================
名前:クレア
種族:ユニコーン
性別:♀
年齢:221歳
状態異常:気絶
HP:180/5,200
MP:0/55,000
能力値:▼
スキル:光魔法、回復魔法、念話
加護:神竜の加護
夫:ユウマ
契約主:ユウマ
================
やはり、MPが0になっていた。僕は最大MPがないため、この原則に当てはまらないらしい。
~~~
しばらく抱きかかえていると、クレアが気が付いた。
クレアはよろよろと立ち上がり、おぼつかない足取りでお母さんの所へ向かった。僕も、クレアに寄り添って一緒に向かった。
クレアのお母さんは、目を閉じている。
僕は、お母さんを起こそうと触れかけたが、すぐに手を引いた。すると、クレアのお母さんは目を開けた。
「人間、そなた、名は何という?」
「ユウマと言います。」
「ユウマ、娘をよろしくな。」
「はい。お義母さん!」
「お母さん、それじゃあ!」
「私を倒したのだから、約束通りお前を一人前として認めよう。」
「ありがとう、お母さん。」
「お義母さん、お願いが有るのですが。」
「何だ?」
「僕は小さい頃に亡くしたので、母に甘えたことがありません。お義母さんに甘えさせてもらえませんか?」
「そなたは娘の婿だからな。息子も同然だ。遠慮無く甘えるが良い。」
「ありがとうございます。」
僕は、お義母さんに抱きつき、胸に顔を押し当てた。温かくて、心安らぐ感じだった。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
スター・スフィア-異世界冒険はお喋り宝石と共に-
黒河ハル
ファンタジー
——1つの星に1つの世界、1つの宙《そら》に無数の冒険——
帰り道に拾った蒼い石がなんか光りだして、なんか異世界に飛ばされた…。
しかもその石、喋るし、消えるし、食べるしでもう意味わからん!
そんな俺の気持ちなどおかまいなしに、突然黒いドラゴンが襲ってきて——
不思議な力を持った宝石たちを巡る、異世界『転移』物語!
星の命運を掛けた壮大なSFファンタジー!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる