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第2章 神獣の解放
21-多難な道中
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僕の感覚で10分位走って、セルリアが待っている所に到着した。
「ルナ、水飲む?」
「いただくわ。」
「湖の水でも大丈夫かも知れないけど、買ったのがあるからそれを出すよ。ステラ、水と桶お願い。」
「はい、どうぞ。」
今まで役に立たなかった水が遂に役に立つな。ちなみに、桶は水を買った時、おまけに着けてくれた。
桶に水を汲んで、ルナに飲ませる。
「ステラはどう?」
「アタシは大丈夫よ。」
「クレアは大丈夫だよね。」
「なぜ、私だけ扱いが……。」
「ありがとう、もう良いわ。あなたに飲ませてもらうと美味しいわ。」
ルナが頭を擦り付けて来たので、頸を撫でた。
それを見て、負けじとステラが頭を擦り付けてく来た。
「相変わらず、お熱いことで……。」
そういうクレアも、強引に頸を擦り付けてきたことあったけどね。
「そういえば、魔物に全然出会わなかったけど、この辺りは少ないの?」
「そうでもないわよ。セルリアや私たちを見て、逃げ出したというのが正解だと思うわ。ちなみに、この湖も魔物が棲んでいるみたいね。」
そう言って、クレアが湖を見た。
「「えっ?」」
ルナと一緒に湖を覗きこむと、何かの影が徐々に上がって来ているのが見えた。
そのまま見ていると、それは水面から首を出した。
「ネッシー?」
「何それ?」
首を傾げるクレア。とりあえず、ステータス確認。
================
種族:レイクサーペント
性別:♀
年齢:211歳
HP:9,900/9,900
MP:11,000/11,000
能力値:
力:S
体力:S
知力:A
精神力:A
素早さ:A
スキル:水魔法、水中呼吸
================
================
【レイクサーペント】
細長い体を持ちつドラゴンの亜種。寿命は平均1000年位。
透明度が高い大きな湖にのみに生息する。
================
あ、首だけしか見えてないけど、体は細長いんだ。
「神竜様がこのような所に来られるとは、どうされたのですか?」
レイクサーペントは、ちょうど空から降りてきたセルリアにそう尋ねた。
どうやら、このレイクサーペントは、セルリアに挨拶しに出て来たらしい。
「神竜はやめてくれ。今はセルリアという名前で、この人間に仕えている身だ。」
「えっ?神竜様がこのような人間ごときに従うとは……。」
レイクサーペントは、そう言って、こっちを睨みながら近付いて来た。
恐怖は感じないが、何をされるのかわからないので、警戒して待ち構えた。
「貴様、主をバカにすると、ただでは……って、何主に甘えている!?」
「何をおっしゃるのですか?私が人間に甘える訳が……えっ?」
近付いて来たレイクサーペントは、なぜか頭を僕に擦り付けて来たのだ。
くっついていたルナとステラは急いで離れた。
これは、獣神の加護と神竜の加護のせいかな?亜種でも竜系ということになるのだろう。
「こらっ、主から離れろ!」
「神竜様が主と認めるのもわかります。私も撫でてください!」
「うわっ!」
さっきとは全く態度が変わり、容赦なく頭を強く擦り付けて来たので、押し倒された。攻撃でないから、防御が働いてないのか?
「離れろというに!」
「きゃっ!」
セルリアが無理矢理レイクサーペントを引き剥がして、湖に投げた。レイクサーペントが、可愛い悲鳴をあげたが、気にしないでおこう。
「セルリア、ありがとう。助かったよ。」
「今のうちに、ここから離れよう。レイクサーペントは湖から出られないからな。」
「わかった。皆急ごう。」
もう大丈夫だろうという所まで離れると、セルリアが言った。
「全く、ユウマは人騒がせだな。」
「えっ、僕?」
皆、今ので精神的に疲れたようだ。
ステラは僕を乗せて常歩しており、ルナとクレアは僕を挟んで両隣にいる。セルリアも小さくなって、一緒に歩いている。
「まさか、あの湖にあのような奴が棲んでいるとはな。知ってたら近寄らなかったのだが。」
「まあ、何事も無くて良かったよ。危うく押し潰されるところだった。」
「主の意外な弱点だな。」
「そうだね。攻撃ならダメージを受けないんだけど、あれは違うからね。ちなみに、攻撃であれば、自分に向けられたものでなくても大丈夫なのは、ステラとクレアの攻撃で実証済みだよ。」
「「えーっ!?」」
ステラとクレアがハモった。
「そういえば、セルリアの飛行訓練でも、落ちたらダメージ受けるよね。」
「もし落ちても、我がすぐカバーするから、大丈夫だ。」
「セルリア、何のこと?」
ルナがセルリアに尋ねた。そういえば、まだ皆に言ってなかったな。
「クレアの件が片付いたら、主とデ……いや、飛行訓練をすることになったのだ。」
「ふうん。」
ルナがジト目でセルリアを見る。
「いや、こ、これは、今後のために、主に慣れてもらうためであってだな。」
セルリアが、やけに焦っているがなぜだろう?
「ルナ、心配してくれるのは嬉しいけど、何かあった時に必要だと思って、僕からもお願いしたことなんだ。」
「はぁ……。」
またタメ息つかれた。解せぬ。
「ユウマ、気を付けてね。」
「ありがとう。」
ステラが振り向いて、心配そうにしている。可愛いなぁ。
「ステラも大概ね。」
「そうね。」
クレアの言葉にルナが同意した。一体何のことだろうか?
~~~
翌日もまた、ステラにテレポートしてもらった。昨日設定しておいた、テレポートポイントまでだ。
「今日は、クレアのお母さんがいる側まで行かないとね。」
今日も、最初はステラに乗せてもらった。
しかし、僕は皆におんぶにだっこだな。実際、ルナとステラには物理的に乗せてもらってるし……。なんとかしたいな。
昨日みたいに良い場所に水場は無かったため、小さい林で休憩を取った。
ステラは、午前中僕を乗せて走り続けた。
さすがに息が上がってるので、水を飲ませた。もちろん、ルナにも飲ませる。
「ステラ、大丈夫?」
「大丈夫よ。少し要領が掴めたみたい。」
「マスター、私のことも気に掛けて欲しいんだけど……。」
「この林、昨日のような変な魔物居ないよね?」
「スルーなの?まあ、そもそも私のために、皆を巻き組んでるんだけど……。」
休憩後は、ルナに乗せてもらった。ステラは大分疲れているようだし、無理しない方が良いだろう。
「マスター、しばらく行くと、野性馬が群れで居るから気を付けてね。」
「そういえば、クレアのお父さんも馬だと言ってたね。でも、何を気を付けるの?」
「それは、そのうち嫌でもわかるわ。」
しばらく進むと、クレアが言ってた通り、馬がたくさん居た。ここは、天国かな?
何頭かがこちらに気付いたようで、向かって来た。
「ステラ、馬たちをブロックするわよ。」
「わかったわ。」
「えっ?なになに?」
こちらに向かって来る馬がどんどん増えてくる。ルナはかなりのスピードで走っているが、僕を乗せているし、相手は野性馬だけあって併走してるのも居る。
「ちょっと、着いて来ないでくれる?」
「えっ?ユニコーン?」
クレアが馬たちに注意すると、近くに居た馬たちがそれに気付いて少し距離を取った。しかし、まだ着いて来ている。
ずっと走り続ける訳にもいかないから、困ったな。
「間もなく母の管理エリアね。エリアに入ると気付かれそうだから、この辺りで止まるしかないわね。あの林が良いかも。」
「わかった。ルナ、お願い。」
「了解。」
その林に到着した時は、馬たちは大分減っていたが、まだ11頭も着いて来ていた。
クレアとステラが牽制してるので、ある程度以上近付かないが、逃げたりもしない。
誰だ、天国とか言った奴は……すみません、僕です。
「えーっと。君たち、何か用?」
「私もあなたと一緒に行きたいんだけど……。」
「私も連れてって!」
「撫でて!」
皆言いたいこと言ってて、収集着かなくなってるな。
「やっぱり、予想通りになったわね。」
クレアがそう呟いた。
「クレア、なんとかならないの?」
「良い手が思い付かないわ。」
「私がなんとかするわ。」
「ルナ?」
「皆さん、静かにしてください。」
「「……。」」
ルナの一言で静かになった。ルナ、凄いな。
「この人は私の夫でユウマ、私は妻のルナと言います。皆さん、ユウマに着いて来たいということで良いですか?」
「「はい!」」
「では、冷静になって考えてください。ユウマに着いてくるということは、自分の群れを捨てることです。ハーレムに属している人は、リーダーの牡馬を裏切ることになります。少しでも心残りがある方は群れに戻ってください。」
ルナの言葉にほとんどの馬が去って行った。やっぱり、群れから離れるのは厳しいよね。
残ったのは3頭で、それぞれ葦毛と鹿毛と青毛だ。
そう言えば、さっきまで集まっていた馬も含めて、皆これまで見た馬たちより少し大きい気がする。野生だからなのか、種類によるものなのかはわからないが……。
「あなた方は、大丈夫なのですか?」
「私はハーレムに属してないし、問題ないわ。」
「私も!」
「同じです!」
葦毛の馬、鹿毛の馬、青毛の馬が順にそう言った。
「では、もう一つ。これがクリアできれば、着いて来ても良いです。あなた方は厩舎に住み、銜や鞍を着けてユウマを乗せることになると思いますが、それでも問題ないですか?」
「そ、それは……。」
「……。」
葦毛の馬と鹿毛の馬は、急にこれまでの勢いがなくなった。
やっぱり嫌なんだ。これまで、馬に悪いことばかりして来たな。
「私は大丈夫です。昔は人を乗せてましたから。飼い主が嫌で逃げて来たんです。」
「そう。じゃあ、そちらのお二人は戻ってください。ユウマ、折角だから、撫でてあげたら?」
「えっ?良いの?」
「ちょっと待って、『クリーン』。」
「クレア、ありがとう。」
クレアは、僕に汚れた馬を触らせたくないんだろうな。
2頭は撫でてあげると気持ちよさそうにしていた。
2頭が去っていき、青毛の馬が残った。
ルナが出した条件をクリアしたから、連れて行かないといけないけど、どうするか……。
この世界の馬は知能が高そうだが、普通の馬と家の中で一緒にというのは難しいだろう。
元の世界で、馬と一緒に暮らすのを夢見て、どのような家を作るか考えたこともあったが、なかなか現実的な案が浮かばなかった。
今の家はかなりのものだが、馬が住めるようにはできていない。
ルナの言う通り、厩舎に住まわせるのが妥当だろうが、乗馬クラブに預けるのも可愛そうな気もするし……。
「あら?あなた、馬じゃないわね?」
「えっ?」
考え事をしている間に、クレアがその馬の所に行っていたようだ。
クレアの言ったことに対し、その馬も驚いている。
「クレア、何言ってるの?」
「この魔力は動物のものじゃないわ。」
ステータスを見てみるか。
================
種族:フォールン・ペガサス
年齢:5歳
性別:♀
HP:2,000/2,000
MP:15,000/15,000
能力値:
力:C
体力:C
知力:C
精神力:C
素早さ:C
スキル:浮遊、魅了、翻訳
================
================
【フォールン・ペガサス】
ペガサスの一種で、主に地上で暮らす。
昔、ペガサスが下界に堕ちたものと思われたため、この種族名が付けられた。
基本的に翼はなく、能力値も低いため、馬と間違えられることも多い。
ただし、知能と魔力は高い。寿命は平均200年程度。
【浮遊】(アクティブ)
空中に浮かぶことができる。
飛行と違い、スキルに推進力は無い。ただし、空中で個体本来の移動方法を使うことが可能。
【魅了】(アクティブ、パッシブ)
対象を魅了することで、戦意を喪失させる。対象が異性の方が成功率が高い。
ただし、相手によっては、別の意味で危なくなる可能性があるため注意が必要。
また、本スキルの所有者は、併せて魅了耐性を持つ。
================
『別の意味で危なくなる』って……閲覧スキルの解説も、時々ツッコミ入れたくなるな。
「クレアの言う通り魔物だね。フォールン・ペガサスっていうらしい。」
「聞いたことないわね。」
「博識なクレアでも、知らないことあるんだね。」
その馬……ではなくて、フォールン・ペガサスの方を見ると、固まっていた。自分のステータスを見たのかも知れない。
前に呼ばれていた名前を知らないので、呼べない。というか、ステータスに名前が表示されていないということは、正式な名前にはなっていなかったのだろう。
「……知らなかった。」
「クレア、この娘にも、クリーンを掛けてあげて。」
「わかったわ『クリーン』。」
「うわぁ!」
「凄く綺麗ね。」
今まで薄汚れていたけど、クリーンを掛けたら漆黒の美しい毛並になった。
ルナに綺麗と言わしめるとは……。
「ルナ、水飲む?」
「いただくわ。」
「湖の水でも大丈夫かも知れないけど、買ったのがあるからそれを出すよ。ステラ、水と桶お願い。」
「はい、どうぞ。」
今まで役に立たなかった水が遂に役に立つな。ちなみに、桶は水を買った時、おまけに着けてくれた。
桶に水を汲んで、ルナに飲ませる。
「ステラはどう?」
「アタシは大丈夫よ。」
「クレアは大丈夫だよね。」
「なぜ、私だけ扱いが……。」
「ありがとう、もう良いわ。あなたに飲ませてもらうと美味しいわ。」
ルナが頭を擦り付けて来たので、頸を撫でた。
それを見て、負けじとステラが頭を擦り付けてく来た。
「相変わらず、お熱いことで……。」
そういうクレアも、強引に頸を擦り付けてきたことあったけどね。
「そういえば、魔物に全然出会わなかったけど、この辺りは少ないの?」
「そうでもないわよ。セルリアや私たちを見て、逃げ出したというのが正解だと思うわ。ちなみに、この湖も魔物が棲んでいるみたいね。」
そう言って、クレアが湖を見た。
「「えっ?」」
ルナと一緒に湖を覗きこむと、何かの影が徐々に上がって来ているのが見えた。
そのまま見ていると、それは水面から首を出した。
「ネッシー?」
「何それ?」
首を傾げるクレア。とりあえず、ステータス確認。
================
種族:レイクサーペント
性別:♀
年齢:211歳
HP:9,900/9,900
MP:11,000/11,000
能力値:
力:S
体力:S
知力:A
精神力:A
素早さ:A
スキル:水魔法、水中呼吸
================
================
【レイクサーペント】
細長い体を持ちつドラゴンの亜種。寿命は平均1000年位。
透明度が高い大きな湖にのみに生息する。
================
あ、首だけしか見えてないけど、体は細長いんだ。
「神竜様がこのような所に来られるとは、どうされたのですか?」
レイクサーペントは、ちょうど空から降りてきたセルリアにそう尋ねた。
どうやら、このレイクサーペントは、セルリアに挨拶しに出て来たらしい。
「神竜はやめてくれ。今はセルリアという名前で、この人間に仕えている身だ。」
「えっ?神竜様がこのような人間ごときに従うとは……。」
レイクサーペントは、そう言って、こっちを睨みながら近付いて来た。
恐怖は感じないが、何をされるのかわからないので、警戒して待ち構えた。
「貴様、主をバカにすると、ただでは……って、何主に甘えている!?」
「何をおっしゃるのですか?私が人間に甘える訳が……えっ?」
近付いて来たレイクサーペントは、なぜか頭を僕に擦り付けて来たのだ。
くっついていたルナとステラは急いで離れた。
これは、獣神の加護と神竜の加護のせいかな?亜種でも竜系ということになるのだろう。
「こらっ、主から離れろ!」
「神竜様が主と認めるのもわかります。私も撫でてください!」
「うわっ!」
さっきとは全く態度が変わり、容赦なく頭を強く擦り付けて来たので、押し倒された。攻撃でないから、防御が働いてないのか?
「離れろというに!」
「きゃっ!」
セルリアが無理矢理レイクサーペントを引き剥がして、湖に投げた。レイクサーペントが、可愛い悲鳴をあげたが、気にしないでおこう。
「セルリア、ありがとう。助かったよ。」
「今のうちに、ここから離れよう。レイクサーペントは湖から出られないからな。」
「わかった。皆急ごう。」
もう大丈夫だろうという所まで離れると、セルリアが言った。
「全く、ユウマは人騒がせだな。」
「えっ、僕?」
皆、今ので精神的に疲れたようだ。
ステラは僕を乗せて常歩しており、ルナとクレアは僕を挟んで両隣にいる。セルリアも小さくなって、一緒に歩いている。
「まさか、あの湖にあのような奴が棲んでいるとはな。知ってたら近寄らなかったのだが。」
「まあ、何事も無くて良かったよ。危うく押し潰されるところだった。」
「主の意外な弱点だな。」
「そうだね。攻撃ならダメージを受けないんだけど、あれは違うからね。ちなみに、攻撃であれば、自分に向けられたものでなくても大丈夫なのは、ステラとクレアの攻撃で実証済みだよ。」
「「えーっ!?」」
ステラとクレアがハモった。
「そういえば、セルリアの飛行訓練でも、落ちたらダメージ受けるよね。」
「もし落ちても、我がすぐカバーするから、大丈夫だ。」
「セルリア、何のこと?」
ルナがセルリアに尋ねた。そういえば、まだ皆に言ってなかったな。
「クレアの件が片付いたら、主とデ……いや、飛行訓練をすることになったのだ。」
「ふうん。」
ルナがジト目でセルリアを見る。
「いや、こ、これは、今後のために、主に慣れてもらうためであってだな。」
セルリアが、やけに焦っているがなぜだろう?
「ルナ、心配してくれるのは嬉しいけど、何かあった時に必要だと思って、僕からもお願いしたことなんだ。」
「はぁ……。」
またタメ息つかれた。解せぬ。
「ユウマ、気を付けてね。」
「ありがとう。」
ステラが振り向いて、心配そうにしている。可愛いなぁ。
「ステラも大概ね。」
「そうね。」
クレアの言葉にルナが同意した。一体何のことだろうか?
~~~
翌日もまた、ステラにテレポートしてもらった。昨日設定しておいた、テレポートポイントまでだ。
「今日は、クレアのお母さんがいる側まで行かないとね。」
今日も、最初はステラに乗せてもらった。
しかし、僕は皆におんぶにだっこだな。実際、ルナとステラには物理的に乗せてもらってるし……。なんとかしたいな。
昨日みたいに良い場所に水場は無かったため、小さい林で休憩を取った。
ステラは、午前中僕を乗せて走り続けた。
さすがに息が上がってるので、水を飲ませた。もちろん、ルナにも飲ませる。
「ステラ、大丈夫?」
「大丈夫よ。少し要領が掴めたみたい。」
「マスター、私のことも気に掛けて欲しいんだけど……。」
「この林、昨日のような変な魔物居ないよね?」
「スルーなの?まあ、そもそも私のために、皆を巻き組んでるんだけど……。」
休憩後は、ルナに乗せてもらった。ステラは大分疲れているようだし、無理しない方が良いだろう。
「マスター、しばらく行くと、野性馬が群れで居るから気を付けてね。」
「そういえば、クレアのお父さんも馬だと言ってたね。でも、何を気を付けるの?」
「それは、そのうち嫌でもわかるわ。」
しばらく進むと、クレアが言ってた通り、馬がたくさん居た。ここは、天国かな?
何頭かがこちらに気付いたようで、向かって来た。
「ステラ、馬たちをブロックするわよ。」
「わかったわ。」
「えっ?なになに?」
こちらに向かって来る馬がどんどん増えてくる。ルナはかなりのスピードで走っているが、僕を乗せているし、相手は野性馬だけあって併走してるのも居る。
「ちょっと、着いて来ないでくれる?」
「えっ?ユニコーン?」
クレアが馬たちに注意すると、近くに居た馬たちがそれに気付いて少し距離を取った。しかし、まだ着いて来ている。
ずっと走り続ける訳にもいかないから、困ったな。
「間もなく母の管理エリアね。エリアに入ると気付かれそうだから、この辺りで止まるしかないわね。あの林が良いかも。」
「わかった。ルナ、お願い。」
「了解。」
その林に到着した時は、馬たちは大分減っていたが、まだ11頭も着いて来ていた。
クレアとステラが牽制してるので、ある程度以上近付かないが、逃げたりもしない。
誰だ、天国とか言った奴は……すみません、僕です。
「えーっと。君たち、何か用?」
「私もあなたと一緒に行きたいんだけど……。」
「私も連れてって!」
「撫でて!」
皆言いたいこと言ってて、収集着かなくなってるな。
「やっぱり、予想通りになったわね。」
クレアがそう呟いた。
「クレア、なんとかならないの?」
「良い手が思い付かないわ。」
「私がなんとかするわ。」
「ルナ?」
「皆さん、静かにしてください。」
「「……。」」
ルナの一言で静かになった。ルナ、凄いな。
「この人は私の夫でユウマ、私は妻のルナと言います。皆さん、ユウマに着いて来たいということで良いですか?」
「「はい!」」
「では、冷静になって考えてください。ユウマに着いてくるということは、自分の群れを捨てることです。ハーレムに属している人は、リーダーの牡馬を裏切ることになります。少しでも心残りがある方は群れに戻ってください。」
ルナの言葉にほとんどの馬が去って行った。やっぱり、群れから離れるのは厳しいよね。
残ったのは3頭で、それぞれ葦毛と鹿毛と青毛だ。
そう言えば、さっきまで集まっていた馬も含めて、皆これまで見た馬たちより少し大きい気がする。野生だからなのか、種類によるものなのかはわからないが……。
「あなた方は、大丈夫なのですか?」
「私はハーレムに属してないし、問題ないわ。」
「私も!」
「同じです!」
葦毛の馬、鹿毛の馬、青毛の馬が順にそう言った。
「では、もう一つ。これがクリアできれば、着いて来ても良いです。あなた方は厩舎に住み、銜や鞍を着けてユウマを乗せることになると思いますが、それでも問題ないですか?」
「そ、それは……。」
「……。」
葦毛の馬と鹿毛の馬は、急にこれまでの勢いがなくなった。
やっぱり嫌なんだ。これまで、馬に悪いことばかりして来たな。
「私は大丈夫です。昔は人を乗せてましたから。飼い主が嫌で逃げて来たんです。」
「そう。じゃあ、そちらのお二人は戻ってください。ユウマ、折角だから、撫でてあげたら?」
「えっ?良いの?」
「ちょっと待って、『クリーン』。」
「クレア、ありがとう。」
クレアは、僕に汚れた馬を触らせたくないんだろうな。
2頭は撫でてあげると気持ちよさそうにしていた。
2頭が去っていき、青毛の馬が残った。
ルナが出した条件をクリアしたから、連れて行かないといけないけど、どうするか……。
この世界の馬は知能が高そうだが、普通の馬と家の中で一緒にというのは難しいだろう。
元の世界で、馬と一緒に暮らすのを夢見て、どのような家を作るか考えたこともあったが、なかなか現実的な案が浮かばなかった。
今の家はかなりのものだが、馬が住めるようにはできていない。
ルナの言う通り、厩舎に住まわせるのが妥当だろうが、乗馬クラブに預けるのも可愛そうな気もするし……。
「あら?あなた、馬じゃないわね?」
「えっ?」
考え事をしている間に、クレアがその馬の所に行っていたようだ。
クレアの言ったことに対し、その馬も驚いている。
「クレア、何言ってるの?」
「この魔力は動物のものじゃないわ。」
ステータスを見てみるか。
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種族:フォールン・ペガサス
年齢:5歳
性別:♀
HP:2,000/2,000
MP:15,000/15,000
能力値:
力:C
体力:C
知力:C
精神力:C
素早さ:C
スキル:浮遊、魅了、翻訳
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【フォールン・ペガサス】
ペガサスの一種で、主に地上で暮らす。
昔、ペガサスが下界に堕ちたものと思われたため、この種族名が付けられた。
基本的に翼はなく、能力値も低いため、馬と間違えられることも多い。
ただし、知能と魔力は高い。寿命は平均200年程度。
【浮遊】(アクティブ)
空中に浮かぶことができる。
飛行と違い、スキルに推進力は無い。ただし、空中で個体本来の移動方法を使うことが可能。
【魅了】(アクティブ、パッシブ)
対象を魅了することで、戦意を喪失させる。対象が異性の方が成功率が高い。
ただし、相手によっては、別の意味で危なくなる可能性があるため注意が必要。
また、本スキルの所有者は、併せて魅了耐性を持つ。
================
『別の意味で危なくなる』って……閲覧スキルの解説も、時々ツッコミ入れたくなるな。
「クレアの言う通り魔物だね。フォールン・ペガサスっていうらしい。」
「聞いたことないわね。」
「博識なクレアでも、知らないことあるんだね。」
その馬……ではなくて、フォールン・ペガサスの方を見ると、固まっていた。自分のステータスを見たのかも知れない。
前に呼ばれていた名前を知らないので、呼べない。というか、ステータスに名前が表示されていないということは、正式な名前にはなっていなかったのだろう。
「……知らなかった。」
「クレア、この娘にも、クリーンを掛けてあげて。」
「わかったわ『クリーン』。」
「うわぁ!」
「凄く綺麗ね。」
今まで薄汚れていたけど、クリーンを掛けたら漆黒の美しい毛並になった。
ルナに綺麗と言わしめるとは……。
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異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
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