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第2章 神獣の解放
15-ステラの調教
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翌日、ボルムさんの所に昨日のお礼をしに行った後、乗馬施設へ行った。
受付に行こうとしたら、ステラが声を掛けてきた。
「ユウマ、お願いがあるんだけど。」
「どうしたの?こんな所で。」
「その……アタシを調教して欲しいの。」
「えっ?」
何その危険な発言。いや、場所的に、乗馬のことだとは思うけど。
「アタシもルナさんのように……というのは無理だと思うけど、せめてユウマを乗せて走れるようになりたいの。いつか、ライアさんも乗せてあげたいし。」
「そう言えば、ライアさん乗せて欲しがってたらしいね。」
「ダメかなぁ?」
ちょっと首を傾げて、甘えた声を出すステラ。可愛すぎる!
「ダメじゃないけど、ここでなくても……いや、安全を考えるとここの方が良いかな。ちょっと、待っててね。」
「すみません!」
「なんでしょう。あ、ユウマさん、おはようございます。」
受付に向かって声を掛けると、なぜかベルタスさんが出て来た。
「おはようございます。ベルタスさん、なぜここに?」
「たまたま、用事が有って受付に来てたのです。それより、どうされましたか?」
「ベルタスさんが居てちょうど良かったです。実は、ステラ――このバイコーンが、トレーニングして欲しいらしくて、少し馬場をお借りしたいのですが、大丈夫ですか?」
「ユウマさんは会員登録されているので、大丈夫ですよ。馬持ちの会員さんがお子さんとか連れてきて、ご自分の馬に乗せて歩かせたりすることは有るので、それと似たようなものでしょう。実際は逆のパターンですが。」
「申し訳ありません。」
「いえいえ。でも、バイコーンが人を乗せたがるというのは聞いたことないですね。そもそも、バイコーンが人と一緒にいるというのも聞いたことないですが。」
「まあ、そうですよね。あ、ちなみに、ステラも私の妻になりました。」
「えっ!?」
ルナに乗る前に、ステラに乗ることにした。
長靴はまた借り物だ。できあがるのが待ち遠しい。明日できるんだっけ?
ルナはアドバイザー(?)として、着いてきてもらおうかと思ったが、クレアとセルリアだけ残す訳にもいかないから、一緒に外から見てもらうことにした。
「ステラ、体勢を低くしてもらって良い?」
「こうで良い?」
「ありがとう。」
ステラのサイズなら飛び乗れないことはないけど、ステラはまだ人を乗せたことがないし、飛び乗るとバランス崩すかも知れないからな。
「少し、歩いてみて。」
「わかったわ。」
比較的安定している。ステラは馬より力があるからかも知れない。
その後、脚の指示とか基本的なことだけ伝えて、後は人を乗せて歩くことに慣れてもらった。しかし、言葉が通じると、楽で良いな。
でも、馬は非言語のコミュニケーションができてるから良いのであって、言葉が通じていたら乗馬というものは成り立たない気もする。
ちなみに、この世界の馬は――まだ、例が少ないが――知能が高そうだ。ルナは、人間並みの知能を得ているので、特別だが。
ルナ達の居る所に行き、ステラから降りた。
僕は、ステラを撫でながら言った。
「ステラ、お疲れ様。ありがとう。」
「はぁはぁ。こちらこそ、ありがとう。でも、人を乗せるのって、思った以上に大変なのね。ルナさんの凄さがよくわかったわ。」
「ステラは気を遣い過ぎるところも有るから、余計疲れるんだよ。慣れて来れば、もっと楽に動けるようになると思うよ。」
「そんなに簡単に出来たら、私の立場がないじゃない。じゃあ、私の番ね!」
ルナは、ステラに見せつけたいのか、ヤル気満々だ。頑張りすぎないようにね。
なお、ベルタスさんに聞いたところ、やはり乗馬を楽しむ人はかなり余裕がある人だけらしい。
当然、馬はほとんど移動手段として使われており、乗馬用の馬はごく僅かということだ。
もちろん、最初から乗馬用の馬として育てる訳ではなく、長時間の移動に向いていない馬や、加齢によって引退した馬が転用されることになる。
ちなみに、競馬についてそれとなく聞いたら、ベルタスさんにはうまく伝わらなかったため、そういう娯楽はないのだろう。
~~~
ルナから降りると、ベルタスさんが寄って来た。
「ユウマさん、やっぱり凄いですね。うちの馬にもどれか乗ってもらえませんか?」
「お金要るんですよね?」
「ユウマさんに乗ってもらえば馬も良くなるので、お金取るわけにはいきませんよ。馬達も乗せたがっているようなので、是非。」
「そうですか?では、お言葉に甘えて……うゎ!」
後ろから、馬――黒鹿毛の牝馬だ――が頭を擦り付けて来た。
ちょうど運動が終ったばかりだったようで、まだ馬装されたままだった。引いている人が必死に引っ張っていたが、彼女は動こうとしなかった。
「私に乗って!」
『今運動が終ったばかりじゃない。』
ベルタスさんの前なので、念話を使ってその馬に話し掛けた。
「あら?どこから声が?」
不思議そうに辺りを見回すその馬。可愛い……じゃなくて。
『目の前にいる僕だから、気にせず続けて。』
「そうなの?全然足りないし、この人乗せてても、気持ち良く動けないのよ。」
『そうなんだ。』
「その馬がユウマさんに乗って欲しそうですね。」
言葉はわからなくても、ベルタスさんには彼女の気持ちが伝わったようだ。
「運動し終わったばかりなのに、大丈夫ですかね。彼女は大丈夫と言ってますが……。」
「彼女が言うなら大丈夫です。うちの馬なので、乗ってもらって良いですよ。あ、鞍もうちのなんで良かったらそのままどうぞ。」
「ありがとうございます。では、お借りします。えーと、名前は?」
「ベル……なんとかよ。」
「ベルタスさん、彼女、名前が『ベルなんとか』って言ってるんですが。」
「ああ、本当はベルフォーネっていうんですけど、ほとんどの人がベルって呼ぶんですよ。」
「なるほどです。」
「やっぱり、馬と話ができるんですね。申し訳ありませんが、敢えて馬の名前を言わなかったんですよ。」
「そうだったんですか。気にしてないので、大丈夫です。じゃあ、ベル、よろしくね。」
なんか、わざわざ念話を使う必要なかった気がするが、まあ良いか。
運動後ということもあって、軽く乗せてもらうつもりだったのだが……。
色々な人が乗るからだろう、動きも平べったく、脚への反応も悪かったので、ついつい力が入ってしまった。
職業病的な感じかな?
「ありがとうございました。ベル、お疲れ様。強めに乗ってごめんね。」
「ううん。激しくて、気持ち良かったわ。」
また、誤解されそうな発言を……あれ?ルナやステラも聞こえているはずだけど特に反応してないな。僕が勝手に過剰な反応しているだけか。
そう言えば、最近翻訳スキルさんの悪意を感じるんだけど、気のせいかな?
「セルリア、暇だったろう。ごめんね。」
「我は寛大だからな。全然問題ない。あと、我だってあれくらい……。」
いや、馬に対抗しなくて良いからね。
「そう言えば、セルリアは僕を乗せるのに躊躇がなかったけど、以前も人を乗せたことあるの?」
「あったはずだ。しかし、なぜか、それが誰だったか思い出せない。」
どうやら封印前の記憶が曖昧になっているみたいだ。完全に無くなっている訳でもないし、もしかすると封印した獣神が記憶の一部を消しているのかも知れない。
「ところで、セルリアはどれくらいで戦闘訓練できそう?」
「あと3日位かな。」
今日は、セルリアと寝る日なので、お風呂は独りで入った。そう言えば、こっち来て、独りきりになってなかったような……。
ルナ達とは一緒に居ても気疲れしないから、気にならなかったけど、たまには独りでゆっくりする時間も良いな。
お風呂に入りながら、こっちに来てからのことを思い返した。
短い期間に、色々なことが有ったな。
ルナとステラと結婚して、凄く幸せだ。クレアのことは気になるけど、いずれ解決できると信じている。
元の世界の馬達も気になるが、僕でないと駄目ということはないから、問題ないだろう。
「セルリア、おやすみ。」
「我は、クレアに言われたから一緒に寝るだけだからな。ひゃっ!」
セルリアが何か言っていたが、構わず抱き締めた。
鱗がひんやりして、気持ち良いんだもん!これは、良く眠れそうだ。
ステラのサラサラも良いけど、この時期はセルリアも捨てがたいね。
~~~
翌日、セルリアが大幅に魔力が回復したと言っていたので、ステータスを確認してみた。
================
種族:ブルードラゴン
性別:♀
年齢:1,999歳
HP 3,000,000/3,000,000
MP 1,200,000/3,500,000
能力値:▼
スキル:▼
加護:▼
契約主:ユウマ
================
確かに、半分弱まで回復してるな。全力で戦う訳ではなく、クレアの訓練をするなら、これで問題ないのだろう。
僕の魔力が吸い取られたんだろうけど、僕の場合は問題ないかな。
「主の魔力は凄いな。今日からでも、戦闘訓練できるぞ。」
「先ずはタルトに向かわないとね。クレアも今日から向かうということで問題ない?」
「ええ。」
「別に皆で向かわなくても、アタシが行ってテレポートポイント設定して来れば良いんじゃない?」
そう言われれば、その通りだ。
「でも、ステラだけで行かす訳には行かないし、まだステラは僕を乗せて走れるようにはなっていないよね。僕がルナに乗っていくと、セルリアとクレアだけを置いて行くことになってしまうし……。」
『主が我に乗って、ステラに着いて来てもらえば良いのではないか?』
『成る程。セルリア、それは良いね。お願いするよ。』
今のは、セルリアがステラと僕に聞こえるように念話を使ったのだろう。
念のため、僕もステラとセルリアに聞こえるように念話を使ってみたが、うまくいっただろうか?
他の二人には聞こえなかったはずだから、改めて説明した。
「僕がセルリアに乗って、ステラに着いてきてもらうことにする。なので、ルナとクレアは留守番をお願い。」
「私のことなのに、ごめんなさい。」
「良いのよ。クレアは、訓練に向けて、力を蓄えといて。」
「ありがとう、ステラ。」
でも、今日はジョーンズさんの所に行く日なんだよな。
長靴は無理に今日でなくても良いから、明日にしよう。
「悪いけど、出発する前にやることがあるから、ちょっと待っててね。」
急いで、ジョーンズさんの商店に向かった。
「ジョーンズさんは、こちらにいらっしゃいますか?」
「ユウマさんですね。ジョーンズから伝言を預かっております。申し訳ありませんが、今立て込んでいるので、お話するのは明後日にして欲しいとのことでした。」
「わかりました。では、明後日また来ます。」
こちらとしても、都合が良かったな。
家に戻って、すぐにタルトに向かった。
ステラはバイコーンだけあって、馬よりかなり速いし、体力も有る。
セルリアはいつもの感覚からするとかなりゆっくり飛んでいるが、恐らく時速150km位は出ているだろう(僕の感覚だから全く当てにはならないが)。その状態で、タルト迄走り続けた。
「ステラ、お疲れ様。それにしても、凄いね。あの速度で走り続けるなんて。」
「人を乗せて走るよりも楽よ。」
確かに、息も乱れていない。ステラにとっては、人を乗せることがどれだけ大変なことかというのがわかる。
ステラには、街道から見えない場所にテレポートポイントを設定してもらい、一旦家に戻った。
「それで、セルリアもクレアも明日から訓練ということで良い?」
「問題ない。」
「大丈夫よ。」
「わかった。今から、そのように伝えに行くよ。」
ステラと一緒にテレポートして、クラルさんの所に行った。
「急にすみません。こっちは、僕の妻で従魔のステラです。すみませんが、明日から訓練場を使わせてもらいたいと思います。」
「わかりました。午後一からで良いですか?」
「はい。それでお願いします。」
「バイコーンを見たのは初めてです。噂と違って邪悪な感じはしないですね……あ、失礼しました。」
「悪い噂が有るらしいですから、そう言われても仕方ありません。でも、本当はこんなに可愛いんですよ!」
ステラを撫で回すと、ステラも甘えて来た。
「ごちそうさまです。」
「ステラ、今日はお疲れ様。」
その夜、一緒にお風呂に入ったステラにそう言った。今日は、ステラは本当に活躍してくれたからな。
「ユウマも、お疲れ様。」
「ステラは、戦闘訓練の件とは関係ないのに、走らせて申し訳なかったね。」
「気にしなくて良いわ。アタシはユウマの役に立てることが嬉しいの。」
「ありがとう。でも、ステラは普段から凄く役に立ってるよ!」
ステラって、お風呂だとなぜか色っぽく見えるんだよね。
受付に行こうとしたら、ステラが声を掛けてきた。
「ユウマ、お願いがあるんだけど。」
「どうしたの?こんな所で。」
「その……アタシを調教して欲しいの。」
「えっ?」
何その危険な発言。いや、場所的に、乗馬のことだとは思うけど。
「アタシもルナさんのように……というのは無理だと思うけど、せめてユウマを乗せて走れるようになりたいの。いつか、ライアさんも乗せてあげたいし。」
「そう言えば、ライアさん乗せて欲しがってたらしいね。」
「ダメかなぁ?」
ちょっと首を傾げて、甘えた声を出すステラ。可愛すぎる!
「ダメじゃないけど、ここでなくても……いや、安全を考えるとここの方が良いかな。ちょっと、待っててね。」
「すみません!」
「なんでしょう。あ、ユウマさん、おはようございます。」
受付に向かって声を掛けると、なぜかベルタスさんが出て来た。
「おはようございます。ベルタスさん、なぜここに?」
「たまたま、用事が有って受付に来てたのです。それより、どうされましたか?」
「ベルタスさんが居てちょうど良かったです。実は、ステラ――このバイコーンが、トレーニングして欲しいらしくて、少し馬場をお借りしたいのですが、大丈夫ですか?」
「ユウマさんは会員登録されているので、大丈夫ですよ。馬持ちの会員さんがお子さんとか連れてきて、ご自分の馬に乗せて歩かせたりすることは有るので、それと似たようなものでしょう。実際は逆のパターンですが。」
「申し訳ありません。」
「いえいえ。でも、バイコーンが人を乗せたがるというのは聞いたことないですね。そもそも、バイコーンが人と一緒にいるというのも聞いたことないですが。」
「まあ、そうですよね。あ、ちなみに、ステラも私の妻になりました。」
「えっ!?」
ルナに乗る前に、ステラに乗ることにした。
長靴はまた借り物だ。できあがるのが待ち遠しい。明日できるんだっけ?
ルナはアドバイザー(?)として、着いてきてもらおうかと思ったが、クレアとセルリアだけ残す訳にもいかないから、一緒に外から見てもらうことにした。
「ステラ、体勢を低くしてもらって良い?」
「こうで良い?」
「ありがとう。」
ステラのサイズなら飛び乗れないことはないけど、ステラはまだ人を乗せたことがないし、飛び乗るとバランス崩すかも知れないからな。
「少し、歩いてみて。」
「わかったわ。」
比較的安定している。ステラは馬より力があるからかも知れない。
その後、脚の指示とか基本的なことだけ伝えて、後は人を乗せて歩くことに慣れてもらった。しかし、言葉が通じると、楽で良いな。
でも、馬は非言語のコミュニケーションができてるから良いのであって、言葉が通じていたら乗馬というものは成り立たない気もする。
ちなみに、この世界の馬は――まだ、例が少ないが――知能が高そうだ。ルナは、人間並みの知能を得ているので、特別だが。
ルナ達の居る所に行き、ステラから降りた。
僕は、ステラを撫でながら言った。
「ステラ、お疲れ様。ありがとう。」
「はぁはぁ。こちらこそ、ありがとう。でも、人を乗せるのって、思った以上に大変なのね。ルナさんの凄さがよくわかったわ。」
「ステラは気を遣い過ぎるところも有るから、余計疲れるんだよ。慣れて来れば、もっと楽に動けるようになると思うよ。」
「そんなに簡単に出来たら、私の立場がないじゃない。じゃあ、私の番ね!」
ルナは、ステラに見せつけたいのか、ヤル気満々だ。頑張りすぎないようにね。
なお、ベルタスさんに聞いたところ、やはり乗馬を楽しむ人はかなり余裕がある人だけらしい。
当然、馬はほとんど移動手段として使われており、乗馬用の馬はごく僅かということだ。
もちろん、最初から乗馬用の馬として育てる訳ではなく、長時間の移動に向いていない馬や、加齢によって引退した馬が転用されることになる。
ちなみに、競馬についてそれとなく聞いたら、ベルタスさんにはうまく伝わらなかったため、そういう娯楽はないのだろう。
~~~
ルナから降りると、ベルタスさんが寄って来た。
「ユウマさん、やっぱり凄いですね。うちの馬にもどれか乗ってもらえませんか?」
「お金要るんですよね?」
「ユウマさんに乗ってもらえば馬も良くなるので、お金取るわけにはいきませんよ。馬達も乗せたがっているようなので、是非。」
「そうですか?では、お言葉に甘えて……うゎ!」
後ろから、馬――黒鹿毛の牝馬だ――が頭を擦り付けて来た。
ちょうど運動が終ったばかりだったようで、まだ馬装されたままだった。引いている人が必死に引っ張っていたが、彼女は動こうとしなかった。
「私に乗って!」
『今運動が終ったばかりじゃない。』
ベルタスさんの前なので、念話を使ってその馬に話し掛けた。
「あら?どこから声が?」
不思議そうに辺りを見回すその馬。可愛い……じゃなくて。
『目の前にいる僕だから、気にせず続けて。』
「そうなの?全然足りないし、この人乗せてても、気持ち良く動けないのよ。」
『そうなんだ。』
「その馬がユウマさんに乗って欲しそうですね。」
言葉はわからなくても、ベルタスさんには彼女の気持ちが伝わったようだ。
「運動し終わったばかりなのに、大丈夫ですかね。彼女は大丈夫と言ってますが……。」
「彼女が言うなら大丈夫です。うちの馬なので、乗ってもらって良いですよ。あ、鞍もうちのなんで良かったらそのままどうぞ。」
「ありがとうございます。では、お借りします。えーと、名前は?」
「ベル……なんとかよ。」
「ベルタスさん、彼女、名前が『ベルなんとか』って言ってるんですが。」
「ああ、本当はベルフォーネっていうんですけど、ほとんどの人がベルって呼ぶんですよ。」
「なるほどです。」
「やっぱり、馬と話ができるんですね。申し訳ありませんが、敢えて馬の名前を言わなかったんですよ。」
「そうだったんですか。気にしてないので、大丈夫です。じゃあ、ベル、よろしくね。」
なんか、わざわざ念話を使う必要なかった気がするが、まあ良いか。
運動後ということもあって、軽く乗せてもらうつもりだったのだが……。
色々な人が乗るからだろう、動きも平べったく、脚への反応も悪かったので、ついつい力が入ってしまった。
職業病的な感じかな?
「ありがとうございました。ベル、お疲れ様。強めに乗ってごめんね。」
「ううん。激しくて、気持ち良かったわ。」
また、誤解されそうな発言を……あれ?ルナやステラも聞こえているはずだけど特に反応してないな。僕が勝手に過剰な反応しているだけか。
そう言えば、最近翻訳スキルさんの悪意を感じるんだけど、気のせいかな?
「セルリア、暇だったろう。ごめんね。」
「我は寛大だからな。全然問題ない。あと、我だってあれくらい……。」
いや、馬に対抗しなくて良いからね。
「そう言えば、セルリアは僕を乗せるのに躊躇がなかったけど、以前も人を乗せたことあるの?」
「あったはずだ。しかし、なぜか、それが誰だったか思い出せない。」
どうやら封印前の記憶が曖昧になっているみたいだ。完全に無くなっている訳でもないし、もしかすると封印した獣神が記憶の一部を消しているのかも知れない。
「ところで、セルリアはどれくらいで戦闘訓練できそう?」
「あと3日位かな。」
今日は、セルリアと寝る日なので、お風呂は独りで入った。そう言えば、こっち来て、独りきりになってなかったような……。
ルナ達とは一緒に居ても気疲れしないから、気にならなかったけど、たまには独りでゆっくりする時間も良いな。
お風呂に入りながら、こっちに来てからのことを思い返した。
短い期間に、色々なことが有ったな。
ルナとステラと結婚して、凄く幸せだ。クレアのことは気になるけど、いずれ解決できると信じている。
元の世界の馬達も気になるが、僕でないと駄目ということはないから、問題ないだろう。
「セルリア、おやすみ。」
「我は、クレアに言われたから一緒に寝るだけだからな。ひゃっ!」
セルリアが何か言っていたが、構わず抱き締めた。
鱗がひんやりして、気持ち良いんだもん!これは、良く眠れそうだ。
ステラのサラサラも良いけど、この時期はセルリアも捨てがたいね。
~~~
翌日、セルリアが大幅に魔力が回復したと言っていたので、ステータスを確認してみた。
================
種族:ブルードラゴン
性別:♀
年齢:1,999歳
HP 3,000,000/3,000,000
MP 1,200,000/3,500,000
能力値:▼
スキル:▼
加護:▼
契約主:ユウマ
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確かに、半分弱まで回復してるな。全力で戦う訳ではなく、クレアの訓練をするなら、これで問題ないのだろう。
僕の魔力が吸い取られたんだろうけど、僕の場合は問題ないかな。
「主の魔力は凄いな。今日からでも、戦闘訓練できるぞ。」
「先ずはタルトに向かわないとね。クレアも今日から向かうということで問題ない?」
「ええ。」
「別に皆で向かわなくても、アタシが行ってテレポートポイント設定して来れば良いんじゃない?」
そう言われれば、その通りだ。
「でも、ステラだけで行かす訳には行かないし、まだステラは僕を乗せて走れるようにはなっていないよね。僕がルナに乗っていくと、セルリアとクレアだけを置いて行くことになってしまうし……。」
『主が我に乗って、ステラに着いて来てもらえば良いのではないか?』
『成る程。セルリア、それは良いね。お願いするよ。』
今のは、セルリアがステラと僕に聞こえるように念話を使ったのだろう。
念のため、僕もステラとセルリアに聞こえるように念話を使ってみたが、うまくいっただろうか?
他の二人には聞こえなかったはずだから、改めて説明した。
「僕がセルリアに乗って、ステラに着いてきてもらうことにする。なので、ルナとクレアは留守番をお願い。」
「私のことなのに、ごめんなさい。」
「良いのよ。クレアは、訓練に向けて、力を蓄えといて。」
「ありがとう、ステラ。」
でも、今日はジョーンズさんの所に行く日なんだよな。
長靴は無理に今日でなくても良いから、明日にしよう。
「悪いけど、出発する前にやることがあるから、ちょっと待っててね。」
急いで、ジョーンズさんの商店に向かった。
「ジョーンズさんは、こちらにいらっしゃいますか?」
「ユウマさんですね。ジョーンズから伝言を預かっております。申し訳ありませんが、今立て込んでいるので、お話するのは明後日にして欲しいとのことでした。」
「わかりました。では、明後日また来ます。」
こちらとしても、都合が良かったな。
家に戻って、すぐにタルトに向かった。
ステラはバイコーンだけあって、馬よりかなり速いし、体力も有る。
セルリアはいつもの感覚からするとかなりゆっくり飛んでいるが、恐らく時速150km位は出ているだろう(僕の感覚だから全く当てにはならないが)。その状態で、タルト迄走り続けた。
「ステラ、お疲れ様。それにしても、凄いね。あの速度で走り続けるなんて。」
「人を乗せて走るよりも楽よ。」
確かに、息も乱れていない。ステラにとっては、人を乗せることがどれだけ大変なことかというのがわかる。
ステラには、街道から見えない場所にテレポートポイントを設定してもらい、一旦家に戻った。
「それで、セルリアもクレアも明日から訓練ということで良い?」
「問題ない。」
「大丈夫よ。」
「わかった。今から、そのように伝えに行くよ。」
ステラと一緒にテレポートして、クラルさんの所に行った。
「急にすみません。こっちは、僕の妻で従魔のステラです。すみませんが、明日から訓練場を使わせてもらいたいと思います。」
「わかりました。午後一からで良いですか?」
「はい。それでお願いします。」
「バイコーンを見たのは初めてです。噂と違って邪悪な感じはしないですね……あ、失礼しました。」
「悪い噂が有るらしいですから、そう言われても仕方ありません。でも、本当はこんなに可愛いんですよ!」
ステラを撫で回すと、ステラも甘えて来た。
「ごちそうさまです。」
「ステラ、今日はお疲れ様。」
その夜、一緒にお風呂に入ったステラにそう言った。今日は、ステラは本当に活躍してくれたからな。
「ユウマも、お疲れ様。」
「ステラは、戦闘訓練の件とは関係ないのに、走らせて申し訳なかったね。」
「気にしなくて良いわ。アタシはユウマの役に立てることが嬉しいの。」
「ありがとう。でも、ステラは普段から凄く役に立ってるよ!」
ステラって、お風呂だとなぜか色っぽく見えるんだよね。
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