異世界から来た馬

ひろうま

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第6章 新たなる出発

第35話 新生活

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◆Side アイリス◆
「あのー。その家なんだけど、結構遠くて……。申し訳ないんだけど、ここまで通うのにアイリスにはトラックの荷台に乗ってもらうしかなくて……。」
私が感激していると、シメイは凄く言い難そうにそう言った。
「問題ないわよ。」
「え?」
「シメイと一緒に暮らせるなら、そんな些細なことどうでも良いわ。私としては、シメイを乗せて通っても良いんだけど。」
「ありがとう!でも、さすがにアイリスに乗って来るのは危ないから、やめとくよ。」
「そう……。」
もっと頼って欲しいのに、ちょっと残念だ。
でも、シメイが私のことを気遣ってくれるのも、それはそれで嬉しいと思った。

~~~~~~~~~~
しばらくシメイと暮らす生活をしてみて、わかったのは、私たち馬は人間の家で暮らすのには向いていないということだ。
念願のお風呂も入れるかもとちょっと期待してしまっていたが、無理だった。
向こうの世界にいた時も、私は普段厩舎で生活していて、たまに入れてもらったお父さんの家はあまり居心地は良くなかった。
ルナおばさんのようにずっと暮らしていたら、違うのかも知れないけど……。
あと、トラックに乗るというのも結構大変で、シメイが心配してくれていた理由が良くわかった。
ただ、この家の場所は乗馬クラブより魔力を感じることができた。
魔法が使える程ではないが、ここではあまりお腹がすかない。
それに、何よりシメイと一緒にいられることに幸せを感じるので、ここに住んで良かったと思っている。

◆Side 紫明◆
アイリスは通勤について、あっさり了承してくれた。
本当に僕と暮らせるのが嬉しくてしょうがないみたいで、僕としてもものすごく嬉しい。
通勤のことを真っ先に気にしたけど、実際一緒に暮らすとなると、他にも色々問題はあると思う。
例えば、食事はどうするのか、とか……。
でも、アイリスと二人で考えれば、何とかなりそうな気がするから不思議だ。
そう考えると、僕たちって夫婦みたいだな。
というか、実質もう夫婦と言って良いと思う。
それに、一緒に暮らすようになれば、夫婦の営みも人目を憚らずに……い、いや、それは今は置いておこう……。

~~~~~~~~~~
アイリスと借家に住み始めて一週間が経った。
実は借家の契約を済ましてから、社長にまだ話していないことに気付いて焦ったりした。
しかし、社長はあっさりと認めてくれて、しかも預託料も減額してくれた。
そう言えば、アイリスを買いたい話をした頃から社長の雰囲気が変わったような気がする。
以前の社長だったら、恐らくそんなことはしてくれなかっただろう。

アイリスとの生活は、今のところそこそこ順調だ。
気になっていた食事についても、アイリスの食べる量がかなり減ったため、濃厚飼料を乗馬クラブから少し分けてもらうくらいで、後は家の辺りの草だけで済んだ。
冬になって草がなくなったら、考えないといけないが……。
あと、お風呂だが、アイリスは浴室に入るのも無理だった。
彼女はお風呂を期待していたみたいなので、それが非常に残念だ。
将来もし家を持つとしたら、アイリスと一緒に入れるお風呂を作ろうと心に誓った。
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