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「ゆびきりげんまん」舞台台本版
第二幕 ④
しおりを挟むカイル、両手に切れたそれぞれコードを掴んだ仕草で、立ち上がる。
カイル「何言ってんだよ! さっきから聞いてりゃ、
ベラベラと企業秘密垂れ流しにしやがって。
おめーら、みんなバカだろ? んで、実琴。お前は最大級のバカだ。」
実琴、ムッとしたように、カイルを睨む。
カイル「よし! さすが単純娘。」
実琴 「単純ってっ!!」
カイル「いいぞ。その調子で怒ってろよ?」
実琴 「はぁ?」
カイル、両手で持っていたコードを結ぶ仕草。
天遣3人「「「あ!」」」
死神3人「「「あー!!」」」
カイル、硬結び後、引っ張ってきちんと結ばれているか、確認。
シャイン、駆け寄ってきて、結び目をひったくる仕草。
シャイン「バカはお前だ! なんて力技を・・・。」
アズ、エル、シャインの両側から、手元を覗き込む。
アズ 「結んじゃった。」
エル 「じゃったぁ~。」
アズ 「ちゃんと、くっついてるし。」
エル 「くっついてるぅ~。」
アズ・エル「「うっそぉーーー!!」」
ジブリ「(カイルに向かって)おいっ! こんな事したらっ!!」
カイル「いいんだよ。元々アクシデントで切れたんだ。
このくらいしたって構わねーって。」
イズラ「でも、カイルが・・・。」
カイル「力なんてもんは、守る相手がいなきゃ、意味ねーだろ。」
ジブリ「だからって・・・。」
シャイン「ひとまず、上に報告だ!」
シャイン、慌てて駆けて行く。
アズ 「あー! 待ってー!」
エル 「待ってぇ~!」
アズ 「置いてかないでー!」
エル 「ないでぇ~~~!」
アズ・エル、退場。
実琴 「何が起きてるの?」
ウリ 「(呆然と)カイルが、おねーさんのシルバーコード、
結んで繋いじゃった。」
実琴 「え!? そんなこと出来るの!?」
ウリ、首を横に振る。
ウリ 「聞いたことない。でも、ちゃんと繋がってる。おねーさん生きてる。」
実琴 「ホントに!? (嬉しそうに)それじゃあ・・・
(天遣達の様子に気づいて)ひょっとして、良くない事・・・なの?」
ウリ 「分かんない。ただ、カイルの力が、半分ぐらいしか、・・・感じない。」
実琴、カイルを見る。
カイル「これで未来は繋がったぜ? さあ、どうする?」
実琴 「・・・カイル。貴方、力が・・・。」
カイル「んーな事はどうでもいい。重要なのは、お前がどうするかだ。」
実琴 「良くないよ! だって、力が半分てっ・・・。」
カイル「安心しろ。お前の帰り道ぐらいなら、作れる。」
実琴 「そーゆー事、言ってるんじゃない!
私の事なんて、どーだっていいじゃない!」
カイル「(さえぎるように)実琴!!」
実琴、ビックリして黙る。
ジブリ「カイル。怒鳴らないんじゃないのか? 約束は守れ。」
イズラ「ジブリ、今のは仕方ねぇよ。」
カイル「イズラ、いい。(実琴に向かって)怒鳴って、悪かった。」
実琴 「・・・・・・。どうもこうも。
・・・生きてるんなら、帰るに決まってる。」
カイル「実琴、俺はそういう事を聞いてるんじゃねぇ。」
ジブリ「シルバーコードは、そう簡単に消えかかったり、
本来、縛れるほど頑丈には出来ていない。」
イズラ「でもキミは、最初っから、それをいとも簡単にこなしてンだよね。」
カイル「お前は、こんなにも生きたがってる。
なのになんで、そんなに死にたがりなんだ?」
実琴、怯えるかのように、首を横に振る。
カイル「なんで、そんなに簡単に『死』を認めちまう?」
実琴、両耳をふさぐ。
ウリ 「おねーさん。どーして生きるのが、怖いの?」
照明、実琴のみに。
元彼①(声のみ)
『お前にとって、彼氏はブランドなんだよな。
連れて歩く分には自慢できる。』
実琴 「彼氏自慢して、何が悪いの?」
元彼②(声のみ)
『自慢できる彼氏なら、誰もいいんだろ?』
実琴 「そんな事ない!! 誰でも・・・でなんか、選んでない!」
元彼③(声のみ)
『お前なら、1人でも大丈夫だよ。』
実琴 「大丈夫じゃない! 1人はヤダ!!
私は、そんなに傲慢じゃない。そんなに強くない。」
カイル「ただ、負けず嫌いで、弱いところを見られたくないだけ。・・・だろ?」
カイル、照明の中に入ってくる。
実琴、ビックリしたように、カイルを見る。
ジブリ「小さい時から入退院の繰り返し。
成長して、手術に耐えられる体力と身体手に入れて。やっと強くなれた。」
ジブリ、照明の中へ。
イズラ「もっと、もっと強くなって、今度は自分が皆を守れるように・・・って。
とても頑張り屋だよな。」
イズラ、照明の中へ。実琴の頭を優しく撫でる。
実琴、何かに気付いたかのように、その上に手を重ねる。
ウリ、駆け寄るように実琴の横へ。
ウリ 「でも、頑張りすぎちゃって、
みんなから『強い子』だって、思われちゃった。
ごめんね、『みっちゃん』。僕『頑張れ』って、言いすぎちゃったね。」
実琴 「守護・・・天遣・・・私だけの?」
イズラ「ふつー、ずーーっと見守る事を、『守護』するってゆーンじゃん?」
カイル「俺らは、ずっと実琴を見てきた。それも、弱いトコばっか。
今更なんだよ。お前は。」
カイル、笑う。
実琴 「・・・友達が、いたの。」
智弘、熾帆、登場。照明。
実琴 「中学の3年間、同じクラスで、大親友だった。
いつも3人一緒で、楽しくて。男女の区別なんてなかった。
・・・そう、思ってた。」
智弘 「ごめんな、実琴。俺達、付き合うことにしたから。」
熾帆 「実琴、ごめんね。実琴が智弘のこと好きなの分かってるけど、
私、嘘つけない。実琴のこと大切で大好きだから、本当のこと言うね。」
智弘 「俺も、実琴の事、大切な友達だって思ってる。
実琴の気持ちも嬉しいけど、熾帆の方が好きなんだ。」
熾帆 「恋愛で友情が壊れるなんて、私、思わないよ。ね? 実琴もそうでしょ?」
智弘 「そりゃ、3人一緒に遊ぶ事は少なくなるけど。俺達の友情は一生だ。」
熾帆 「今まで通り、3人でもちゃんと遊ぼうね!」
実琴 「うん。・・・遊ぼう。」
熾帆 「そうだ! 高校入って、実琴にも彼氏が出来たら、
今度は4人で遊ぼうよ。」
智弘 「いいな。それ。Wデート出来るじゃん!」
熾帆 「そうしよ! ね? 実琴!」
実琴 「うん。・・・私も、がんばって彼氏作んなきゃ・・・」
智弘、熾帆、楽しそうにうなずき、ハケ。照明戻る。
実琴 「なんなの? あの無神経さ。悔しいじゃない。
別に、智弘なんて、好きじゃなかった。
ただ、皆がそう決め付けたから、適当に合わせてただけ。
それをネタに、おしゃべりが楽しかった。
途中から、熾帆も好きだって言い出して、
お互い正々堂々と勝負しよう・・・って。
それが楽しかっただけなのに・・・。また3人で? 遊べるわけない。
4人にならなきゃ・・・。
負けないくらいのカッコイイ、素敵な彼氏作らなきゃ・・・。」
ジブリ「見事なまでの意地っ張りだ。振られるわけだな。」
実琴 「・・・うん。」
イズラ「好きで付き合うわけじゃねーもんなぁ。」
実琴 「・・・うん。」
ウリ 「それじゃあ、一緒に居ても、楽しくないね。」
実琴 「・・・うん。」
カイル「おまけに、男見る目も、無ぇときてる。」
実琴 「・・・う(うなづきかけてやめる)・・・仕方ないでしょ?
初恋が初恋なんだから。」
実琴、不満げにカイルを流し見る。
つられて、ジブリ、イズラ、ウリも、カイルを見る。
カイル、気まずそうに、素知らぬ顔。実琴、笑う。
実琴 「まーったく。
誰かさんが、出来もしない約束してくれたおかげで、いーめーわく。」
カイル「俺はだなっ!!」
実琴 「ど・な・ら・な・い!!」
カイル「ぐっ」
実琴、笑う。
実琴 「さて・・・と。・・・帰る。」
天遣4人、ビックリしたように実琴を見る。
実琴 「だって、ウリちゃん産まなきゃいけないし。
幸せな家庭も、築けるんでしょ?」
ウリ 「でも・・・その前には・・・。」
実琴 「なぁに? 産んでほしくないの?」
ウリ 「そうじゃないけどっ! でもっ!!」
実琴 「うん。分かってる。でもそれって、貴方達にまた会えるって事でしょ?」
カイル「お前なぁ! そうそう簡単にっ!!」
実琴 「分かってる!! そう易々と『死』を選んだりしない。ちゃんと生きる。」
イズラ「本当に?」
実琴 「うん。頑張る。・・・だから・・・さ。約束して?」
カイル「ん?」
実琴 「もう、お嫁さんにしてくれなくてもいい。
いくらでも怒鳴っていいから。
・・・だから、その代わり、私が死んだ時は、貴方達が迎えに来て?」
ジブリ「実琴・・・それは・・・」
実琴 「管轄外だなんて言わせない。ちゃあんと、おばーちゃんまで生きるから。」
アズ、エル、こっそり登場。
実琴 「じゃないと、老体鞭打って、回収しに来た死神達、
蹴り飛ばして追い返してやる。」
アズ、エル、顔を見合わせて、お尻を押さえつつ、逃げていく。
カイル「(笑って)分かった。」
イズラ・ジブリ・ウリ「「「カイル!」」」
実琴 「ほんとっ? オプションの羽根つきだよ?」
カイル「ああ。死神よりも早く駆けつけて、
大声で『ばかやろう!』って怒鳴りつけてやる。」
実琴、笑顔でうなずく。
音楽。
カイル、実琴に手を差し出す。
実琴、その手を取ろうとするも、
ウリが横から実琴の手をつかみ、引っ張っていく。
カイル、慌てて追いかける。
イズラ、ジブリ、笑いながら、その後を付いて行く。
(暗転。)
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