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お酒は飲んでも飲まれるな

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今日は聖夜。
街が祭り一色に染まり、カップル達が街の至る所で腕を組み、愛を囁いている。
そんな街を荒んだ目で一人で歩く勇者がいた。
その勇者の名前はアルベルト。
背丈は180cmくらいで、顔も物語の王子が飛び出してきたかのような容貌でとてもモテそうである。
しかも、勇者というのも比喩ではなく、先日世界を救ったばかりである。
普通勇者と言ったら、その国の姫様とくっついたり、故郷に残してきた幼馴染と結婚したりするものではなかろうか。
そんな彼がどうして?と画面の前のあなたも思ったであろう。
考えられるのならば、性格の悪さであろうと思い至るだろう。
しかし、彼はとても良いとは言えないが困った人がいたら助けるくらいのお人好しである。
あと、もう一つ考えられるのなら性癖の点であろうか。
彼は、ノーマルな性癖だし、〇〇フェチというのもない。
では、何故か。
真相を語ろう。

彼はモテないわけではなかった。反対にモテにモテた。
彼のたびのパーティー(ハーレム要員とも言う)が十人ほど出来た程であった。
彼はきっと優柔不断すぎて選べなかったのだろう。
誰一人にも手を出さなかった。
そのせいで、あの悲劇が起こってしまった…。

その悲劇というのは、全員、ハーレム要員同士でくっついてしまったことだった。
確かに、その前振りはあった。
なんか距離近いなーとかその程度の前振り。
でも、本気でくっつくなど夢にも思うだろうか?しかも、全員。
そのせいで、ハーレム要員のギスギスした雰囲気がいつの間にか┌(┌'ω')┐ユリィ…な雰囲気に変わってしまったのだった…。
それを知らないアルベルト鈍感野郎は、聖夜ということでハーレム要員を片っ端から誘うが、誰も首を縦に振らなかった。
そして、極めつけには、
「私は真実の愛を見つけたからあなたと一緒には居られないわ…」
というようなセリフを全員から貰い、彼は生きる屍となった。

そして冒頭に戻る。

先程より、恋人たちに幸せオーラをばら撒かれ、ライフを奪われ続けている彼は、まるで屍というよりもう屍だった。骨だった。

そしてそんな中、1軒のバーを見つけた。
雰囲気の良さそうなバーで、入ってみようと思い、扉を開けるとカップルらしき人達もいなかった。
彼は安息の地を見つけた安心感でほっと息を吐いた。
「いらっしゃい、見ないお客さんだね?ここは初めてかい?」
声を掛けてきたのはこのバーのマスターであろうか。
恐ろしい程に顔が整っている男だった。
背丈は彼よりすこし高いぐらいだろうか。
「あ、ああ……。」
彼は、急に声をかけられて驚いたのもあり、声をかけてもらったが、気のない返事を返すしかなかった。
「カウンター席に座らないか?話し相手がいなくて退屈なんだ」
とマスターが言ったので、彼はその言葉に甘えた。
きっとマスターは、聖夜に一人な俺に気を使ってくれたのだろうと彼は思ったからだ。

それから彼は、カウンター席に座り、酒を呑んでツマミをつまんで……を繰り返していた。
時折、マスターの話に答えながら。

そして、呑んでくうちにべらんめえ口調になってきたので、流石にマスターは止めたが彼はやめなかった。
「もう知らないからね」
とため息を吐くマスターの声をBGMに彼は眠った。
 

「ぶえっくしょん!!」
彼が大きいくしゃみで目を覚ますとそこは知らない天井だった。
そして全裸だった。
二日酔いはひどいし、何故か腰も痛いし、彼は散々だと思った。

ふと視線を横に向けたら何故かバーのマスターがいた。
しかも裸。

「はっ?」
彼は信じたくなくて思わず声が漏れた。
そして彼はマスターの顔をガン見した姿勢のままよく考えた。
腰が痛い意味を。そしておしりの穴から何かがたれてくる意味を。
そこに行き着くのはひとつしかない。

画面の前のあなたならもう分かるだろう。
分からないという人はそれでもいい。
と言うよりそのままのあなたでいて欲しい。

彼も同じ考えに至ったのだろう、発狂した。


彼は知らなかった。

発狂した後、その声で起きたマスターより2回戦が開かれてしまうことも。


実は前から彼を狙っていて、マスターがパーティを百合化させた原因だということも。

彼は知らない。

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