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煉獄(れんごく)業(ごう)
領域(テリトリー)Ⅱ
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「まりあっ!!」
「けいさっ……!」
傷だらけの体を引きずりながら溶けた床に飛び込む慶。
目の前で沈みゆく少女の体に手を伸ばし抱え上げると、勢いよく浮上しながら鎖を砕く。その合間にも流れ出るお びただしい血と力に美しい顔が苦痛に歪んで呼吸が乱れた。
「無駄だ無駄だぁああ!! 空間ごと引きずりこんでやる!!」
男の体から無数に飛び出してきた鎖が張り巡らされた網のように一帯を覆い、慶の行く手を阻む。
「チッ! 突っ込むぞ!!」
「ど、どこへ……!?」
上を目指していたはずの慶は急激に方向を転換すると、鎖男とは別の男へ向けて速度を上げた。
(……いまの俺じゃこの結界を突破することは不可能だ……! 頼む……っ!! 誰か気づいてくれ!!)
「堕天使になるなんざ真っ平御免なんだよ!」
ボロボロな慶の捨身の一撃が闇を纏う男目がけて光となって放たれた。
「…………」
慶の渾身の攻撃にも避けようとしない男は、ただただ無言のままこちらを見つめている。
―――キーンッ!!
「結界かっ!」
攻撃が男に届く前に剣は無残にも弾き返されてしまった。
「……そんなに堕天使になるのが嫌なら……"禁忌"を解放したらどうだ?」
「黙れっっ!」
激昂した慶が再び攻撃を繰り出す。まりあは彼に守られながらも男の顔を見ようと懸命に目を凝らしていた。
(……聞いた事のある声……っ誰!? だれなの!?)
「"まりあの禁忌"を架せられた意味をよく考えるんだな」
「とっくに知ってんだよそんなことっ!」
「……なら……理解出来ないただの馬鹿ということか……いいだろう。望み通り殺してやる」
人間とは思えないほど禍々しい男の目がギラリと赤く光る。
と同時に刃のように鋭い爪がみるみる両手に生え、慶の喉元目がけ猛スピードで突っ込んできた。
「……慶さん危ない……っ!!」
咄嗟に彼を庇おうと首へ手をまわし、小さな背中でそれを受け止めようとしたまりあの頭上で鎖が弾け飛ぶ。
――バァァアアンッ!!
闇に差し込む一筋の光。
鎖の結界に覆われた禍々しい空間へ聖なる光を纏った何者かが勢いよく飛び込んでくる。
「慶っっ! まりあっっっ!!」
「まりあ!!」
ハッと顔を上げた先には焔と聖が血相を変えてこちらに向かって来るのが見えた。
そして彼らの手には既に何かが握られており、臨戦態勢にあることがわかった。
「……っ戦うな二人とも! この空間は奴らの手のなかだ!!」
「なに……っ!?」
「ひゃぁああっは! 飛んで火に入る夏の虫ってかぁああ!? 四人まとめて引きずり込んでやるっっ!!」
「けいさっ……!」
傷だらけの体を引きずりながら溶けた床に飛び込む慶。
目の前で沈みゆく少女の体に手を伸ばし抱え上げると、勢いよく浮上しながら鎖を砕く。その合間にも流れ出るお びただしい血と力に美しい顔が苦痛に歪んで呼吸が乱れた。
「無駄だ無駄だぁああ!! 空間ごと引きずりこんでやる!!」
男の体から無数に飛び出してきた鎖が張り巡らされた網のように一帯を覆い、慶の行く手を阻む。
「チッ! 突っ込むぞ!!」
「ど、どこへ……!?」
上を目指していたはずの慶は急激に方向を転換すると、鎖男とは別の男へ向けて速度を上げた。
(……いまの俺じゃこの結界を突破することは不可能だ……! 頼む……っ!! 誰か気づいてくれ!!)
「堕天使になるなんざ真っ平御免なんだよ!」
ボロボロな慶の捨身の一撃が闇を纏う男目がけて光となって放たれた。
「…………」
慶の渾身の攻撃にも避けようとしない男は、ただただ無言のままこちらを見つめている。
―――キーンッ!!
「結界かっ!」
攻撃が男に届く前に剣は無残にも弾き返されてしまった。
「……そんなに堕天使になるのが嫌なら……"禁忌"を解放したらどうだ?」
「黙れっっ!」
激昂した慶が再び攻撃を繰り出す。まりあは彼に守られながらも男の顔を見ようと懸命に目を凝らしていた。
(……聞いた事のある声……っ誰!? だれなの!?)
「"まりあの禁忌"を架せられた意味をよく考えるんだな」
「とっくに知ってんだよそんなことっ!」
「……なら……理解出来ないただの馬鹿ということか……いいだろう。望み通り殺してやる」
人間とは思えないほど禍々しい男の目がギラリと赤く光る。
と同時に刃のように鋭い爪がみるみる両手に生え、慶の喉元目がけ猛スピードで突っ込んできた。
「……慶さん危ない……っ!!」
咄嗟に彼を庇おうと首へ手をまわし、小さな背中でそれを受け止めようとしたまりあの頭上で鎖が弾け飛ぶ。
――バァァアアンッ!!
闇に差し込む一筋の光。
鎖の結界に覆われた禍々しい空間へ聖なる光を纏った何者かが勢いよく飛び込んでくる。
「慶っっ! まりあっっっ!!」
「まりあ!!」
ハッと顔を上げた先には焔と聖が血相を変えてこちらに向かって来るのが見えた。
そして彼らの手には既に何かが握られており、臨戦態勢にあることがわかった。
「……っ戦うな二人とも! この空間は奴らの手のなかだ!!」
「なに……っ!?」
「ひゃぁああっは! 飛んで火に入る夏の虫ってかぁああ!? 四人まとめて引きずり込んでやるっっ!!」
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