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白羽(しろう)聖(ひじり)

唯一の打開策

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 あの後、翼は決してまりあが役立たずなどではないことを懸命に説いてくれたが、いまは逆にその優しさが辛い。

(なにが起こっているか教えてもらえないのは、やっぱりそういうことだもん……)

 蒼白のまま目を閉じている麗を横目で見ながら、まりあに出来ることといえば、空になった皆のマグカップへ温かい飲み物へ注ぐことしかない。
 何度目かとなるその作業を行おうとキッチンへ向かうと、あとをついてきたのは父親の聖だった。

「……まりあちゃんごめんね、付き合わせちゃって」

 表情に疲れが見え始めたまりあの目元を聖の親指がやさしくなぞる。

「ううん。……麗先生が具合悪いのと、さっきお父さんが飛び出していったのって無関係ってわけじゃないんでしょう?」

 確信はなかったけれど、それまでなんとなく平和だった雰囲気が一変、ガラリと変わったのは紛れもない事実だからだ。

「……そうだね」

 そこまで言ってくれたのなら、もう少し話が聞けるかと期待したが、ニコリと笑った聖はまったく別の話題を口にする。

「まりあちゃんお腹すいてない? もう少しで夜も明けるし、栄養たっぷりなサンドウィッチでも作ろうか?」

「……うん、ありがと。私も手伝うよ」

 こんなときに笑うのは不謹慎かもしれないけれど、あからさまな聖の話題逸らしに少なからず傷ついたまりあは笑って感情を誤魔化すしかなかった。

 やがて慶も見つからないまま数日が経過し――……
 ほとんど目を覚まさなくなってしまった麗へ皆の焦りは募る。

「完全に想定外だな」

 学校へ行ったまりあのいない部屋の中で焔が呟いた。すると、部屋の隅にいた朧と翼が近づいてきて。

「煉さんの予想は当たっておりました。限界が近い麗さんは長くは耐えられないだろうと慶さんを送り出したのですから」

「やはり、まりあ先輩を麗先輩から遠ざけるしかないようですね」

 まりあへできることはないと言っていたにも関わらず、そう発言した翼。そして彼の言葉に朧と焔が頷いた。

「麗は不本意だろうが、このまま向こうへ連れて行くしかないだろうな」

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