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御崎(みさき) 朧(おぼろ)
焔の煽り
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(翼くんって不思議……マジシャンか何かなのかな?)
図書館に入り込んだ時もそうだが出てきたときにどんな手を使ったのかわからない。
聞いてみてもただ微笑み返されるだけで、実は鍵を持っているのかもしれないという安易な結末に行きついてしまう。
「おいガキども」
百合の園の近くを通り過ぎようとしたふたりにあいつの声がかかる。
「はい。焔先輩」
「今までどこにいた? 午後は休館だったろ」
”あの声”はもしかしたら暇になった焔がからかいに後を追いかけてきたのかもしれない。
翼のようなマジシャン的何かがあるのなら、それも納得がいく。
しかし、ただの煽りだとしたら……しらばっくれるのが一番なはずだ。
「図書館の、ち、ち、近くにいたわよっ!!」
「僕たちが何をしているかなんて、焔先輩に関係あります?」
なぜか口が回らないまりあの様子に注目しながら、挑発的な翼の物言いに焔の眉がピクリと動いた。
「あぁ、セックスでもしてたのか」
「なっ……はぁっ!? そんなわけないでしょ! 翼くんをあんたなんかと一緒にしないでよ!!」
脳天から煙を立ち上がらせている少女が足を踏み鳴らしながら近づいてくる。いまにも噛み付いてきそうな剥き出しの怒気をサラリとかわした焔は淡々と言葉を連ねる。
「なに動揺してんだよ。お前顔真っ赤だぜ?」
「あんたが恥ずかしい事ばっかり言ってるからでしょ!」
(なにこいつ! わかってて言ってるの!? なんなのっっ!?)
「行きましょう。まりあ先輩」
一歩踏み出して戦闘態勢に入ったまりあの肩を翼が抱きしめる。
「ふっ……肩を抱ける間柄になったか。成長したな翼?」
「黙りなさいよっ!! あんたなんかより翼くんのほうがずっと優しいんだからっ!!」
今度はまりあが翼の腕を掴むとドスドスと足音を立てて焔の前を横切っていく。
「…………」
その後ろ姿を真顔で見つめる焔。やがて百合の園からもうひとりの人物が現れる。
「またあのふたりをからかっていたんですか? 大人げないですよ」
ため息をつきながらやってきたのは麗だ。
まりあの足音に惹かれて姿を見せたのかどうかはわからないが、焔の子供じみた言動を想像し、こめかみを抑えている。
「随分余裕だな……麗」
「……なにがです?」
「純潔を好む麗様がこれほど鈍っているとは情けない」
「…………」
焔の言葉に目付きを鋭くさせた麗。彼が言わんとしたことがようやくわかったらしい。
「雌の匂い撒き散らしやがって……あれじゃあ襲ってくれって言ってるようなもんだぜ」
「……っ」
焔の煽るような言い方に麗は強く唇を噛みしめた。
「まだ処女のまりあが自発的に出来ることじゃないだろ?」
(翼のやつ……どこまで手ぇ出しやがった……ったく頭にくるぜ)
図書館に入り込んだ時もそうだが出てきたときにどんな手を使ったのかわからない。
聞いてみてもただ微笑み返されるだけで、実は鍵を持っているのかもしれないという安易な結末に行きついてしまう。
「おいガキども」
百合の園の近くを通り過ぎようとしたふたりにあいつの声がかかる。
「はい。焔先輩」
「今までどこにいた? 午後は休館だったろ」
”あの声”はもしかしたら暇になった焔がからかいに後を追いかけてきたのかもしれない。
翼のようなマジシャン的何かがあるのなら、それも納得がいく。
しかし、ただの煽りだとしたら……しらばっくれるのが一番なはずだ。
「図書館の、ち、ち、近くにいたわよっ!!」
「僕たちが何をしているかなんて、焔先輩に関係あります?」
なぜか口が回らないまりあの様子に注目しながら、挑発的な翼の物言いに焔の眉がピクリと動いた。
「あぁ、セックスでもしてたのか」
「なっ……はぁっ!? そんなわけないでしょ! 翼くんをあんたなんかと一緒にしないでよ!!」
脳天から煙を立ち上がらせている少女が足を踏み鳴らしながら近づいてくる。いまにも噛み付いてきそうな剥き出しの怒気をサラリとかわした焔は淡々と言葉を連ねる。
「なに動揺してんだよ。お前顔真っ赤だぜ?」
「あんたが恥ずかしい事ばっかり言ってるからでしょ!」
(なにこいつ! わかってて言ってるの!? なんなのっっ!?)
「行きましょう。まりあ先輩」
一歩踏み出して戦闘態勢に入ったまりあの肩を翼が抱きしめる。
「ふっ……肩を抱ける間柄になったか。成長したな翼?」
「黙りなさいよっ!! あんたなんかより翼くんのほうがずっと優しいんだからっ!!」
今度はまりあが翼の腕を掴むとドスドスと足音を立てて焔の前を横切っていく。
「…………」
その後ろ姿を真顔で見つめる焔。やがて百合の園からもうひとりの人物が現れる。
「またあのふたりをからかっていたんですか? 大人げないですよ」
ため息をつきながらやってきたのは麗だ。
まりあの足音に惹かれて姿を見せたのかどうかはわからないが、焔の子供じみた言動を想像し、こめかみを抑えている。
「随分余裕だな……麗」
「……なにがです?」
「純潔を好む麗様がこれほど鈍っているとは情けない」
「…………」
焔の言葉に目付きを鋭くさせた麗。彼が言わんとしたことがようやくわかったらしい。
「雌の匂い撒き散らしやがって……あれじゃあ襲ってくれって言ってるようなもんだぜ」
「……っ」
焔の煽るような言い方に麗は強く唇を噛みしめた。
「まだ処女のまりあが自発的に出来ることじゃないだろ?」
(翼のやつ……どこまで手ぇ出しやがった……ったく頭にくるぜ)
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