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悠久の王・キュリオ編2
《番外編》ホワイトデーストーリー17
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昼の休憩時間を早めに切り上げて教室へ戻ってきていたアオイは、律儀にも午前中受けることのできなかった授業の教科書をひとり見返していた。
(ミキの言う通りだ。私が至らないからお叱りを受けてしまうんだもの……)
そうして足早に過ぎていく昼の休憩時間、アオイは一度も顔を上げることなく教科書を読み続けていた。
――そして五時限目。
始業時間になっても数学の教師は現れない。
にわかにざわつき始めた教室に扉が開く音が響き、生徒たちの視線はそちらに集中すると……すぐに黄色声が至る所からあがりはじめた。
「……え!? まじ!? やった! アラン先生だっっ!!」
「あれ? ……自習にでもなった?」
沸き上がる声にも表情を変えぬまま教壇に立った彼は見渡ながらこう言った。
「数学の先生はやむを得ない事情により早退された。よって私がこの授業を担当する」
女子生徒たちのうっとりした眼差しを無表情でスルーした美しい青年は、全体を見渡しながら手にしたプリントを配り始めた。
『なんかアラン先生機嫌悪そうじゃない?』
ミキが後方のアオイを振り返り、声をひそめながら注意を促した。
『……』
(きっと、わたしのせい……)
アオイは何も言えずに口を閉ざし、ただアランの一挙一動に目を背けることなく見つめていくしかない。
(ちゃんとわかってもらえるまで話さないと……また同じことの繰り返しになってしまう。お父様の正論に太刀打ちできるのは正しい行動しかない……)
そんなことを考えていると、前の席のミキからプリントを手渡される。
「アオイに教えてもらってよかったー! ほら、昨日やったとこのテストだって!」
「え……」
「連帯責任という話は聞いているね?
くれぐれも他人の足を引っ張らぬよう赤点には気を付けてくれたまえ」
無情なアランの言葉は昨日、担当教師が言っていたことに他ならぬが、彼がいうと必要以上に背筋を伸ばしてしまうのは他の生徒も同じらしい。しかし、アオイと大きく違うのは”悪い点をとってアランに嫌われたくない”という乙女心からの行動だった。
そしてテストが開始され――
「……っ!?」
(……どうしようっ……全然わからない!!)
これが不足した睡眠の影響なのか、昨夜の邪念によるものなのかはわからない。
ただ今わかっていることと言えば……アオイの脳内からすっかり消えてしまっている理解したはずの計算式たち。
やがて鉛筆を走らせる音ばかりが響く教室で、ひとつの足音がアオイへとゆっくり近づいた。
「…………」
蒼白のまま手が止まっている彼女を見下ろし、不敵な笑みを浮かべているのはアランだった。
(ミキの言う通りだ。私が至らないからお叱りを受けてしまうんだもの……)
そうして足早に過ぎていく昼の休憩時間、アオイは一度も顔を上げることなく教科書を読み続けていた。
――そして五時限目。
始業時間になっても数学の教師は現れない。
にわかにざわつき始めた教室に扉が開く音が響き、生徒たちの視線はそちらに集中すると……すぐに黄色声が至る所からあがりはじめた。
「……え!? まじ!? やった! アラン先生だっっ!!」
「あれ? ……自習にでもなった?」
沸き上がる声にも表情を変えぬまま教壇に立った彼は見渡ながらこう言った。
「数学の先生はやむを得ない事情により早退された。よって私がこの授業を担当する」
女子生徒たちのうっとりした眼差しを無表情でスルーした美しい青年は、全体を見渡しながら手にしたプリントを配り始めた。
『なんかアラン先生機嫌悪そうじゃない?』
ミキが後方のアオイを振り返り、声をひそめながら注意を促した。
『……』
(きっと、わたしのせい……)
アオイは何も言えずに口を閉ざし、ただアランの一挙一動に目を背けることなく見つめていくしかない。
(ちゃんとわかってもらえるまで話さないと……また同じことの繰り返しになってしまう。お父様の正論に太刀打ちできるのは正しい行動しかない……)
そんなことを考えていると、前の席のミキからプリントを手渡される。
「アオイに教えてもらってよかったー! ほら、昨日やったとこのテストだって!」
「え……」
「連帯責任という話は聞いているね?
くれぐれも他人の足を引っ張らぬよう赤点には気を付けてくれたまえ」
無情なアランの言葉は昨日、担当教師が言っていたことに他ならぬが、彼がいうと必要以上に背筋を伸ばしてしまうのは他の生徒も同じらしい。しかし、アオイと大きく違うのは”悪い点をとってアランに嫌われたくない”という乙女心からの行動だった。
そしてテストが開始され――
「……っ!?」
(……どうしようっ……全然わからない!!)
これが不足した睡眠の影響なのか、昨夜の邪念によるものなのかはわからない。
ただ今わかっていることと言えば……アオイの脳内からすっかり消えてしまっている理解したはずの計算式たち。
やがて鉛筆を走らせる音ばかりが響く教室で、ひとつの足音がアオイへとゆっくり近づいた。
「…………」
蒼白のまま手が止まっている彼女を見下ろし、不敵な笑みを浮かべているのはアランだった。
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