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”異世界へ零れ落ちた者”(2)
発動するかわからないスキル
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オプティアは布に包まれた鍋を庭の一角へと置くと、開いている窓の真下まで移動し力いっぱい叫んだ。
「ミランダおばあちゃん! オプティアです! 居ますか?」
息を殺し、微かな声も聞き逃さぬよう耳をそばだてる。
(どうしよう、何も聞こえない……)
人生を語れるほど経験など積んでいないオプティアだが、これは見過ごしてはいけないと第六感が囁いている。
「おばあちゃん失礼しますっ!!」
(ちょっとだけ強い脚力がどれほどかなんて試したことないけど、……やるっきゃないっっ!!)
”脚力強化!!”
オプティアの詠唱と共に両足へと力がみなぎる!
初めての感覚に一瞬戸惑ったが、そんなことに気を取られている暇はない!!
勢いよく蹴った地面が抉れるほどに、その威力は凄まじかったが、飛びすぎることを念頭に置いた彼女の手はガシッと窓枠を掴んで室内へと転がり落ちた。
「痛った~、……っ! おばあちゃん!!」
バタバタと駆け寄ったオプティアはベッドの傍でうつ伏せに倒れているミランダを抱き起こして懸命に呼びかけた。
「おばあちゃん! ミランダおばあちゃんっっ!!」
血の気が失せた青白い顔に呼吸の弱い彼女が命の危機にあることはど素人のオプティアにもわかる。
”身体強化!!”
咄嗟に唱えたスキルが当たっているのかも、発動するのかもわからない。
だが、なんたって運び屋に特化したスキルなのだから力持ちになるスキルがあっても間違いではないとオプティアは判断したのだ。
すると、体中を光が包んでミランダの体を支える腕が綿毛のように軽くなっていく。
(いけるっ!!)
オプティアはミランダを横抱きにすると、入ってきた窓枠を蹴って外へと出た。
かなり高所から飛び降りたにも関わらず、その両足は重力を感じさせない優雅な着地となってふたりを守る。
「おばあちゃん待っててね、すぐミラーさんのところへ連れてってあげるから!」
ダダダッッと走り出したオプティアの足元には砂利を巻き上げる砂埃が立ち上がっている。
いつもと違ってあたりの景色が物凄い速さで流れていき、一際大きな博物館のような建物があっという間迫ってオプティアはさらに速度をあげて走る。
「なんだあの砂埃は……」
門番の男たちは、遠くから驚異的なスピードで近づいてくる砂埃に恐怖を抱いていると――
「ミラーさんを呼んでください!! 病人です!!」
「貴方は黒髪の……オプティアさん!?」
この機関に従事する誰もが知る有名人なオプティアは、所謂顔パスが通るヒューマンだった。
彼女の有無を言わさない気迫に圧倒された門番だったが、普段と違うオプティアに事情を察知し、すぐにミラーへと話が伝わった。
解放されている巨大な扉を抜け、オプティアは記憶を頼りに二階へと駆け上がる。
そして、角を曲がったところでミラーが手を上げているのが見えた。
「オプティアさん! こちらです!」
「ミラーさん!」
ドドドッッとミラーへ体当たりするように突撃したオプティアは、急ブレーキさながらに踵へ力を入れると、開け放たれた部屋へと吸い込まれていく。
「お願いします! おばあちゃんを助けてくださいっっ!!」
オプティアが飛び込んだ先では、話を聞きつけて集まった医療班のヒューマンたちが万全の態勢で待ち構えていたのだった――。
「ミランダおばあちゃん! オプティアです! 居ますか?」
息を殺し、微かな声も聞き逃さぬよう耳をそばだてる。
(どうしよう、何も聞こえない……)
人生を語れるほど経験など積んでいないオプティアだが、これは見過ごしてはいけないと第六感が囁いている。
「おばあちゃん失礼しますっ!!」
(ちょっとだけ強い脚力がどれほどかなんて試したことないけど、……やるっきゃないっっ!!)
”脚力強化!!”
オプティアの詠唱と共に両足へと力がみなぎる!
初めての感覚に一瞬戸惑ったが、そんなことに気を取られている暇はない!!
勢いよく蹴った地面が抉れるほどに、その威力は凄まじかったが、飛びすぎることを念頭に置いた彼女の手はガシッと窓枠を掴んで室内へと転がり落ちた。
「痛った~、……っ! おばあちゃん!!」
バタバタと駆け寄ったオプティアはベッドの傍でうつ伏せに倒れているミランダを抱き起こして懸命に呼びかけた。
「おばあちゃん! ミランダおばあちゃんっっ!!」
血の気が失せた青白い顔に呼吸の弱い彼女が命の危機にあることはど素人のオプティアにもわかる。
”身体強化!!”
咄嗟に唱えたスキルが当たっているのかも、発動するのかもわからない。
だが、なんたって運び屋に特化したスキルなのだから力持ちになるスキルがあっても間違いではないとオプティアは判断したのだ。
すると、体中を光が包んでミランダの体を支える腕が綿毛のように軽くなっていく。
(いけるっ!!)
オプティアはミランダを横抱きにすると、入ってきた窓枠を蹴って外へと出た。
かなり高所から飛び降りたにも関わらず、その両足は重力を感じさせない優雅な着地となってふたりを守る。
「おばあちゃん待っててね、すぐミラーさんのところへ連れてってあげるから!」
ダダダッッと走り出したオプティアの足元には砂利を巻き上げる砂埃が立ち上がっている。
いつもと違ってあたりの景色が物凄い速さで流れていき、一際大きな博物館のような建物があっという間迫ってオプティアはさらに速度をあげて走る。
「なんだあの砂埃は……」
門番の男たちは、遠くから驚異的なスピードで近づいてくる砂埃に恐怖を抱いていると――
「ミラーさんを呼んでください!! 病人です!!」
「貴方は黒髪の……オプティアさん!?」
この機関に従事する誰もが知る有名人なオプティアは、所謂顔パスが通るヒューマンだった。
彼女の有無を言わさない気迫に圧倒された門番だったが、普段と違うオプティアに事情を察知し、すぐにミラーへと話が伝わった。
解放されている巨大な扉を抜け、オプティアは記憶を頼りに二階へと駆け上がる。
そして、角を曲がったところでミラーが手を上げているのが見えた。
「オプティアさん! こちらです!」
「ミラーさん!」
ドドドッッとミラーへ体当たりするように突撃したオプティアは、急ブレーキさながらに踵へ力を入れると、開け放たれた部屋へと吸い込まれていく。
「お願いします! おばあちゃんを助けてくださいっっ!!」
オプティアが飛び込んだ先では、話を聞きつけて集まった医療班のヒューマンたちが万全の態勢で待ち構えていたのだった――。
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