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第16幕 後を考えてください。
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「うわぁ!綺麗!」
あまりの美しさに思わず感嘆の声が漏れる。
「どうですか?そして、ようこそ!私達の国"翠蓮"へ!!」
そう言う舞羅の奥には淡く透き通った水が至る所に流れているとても美しい町が広がっていた。
「初めて来たが美しい所だな。」
少し後で馬車から降りてきた珠羅もこの町を眺めて言葉を漏らす。
「陛下はここにいらしたことは?」
ふと疑問に感じた零は珠羅へ尋ねる。
「無いな。この国はあまり他国とは直接的な関わりを持たない中立的な立場をずっと、とっているからな。だから紙面上でしかやり取りをしないから私もここへ来るのは初めてだ。」
なるほど。零は合点がいく。すると後ろから按司が、
「陛下にはまだやることが沢山あるのでそろそろ戻りますよ。」
と馬の首に繋がれた縄を持ち、馬をなだめながら言う。
それを聞いて珠羅は少し悲しそうな顔をする。
「...だそうだ。私はそろそろ戻らないといけないが零は1人で大丈夫か?」
彼のこんな顔を見てしまうと零も少し心細くなってしまう。
しかし、せっかく連れてきて貰ったのだ。やはり見ていきたい。
「だ、大丈夫ですよ!私1人で大丈夫です!まぁ...陛下と会えないので少し寂しいですが...」
零はそう眉尻を少し下げながら言うと、珠羅は零の肩をがしっ、と握り按司の方を向く。
「按司。どうやら私は戻れない。私もここへ残ろう。」
「「え!?」」
思わぬ珠羅の言葉に零も按司も驚きを隠すことは出来なかった。
「ちょっと何を言っているんですか!?」
「こんなにも可愛らしい我が妃が寂しいと言っているのだ。ここへ残して行けるものか。」
「へ、陛下!!私より仕事ですよ!!」
「そんな訳にはいかない。やはり婚約者の方が大切だ。だから私もここへ残るぞ。」
ーーーーーーーーその後、零と按司の必死な説得により、何とか珠羅は渋々按司と共にヒーストリアへと戻って行った。
「...まだ、気になるのですか?彼女の事が。」
帰りの馬車の中で按司は馬の手網を引きながら聞く。
「当たり前だ。私の可愛い妃だぞ。」
「全く、冷徹陛下ともあろう方が...」
「お前はずっとそうだが、零の事になると厳しいな。そんなにも彼女が気に入らないのか?」
少し珠羅は不機嫌そうに答える。すると按司は、はぁ...と右手で馬の手網を操り、左手で頭をかく。
「彼女の事は申し分無いですよ。働き方の態度といい、ちゃんと働いてくれていますから。他の官吏の人達からもその職務態度は聞いていますから。」
「では、何故だ?」
珠羅が聞くと按司は不機嫌そうに答える。
「どちらかと言うと貴方のその彼女へのめり込んでいるという態度が、ですよ。」
「彼女はただのバイトなのですよ。いずれは解雇し町へ戻って頂きます。そうすればバイト妃ではなくただの町娘に戻ります。」
「そうすれば1番悲しい思いをするのは彼女なのですよ。私は彼女の後の事を考えて言っているのです。だから貴方も彼女の後の暮らしへの配慮を考えて接してください。」
按司の言い分を一通り黙って聞いていた珠羅は外の景色を無心に眺めるだけで何も答えはしなかった。
◆ ◆ ◆
「行ってしまいましたね...」
珠羅と按司の乗った馬車が見えなくなるまで目線で見送っていた零はぽつりと呟く。
「では、そろそろ行きましょうか。」
舞羅がそう言い、「はい。では、是非。」と零が答えた時だった。
「おやおや、もう行ってしまわれたのですか。お話だけでもしたかったのですが...」
ーーーーどこかで聞いたことのある声。
背後から聞こえてくるこの声は...この前、帝都で聞いたあの声にそっくりだった。
その時、舞羅と華洛は「これはこれは陛下。ただいま戻りました。」と頭を深く下げる。
ーーーーーーーー陛下...?
ゆっくりと零は後ろを振り返る。するとそこには、
「やあ、またお会い出来ましたね。零。」
と不敵に微笑む煌雅の姿があった。
あまりの美しさに思わず感嘆の声が漏れる。
「どうですか?そして、ようこそ!私達の国"翠蓮"へ!!」
そう言う舞羅の奥には淡く透き通った水が至る所に流れているとても美しい町が広がっていた。
「初めて来たが美しい所だな。」
少し後で馬車から降りてきた珠羅もこの町を眺めて言葉を漏らす。
「陛下はここにいらしたことは?」
ふと疑問に感じた零は珠羅へ尋ねる。
「無いな。この国はあまり他国とは直接的な関わりを持たない中立的な立場をずっと、とっているからな。だから紙面上でしかやり取りをしないから私もここへ来るのは初めてだ。」
なるほど。零は合点がいく。すると後ろから按司が、
「陛下にはまだやることが沢山あるのでそろそろ戻りますよ。」
と馬の首に繋がれた縄を持ち、馬をなだめながら言う。
それを聞いて珠羅は少し悲しそうな顔をする。
「...だそうだ。私はそろそろ戻らないといけないが零は1人で大丈夫か?」
彼のこんな顔を見てしまうと零も少し心細くなってしまう。
しかし、せっかく連れてきて貰ったのだ。やはり見ていきたい。
「だ、大丈夫ですよ!私1人で大丈夫です!まぁ...陛下と会えないので少し寂しいですが...」
零はそう眉尻を少し下げながら言うと、珠羅は零の肩をがしっ、と握り按司の方を向く。
「按司。どうやら私は戻れない。私もここへ残ろう。」
「「え!?」」
思わぬ珠羅の言葉に零も按司も驚きを隠すことは出来なかった。
「ちょっと何を言っているんですか!?」
「こんなにも可愛らしい我が妃が寂しいと言っているのだ。ここへ残して行けるものか。」
「へ、陛下!!私より仕事ですよ!!」
「そんな訳にはいかない。やはり婚約者の方が大切だ。だから私もここへ残るぞ。」
ーーーーーーーーその後、零と按司の必死な説得により、何とか珠羅は渋々按司と共にヒーストリアへと戻って行った。
「...まだ、気になるのですか?彼女の事が。」
帰りの馬車の中で按司は馬の手網を引きながら聞く。
「当たり前だ。私の可愛い妃だぞ。」
「全く、冷徹陛下ともあろう方が...」
「お前はずっとそうだが、零の事になると厳しいな。そんなにも彼女が気に入らないのか?」
少し珠羅は不機嫌そうに答える。すると按司は、はぁ...と右手で馬の手網を操り、左手で頭をかく。
「彼女の事は申し分無いですよ。働き方の態度といい、ちゃんと働いてくれていますから。他の官吏の人達からもその職務態度は聞いていますから。」
「では、何故だ?」
珠羅が聞くと按司は不機嫌そうに答える。
「どちらかと言うと貴方のその彼女へのめり込んでいるという態度が、ですよ。」
「彼女はただのバイトなのですよ。いずれは解雇し町へ戻って頂きます。そうすればバイト妃ではなくただの町娘に戻ります。」
「そうすれば1番悲しい思いをするのは彼女なのですよ。私は彼女の後の事を考えて言っているのです。だから貴方も彼女の後の暮らしへの配慮を考えて接してください。」
按司の言い分を一通り黙って聞いていた珠羅は外の景色を無心に眺めるだけで何も答えはしなかった。
◆ ◆ ◆
「行ってしまいましたね...」
珠羅と按司の乗った馬車が見えなくなるまで目線で見送っていた零はぽつりと呟く。
「では、そろそろ行きましょうか。」
舞羅がそう言い、「はい。では、是非。」と零が答えた時だった。
「おやおや、もう行ってしまわれたのですか。お話だけでもしたかったのですが...」
ーーーーどこかで聞いたことのある声。
背後から聞こえてくるこの声は...この前、帝都で聞いたあの声にそっくりだった。
その時、舞羅と華洛は「これはこれは陛下。ただいま戻りました。」と頭を深く下げる。
ーーーーーーーー陛下...?
ゆっくりと零は後ろを振り返る。するとそこには、
「やあ、またお会い出来ましたね。零。」
と不敵に微笑む煌雅の姿があった。
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