私たちはずっと一緒

まーや

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ずっと一緒だよ

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「ずっと一緒だよ」

それを言った女の子の顔や名前はもう覚えていない。

「はぁ…まだか」

僕はずっとこの夢に悩まされている。
女の子の事を思い出そうとしても思い出せないのだから、悩みの種となっていくんだろう。

僕も女の子の正体を探ろうと頑張ったもんだ。
家族に僕が小さい頃仲良くしてた女の子とかいる?
とか聞くと母は

「あ~、まりんちゃんとか?」

まりんとは、今も仲良い?関係なのか分からないが、高校も一緒だ。覚えていないはずない。

そう考え事をしていると

「まりんちゃん、いつ目覚めるんだろうね。」

と言われた…。そう、まりんは、高校入学式の時、事故に遭って以来、そこからもう何ヶ月も眠っている。

「ああ、今は7月だから…4ヶ月か?」

「そうよ…、警察も色々探ってるらしいんだけどね~。まだ犯人捕まっていないのよね」

そう、まりんは事故と最初は言われていたが
警察の調査により、他殺だと分かったみたいだ。

なんでも、車がある所まで呼び、そこから押して引いたとかなんとか…。

まりんを轢いてしまった運転手は、女の子が2人で言い争っていた。まさか押して道路側に来るとは思わなかったと言ってるそうだ。

まりんを押した女の子。それは一体誰なんだろうか。そう考え事を繰り返していると

「そろそろ学校行きなよー」

と母から言われて、あっこのままだと遅刻だと思うぐらいの時間になってしまった。

「いってきます!!!」

「いってらっしゃーい」

走り出していく。僕はこの時気付くべきだったのかも知れない。後ろに女の子がいることをー。

ガラガラガラ!!

「セーフ!?セーフか!?」

8:29

「よっしゃ!!セーフだ!!!」

「セーフじゃないわよ。次からはもっと早く来なさい。」

後ろから委員長の声が聞こえた。

「わりぃ!!次は気をつける!!」

「はぁ~。あなたさえ真面目になればこのクラスは、問題児もいないいいクラスなのに…」

委員長のトゲのある言葉を聞き流しながら机に座る。

「委員長の説教朝からお疲れ様~」

と、後ろから話しかけられたのは
同級生の山田だ。

「ほんとだよな~~。」

普通に授業がはじまる。

その時も僕は思い出してしまう。

思い出したくない。だって悩みの種が増えるから。

「ずっと一緒だよ」

「広瀬くん!」

…!???
思わず立ち上がってしまった…。

馬鹿だろ…今は授業中だ…。

「おー、広瀬、お前この問題が解けるんだろうな!解いてみろ!」

「…はい」

黒板までも歩きながら…考え事をはじめた。

問題の方ではない。思い出の方だ。

今までずっと一緒だよしか思い出せなかったのに

なんで今になって…思い出したんだ?

「おーい?分からねぇのか?」

「あっ、すみません、解きます。」

「おー正解じゃねぇか!次は立ち上がるようなことはするなよー。」

そして席に戻った。

なんでだ?なんで思い出した?

だめだ、1人になれる時間が欲しい。

その願いが叶うように僕は体育の授業で倒れた。

真っ暗な闇…僕はまだあの夢を見るんだ。

手を引かれて、滑り台まで連れてこられて

「ずっと一緒だよ?」

「ずっと一緒?僕と?」

「そうだよ!広瀬くんと一緒だよ??」

「わかった!約束!」

「広瀬くん…!」

そしてその後…手を繋ぎながら…お互いの家に帰ったんだっけ…

女の子の家に送るよって言っても

「ううん!大丈夫!私の家は遠くて、広瀬くんが家に帰れなくなっちゃうから」

って言われて断られたんだ。

「…わかった!じゃあね!」

って言って別れた。

次の日から…会えなくなったんだ。

いつもの公園に行っても会えなくて

僕は約束を破られたって思ってたずっと。

だけどその後まりんと出会って

まりんと仲良くしてる間に

女の子の名前も顔も忘れてしまったんだ。

僕は目が覚めていた。涙が止まらない。

…あの女の子は今どこにいるんだろう?

体を起こそうとする。だけど起きれない。

体が言うことを聞かないみたいに。

「おや?目覚めましたか?広瀬くん?」

謎の女が僕の目の前にいた…

謎過ぎるんだ。顔が見えないようにキツネのお面を被ってるし、声も…なんか作ってる?

そんな女に会った覚えはない。どうしたらいい?

「広瀬くんにはある協力をお願いしようと来ました!」

俺は喋れない…どうしたらコミュニケーションが取れる???

「まぁ、あなたが否定しようと」

「やっちゃうんですよね!」

と言って、注射を打たれた。

!!??なんだ…体が熱い…っ

「まぁぁ、1年後楽しみにしてますよ!また会いましょう!」

って言って女は消えた。

体も動くようになってきた。

一体何を入れられたんだ?

まぁ…1年後会えるなら1年後を警戒すればいい。

と思い、僕は、教室に戻った。

教室に戻ると見知らぬ男が僕の机の後ろにいた。

怖くなって、委員長に聞いた。

「なぁ、あそこにいる男は誰だ?」

委員長はとてもびっくりしたようにこっちを見て

「え…?山田くんですよ?4月からずっとあなたと話していたではありませんか。」

と言われた。でも僕の中に山田という人はいない。

委員長は不審に思って、山田という人物に近付いて、山田にこう聞いた

「あなたたち、喧嘩でもしたんですか?」

「え?喧嘩なんて1度もしてないよ。なに?どうしたの?」

「それが広瀬さんがあなたの事を覚えていないようです。」

「は!?」

そして山田という人物が近づいてきた

「おい?どうしたんだよ!覚えていないってどういうことだよ!」

「ほんとだって…お前の事覚えてねぇもん…僕怖いよ…、クラスに知らない人がいるの…」

「…お前倒れてから記憶おかしくなったじゃねぇーの?先生のことも忘れるし、課題のことも忘れるし、テスト受けたことも忘れるし!!!」

「え…?」

僕が倒れたのはさっき…じゃないのか?

教室に入ってきたギャルが

「ちょっと明美~聞いてぇ、9月20日まであと2日じゃん~。むりぃ…初めて彼氏と会うんだよ…」

と言ったのが聞こえた。

9月20日…?
僕は7月5日に倒れた以来の記憶を失ってるのか…?

途端に自分が怖くなって教室から逃げ出した。

ちょっと!って言う委員長の声が聞こえたけど構わず逃げた。

僕はある場所まで走り続けたー。

神戸まりん

というネームプレートを見て

僕はまりんのこと覚えてた。よかった。

と安心した。

そしてドアを開ける。

信じられない光景がそこにはあった。

「おー、ひろちゃん。どうしたの?今の時間、まだ学校にいないとダメじゃない?」

あのまりんが、ずっと起きなかったまりんが

起きているのだ。

「うっあっ…まりん…よかった…」

「え!?何、その今始めて起きたな…ーみたいなリアクション…。」

「本当にまりんなのかい?」

「ほんとだよ?あんたそれ私が起きた時も言ってたよね。なに?ドッキリ?」

「あぁぁぁ…」

「もう目覚めないかと思ったでしょ?次言うの」

「……っ」

まりんは僕が記憶を失ってる月日の間に目覚めていたらしい…。

「ひろちゃん、もういいよ。私8月2日に起きたんだから。もう心配しなくていいんだよ?わざわざ学校から来るぐらいに心配してくれたの?」

「あぁ、心配したんだよ。」

てことは犯人も捕まったのか?

「なぁ、てことは犯人も…」

「それも前に言ったばっかりなんだけどなー!どうしたの?ひろちゃん、ボケた?」

「あぁ、ボケたかもしれない。」

「もうボケたひろちゃんのためにもう1回言うよ?」

「ありがとう」

「警察はまだ捕まられていない。だって私も顔分からないもん。」

「なんで?」

「きつね…?のお面被っていたから…」

「…きつねのお面!?」

「あ、そこはリアクション違うんだね」

つまり、8月2日までは会ったことがなかったってことか…。

「どういうリアクションだったん?」

「きつねのおめんなんてあるわけねぇだろwww腹いてえええ って言ってたよ 」

「それは悪い…」

「そう思えるってことは会ったってことかな?」

「はい、会いました…」

「そっか、ねぇ…」

唐突にどぉんと感覚が来た。

「ねえ!?大丈夫??」

そして僕は…

「あ…?ここはどこだ?」

「え…?」

「っ!?お前誰だよ!!」

やべぇ…こええ!!脳内が逃げろって言ってる!!

そして気付けば足が動いていた。

「…忘れちゃったか…。あはは…私はあの狐のお面と…広瀬くんしか覚えてなかったのに…」

そう、まりんも記憶をどんどん失っていく少女だった。

そして広瀬はー。

「はぁはぁ…ここまで来れば大丈夫だろ」

僕はいつの間にか、あの記憶の中にある少女と最初に出会った公園に来ていた。

「…ここに来てもいるわけねぇよな。」

ブランコで遊んでから家に帰る…

あれ…?家って…どこだっけ?

「…っ。記憶がどんどん落ちている…?」

あの変な注射器のせいだ!!くそ!!

怒りをどこにぶつけたらいいかわからなかった僕はブランコを思いっきり蹴り上げた。

そして周りを見た時、砂場にある女の人が立っていた。

「…あれ?広瀬くん?」

「君は…?」

「私だよ!ずっと一緒だよ!って約束した…!」

「あぁ…そうか。君だったのか。」

「良かった。やっと会えて!」

ぐざっ!

「…な?」

腹部に激しい痛み…

そこを見ると、あの注射が刺さっていた。

「お前は…キツネ女…?」

視界がぐらっと回って倒れた。

「広瀬くん。今度こそ一緒だよー。」

その声を聞きながら…僕は意識を失った。

「…あ?ここはどこだ?」

目が覚めた僕は最初にこう言うしかなかった。

「あ、おはよう!広瀬くん!」

「おい、てめぇ…!!」

「暴れないで?手錠で固定してるから動けないだろうけどね」

「…っ!!」

「ここはね~、私の家!広瀬くんははじめてだよね。送っていくよって言ってくれた広瀬くんはまだ純粋だったから…みちゃだめなものがいっぱぁいあったんだよね!」

「ふざけんな!!」

「広瀬くん…もう、私しか思い出せないでしょう?」

「は?僕は覚えて…?」

全く覚えていなかった。1つも。

こいつしか覚えていなかった。

「同じように広瀬くんに関わった人間は皆、忘れていくようにしていたから!」

「………じゃあ」

「もう、警察沙汰になる事もないし
ずっと一緒にいれるよ!」

「…っ……。」

ようやく会えた人なのに、こんなにも怖い女だって知らなかった。

「広瀬くん?どうしたの?」

「なんでもねぇよ…」

「ずっと会いたかった。あの日から広瀬くんで頭いっぱいだった。」

すると、その女はナイフを持ち出した…

「なにすんだ…!」

「広瀬くんには刺さないよお…」

「…誰に刺すんだ…!」

「名前言っても思い出さないでしょ」

「…!」

「あっはっはっはっ!!血にまみれた私を見ても広瀬くんは愛してくれるよね。」

「今も愛してねえんだよ!!さっさとこの場所から出せ!!」

「…ふぅーん。広瀬くん…あの時の約束破るつもり?」

「…破るつもりというか!あん時の約束は無効だろ!!」

「…ひどいなぁ。広瀬くん。」

「いいから、そのナイフをおろせ。」

「あーぁ。邪魔者が入った」

「…あ?」

ドンドンドンドンドン!!!

と音が鳴っている

「…何だこの音…」

「まぁ、広瀬くんの事が好きな人なんでしょうね。」

「…あ?」

「この薬はね、好きな人以外全員忘れちゃう薬。」

「バカ!僕はお前のことなんか好きじゃねえ!」

「はぁ、薬を打った時は好きだったんでしょう?だから少しずつ思い出したくせに」

「…っ」

「あーぁ、邪魔者は全員消さないと…ふふ」

「やめろ!!手を出すな!!」

「広瀬くんの言うこと聞きたいからぁ、手は出さないよ」

「…?」

どうするつもりだ?

「ほらぁ!とっとと歩きなよお!」

「ううぅぅ…」

やはり知らない人だった。

僕はもうこいつしか思い出せないのか?

「広瀬さん…」

唯一、さん呼びだった女を思い出した。

「委員長…?」

「なっ!?バカな!この薬は思い出せないはず!!」

「広瀬さん…よかった!!全てを思い出す薬です!飲んで!早く!」

「やめろ…飲むなぁぁぁ!!!」

ごくっ……

そして僕は全てを思い出した。

僕の夢の中をまとわりついてたこの女の子は

僕の目の前で死んでいた。車に轢かれて…

なのに、ずっと思い出せなかった。

「君は誰?」

「…っ、私は…」

「広瀬さん!行きますよ!」

いつの間にか手錠が解除されてた。

僕は言われるがままに逃げる。

「委員長、ありがとう」

「いいんですよ。どういたしまして」

「委員長…僕のこと」

言いかけてやめた。こういうのは本人から聞いた方がいいんだろうし。

「あ、広瀬さん。」

「さよ「だめ!その女を信じないで!お願いだから離れて!」

委員長の声を被るように後ろから聞こえたのは

キツネ女だった。

「そして、大好きでした。」

そんな言葉を最後に僕は

首元に激しい痛みが走った。

「…っ!?」

「あぁぁぁ… 」

「早いですね、キツネ女さん。」

「…!よくも、広瀬くんを!!」

「…これでようやく完璧なクラスメートになれます。この人だけが問題児でしたから。」

「…広瀬くん…広瀬くん!!」

「ありがとうございます。キツネ女さん。あなたが広瀬くんのことをみんな忘れる薬を使ってくれたから、殺しても何の罪にも問われません。」

「…!よくも…!」

「では、あなたにも最高の夜をあげましょう」

「…?」

「ぱぁん!」

そして翌日、キツネと男性の遺体が見つかったー。
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