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ティさんは、ファイがお気に入り

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(昨日は寝るまで大変だったー)

あれからご飯の支度ができたとメイドが伝えに来るまでマリアの詰問は続いていた。メイドが部屋に運びましょうか?と気を遣っていたので、きっと白目を剥いていたと思う。
しかも珍しく水の精霊ウンディーネのティが心配してくれたから、相当な疲れ具合だったのだろう。
お母様もお父様も、少し気を使ってくれた。

お兄様は察しがついていたようで、ニヤリ顔だ。くそ、イケメンなのにほんと残念。きっと昼間のことまだ怒っているのだろう、心の狭い男だ。
ヤンも知らんぷりだし、はい、もう諦めた。


「でも!今日はルンルンなんだよね~」
もとから一晩寝たら忘れるタイプだ!引きずってても意味なんかないし、今日はやることもある。

「さてさて…ティ、いる?」
《さっきから百面相している貴方の隣にいたわ~、どこでする?》
「一言余計!どこでする、だけでいいからね?」

横でふわふわ浮いている水の精霊ウンディーネがくすくすと笑い、中庭はどう?今日は使用人は使わないってファイが言ってたよ~と教えてくれた。

「中庭ね…うーん…成功するか分かんないしなぁ…庭をボロボロにしちゃったらきっとマックさんが悲しむからね…」
何度か兄様が剪定したバラを燃やして、ずーーーんとなっていたのを慰めたことがある。


《先生のところに行く?》

「うーん…そーだね!そーしよ!ファーイ!いるんでしょー?」
にょ、と壁から出て来るファイにちょっと面白いな、と思いながら、外に出たいんだけど、今大丈夫?とお願いした。

《任せろ、我が姫》

さっそく準備を始めて、マリアへ、としたためた手紙をテーブルの上に置く。これでちょっとしたことはマリアがなんとかしてくれるだろう。
バルコニーに出て、風が髪を後ろにはためかせる。
ファイが私を横抱きにして、持ち上げてくれて運ばれるのだが…

「ねぇ、やっぱりおんぶとかにしない?」

《俺はコレしか受け付けねー》

目が緑色に薄く光り、私の身体が浮く。
魔力マナが私から出て行く感じがして、ファイがごちそーさん、と舌をぺろり、と出す。

(色気だだ漏れか)

しらっとした目で見ると、ティが横で広げていた扇で口元を隠した。

《私もお姫様抱っこされたいわぁ》
《てめぇは浮いてこれるだろ》
《自分で浮くより気分がいいもの》
ふふふ、と扇をパチン、と閉めてえい!とファイの頬をぶっ叩いた。
《ぶふっ!ぐぉら!てめぇ、何してんだ!》
《だって、私のことカマ野郎って思ったでしょ?》
《思ってねーよ!!》

ぎゃいぎゃい言い合う2人の会話を外の景色を見ながら聴いているけど…
(ティさん、超理不尽…。)
ちょっとファイが可哀想だな…と思ったが口を出したら矛先が私に向くから、おとなしく人形になっておく。下の景色は街が一望でき、人の姿も見える。
ティの力で薄く膜を張って光りを屈折させて、私達の姿が見えないようにしているから。
難しいことはわかんないけど、そのへんは前の世界の理科で習ったから、何となくティに説明したら、出来るわよ、とスッとやってくれた。実際するのは始めてだったらしいけど。

そんなティさんは、ファイをからかうのが大好きだ。


(だてに経験してきてないからねー。こーゆー時は黙るべし。)

それがファイが反対の頬をまた叩かれていても。

(すごい音した…でもごめん、ファイ、任せた)


きっと昨日、また振られたんだ。
ティはオネエぽい口調で綺麗可愛いモノ好きだが、恋愛対象は女なのだ。
だから、愛を囁いても向こうはそんな気がなかったみたいで、騙された!と言って振られるらしい。
そのイライラをこちらにぶつけてくるから、タチの悪い精霊だ。

そして、いつも被害を受けるのはファイだった。

(私の周りは騒がしい人しかいないのかなー…波風立てずに過ごしたい…。心労は40歳にはキツイ)

《おい!あいつおかしいぞ、何とかしろよ!》

「…………ぐー…」

《あら、寝ちゃったわね、ふたりきりよ?ファイ》

《~~!ぜってー嘘だから!くるな寄るな近づくな頬を撫でるなーー!》

いや、分かるよティさん。からかうとおもしろいもんね。

それに比べて寝たふりしている私は何も面白くないはず、だから頬を撫でないでください。



ファイだけにしてほしいです、ほんとに。



(早く先生のところにつかないかな…)





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