私が猫になってから

フジ

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息子への想い

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※またまた暗くて、辛い話です。早く猫になりたい。



あれから私は自分の身体から離れられずにいる。本当は夫についていきたかったけれど、なぜか身体から3メートルくらい離れただけで動けなくなるのだ。

臨終から身体を整えてもらい、2、3日後に家についたときには、仏間にはもう陽介がいた。
小学3年生の息子は、白装束を着た私を不思議そうに覗き込んでくる。その腕はミミを不安げに抱いており、ミミも言うことを聞いて腕の中でじっとしていた。


「お母さんは、死んじゃったの?寝てるみたい。パパ、起こしてよ。ママ、寝坊したら、機嫌悪くなるよ」


ー聞いてられなかった。実際には分からないのだが、涙が溢れて、次から次へと顎を伝う。こんな状態になってまで子供の前で涙を流している姿を晒すのは抵抗があり、口元を覆う。


夫も同じ心境で、ママはもう起きないんだよ、ずっと眠ったままなんだ。と陽介の両肩を持ち泣きじゃくりながら言った。


「でも!でも、ママ、公園に行くって約束してたのに!」息子が大声で叫んだ。その目には涙が大きく溜まって、そしてボロボロボロ、も溢れ始めた。


その痛ましい姿に思い余って、陽介を抱き締めた。と同時に夫も陽介を抱き締めた。

「公園にはパパと一緒に行こう、必ずだ。お弁当を持って、絶対に…!」と私の耳元で聞こえる。

嫌だ、お母さんとがいい、お母さんがいいよ!と陽介は泣いて、また苦しくなる。

お母さんも、陽介と、正也さんと生きたい!生きたいよ!と叫ぶも2人はもちろん反応しない。
奇跡が起こってほしかった、ドラマとか小説ではこんなときに声が聞こえたり体温を感じたりするのに。
そんな奇跡は起こるはずもなくー。

3人で抱き締めながら泣いたのはこれが初めてだった。




その時は気付かなかったが、そんな私をミミはずっと見ていた。









私の葬儀が終わった。

変な言葉と、ふは、と呆れた吐息が出た。

自分の身体が棺桶に入り、そして、人々が次々に線香をあげて私の身体を見に来るのを、まだ受け止められずボーと見てしまった。

(これから、この身体が焼けたらどうなるのか。私は天国に行けるのかな、地獄なのかなー。)
いや、地獄行きになるような行いはしてないはず。

よもや、夫のビールを安い発泡酒にしただけで、地獄には落とすほど閻魔様も悪ではない…と思いたい。

と変な思考に陥るほど、私は憔悴しきっていた。


そんな中、私の身体を火葬する時に騒動が起こる。
陽介がお母さんを焼かないで下さい、と火葬場の人に泣きながら頭を下げていた。小学3年生だ、小学3年生の小さな身体が私を守ろうと必死になっていた。

そんな息子を、夫が、昨日お別れしただろう、と泣きながら優しく伝えて叔母が、陽介を抱きしめて、後ろに下がろうとする。
火葬場の人は、どうしましょうか、と親戚に目配せして、親戚がコクリと頷いた。それは続けて下さいという合図。それを正しく理解して、幼くして母親を亡くした子供に気の毒そうに、ごめんね、と呟き、私を火の中に入れた。

「お母さん、お母さん、お母さん!」

火葬場に陽介の声が響き渡る。

身が引き裂かれそうな思いが身体を貫けた。




生きたい、もっと生きたいー!!!
どんな姿になってもいい、どんな形でもいい。この子の側にいられるなら、どんなことでもする!


そんな想いが駆け巡った瞬間ー。






誰かに呼ばれた気がした。


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