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第十話「運命の宿敵 後編」
第三章 「雷王対雷王‼ 誇りをかけた戦い‼」・⑨
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「まずい・・・っ‼ このままじゃ・・・っ‼」
本来であれば、莫大なエネルギーを蓄積するまではその場から動かない、隙だらけの技のはずだけど・・・
今のカノンは、動けない格好の「的」だ・・・!
既に、あの光線を弾き返すだけのバリアを展開する事が出来ないのは判っている。
『・・・・・・』
隣で沈黙しているシルフィの表情は、固い。
───やれるだけの事は、やった。
───これ以上は、カノンに恨まれでも、彼女を逃がすべきだ
───カノンを苦痛から解放してあげたい。早く楽にしてあげたい。
頭の中に浮かんでくるのは・・・そんな弱音ばかり。
・・・でも、その気持ちは僕のエゴであって・・・・・・決して、彼女の望みじゃない・・・ッ‼
「諦めちゃ───ダメだッ‼」
握った拳から血が滴り・・・そこに弱気が溶けて、体から流れ出た。
──そうだ。まだ諦めちゃいけない・・・‼ だって───
<グルルル・・・‼ グルアアアァァ・・・ッ‼>
実際に戦っているカノンはまだ・・・諦めていないんだ‼
・・・何か、ないか・・・! これまでのカノンの戦いを思い出せ・・・! そこに何かヒントがあるはずなんだ・・・!
全く別の生物であっても、レイバロンとカノンは同じ力を持っているんだから、同じ弱点があったっておかしくは────
「・・・っ! ・・・・・・同じ、力・・・弱点・・・・・・」
その時ふと、先程聞いたカノンの言葉が、脳裏に浮かび上がって来る。
「ったく・・・思い返せば、本当にワケわかんねー事だらけだ・・・!」
「起きたら急に何もかも小さくなってやがるし・・・体からビリビリは出るし──」
・・・そうだ。同じ力を持っていても・・・彼女は、自分の力を使いこなしてはいない。
そして、カノンの弱点・・・それは───
「なっ・・・⁉ 角の部分にはバリアが無いのか・・・っ⁉」
一番目立つはずの角に、バリアが張れていない事───
「もし・・・かして・・・・・・ッ‼」
欠けていたピースが嵌まり、一つの事実が浮かび上がってくる。
カノンは・・・意識的にあの力を使っている訳ではない。
攻撃に対して意識を向けた時にだけバリアが発生したり、無我夢中になっている時に、体を稲妻が伝導う事はあっても・・・自分の「誇り」である角にはバリアを張らないように──
無意識にあの力を「得体の知れないもの」として認識して、忌避しているんじゃないのか・・・・・・⁉
だと、したら───!
「・・・カノンッ‼ 聞いてッ‼」
声の限り、彼女に向かって叫ぶと───
疲労によって瞼を半分下ろしながらも・・・未だ闘志を失ってはいない瞳が、応えた。
「カノン! 君のその力は・・・「ビリビリ」は、君の敵じゃない!」
・・・彼女自身は、稲妻の力をあてにはしていない。
あの力はあくまで、怪獣になってしまう過程で偶然手にしたものなんだろう。
「それは──君の守りたいものを、守るための力なんだッ!」
そして、カノンは特別な力があろうとなかろうと・・・いや、きっとそもそも怪獣であろうとなかろうと・・・
成すべき事をするために・・・誰かを守るために戦うんだ。
・・・でも、今は───
「だから・・・恐れずに受け入れるんだ! 君の持つ「誇り」を・・・守るためにッ‼」
きっとその力が・・・君を救ってくれるはずだから・・・!
<・・・ッ‼>
目を見開いたカノンは、一瞬、迷ったような素振りを見せ───
<・・・・・・グルアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼>
そして、それを吹っ切るように──強く・・・強く、叫んだ。
すると・・・バチバチッ‼と音を立てて──
二本の角の間に、細い稲妻がいくつも走り始める。
同時に、カノンの背中の甲羅も、水色に発光し始めた。
『・・・! まさか・・・レイバロンと同じ技を・・・!』
シルフィがはっとした表情を見せる。
動けない状態でレイバロンに対抗するには・・・同じ技を使った上で、なおかつ相手を打ち破るしかない。
・・・カノンは、それを判ってるんだ。
<バオオオオオオ──バッ・・・ゴボォオッ・・・‼>
先に光線のチャージを始めたレイバロンが有利かと思っていたけど・・・カノンの与えていたダメージは相当のものだったらしい。
口の端と首元から血を流しながら、向こうも文字通り決死の気迫を以て、水色のエネルギーを高めていく。
───そして・・・・・・二体の装甲の放つ光は、ほとんど同時に極限に達する。
「誇り」と「憎しみ」との戦いに──今、互いの最後の一撃が───放たれた!
<グルアアアアアアアアアアアアァァァァァァ────‼>
<バオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ────‼>
カノンの角の間から、レイバロンの口腔から・・・巨大な光線が発射され、ぶつかり合う。
バリア同士が接触した時とは比べ物にならない程の威力が、眼の前で衝突している。
二つの光線から放たれる雷霆は、周囲の岩石を弾き飛ばすだけでは飽き足らず、岩棚を削り、天井の各所を破壊し、地面に大きな亀裂を入れ──
文字通り、地形を変えてしまっていた。
<グルアアアアアアアアァ────>
<バオオオオオオオオォォ────>
自分で放っている光線の威力に、当人たちも耐えきれなくなり・・・徐々に、体が後退していく。
カノンの踏ん張ろうとする肢からは、血が出ている・・・! でも───‼
「負けるなああぁぁっ‼ かのおおおぉぉぉんっっ‼」
<グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼>
・・・僕の声援に、応えようとしてくれた訳じゃないと思う。
それでもカノンは・・・・・・最後の最後で・・・踏み止まってくれた。
<オオオオオオォォォォ───バオオォオッッ⁉>
そして、ぶつかり合う光線の衝突点は・・・徐々に、レイバロンの方へと近づいていき・・・
<バオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ────>
それが弾けた時・・・炸裂した稲妻は地面をめくり上がらせ、大穴を穿ち──
最後まで、憎しみに満ちた叫びを上げながら・・・・・・紫色の巨体は、奈落へと消えて行った。
・・・宿敵の最期を見届けたカノンは・・・浅い呼吸を繰り返した後・・・・・・
<グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼>
最後に、勝鬨を上げてから───光の粒子になって、空気に解けていく。
・・・その雄叫びは、勝利の喜びを表すものではなく・・・・・・
今はもう会えなくなってしまった家族へと捧げる、弔いの一声だったような・・・・・・そんな気がした・・・・・・・・・
本来であれば、莫大なエネルギーを蓄積するまではその場から動かない、隙だらけの技のはずだけど・・・
今のカノンは、動けない格好の「的」だ・・・!
既に、あの光線を弾き返すだけのバリアを展開する事が出来ないのは判っている。
『・・・・・・』
隣で沈黙しているシルフィの表情は、固い。
───やれるだけの事は、やった。
───これ以上は、カノンに恨まれでも、彼女を逃がすべきだ
───カノンを苦痛から解放してあげたい。早く楽にしてあげたい。
頭の中に浮かんでくるのは・・・そんな弱音ばかり。
・・・でも、その気持ちは僕のエゴであって・・・・・・決して、彼女の望みじゃない・・・ッ‼
「諦めちゃ───ダメだッ‼」
握った拳から血が滴り・・・そこに弱気が溶けて、体から流れ出た。
──そうだ。まだ諦めちゃいけない・・・‼ だって───
<グルルル・・・‼ グルアアアァァ・・・ッ‼>
実際に戦っているカノンはまだ・・・諦めていないんだ‼
・・・何か、ないか・・・! これまでのカノンの戦いを思い出せ・・・! そこに何かヒントがあるはずなんだ・・・!
全く別の生物であっても、レイバロンとカノンは同じ力を持っているんだから、同じ弱点があったっておかしくは────
「・・・っ! ・・・・・・同じ、力・・・弱点・・・・・・」
その時ふと、先程聞いたカノンの言葉が、脳裏に浮かび上がって来る。
「ったく・・・思い返せば、本当にワケわかんねー事だらけだ・・・!」
「起きたら急に何もかも小さくなってやがるし・・・体からビリビリは出るし──」
・・・そうだ。同じ力を持っていても・・・彼女は、自分の力を使いこなしてはいない。
そして、カノンの弱点・・・それは───
「なっ・・・⁉ 角の部分にはバリアが無いのか・・・っ⁉」
一番目立つはずの角に、バリアが張れていない事───
「もし・・・かして・・・・・・ッ‼」
欠けていたピースが嵌まり、一つの事実が浮かび上がってくる。
カノンは・・・意識的にあの力を使っている訳ではない。
攻撃に対して意識を向けた時にだけバリアが発生したり、無我夢中になっている時に、体を稲妻が伝導う事はあっても・・・自分の「誇り」である角にはバリアを張らないように──
無意識にあの力を「得体の知れないもの」として認識して、忌避しているんじゃないのか・・・・・・⁉
だと、したら───!
「・・・カノンッ‼ 聞いてッ‼」
声の限り、彼女に向かって叫ぶと───
疲労によって瞼を半分下ろしながらも・・・未だ闘志を失ってはいない瞳が、応えた。
「カノン! 君のその力は・・・「ビリビリ」は、君の敵じゃない!」
・・・彼女自身は、稲妻の力をあてにはしていない。
あの力はあくまで、怪獣になってしまう過程で偶然手にしたものなんだろう。
「それは──君の守りたいものを、守るための力なんだッ!」
そして、カノンは特別な力があろうとなかろうと・・・いや、きっとそもそも怪獣であろうとなかろうと・・・
成すべき事をするために・・・誰かを守るために戦うんだ。
・・・でも、今は───
「だから・・・恐れずに受け入れるんだ! 君の持つ「誇り」を・・・守るためにッ‼」
きっとその力が・・・君を救ってくれるはずだから・・・!
<・・・ッ‼>
目を見開いたカノンは、一瞬、迷ったような素振りを見せ───
<・・・・・・グルアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼>
そして、それを吹っ切るように──強く・・・強く、叫んだ。
すると・・・バチバチッ‼と音を立てて──
二本の角の間に、細い稲妻がいくつも走り始める。
同時に、カノンの背中の甲羅も、水色に発光し始めた。
『・・・! まさか・・・レイバロンと同じ技を・・・!』
シルフィがはっとした表情を見せる。
動けない状態でレイバロンに対抗するには・・・同じ技を使った上で、なおかつ相手を打ち破るしかない。
・・・カノンは、それを判ってるんだ。
<バオオオオオオ──バッ・・・ゴボォオッ・・・‼>
先に光線のチャージを始めたレイバロンが有利かと思っていたけど・・・カノンの与えていたダメージは相当のものだったらしい。
口の端と首元から血を流しながら、向こうも文字通り決死の気迫を以て、水色のエネルギーを高めていく。
───そして・・・・・・二体の装甲の放つ光は、ほとんど同時に極限に達する。
「誇り」と「憎しみ」との戦いに──今、互いの最後の一撃が───放たれた!
<グルアアアアアアアアアアアアァァァァァァ────‼>
<バオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ────‼>
カノンの角の間から、レイバロンの口腔から・・・巨大な光線が発射され、ぶつかり合う。
バリア同士が接触した時とは比べ物にならない程の威力が、眼の前で衝突している。
二つの光線から放たれる雷霆は、周囲の岩石を弾き飛ばすだけでは飽き足らず、岩棚を削り、天井の各所を破壊し、地面に大きな亀裂を入れ──
文字通り、地形を変えてしまっていた。
<グルアアアアアアアアァ────>
<バオオオオオオオオォォ────>
自分で放っている光線の威力に、当人たちも耐えきれなくなり・・・徐々に、体が後退していく。
カノンの踏ん張ろうとする肢からは、血が出ている・・・! でも───‼
「負けるなああぁぁっ‼ かのおおおぉぉぉんっっ‼」
<グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼>
・・・僕の声援に、応えようとしてくれた訳じゃないと思う。
それでもカノンは・・・・・・最後の最後で・・・踏み止まってくれた。
<オオオオオオォォォォ───バオオォオッッ⁉>
そして、ぶつかり合う光線の衝突点は・・・徐々に、レイバロンの方へと近づいていき・・・
<バオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ────>
それが弾けた時・・・炸裂した稲妻は地面をめくり上がらせ、大穴を穿ち──
最後まで、憎しみに満ちた叫びを上げながら・・・・・・紫色の巨体は、奈落へと消えて行った。
・・・宿敵の最期を見届けたカノンは・・・浅い呼吸を繰り返した後・・・・・・
<グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼>
最後に、勝鬨を上げてから───光の粒子になって、空気に解けていく。
・・・その雄叫びは、勝利の喜びを表すものではなく・・・・・・
今はもう会えなくなってしまった家族へと捧げる、弔いの一声だったような・・・・・・そんな気がした・・・・・・・・・
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