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第六話「狙われた翼 前編」
第三章「死神」・②
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※ ※ ※
<キクキカカカカカカカッッ‼>
獲物を狩る猛禽のように、上方から滑空するNo.011──
それを待ち構えるNo.013は、周囲の爆煙を照り返して怪しく光る鋭利な両腕を、迫り来る翼に向かって掲げた。
「・・・! み、見て下さい隊長!」
柵山少尉が、メインモニターを凝視しながら悲鳴じみた声を上げる。
外部センサーによるNo.013の内部構造スキャンを実行し、言われた通りに目を向けると──
「ッ! ヤツの腕が・・・!」
カマキリのそれに似た両腕が、ガキン、と音を立てて上下に開いたのである。
あれは「鎌」ではなく、「鋏」だったのか・・・!
No.013は甲板の縁に陣取り、突進してくるNo.011の翼を捕らえようと、鋏と化した両腕を前方へ繰り出した。
「ぶつかるぞ!」
同じくモニターに釘付けになっていた竜ヶ谷少尉が叫ぶ。
巨体同士が激突する、その寸前───No.011は空中で急制動する。
<甲板の上にいる子たち! 全員拾ってあげるから、抵抗しちゃダメよ!>
外部マイクが、大気のみを震わせる「声」を捕らえた。
途端、巨大な蝶は、まるで無重力空間に居るかのようにその場で上体を起こすと、No.013へ向かって翼の腹側を見せた。
<クキキカカカカ───>
飛んで火にいる・・・とばかりに、翼を掴みにかかるNo.013だったが──次の瞬間。
二色の翼は前後に激しく羽撃き始め──立ちどころに、甲板の上を強烈な突風が襲った。
「な、なんだと・・・っ⁉」
全長150メートルの翼が起こす威力は、No..013をたじろがせ──
同時に、甲板にいた多くの乗組員たちを空中へと巻き上げた。外部マイクから、いくつもの悲鳴が聴こえてくる。
「ヤツめ・・・! 自分で言った誓いを破るつもり──」
<違うわ。何度も同じ事を言わせないで頂戴>
憤慨しかけて、再び「声」が鼓膜を震わせた。
No.011は最後にもう一度大きく羽撃くと、その勢いで後退。
敵と距離を取ると、再び上空へ舞い上がり──今まさに夜の海へと落下していく人々を見据えながら、真っ赤な左瞳を光らせる。
すると、空母のすぐ横で、無数の赤い光が瞬いた。
「! これは・・・サイクラーノ島から連中を運んできた時と同じ・・・⁉」
<ご名答。後ろの船に避難させるわ>
たった今ヤツが吹き飛ばした人々が包まれた赤い光は、流星雨のように散って、空母の後方・・・数隻の駆逐艦の甲板に、分かれて着地した。
「・・・・・・・・・Oh Jeez・・・・・・」
思わず、マクウェル中尉が呟く。・・・やはり、No.011は規格外だ。
<ッ! キュルルルル・・・ッ!>
驚愕した、その直後──No.013のものではない、甲高い声をマイクが拾った。
今のは・・・No.011の「鳴き声」・・・か・・・?
同時に二色の翼がよろめき、一瞬、浮力を失ったかのように高度を下げたのが見えた。
すぐに立て直したが・・・今のは・・・・・・
「No.011は・・・傷でも負っているのか・・・?」
傍から見ても、疲弊しているのが判った。
塞いでいた傷口が開いたのか・・・あるいは──超常の能力を使うには・・・何か代償が必要という事なのか・・・?
<ハァ・・・ハァ・・・し、心配ないわ・・・少し重力に酔っただけよ・・・>
また思考を読んだのだろう。「声」が苦しい言い訳をする。
<アレが・・・ハァ・・・ハァ・・・ザムルアトラが地球に来てしまったのは、私のせいなの・・・! だから・・・私が・・・始末をつけ───>
<カカカカカカッ‼ クキキキキイイィィ─────ッ‼>
「ザムルアトラ」──それがNo.013の本来の名前なのか?
・・・そう問おうとしたところで、再び耳障りな金属音が司令室のスピーカーを揺らした。
「な、なんだっ⁉」
サブモニターで飛行甲板の様子を見ていた柵山少尉が、目を見開く。
メインに映像を回すと──鋼鉄の昆虫の長い首の側面から、白い煙が立ち昇っているのが見えた。
次いで、その首の両側に房になって付いている、三対六個のラクビーボール状──いや、ヤツの場合はダンゴムシ状と言うべきか──の部位が小刻みに振動し始める。
本体の巨大さ故感覚が狂ってしまうが、一つ一つが4、5メートル・・・乗用車くらいの大きさがある。
そして、それらが首から離れ、重力に任せて落下しようとした、その瞬間───六つの塊全てが、白煙を噴きながら飛行し始めたのだ!
「驚愕・・・!」
ユーリャ少尉の狼狽した声が耳に届く。
無軌道に飛んで行ったように見えた六つの巨大な弾丸は、後部ジェットによる推進だけでなく、宇宙船のスラスタに似たガス噴射で軌道を制御し──四方八方から、No.011へと殺到した。
<キュルルルル───ッ!>
攻撃に気付いたNo.011は、翼を空中に叩きつけるように羽撃かせて急上昇する。
しかし、その動きに合わせ、六つの煙の尾も瞬時に上空へ舵を切った。
・・・あの空飛ぶダンゴムシどもは、爆発物なのか・・・それとも、別の何かなのか・・・
命中するまでは判らないが、今・・・私たちがすべき事は───
「竜ヶ谷少尉! No.013に一斉砲撃! ヤツは今、自分の獲物に夢中で無防備だ!」
「ッ! あ、アイ・マム!」
・・・No.011を手助けするようで癪だが、話が通じる方は後回しにしてやる。
カメラを切り替え、手元のコンソールに薄気味悪い巨大カマキリの姿を映す。
夜空を見上げながら、鋏をカチカチと開閉している・・・好都合な事に、こちらは眼中にないようだ。
「撃ぇッ‼」
「うおらぁッッ‼」
ユーリャ少尉による的確な速度での巡航に、竜ヶ谷少尉の腕前だ──
止まっている上に、見えている的を外すわけがない。
計十二の砲門から、62口径の砲弾の雨が浴びせられる。
近距離かつ、空母へのダメージを考えて足下を狙えないのが惜しいが・・・目視でも七発ほど命中したのが見えた。
本来なら、今ので弾け飛んでいなければおかしい火力だが───
<キキキカカカ・・・・・・>
しかし、相手はジャガーノート──「高エネルギー」の持ち主だ。
本来であれば存在すらし得ないはずの自重を支える謎のエネルギーを纏う身体には・・・傷一つ付いてはいなかった。
「・・・予想通りとはいえ、流石にウンザリするな」
舌打ちしつつ、No.011の様子を確認する。
No.013の注意は逸らせたはずだが・・・二色の翼を追う弾丸は失速する気配はない。目視操作ではなく、自動追尾か・・・!
<キクキキキ・・・クカカカカ・・・ッ‼>
・・・どうやらロボットでも、脳天を突かれれば不機嫌になるらしい。
ヴァイオレットの鋭い眼光が、<モビィ・ディックⅡ>の艦橋を射抜いた。
「休む暇を与えるな‼ 撃ち続けろッ‼」
「アイ・マム‼」
モニターを睨んでいた竜ヶ谷少尉が、待っていたとばかりにトリガーを押す。
再び62口径が火を噴き、体高70メートルを超える巨体を砲撃が襲う・・・
が、少したじろぐくらいで、効いているようには見えない・・・と、そこで──
<ククク・・・キキキキ・・・・・・>
再び不気味な駆動音が聴こえ・・・何処からか、プシュー、と気体の抜ける音がした。
「・・・ッ! なんだアレは・・・!」
音の正体は、No.013の前部歩脚の根元・・・股の部分にあった蓋状のパーツが開いた音だった。
そして・・・ただでさえ悪趣味な位置にあるその蓋の向こう──つまり、体内から、細長い管のようなものが無数に伸びてくる。
「き、気色悪かぁ・・・」
「・・・・・・Whoops・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・Копец」
部下たちの口から次々に地元の言葉が飛び出す程に、嫌悪感を催す光景・・・
だがしかし、本当の悪夢はここからだった。
<キクキカカカカカカカッッ‼>
獲物を狩る猛禽のように、上方から滑空するNo.011──
それを待ち構えるNo.013は、周囲の爆煙を照り返して怪しく光る鋭利な両腕を、迫り来る翼に向かって掲げた。
「・・・! み、見て下さい隊長!」
柵山少尉が、メインモニターを凝視しながら悲鳴じみた声を上げる。
外部センサーによるNo.013の内部構造スキャンを実行し、言われた通りに目を向けると──
「ッ! ヤツの腕が・・・!」
カマキリのそれに似た両腕が、ガキン、と音を立てて上下に開いたのである。
あれは「鎌」ではなく、「鋏」だったのか・・・!
No.013は甲板の縁に陣取り、突進してくるNo.011の翼を捕らえようと、鋏と化した両腕を前方へ繰り出した。
「ぶつかるぞ!」
同じくモニターに釘付けになっていた竜ヶ谷少尉が叫ぶ。
巨体同士が激突する、その寸前───No.011は空中で急制動する。
<甲板の上にいる子たち! 全員拾ってあげるから、抵抗しちゃダメよ!>
外部マイクが、大気のみを震わせる「声」を捕らえた。
途端、巨大な蝶は、まるで無重力空間に居るかのようにその場で上体を起こすと、No.013へ向かって翼の腹側を見せた。
<クキキカカカカ───>
飛んで火にいる・・・とばかりに、翼を掴みにかかるNo.013だったが──次の瞬間。
二色の翼は前後に激しく羽撃き始め──立ちどころに、甲板の上を強烈な突風が襲った。
「な、なんだと・・・っ⁉」
全長150メートルの翼が起こす威力は、No..013をたじろがせ──
同時に、甲板にいた多くの乗組員たちを空中へと巻き上げた。外部マイクから、いくつもの悲鳴が聴こえてくる。
「ヤツめ・・・! 自分で言った誓いを破るつもり──」
<違うわ。何度も同じ事を言わせないで頂戴>
憤慨しかけて、再び「声」が鼓膜を震わせた。
No.011は最後にもう一度大きく羽撃くと、その勢いで後退。
敵と距離を取ると、再び上空へ舞い上がり──今まさに夜の海へと落下していく人々を見据えながら、真っ赤な左瞳を光らせる。
すると、空母のすぐ横で、無数の赤い光が瞬いた。
「! これは・・・サイクラーノ島から連中を運んできた時と同じ・・・⁉」
<ご名答。後ろの船に避難させるわ>
たった今ヤツが吹き飛ばした人々が包まれた赤い光は、流星雨のように散って、空母の後方・・・数隻の駆逐艦の甲板に、分かれて着地した。
「・・・・・・・・・Oh Jeez・・・・・・」
思わず、マクウェル中尉が呟く。・・・やはり、No.011は規格外だ。
<ッ! キュルルルル・・・ッ!>
驚愕した、その直後──No.013のものではない、甲高い声をマイクが拾った。
今のは・・・No.011の「鳴き声」・・・か・・・?
同時に二色の翼がよろめき、一瞬、浮力を失ったかのように高度を下げたのが見えた。
すぐに立て直したが・・・今のは・・・・・・
「No.011は・・・傷でも負っているのか・・・?」
傍から見ても、疲弊しているのが判った。
塞いでいた傷口が開いたのか・・・あるいは──超常の能力を使うには・・・何か代償が必要という事なのか・・・?
<ハァ・・・ハァ・・・し、心配ないわ・・・少し重力に酔っただけよ・・・>
また思考を読んだのだろう。「声」が苦しい言い訳をする。
<アレが・・・ハァ・・・ハァ・・・ザムルアトラが地球に来てしまったのは、私のせいなの・・・! だから・・・私が・・・始末をつけ───>
<カカカカカカッ‼ クキキキキイイィィ─────ッ‼>
「ザムルアトラ」──それがNo.013の本来の名前なのか?
・・・そう問おうとしたところで、再び耳障りな金属音が司令室のスピーカーを揺らした。
「な、なんだっ⁉」
サブモニターで飛行甲板の様子を見ていた柵山少尉が、目を見開く。
メインに映像を回すと──鋼鉄の昆虫の長い首の側面から、白い煙が立ち昇っているのが見えた。
次いで、その首の両側に房になって付いている、三対六個のラクビーボール状──いや、ヤツの場合はダンゴムシ状と言うべきか──の部位が小刻みに振動し始める。
本体の巨大さ故感覚が狂ってしまうが、一つ一つが4、5メートル・・・乗用車くらいの大きさがある。
そして、それらが首から離れ、重力に任せて落下しようとした、その瞬間───六つの塊全てが、白煙を噴きながら飛行し始めたのだ!
「驚愕・・・!」
ユーリャ少尉の狼狽した声が耳に届く。
無軌道に飛んで行ったように見えた六つの巨大な弾丸は、後部ジェットによる推進だけでなく、宇宙船のスラスタに似たガス噴射で軌道を制御し──四方八方から、No.011へと殺到した。
<キュルルルル───ッ!>
攻撃に気付いたNo.011は、翼を空中に叩きつけるように羽撃かせて急上昇する。
しかし、その動きに合わせ、六つの煙の尾も瞬時に上空へ舵を切った。
・・・あの空飛ぶダンゴムシどもは、爆発物なのか・・・それとも、別の何かなのか・・・
命中するまでは判らないが、今・・・私たちがすべき事は───
「竜ヶ谷少尉! No.013に一斉砲撃! ヤツは今、自分の獲物に夢中で無防備だ!」
「ッ! あ、アイ・マム!」
・・・No.011を手助けするようで癪だが、話が通じる方は後回しにしてやる。
カメラを切り替え、手元のコンソールに薄気味悪い巨大カマキリの姿を映す。
夜空を見上げながら、鋏をカチカチと開閉している・・・好都合な事に、こちらは眼中にないようだ。
「撃ぇッ‼」
「うおらぁッッ‼」
ユーリャ少尉による的確な速度での巡航に、竜ヶ谷少尉の腕前だ──
止まっている上に、見えている的を外すわけがない。
計十二の砲門から、62口径の砲弾の雨が浴びせられる。
近距離かつ、空母へのダメージを考えて足下を狙えないのが惜しいが・・・目視でも七発ほど命中したのが見えた。
本来なら、今ので弾け飛んでいなければおかしい火力だが───
<キキキカカカ・・・・・・>
しかし、相手はジャガーノート──「高エネルギー」の持ち主だ。
本来であれば存在すらし得ないはずの自重を支える謎のエネルギーを纏う身体には・・・傷一つ付いてはいなかった。
「・・・予想通りとはいえ、流石にウンザリするな」
舌打ちしつつ、No.011の様子を確認する。
No.013の注意は逸らせたはずだが・・・二色の翼を追う弾丸は失速する気配はない。目視操作ではなく、自動追尾か・・・!
<キクキキキ・・・クカカカカ・・・ッ‼>
・・・どうやらロボットでも、脳天を突かれれば不機嫌になるらしい。
ヴァイオレットの鋭い眼光が、<モビィ・ディックⅡ>の艦橋を射抜いた。
「休む暇を与えるな‼ 撃ち続けろッ‼」
「アイ・マム‼」
モニターを睨んでいた竜ヶ谷少尉が、待っていたとばかりにトリガーを押す。
再び62口径が火を噴き、体高70メートルを超える巨体を砲撃が襲う・・・
が、少したじろぐくらいで、効いているようには見えない・・・と、そこで──
<ククク・・・キキキキ・・・・・・>
再び不気味な駆動音が聴こえ・・・何処からか、プシュー、と気体の抜ける音がした。
「・・・ッ! なんだアレは・・・!」
音の正体は、No.013の前部歩脚の根元・・・股の部分にあった蓋状のパーツが開いた音だった。
そして・・・ただでさえ悪趣味な位置にあるその蓋の向こう──つまり、体内から、細長い管のようなものが無数に伸びてくる。
「き、気色悪かぁ・・・」
「・・・・・・Whoops・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・Копец」
部下たちの口から次々に地元の言葉が飛び出す程に、嫌悪感を催す光景・・・
だがしかし、本当の悪夢はここからだった。
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