52 / 72
52、クインとアレン 想いの先には
しおりを挟む
アレンはグラハの間を出て、エルティーナの自室へと向かう。
エルティーナを抱き上げる時は、必ず腕に乗せ自らの身体には接触しないようにしていた。でも今はエルティーナは寝ている(失神している)ので、腕に乗せ身体どうしを密着させ、アレンにエルティーナの体重がかかるように抱いている。
出きるだけ長く抱いていたいと思い。人があまり通らなく、エルティーナの自室へ行くにはかなり遠回りになる回廊をアレンは選ぶ。
ボルタージュ国は今が一年のうちで一番穏やかな季節。
王宮の庭園には色とりどりの花が咲きほこり、針葉樹も広葉樹もふかい生命を感じる新緑の葉を太陽に向けて名一杯広げ、光を取り込んでいる。
今の時分、太陽は真上にあるため、回廊に影はできない。その為、美しく磨かれた大理石の長い回廊は、その石 本来の色や年輪のように流れる芸術的な模様を浮かび上がらせていた。
「いい風だな……」アレンは自らが不意に思った言葉に驚き、自然に唇が弧を描く。
自然や季節、気候を美しいと感じるようになったのは、あの庭園でエルティーナと再会してからだった。
あの時あの瞬間に、全てのものに色がついた。
天使のように妖精のように美しく成長したエルティーナ。本当にこれ以上、好きになるとは思っていなかったから驚く。
かすかに香るエルティーナの匂いがアレンのまわりを優しく包みこむ。
その香りに包まれながら、アレンはエルティーナの柔らかい身体を起きない程度の力でゆっくりと力を入れて抱きしめる……。
柔らかい柔らかい拘束……。
(「………幸せだな。エル様……どうか起きないでください……もう少し……このままで……あと少し…貴女に触れていたい…」)
長く続く回廊は、二人の味方だった。珍しく誰も通らず、鳥の鳴き声さえない空間…。
まさにそこだけが、この世界から切り取られた二人だけの空間となっていた。
エルティーナを身体中で感じ大満足のアレンは、彼女の自室近くになる頃に密着して抱き上げていたのをやめ、抱き方を変える。
帝王学などの勉強は本来エルティーナの自室でやる為、何故いきなり場所が変わってしまったのか。理由を聞かされていないナシルは心配だったのだろう、エルティーナの部屋の前で待っていた。
アレンはそれを見て「悪い事をしたな」と思いながら歩いていく。
「アレン様!? エルティーナ様に何かあったのですか?? 」
緊張したナシルの声が聞こえてくる。
「エルティーナ様は寝ていらっしゃるだけだ。帝王学はラズラ様も一緒に受ける事になった為、朝食をとったグラハの間でそのままされていた。
授業は最後まで受けられている。
午後からの予定は無い。少しお疲れのようだから、自ら目覚めるまで起こさないでほしい」
エルティーナを気遣うアレンに、感謝の気持ちをこめてナシルは腰を折る。
「アレン様、中に」
ナシルに促されてエルティーナを抱いたまま部屋に入る。部屋の真ん中に位置するソファにエルティーナを横たえようとすると、ナシルに止められる。
「アレン様。エルティーナ様はよく寝入っているようですので、ソファーでは身体に負担がかかりよくありません。
私どもではエルティーナ様を運べませんので、申し訳ございませんが寝室のベッドに下ろして頂けませんか?」
ナシルの願いにアレンは拒否反応が出る。
「流石に、私が寝室に入るのは問題があると思うが………」
「私も一緒に中に入りますし、ドアは全開にしておきますので大丈夫です。どうぞ、よろしくお願い致します」
「…分かった運ぼう。ドアを開けてくれ」
穏やかなアレンの声にナシルはゆっくり頷く。
ただ、運ぶ為だけでもアレンにとっては禁断の場所である。今朝の夢の話の一件もあり、どうしても生々しい情事を想像してしまいエルティーナに対して申しわけなくなり萎縮する。
「アレン様、こちらに」
ナシルの言葉にしたがいエルティーナをベッドに優しく、大切に横たわす。手の甲に柔らかなベッドの感触が伝わり、小さくきしむ音が静寂の部屋に響く。
隣りにナシルがいて、寝室の扉は両扉が最大に開いている。
太陽の光を取り込み暗い部屋に光の道を作っていても、アレンの気持ちは高ぶり熱くなる。
変な気分にならないように、出きるだけ周りを見ないように心がけた。
アレンがそんな葛藤をしていた同時、エルティーナをベッドに下ろすのを見ていたナシルは、不思議そうにアレンを観察していた。
(本当にアレン様の腕力に惚れ惚れするわ。なかなか体重のおありになるエルティーナ様を腕の力だけで体勢を変えてベッドに下ろすなんて。 何処にそんな力がおありなのかしら? 聞いてみたいわ…。
それにいつも遠くから見ていても美しいお姿だと感心していましたが。間近でみたら凄い迫力の美貌ね~。眼福、眼福。
天使のように美しいエルティーナ様と並ぶと、物語の一場面を切り取ったかのようだわ……綺麗……)
エルティーナを横たえた後、アレンは身を起こす。名残惜しそうにエルティーナを見ている自分に対して笑いが込み上げる。
ナシルに目を向けると幸せそうに微笑んでいた。
「ふふっ。アレン様とエルティーナ様が並ぶと本当に見ているだけで幸せな気分になります。なんと申しましょうか…、色彩の対比が美しいのですね」
エルティーナ付きの侍女達がアレンを大絶賛するのは何度も聞いてきたが、行儀作法に厳しいナシルからのそういった発言は皆無だった為、アレンは驚いた。
あまりに驚いているアレンにナシルは戸惑う。
「こう言う発言は、お嫌ですか?」
「エルティーナ様の側に居て、似合うと言われ嫌な訳はない。もちろん嬉しい。驚いたのは、貴女からそう言う類の話を今まで一度も聞いたことがなかったからだ」
「もちろん口には出しません。でもずっと思ってはおりました。
……エルティーナ様だけでも、アレン様だけでも、お美しいですが、お二人が並ぶ時が一番美しいと私は感じます」
ナシルの言葉はアレンの心に深く響く。見目も美しくありたいと思うのは、エルティーナ様の側にいたいからだ。
ナシルの言葉を何度も反芻する。アレンは溢れる思いを胸に「ありがとう」と言葉に乗せた。
アレンが退出した寝室でナシルはゆっくりとエルティーナの髪を解く。
柔らかく金色に輝く髪を見て、ナシルはそっとキスを落とし、小さな小さな声で願いを口にする。
「幸せになってくださいませ。エルティーナ様」……と。
半年後の別れはアレンとだけではない。ナシル達との別れも待っている。
他国に嫁ぐ場合のみ乳母や侍女を連れていける。しかし伯爵家に降嫁するエルティーナにはついて行けない。
結婚が決まり嬉しい以上に、エルティーナと離れる寂しさが思っていた以上に辛くて仕方がなかった。
アレンはエルティーナが目覚めるまで側に居ることが出来ない。エルティーナが起きていてもいなくても、夕方くらいに訪れる旨を侍女に伝え部屋を退出した。
アレンが自室までの回廊を歩いていると、回廊に面している庭園のベンチに父であるクイン・メルタージュが座っていた。
「アレン。久しぶりだね。同じ王宮にいても会わないもんだ」
「お久ぶりです、父上。何故ここに?」
「アレンを待っていたのだよ。エルティーナ様は午後から何も予定がないから、お前の身体があくかと思ってね。
例の件を調べた最終報告を今から陛下と話すのだけど、アレンも一緒にどうかと思ってね」
「一緒に行きます」
「うん」
クインとアレンは王の政務室まで連れ立って行くことになった。
何も話さずしばらく歩いた時、クインから先に口をひらいた。
「アレン、病気は大丈夫か?」
突然の父からの気遣いに驚く。今日はよく病気のことにふれる日だな…と感じる。
「とくに変わりなくです。悪くはなっていませんが、良くもないです」
「……そうか。…アレン。
その…エルティーナ様の護衛を続けるのに、宦官になる必要はないと思うのだが…別に今のままでも……。
フリゲルン伯爵もエルティーナ様と床を共にすれば彼女が純潔だと分かるだろうし、お前に対しても信用が出来ると思う」
「父にも、死んだ母にも悪いとは思います。だがフリゲルン伯爵だけに分かった所で何の意味もない。
王女であるエルティーナ様に私が護衛に付くのはおかしくはないですが、フリゲルン家に降嫁し、王族でなくなるエルティーナ様に伯爵家よりも位の上の私が付くのはおかしい。何もなくても周りは噂をし、彼女を貶めていく」
「……そう…だね…」
「そういう噂や中傷から守るのは、私がエルティーナ様の側から離れればいいと、重々承知してます。
…でもそれだけは出来ない。…何も望まない……ただ側に…居たい」
「お前の病の事は、エルティーナ様もご存知だし…一緒になろうとは思わないのか?
病の所為で長く一緒にいられなくとも。彼女なら、それまでの時を大切に過ごして頂けると思うよ。
なんせ吐血しているお前を押し倒していたくらいの方だし……」
クインの言い方に、軽く吹き出す。それから笑うのを隠すため口を軽く押さえた。
「……父上、そのようないい方は、エルティーナ様が猛獣みたいですよ。
……エルティーナ様と一緒になろうとは思いません。後、数年程度しか生きれない私と…この先何十年もの時があるエルティーナ様と夫婦にはなれない。
今の関係だから我慢が出来ます。夫婦になれば今のようには堪えられない。どうしても先に進みたくなる。何も残せない私が欲望を満足させる為だけに、彼女のあるべき未来をつぶしたくはありません。
この頃…我慢しきれなくて、抱き上げたりはしていますが……」
「分かったよ。もう言わない。お前が王宮に入ったら、もしかしたらエルティーナ様以外の女性を好きになるかもと思ったが…やはり無理だったか……エルティーナ様が素晴らし過ぎるからな。
はぁぁ~ あそこまで美しく育たなければ…むしろ不美人だったら、行くあてがないから、お前にとでもなったろうに……残念だよ」
「エルティーナ様に恋をしたら、他の女性と恋は出来ない」
「そうだな……」
それ以降、クインとアレンは何も話さず王の政務室に到着した。
エルティーナを抱き上げる時は、必ず腕に乗せ自らの身体には接触しないようにしていた。でも今はエルティーナは寝ている(失神している)ので、腕に乗せ身体どうしを密着させ、アレンにエルティーナの体重がかかるように抱いている。
出きるだけ長く抱いていたいと思い。人があまり通らなく、エルティーナの自室へ行くにはかなり遠回りになる回廊をアレンは選ぶ。
ボルタージュ国は今が一年のうちで一番穏やかな季節。
王宮の庭園には色とりどりの花が咲きほこり、針葉樹も広葉樹もふかい生命を感じる新緑の葉を太陽に向けて名一杯広げ、光を取り込んでいる。
今の時分、太陽は真上にあるため、回廊に影はできない。その為、美しく磨かれた大理石の長い回廊は、その石 本来の色や年輪のように流れる芸術的な模様を浮かび上がらせていた。
「いい風だな……」アレンは自らが不意に思った言葉に驚き、自然に唇が弧を描く。
自然や季節、気候を美しいと感じるようになったのは、あの庭園でエルティーナと再会してからだった。
あの時あの瞬間に、全てのものに色がついた。
天使のように妖精のように美しく成長したエルティーナ。本当にこれ以上、好きになるとは思っていなかったから驚く。
かすかに香るエルティーナの匂いがアレンのまわりを優しく包みこむ。
その香りに包まれながら、アレンはエルティーナの柔らかい身体を起きない程度の力でゆっくりと力を入れて抱きしめる……。
柔らかい柔らかい拘束……。
(「………幸せだな。エル様……どうか起きないでください……もう少し……このままで……あと少し…貴女に触れていたい…」)
長く続く回廊は、二人の味方だった。珍しく誰も通らず、鳥の鳴き声さえない空間…。
まさにそこだけが、この世界から切り取られた二人だけの空間となっていた。
エルティーナを身体中で感じ大満足のアレンは、彼女の自室近くになる頃に密着して抱き上げていたのをやめ、抱き方を変える。
帝王学などの勉強は本来エルティーナの自室でやる為、何故いきなり場所が変わってしまったのか。理由を聞かされていないナシルは心配だったのだろう、エルティーナの部屋の前で待っていた。
アレンはそれを見て「悪い事をしたな」と思いながら歩いていく。
「アレン様!? エルティーナ様に何かあったのですか?? 」
緊張したナシルの声が聞こえてくる。
「エルティーナ様は寝ていらっしゃるだけだ。帝王学はラズラ様も一緒に受ける事になった為、朝食をとったグラハの間でそのままされていた。
授業は最後まで受けられている。
午後からの予定は無い。少しお疲れのようだから、自ら目覚めるまで起こさないでほしい」
エルティーナを気遣うアレンに、感謝の気持ちをこめてナシルは腰を折る。
「アレン様、中に」
ナシルに促されてエルティーナを抱いたまま部屋に入る。部屋の真ん中に位置するソファにエルティーナを横たえようとすると、ナシルに止められる。
「アレン様。エルティーナ様はよく寝入っているようですので、ソファーでは身体に負担がかかりよくありません。
私どもではエルティーナ様を運べませんので、申し訳ございませんが寝室のベッドに下ろして頂けませんか?」
ナシルの願いにアレンは拒否反応が出る。
「流石に、私が寝室に入るのは問題があると思うが………」
「私も一緒に中に入りますし、ドアは全開にしておきますので大丈夫です。どうぞ、よろしくお願い致します」
「…分かった運ぼう。ドアを開けてくれ」
穏やかなアレンの声にナシルはゆっくり頷く。
ただ、運ぶ為だけでもアレンにとっては禁断の場所である。今朝の夢の話の一件もあり、どうしても生々しい情事を想像してしまいエルティーナに対して申しわけなくなり萎縮する。
「アレン様、こちらに」
ナシルの言葉にしたがいエルティーナをベッドに優しく、大切に横たわす。手の甲に柔らかなベッドの感触が伝わり、小さくきしむ音が静寂の部屋に響く。
隣りにナシルがいて、寝室の扉は両扉が最大に開いている。
太陽の光を取り込み暗い部屋に光の道を作っていても、アレンの気持ちは高ぶり熱くなる。
変な気分にならないように、出きるだけ周りを見ないように心がけた。
アレンがそんな葛藤をしていた同時、エルティーナをベッドに下ろすのを見ていたナシルは、不思議そうにアレンを観察していた。
(本当にアレン様の腕力に惚れ惚れするわ。なかなか体重のおありになるエルティーナ様を腕の力だけで体勢を変えてベッドに下ろすなんて。 何処にそんな力がおありなのかしら? 聞いてみたいわ…。
それにいつも遠くから見ていても美しいお姿だと感心していましたが。間近でみたら凄い迫力の美貌ね~。眼福、眼福。
天使のように美しいエルティーナ様と並ぶと、物語の一場面を切り取ったかのようだわ……綺麗……)
エルティーナを横たえた後、アレンは身を起こす。名残惜しそうにエルティーナを見ている自分に対して笑いが込み上げる。
ナシルに目を向けると幸せそうに微笑んでいた。
「ふふっ。アレン様とエルティーナ様が並ぶと本当に見ているだけで幸せな気分になります。なんと申しましょうか…、色彩の対比が美しいのですね」
エルティーナ付きの侍女達がアレンを大絶賛するのは何度も聞いてきたが、行儀作法に厳しいナシルからのそういった発言は皆無だった為、アレンは驚いた。
あまりに驚いているアレンにナシルは戸惑う。
「こう言う発言は、お嫌ですか?」
「エルティーナ様の側に居て、似合うと言われ嫌な訳はない。もちろん嬉しい。驚いたのは、貴女からそう言う類の話を今まで一度も聞いたことがなかったからだ」
「もちろん口には出しません。でもずっと思ってはおりました。
……エルティーナ様だけでも、アレン様だけでも、お美しいですが、お二人が並ぶ時が一番美しいと私は感じます」
ナシルの言葉はアレンの心に深く響く。見目も美しくありたいと思うのは、エルティーナ様の側にいたいからだ。
ナシルの言葉を何度も反芻する。アレンは溢れる思いを胸に「ありがとう」と言葉に乗せた。
アレンが退出した寝室でナシルはゆっくりとエルティーナの髪を解く。
柔らかく金色に輝く髪を見て、ナシルはそっとキスを落とし、小さな小さな声で願いを口にする。
「幸せになってくださいませ。エルティーナ様」……と。
半年後の別れはアレンとだけではない。ナシル達との別れも待っている。
他国に嫁ぐ場合のみ乳母や侍女を連れていける。しかし伯爵家に降嫁するエルティーナにはついて行けない。
結婚が決まり嬉しい以上に、エルティーナと離れる寂しさが思っていた以上に辛くて仕方がなかった。
アレンはエルティーナが目覚めるまで側に居ることが出来ない。エルティーナが起きていてもいなくても、夕方くらいに訪れる旨を侍女に伝え部屋を退出した。
アレンが自室までの回廊を歩いていると、回廊に面している庭園のベンチに父であるクイン・メルタージュが座っていた。
「アレン。久しぶりだね。同じ王宮にいても会わないもんだ」
「お久ぶりです、父上。何故ここに?」
「アレンを待っていたのだよ。エルティーナ様は午後から何も予定がないから、お前の身体があくかと思ってね。
例の件を調べた最終報告を今から陛下と話すのだけど、アレンも一緒にどうかと思ってね」
「一緒に行きます」
「うん」
クインとアレンは王の政務室まで連れ立って行くことになった。
何も話さずしばらく歩いた時、クインから先に口をひらいた。
「アレン、病気は大丈夫か?」
突然の父からの気遣いに驚く。今日はよく病気のことにふれる日だな…と感じる。
「とくに変わりなくです。悪くはなっていませんが、良くもないです」
「……そうか。…アレン。
その…エルティーナ様の護衛を続けるのに、宦官になる必要はないと思うのだが…別に今のままでも……。
フリゲルン伯爵もエルティーナ様と床を共にすれば彼女が純潔だと分かるだろうし、お前に対しても信用が出来ると思う」
「父にも、死んだ母にも悪いとは思います。だがフリゲルン伯爵だけに分かった所で何の意味もない。
王女であるエルティーナ様に私が護衛に付くのはおかしくはないですが、フリゲルン家に降嫁し、王族でなくなるエルティーナ様に伯爵家よりも位の上の私が付くのはおかしい。何もなくても周りは噂をし、彼女を貶めていく」
「……そう…だね…」
「そういう噂や中傷から守るのは、私がエルティーナ様の側から離れればいいと、重々承知してます。
…でもそれだけは出来ない。…何も望まない……ただ側に…居たい」
「お前の病の事は、エルティーナ様もご存知だし…一緒になろうとは思わないのか?
病の所為で長く一緒にいられなくとも。彼女なら、それまでの時を大切に過ごして頂けると思うよ。
なんせ吐血しているお前を押し倒していたくらいの方だし……」
クインの言い方に、軽く吹き出す。それから笑うのを隠すため口を軽く押さえた。
「……父上、そのようないい方は、エルティーナ様が猛獣みたいですよ。
……エルティーナ様と一緒になろうとは思いません。後、数年程度しか生きれない私と…この先何十年もの時があるエルティーナ様と夫婦にはなれない。
今の関係だから我慢が出来ます。夫婦になれば今のようには堪えられない。どうしても先に進みたくなる。何も残せない私が欲望を満足させる為だけに、彼女のあるべき未来をつぶしたくはありません。
この頃…我慢しきれなくて、抱き上げたりはしていますが……」
「分かったよ。もう言わない。お前が王宮に入ったら、もしかしたらエルティーナ様以外の女性を好きになるかもと思ったが…やはり無理だったか……エルティーナ様が素晴らし過ぎるからな。
はぁぁ~ あそこまで美しく育たなければ…むしろ不美人だったら、行くあてがないから、お前にとでもなったろうに……残念だよ」
「エルティーナ様に恋をしたら、他の女性と恋は出来ない」
「そうだな……」
それ以降、クインとアレンは何も話さず王の政務室に到着した。
0
お気に入りに追加
388
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる