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21、冗談が過ぎる日々
しおりを挟む凄い勢いで返事をし、退出したパッドに凛音は呆然。確かにエティエンヌフューベルの美貌は他者を寄せ付けない凄さがあるし、重低音に響く声色は、音色の如く美しく、聞いた者を黙らす威力ある。
がしかし、それだけだ。
ちょっと空気が読めず強引なところも、こちら側が強めに出ればすぐ謝り気を使う(凛音のみだと気づいてない)ところも、小さな女性版エティエンヌフューベルとそう変わらない。
なのにパッドの怯えようは異常であった。
恐がる意味がわからない??と疑問に思う凛音は、やはり異世界人なのだ。
魔力もなく、この世界に生まれたなら必ずある身体的特徴が何一つない凛音には、妖精族特有の魔力も強い匂いも当然全く読めない。
よって凛音を得て、間違いなくこの世界の覇者たる〝力〟を持つ事になったエティエンヌフューベルは、畏怖の対象で間違いない。
「凛音。可愛い顔して惚けるな、口づけしたくなる」
「ぐふっっっ…」
唾と息が気管につまり、息が止まる。そして咳が出る。
「ゴホッ ゴホッ ゴホッ ゴホッ ゴホッッ」
「あぁ、息も満足に吸えないのか? 細い首だからな。ほらっ、息をゆっくりと吸うんだ」
必死に咳を止めようと格闘する凛音に、エティエンヌフューベルは無意識に追い打ちをかけてくる。
(「甘いっ!!! 甘っ、無理っ甘い!!! くそっ、覗きこむな、バカ!!!って言えないっ、咳のせいで!!!
くそっ、エティエンヌフューベル様、かっこよくなり過ぎじゃないでしょうか!?」)
「ゴホッ ゴホッ ゴホッッ……ンッ、ンッ」
「ほらっ、落ち着いて息をするんだ」
耳に直接声と、少し湿り気がある柔らかな感触が伝わってくる。まさかの唇を耳穴に当てながら話すという暴挙に出てきた。
恥ずかしいのか、嬉しいのか、幸せなのか、エッチな気分になって子宮が伸縮し痛いのか、全部だ、全部。エティエンヌフューベルから与えられる全てが、夢物語。
「ぁんっっっ、耳っ……だっめ」
「そうだな。この角度だと凛音の顔が見えない」
「違っ」
「ふむ、この角度がいいな。私の顔を見てくれ、凛音は私の顔だけ見ていればいい」
「ぐふっっっ」
いまだエティエンヌフューベルの名前を唱えながらガン見するイヨカ。感動から涙を流し魂が抜け切っているイヨカの妻パテと、凛音の側仕えのタニア。
いつまでこの甘ったるいエティエンヌフューベルの相手をしなくてはならないのか? 出て行ったパッドを凛音は待ち望んでいた。
しばらくし、「ただ今、戻りました!」と緊張感がするパッドの声が聞こえてくる。
やっとイチャイチャが終われると凛音は安心し、入室してくるパッドに目を向けた。
「王、果実水をお持ち致しました」
うやうやしく差し出されたグラスには、オレンジ色の液体が入っている。とても美味しそうである。グラスは二つあるからきっと、いや絶対に凛音とエティエンヌフューベルのモノに違いない。
大人であり空気を読む凛音。自分の分と確信があっても、エティエンヌフューベルから勧められるまで待つ。間違っても自ら手を伸ばして口をつけたりしない。
「凛音。そんな物欲しそうな顔をするな、下半身が疼くだろう?」
「ぐふっっっ、ゴホッッゴホ。エ、エティエンヌフューベル様ぁ!? ふ、ふざけないでください!!」
「ふざけてない。真実だ」
(「もっと悪いわ!!!」)
涙目で講義するが、もちろんエティエンヌフューベルは微笑を浮かべていて、全く堪えた様子はない。
(「くそっ、私が照れる度、嬉しそうにして。もう!! これ以上好きになっちゃうの無理!!」)
「本当はキャラメルマキアート(精液酒)を与えたいが、物理的に凛音と離れたくないから、それは後で飲んでくれ。
この身体だと、ほぼ無制限に用意出来る。遠慮はいらないからな?まっ、今はこれで我慢してくれ」
パッドが持ってきたグラスをエティエンヌフューベルが受け取り、凛音の手に渡してくれる。
正直、喉が渇いていた凛音は、エティエンヌフューベルの台詞に沢山疑問をもったが、何故かを質問せずに果実水を口に含む。
(「うまっ!うまっ! いい感じの清涼感!」)
幸せいっぱいな気持ちで果実水を飲み切った凛音。グラスから唇を離せば、間髪いれずにエティエンヌフューベルが口づけをかましてくる。
「んぅ!??? ぅーーー………ぷはっ!! 何っ?何するんですか!?」
「美味そうに飲むな。凛音はキャラメルマキアート(精液酒)が好きなのではないのか? 私と果実水、どちらが好きなんだ?」
「何の話だ!!?」 まさに凛音の答えはこれ一択だ。キャラメルマキアートが好きなのは、当然知っているだろう。今更だ。
キャラメルマキアートとこの果実水、どちらが好きか?という問いであれば納得するが、エティエンヌフューベルと果実水を何故比べる!? 意図する事が本気で分からない。
「えーっと、果実水は好きですよ。清涼感もあるし、私はオレンジやみかんが好きですから。
その…エティエンヌフューベル様は…す、好きです…けど、果実水とは、関係ない…ですよね?」
「凛音、質問に答えてくれ」
「………」
そんなこの世の終わりとばかりの表情をしないで欲しい。
距離が近いエティエンヌフューベルから、わずかに身を反り、周りに目を向ければイヨカもパテも、パッドもタニアも、真剣に凛音の言葉を聞く姿勢だ。
(「異世界、意味不明。エティエンヌフューベル様以外を、飲み物も食べ物も好きっていっちゃあかんのか!?
むしろただのオレンジジュースと妖精族の王にして高貴で美しいエティエンヌフューベル様を比べる方が、圧倒的に失礼ですよね?って、わざわざ言わないけど…うん、郷に入れば郷に従えだ」)
無理矢理自分を納得させて、凛音はそらしていた目をエティエンヌフューベルに戻す。
(「うわっ!? エティエンヌフューベル様っ、近いっ!!」)
麗しいエティエンヌフューベルの顔を見ると、どうしても見惚れてしまう自分を叱咤しながら、ゆっくりと答える。
「…エティエンヌフューベル様が、一番好きですよ」
発言した瞬間、ガバッと巨体が覆いかぶさってくる。
「…私以外に心を傾けてくれるな。私は…凛音の一番であり続けたい。好かれるよう努力し続けよう。
もう知らなかった頃には戻れない。凛音無しでは生きていけない」
もうなんなんだろう。異世界こわい。
こんな心技体すべてが揃い、悠久の時を生きる妖精族のさらに歴代最高と言わしめる王で、他の追付いを許さない究極の美貌をもつエティエンヌフューベル。
その彼から放たれる凛音への執着心が、摩訶不思議過ぎる。
凛音にすがりつく大きなエティエンヌフューベルの背中。
背中と小さく折りたたまれた純白の羽根のつけ根辺りをポンポンと叩きながら、心穏やかに母のような気持ちを持ち、抱きしめる。
が、それも数秒で終わりを告げた。
(「…エティエンヌフューベル様…あなたって人は…」)溜め息が出る。
これほどエロとは遠い状態であるのに、何故かエティエンヌフューベルの下半身の立派なブツが、若干…どころかしっかり勃起しているのを尻に感じる。
硬い棒で尻を突かれていると思えばいいのだ。無心だ。
凛音は強固な意志でそれを脳内から追い出し、平静を保つ。
別に性行為をしたいのではないのだろう。男の性になりたてだから仕方ない…と思おう。
がっちりと抱きしめられたまま、凛音はしたいようにしろとばかりに、身体の力を抜きエティエンヌフューベルにもたれかかる。
そして本心を伝える。
「エティエンヌフューベル様…好き、ですよ。大好きです……」
ギュウ~ギュウ~が止まらない。
「私はエティエンヌフューベル様のものですよ?」
「違う」
「違わないですよ」
これだけ惚れさせておいて、凛音が作った妄想の世界のみに存在するような容姿と性格で何を言う。
今、日本に帰ったら確実に生涯独身で終わるだろう未来しか想像出来ない。
凛音が思考の海を漂っていると、苦しそうなそれでも極上なエティエンヌフューベルの甘さ含む声が聞こえてくる。
「……凛音には、沢山の恋人がいた。伴侶となりたいとまで想う男もいた。
身体も、私が初めてではなかった。凛音は私でなくとも…構わないのだろう」
(「そんなぁ~、過去に嫉妬されても…」)
過去に戻れるなら、エティエンヌフューベルと出会っていたなら、絶対に顔もすでにうる覚えの彼氏達から必死に身体を守った。
凛音だって正直なところ真っ新の身体で、エティエンヌフューベルに会いたかった。
「初めてみたいなものです。あんな奥まで、その…入ったのはエティエンヌフューベル様だけですよ? 内臓が上下する感覚を初めて味わいました!」
「…凛音」
「過去には戻れませんから、仕方ないです。でもこれからの未来は全部、エティエンヌフューベル様一択ですから!! 絶対に浮気なんてしません」
「凛音…」
「なんだったら血判書でも作りましょうか?」
「……入れた感覚を忘れた」
「は??」
あれ? なんか雲行きが怪しい。
「もう一度、確かめなくては自信がない」
尻を突く硬い男根が、ビクビク脈打つ。何をしたいのか理解はするが、まさかまだするのか!? と、どれだけ絶倫なんだと、異世界の恐さを改めて感じる。
「…エティエンヌフューベル様、冗談ですよね?」
「私は冗談を言わない」
「無理、無理、無理、無理、無理、無理、無理、無理、無理、無理っ、みんなの前でなんか絶対無理!!」
「みんなとは? この部屋には誰もいない」
「え!?」
身体を捻れば、いてるはずのイヨカと妻のパテ。猫獣人パッドと妻のタニアがいない。いつの間に退出したのか? 普段はゆったり空気を読めない皆なのに、何故こんな時は空気を読む!?
「入れるだけだ。動かないなら構わないか?」
「え、そん…な(動いても動かなくても、挿入したら一緒じゃないかな~)」
「痛むならやめると誓う」
「うっ、(そんな顔で見ないでぇー)」
「少しだけで構わない」
「は、い(負けた…)」
瞬殺で下半身を覆う布地をさばき、天を突くようにいきり勃つ男性器を晒す。凛音の下着も勝手知ったるようで、あっという間に脱がしてしまう。
凛音の陰部を触り、繋がる為の蜜液を出そうとしたのだが、そこはすでに充分過ぎるほど湿っていて、驚きからエティエンヌフューベルは指を止めた。
「……凛…音?」
「もう! 不思議そうな顔をしないでください。
エティエンヌフューベル様の甘ったるいエロっい声と、勃起したそれをお尻にガンガン当てられたら当然濡れますよ。
だって嫌というほど、それで気持ち良くしてもらったんですよ? 気持ち良すぎて気絶までして。
身体の相性が良すぎるのも大変です。きっと…また意識を失ってしまうかもですが、大丈夫ですか?」
「もちろんだ、凛音はたっぷり私に溺れてくれ」
清々しいまでの宣言と共に、巨根がズボッと挿入される。
「あぁぁぁぁぁんっっぅっーーーー!!!」
快楽から無意識に逃げる為に身を反らした凛音。それを逃がさないよう、凛音の腰を抱えこむエティエンヌフューベルの攻防はまさに甘さのみだ。
膣内に埋めただけで達する凛音を見て、エティエンヌフューベルは最上の喜びを感じていた。
場所を変えての交わりは、まだ今から始まる。
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