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19、王の姿
しおりを挟む現在の時刻、昼。太陽は真上にまで登っていた。
エティエンヌフューベルの側近イヨカと妻のパテ。凛音付きの侍女になったタニアと旦那で騎士、猫獣人のパッドは同じ部屋で、エティエンヌフューベルと凛音が一夜を過ごしていた同じ時間、丸一晩を皆で過ごしていた。
もちろん遊んでいたのではない。
妖精族の絶対的な王エティエンヌフューベルの動向が気になり、無事男の性になれているのか? 頭が馬鹿みたいに堅い凛音と、無事に性行為が出来ているのか? と不安いっぱいなのだ。
「あなた、そんなソワソワなさらなくても。王が入室されて、かなりの時間が経っていますわ。天草様に拒絶されれば、優しい王は必ず部屋から出てまいります」
腕組みをしながら、部屋の隅から部屋の隅までを何度も行き来するイヨカに妻のパテは物申す。
「パテ。上手くいっているだろうと理解していても、それでも気になる。私達とは違う身体におなりだろう。
エティエンヌフューベル様は、妖精族では初となるこの世界の標準男性体に変化されているんだ!! 落ち着いてはいられない!!」
最もだ。
実は凛音からの拒否は、かなりの確率でないと皆が思っていた。絶対に男性版エティエンヌフューベルは凛音の好みで間違いないからだ。
では何か、そう興味本位なのだ。言い方は悪いが、その一言に尽きた。
「そ、そう言ってしまえば…終わりよ、あなた」
本心を吐露してしまったイヨカにパテは注意するが、その声は弱々しい。パテ自身も多大に興味があるのだから。
イヨカとパテのやり取りを見ていたタニアは、自分の膝上にある夫である猫獣人のパッドの頭を、撫でて、撫でて、撫でて、撫でていた。
獣型二足歩行タイプの姿をとっていたパッドは、落ち着きのない妖精族の皆を暖かく見守っていた。普段の状態がおっとりゆっくりが基本の妖精族の変わり様に、むず痒くなってしまう。
タニアの膝の上に頭を置いて半寝の状態だったパッドだが、その無心な撫で方にたまらず吹き出す。
「プゥー、気になる?」
「も、もちろんよ。だって天草様よ?あのトンチンカンな天草様が王とちゃんと出来ているのか…王は天草様のお身体の具合を見て、されてるかしら…」
「唯一無二の運命的な人だ。精神的にも合致し、肉体的にはさらに究極の相性なのだから、無理せずにまぐわっておられるだろう。
我々も同じだったじゃないか。一度はじまれば、終われない。それはそれは昇天するほど良いのじゃないか? 妖精族の絶対な王であっても、天草様には溺れきってしまわれる」
「えぇ、そうだけど。だけど、天草様はこの世界の住人ではないから…我々とは違うのよ…感覚が全く…」
「感覚が…だな…」
タニアとパッドの二人は、イヨカとパテとは違う凛音の心配をしていた。
ちょうど言葉が途切れた瞬間。全ての五感が研ぎ澄まされた獣人型になっていたパッドの鼻に、エティエンヌフューベルの匂いが入っきた。
その匂いは真っ直ぐにこの部屋に近づいてくる。
「王だ!! こちらに来られる様だ!!」
がばっと起き上がったパッドに、他三名も緊張から身体が強張る。
まさに未知の世界。あざとくボンキュボーんの絶世の美女姿のエティエンヌフューベルからでは、全く男性体の想像は出来ない。
パッド以外の三人、イヨカ、パテ、タニアにも王の気配が拾える位置まで来ていた。
本来なら、扉を開いて待っていた方がいいのかもしれないが、あまりの緊張から身体がまるで氷のように固まり動かない。
妖精族の三人は緊張と感動から動かないのだが、基本相手の力量を読める能力があるネコ科動物の国『タガルガ王国』出身のパッドは恐れからの硬直だった。
パッドはすでに息をするのがやっと。妖精族の王の完全体の恐怖は、気配が近づくにつれ、さらに増幅されていく。
(「手足が痺れてくる…これが、妖精族の王か」)
震える手足に力を入れ、エティエンヌフューベルとの対面で無様な姿を晒してしまわぬよう、唯一妖精族でないパッドは己を叱咤する。
部屋の前に止まった気配。そして重厚な扉は、ゆっくりと開いていった。
***
日が高く昇る頃、二人の蜜月はやっと終わる。
予告通り凛音が失神し、それでも抜かず腰を振り射精し続けていたエティエンヌフューベルは、やっと自身の生殖器が元のサイズに戻っていくのを感じていた。
「あっ…はぁ…………、出したな…」
エティエンヌフューベルと凛音の初夜の為と、豪華絢爛にあつらえられた部屋は凄い惨状だった。
まずはエティエンヌフューベルが男性体になる時に、怪力で破りまくったシーツ。その破られまくったシーツの上は、主にエティエンヌフューベルの精液でビチャビチャだ。
汚れてない場所に移動しながら、性行為したものだから、部屋中卑猥な液体が飛び散っている。
「溶かすか…」
物騒な発言をかますエティエンヌフューベル。それも当然で、この飛び散った液体がエティエンヌフューベルの精液のみなら気にしないが、この飛び散る液体は凛音の蜜液も多分にある。
凛音の身体から出たとしても、愛しい人の蜜液を己以外の他人に触れられるのは我慢ならなかった。
それからはまさに一瞬。
エティエンヌフューベルは強固に作られた室内を、紫炎で燃やすのではなく溶かした。
まるでアイスクリームがとけていくように、型を失い流れていく家具や食器、壁紙からカーテンまで、凛音が見ていたら確実にヒキツケを起こしていただろう、エティエンヌフューベルの能力。
近い未来エティエンヌフューベルの能力を見て怖くて失神するのだが、現在失神中の凛音にはこの状況はまだ知り得ない。
元の部屋の状態が分からないほど溶かしきった(もちろん精液や蜜液は蒸発して)エティエンヌフューベルは、隣部屋に凛音を抱いたまま入る。
寝室の横部屋は、風呂とソファーがある。寝る前にくつろぐ場所だ。
二人は真っ裸であるから、そのまま浴室に入る。シャワーで身体を清めている時、やっと凛音の意識が浮上してきた。
ぐったり失神していた凛音の身体に力が入る。
「凛音?」
「…エ…ティ…エンヌ…フュー…ベル…様、あの、ここは?」
「風呂場だ」
たしかに湯気が立ち上っていて暖かい。意識が戻れば裸で抱えられている羞恥心に耐えられなくなり、凛音はひとまずエティエンヌフューベルから離れたかった。
「お、おります、おろしてください!!」
「おろす、おろすから、あまり暴れるな」
直視できないエティエンヌフューベルの見目だが、声も反則過ぎて顔に熱が集まるし、また子宮が疼く。
(「エティエンヌフューベル様の美貌に慣れないっーーー!!! 色々無理ぃーー!!!」)
すったもんだの末、エティエンヌフューベルが無事男の性となり、凛音のいっちゃった妄想以上の美貌を眼前にさらしている。
これでもかと凛音の理想を詰め込んだエティエンヌフューベルの肉体美は、圧巻の一言。
(「美し過ぎて、動悸息切れがするわ…」)
視線を外していた凛音だが誘惑に負け、エティエンヌフューベルの圧巻の裸体が気になり、凛音は真正面に立つ麗しい人に恐々目を向けた。
女性では背の高い凛音が見上げるほど高く、ざっと見ても190センチはあるだろう身長。
折りたたまれた純白の翼から滴る水滴は、まさにエティエンヌフューベルの色気を上げる小道具になっていた。
すさまじいほどの筋肉美だが、その筋肉は絞り込まれ脂肪なんぞ身体には一切ついていない。きっと体脂肪数パーセントの世界だろう。
身体は惚れ惚れするほどガチガチなのにだ、顔の作りは女性の時と変わらずの美貌のまま、多少男性らしく削られた感があるだけ。
なによりも妖精らしい妖艶な薄紫色の髪と瞳は、女性体と同様に同じ色で見事に美しい。
エティエンヌフューベルの美貌に興奮してねっとり鑑賞していた凛音だが、男性特有の箇所を視界に入れて硬直からの冷や汗。
実は男性のエティエンヌフューベルは、凛音の願望が見せた夢だと半ば本気で思っていた。夢で無くて良かった。良かったのだが。
夢ではなくこれは現実と。しっかり頭で理解し、エティエンヌフューベルの裸体……主に股間に垂れ下がる…いや、あれだけやってまだ勃起している。
見たこともないほど巨根のイチモツを燦々と輝く日の下で目にし。思わず。
(「わ、私の身体、大丈夫か?」)と自身の秘部あたりに視線を落としたのは当然だ。
うっとりした顔でエティエンヌフューベルの裸体を見ていた凛音が、固まり自分自身の秘部を睨んでいて、エティエンヌフューベルは少し焦る。
「しっかり慣らしてから抱いたから、傷はついてないと思うが。痛むのか?」
「大、丈夫…です」
「驚かさないでくれ。私は凛音に何かあれば生きていけない」
「はうっ!!!!」
甘ったるい台詞にやられる。再起不能にされる。男性になったエティエンヌフューベルの声まで、凛音のどストライク。
勃起したままだが、別に入れるつもりはハナからないのか凛音の身体を優しく丁寧に洗い、その次にその凛音を洗ったタオルで自らの肉体を洗っていく。
見てはいけない光景だが、目を離せずガン見すれば、凛音の秘部も厚かましく繋がりたいのかぬるついてくる。
(「身体を洗うシーンさえもエロい。エティエンヌフューベル様、神だ、神。エロ神」)
洗い終わればシャワーで流され、水気はエティエンヌフューベルの紫炎で一瞬で乾かしてしまう。
魔力が溢れて溢れるエティエンヌフューベルは、出し惜しみせずに魔力を使いまくっていた。
幸せ過ぎて恐いと、凛音は産まれて初めて思った。
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