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10、龍鳳寺 要の初恋

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 今しがたシャルロットから手渡しでもらった最高の一枚。考えただけで、下半身の主に一部が熱をもち勃ち上がる。

 要自身もこの執着心はおかしいし、異常だとは思っていた。

 常識ある脳の部分は、やめろと止めてくる。しかし本能の部分では、陸との繋がりを求め、いない相手を想像し精を放とうと準備に入っていく。


「陸、陸……陸……」


 あらかじめ押えていたホテルの一室に、要は転がるように入り、普段では絶対に口にしない呼んだ事も数えるほどしかない愛しい人の名前を呼び続ける。

 何よりも先にシャワールームに入り、タオルを一枚抜き取り手に持ち、大人が三人はゆうに座れる豪華なソファーに腰を下ろした。

 大事な写真はそっとテーブルの上に置いて。


「はぁー、はぁー、んっ、はぁー」


 荒い息をひとまず落ちつかせないと、先行きが不安だ。まだ素晴らしい最高の一枚を見もしてないのに、すでに想像だけで昼間射精しまくったのだ。

 息を吸って吐くを繰り返しながら、スラックスの前ファスナー部分は、手際よく開閉し立派な陰茎を解放させる。

 別にすぐ自慰をする為に、股間を開けっぴろげにしたのではない。

 大事な子種を作る機能がある股間を圧迫させない為と、先端が衣服にスレてしまわないようにだ。これも全て陸との将来の為だった。

 その理由は要には絶対的なものとなっていた。

 三年前の〝あの事件〟から陸には会ってない。会ってはないが、一方的に会ったことが実は何度かある。

 付け狙った訳では決してなく、龍鳳寺所有のホテルで開催している昼食バイキングに、陸はよく友人と足を運んでいて、そこでたまたま偶然に見かけたのだ。

 友人と楽しげにバイキングを食べている陸に、話しかけるタイミングがあるわけはなく。

 要は変装したまま、それとなく近くに座り、バイキングを同じく食べながら話を盗み聞きしていたのだ。




『えー将来??』

『そう、そう、陸ちゃんは結婚したらさー、何人くらい子供が欲しい?』

『そうだなぁー、……五人くらい欲しいかな!』

『無理っしょ!!! 陸ちゃん、五人子供育てるのに、いくらかかると思ってるのよ』

『えーーでも五人くらい、本当はもっと欲しいくらいなんだよ』

『馬鹿だねー、あんたが産むんだよ?大変だよ』

『だって、大好きな人の子供は沢山欲しいもん』

『まぁね、でもさ、ここだけの話。赤ちゃんの元ね、元。低下してるらしいからさ。無理じゃないかな?』

『なんで?』

『色々あるのさ、色々、問題は私達女性だけじゃないってことだよー』

『典ちゃん、意味が分かんないよーー』

『まっ、陸ちゃんの相手がちゃんと、種ある人だといいねー』



 と。昼ごはんを食べながらする会話ではないだろう。と何度も突っ込みを入れたくなったが、要は真剣に聞いていた。

 それから要は異常なほど気をつけている。

 精子を弱くさせる原因とされているのは、本当か噂か分からなくとも全てを守っている。もちろん現在進行系で。

 真っ先にブリーフやボクサータイプはやめて、全ての下着をトランクスに変えた。

 股間にぶら下がる陰嚢を圧迫し押し潰すようなスキニーパンツなども処分し、男性器がある場所は比較的柔らか、カツゆとりのあるスラックスやパンツを選ぶようにした。

 冷やす為に股間にぶら下がる陰嚢は温めるのもよくないと知り、ノートパソコンなど熱を出すアイテムを膝に置くのも絶対にやめた。

 そしてもっとも気をつけたのは自慰だ。自慰自体は毎日でもするべきだと、推奨されているからもちろんやる。

 やり方にもNGは存在した。まずは敏感な陰茎に圧を加え過ぎる自慰はしない事。

 何度も自慰をすれば比較的なれてしまい強さを求め、硬い何かに擦り付けて射精したい願望にかられると。

 あまりそれをし過ぎると、本番でする女性の膣内だけでは射精出来なくなり、遅漏になり女性の身体を痛めつける原因や夫婦間の溝、離婚の原因にもなり兼ねないとあるのだ。

 それを踏まえ、要は自らの手を使い生でするのも控えていた。普通の男性より身体も大きく力も強い要は、よほど気をつけなければ 手でも陰茎に圧を加え過ぎる。

 柔らかいオナホールを使い、あくまで手は添えるのみで射精していた。


「陸…陸…、 」


 先程よりは息がだいぶん整った為、冷静さが頭の大部分をしめる。
 ふと冷静になると、己の浅ましさが恐くなり陰茎も少し萎える。

 ギンギン ビンビン状態よりはマシだと言い聞かせて、シャルロットから買い取った陸の生乳下着写真を、分厚く梱包された袋の中から取り出して机の上に置いた。


「あっ、んぁぁぁっ!!!」


 ビュックッ、ビュックッ、ビュジュッルッ!!!


 咄嗟に押さえたタオルに、濃い一発を放った。

 見なくても想像だけで射精した要だが、見たら最後 当然のごとく瞬間的に射精した。


 予測通り過ぎて笑えてくる。

 心地よい疲労感の己の身体はさて置き、写真だ。写真。いや、まてと。これは思う以上にヤバいやつだった。

 第2弾を放つ失態も考慮し、タオルをご立派な陰茎に被せ覆うように左手で柔く掴んだまま、机に出された陸の写真を再度目に焼き付ける。



「いや、まて、見えてないか!? 下着姿ではある、間違いなく下着だが、胸の胸の先端がっあっ!!!んぁっあッッッ!!!」


 ビュックッ、ビュックッ、ビュジュッルッ!!!


 声に出した己が阿保なのだが、言葉にするとエロさが更に増す。脳内へダイレクトに伝わった言葉は射精を促す手助けをし、二度目の白濁をガッツリとタオルに向けて発射させた。

 痙攣する腰に手をやり、うずくまりながら毒づく。


(隠せてないからな、これ!!下着写真ではなく、これは裸体写真と同じだからな!!! )


 要にとって有り難いのか、有り難くないのか、微妙なこの写真。


 確かに陸の下着写真。前かがみの姿勢で服を脱ぐ姿、脱いだ服は右腕に絡まり、悪戦苦闘している瞬間だろう。動くからか、いや違う、下着の胸を隠す布地があまりにも小さいのだ。

 ガッツリ胸の先端、魅惑の淡いピンク色の頂きがぽっつり二つ、綺麗かつ鮮明に激写されているではないか!?


「俺を犯罪者に落とす気か!?」


 刺激的過ぎる一枚。要と陸は数回程度しか会ってない、それも陸は要ではなく違う男(涼介)を健気に思い続けている最中にこれはない。

 このような写真で自慰行為をする要は、最低も最低、捕まる一歩手前だ。捕まらなくともアウトである。

 部屋に飾るのは絶対に無理な写真。

 いつもと同様のサイズだからこそ、陸の雰囲気を最大限に引き出せる額も用意していたが、これは飾れない。
 部屋に飾れば、要以外の人間が男女問わず見ることになるからだ。


「冗談じゃない!!!」


 社会人として常識的に、これは即刻処分するべきと分かる。目の前で焼却処分すべきなほど、ヤバい写真だ。胸だけならまぁよいが、顔までバッチリ映っているからなおさら悪い。

 個人を特定される。シャルロットはこの究極にヤバい写真を、何故要に渡したのだ!?

 もちろん金、プラス仕事の斡旋、今後の龍鳳寺財閥との関わり方を強固なものにしたい、まさしくそうだろう。がこれはない。
 要だからいいが、要以外の男にも金が動く仕事と引き換えに渡す可能性も大いにある。


 要は魅惑の写真を裏返して、机に置き直す。目にするには過激過ぎた。

 この写真は燃やして、さらにシャルロットには元の写真も消してもらうよう頼まなければならない。これは龍鳳寺財閥は関係ない。要自身の心からの願いだ。

 誰も見てない、男と肉体関係がない陸はまだその身体を見せていない。

 見てはいけない大事なものを無理矢理暴いたようで、陸に対して顔を合わせられなくなっていく。


 でも…しかし、燃やす前に…と。


 ソファーから腰を起こし、テーブルに手をつき前かがみの体勢をとった。

 二発をくらい要の精液でベタついたタオルは、もう用済みとばかりに手から離した。


 これが最後だからと己に言い聞かせ、もう一度裏返した写真を表に向け、その陸の若々しく真っ新なほぼ裸体の写真を眺めながら、ゆっくりと陰茎を握り上下に動かす。


 二、三度上下にシゴいたが、せっかくならばと、要は手で扱くのをやめた。


 ソファーから腰を浮かし、かなり浅く腰掛け、手は軽く陰茎に添えたまま固定し腰を前後に動かす。先走り汁を陰茎に擦りつけながら陸を想い腰を振る。


 ジュッポッ、クチャっ、チュポッ、ジュッポ、


 生々しい水音と、要の吐息だけの喘ぎが、静かな室内に響き渡る。

 最早それは自慰ではなく、陸との性行為の再現だった。

 恥ずかしながらも、未知の世界への快感に花開く乙女(陸)の身体。



「陸……陸……」



 涼介を好きで構わない…その気持ちを…持ったままで…いい。少しで…いい。


 ジュッポッ、クチャっ、チュポッ、ジュッポ、


 …陸の…好きな気持ちを…俺にも…分けて…くれ。


 ジュッポッ、クチャっ、チュポッ、ジュッポ、


 涼介の半分で構わない……いや…またその半分で構わない。……だから、俺を…みて…くれ。


 ジュッポッ、クチャっ、チュポッ、ジュッポ、




「陸…陸…りっ……くっ……!!!」



 ビュックッ、ビュックッ、ビュジュッルッ!!!



 湧き上がる想いと共に、写真の陸めがけ精を放つ。


 ビュックッ、ビュックッ、ビュジュッルッ!!!


 出し切った陰茎は硬さを失う。存在を見せつけていた鎌首は、今や下を向き健気に元のサイズに戻っていく。

 陸の生乳下着写真。

 要の濃い白濁をつけたからと、この場で燃やすつもりだった。

 しかしその写真には一滴の精もかかっておらず、虚しくも要の精子は、机の縁ふちや脚にかかっていた。


 動かない写真さえも、要の想いを受け止めてはくれなかった。


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