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5、中華料理は円卓会議と一緒に
しおりを挟む季依と華弥子の相談の結果、警察の警戒の糸を緩める意味も兼ねて、決行日は1か月後とした。
その間、2人は男の行動をじっくりと観察して統計を取った。
すると、男は週に一度仲間内で集まって飲み屋を全く同じルートで梯子していることがわかった。
「これは……都合がいい。」
「本当に!こんな大きな橋があるならきっときれいに儀式ができるわ!」
「それは良かった。」
「儀式が済んだら、絶対に私よりあの男の人を見に行くのを先にしてね。」
「どうして?」
「私も後から一緒に見に行きたいからに決まってるでしょ!」
「本当、変わってるわあんた。」
決行日当日、季依と華弥子は男が歩いてくる橋の一つ向こうの橋で待機していた。
「かや、こっちはどうにかデジカメでギリ顔視認できる距離だけど、こんなに遠くで真似させることできるわけ?」
「もちろんよ!無詠唱は難しいけど、詠唱でこちらを向かせるから心配いらないわ。」
すると、いつもの時間通りに男たちが歩いてきた。
華弥子は男たちが橋の真ん中に差し掛かったところで、男を指さした。
「【哀れな御魂に御海の慈悲を ~mirror eye~】。」
華弥子の黒目は深海のようにみるみる青く輝き、水晶体の中心に向けて渦を巻いた。
季依は華弥子の変化に咄嗟に男たちに視線を移した。
すると、グループの中で男だけがこちらに視線を向けた。
「かかったわ。」
「ッ……何す……え、は?!」
華弥子の嬉しそうな声に季依が振り返ると、華弥子は橋の欄干に腰を掛け、そのまま後ろ向きで下に落ちて行った。
その直後、男たちのいる橋のほうから悲鳴が聞こえて、季依は男たちのいるほうに走り寄った。
影から様子を見ると、橋の上に男の姿だけがない。
橋の下を見ると、すぐ真下で男が頭から血を流して倒れている。あの血の量から見ると即死に見えた。
「なんで流れないの……。」
「あの水流では人の体を浮かせることもできないわ。」
「ひッ……本当に生きてた……。」
「当たり前よ!たんこぶもできなかったわ!」
「不死身っていうのよ、そういうの。」
「あら、ありがとう!」
「褒めてないし。」
季依は混乱する橋を一瞥して背を向けた。
帰り道を歩き出す季依に華弥子は寄り添ってほほ笑んだ。
コンビニ店内でかご片手にスマホ画面をにらみつける季依に、華弥子はココナッツミルクを渡した。
「かや。」
「なぁに?」
「あんた本当に最高。」
「フフッ、私も買うわ。」
「今日も私の財布でしょ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次の日、朝からメディアでは【不審死】が取り上げられ、【警察の不祥事】とついに警察まで馬鹿にされ始めた。報道番組では専門家がコメンテーターに入り、『犯罪者の心理』にどうこうモノ申している。
華弥子は口の中を飲み込んでからテレビに視線を向ける。
「なんかありきたりね~。」
「仕方ないでしょ、人の心なんてそう簡単にわかるものじゃないし。」
「私たちの心理はそんな薄っぺらに見えるのかしら。」
「分かった気になるのがその人たちの仕事なのよ。内容変わったらチャンネル変えて。」
「は~い。」
その間、2人は男の行動をじっくりと観察して統計を取った。
すると、男は週に一度仲間内で集まって飲み屋を全く同じルートで梯子していることがわかった。
「これは……都合がいい。」
「本当に!こんな大きな橋があるならきっときれいに儀式ができるわ!」
「それは良かった。」
「儀式が済んだら、絶対に私よりあの男の人を見に行くのを先にしてね。」
「どうして?」
「私も後から一緒に見に行きたいからに決まってるでしょ!」
「本当、変わってるわあんた。」
決行日当日、季依と華弥子は男が歩いてくる橋の一つ向こうの橋で待機していた。
「かや、こっちはどうにかデジカメでギリ顔視認できる距離だけど、こんなに遠くで真似させることできるわけ?」
「もちろんよ!無詠唱は難しいけど、詠唱でこちらを向かせるから心配いらないわ。」
すると、いつもの時間通りに男たちが歩いてきた。
華弥子は男たちが橋の真ん中に差し掛かったところで、男を指さした。
「【哀れな御魂に御海の慈悲を ~mirror eye~】。」
華弥子の黒目は深海のようにみるみる青く輝き、水晶体の中心に向けて渦を巻いた。
季依は華弥子の変化に咄嗟に男たちに視線を移した。
すると、グループの中で男だけがこちらに視線を向けた。
「かかったわ。」
「ッ……何す……え、は?!」
華弥子の嬉しそうな声に季依が振り返ると、華弥子は橋の欄干に腰を掛け、そのまま後ろ向きで下に落ちて行った。
その直後、男たちのいる橋のほうから悲鳴が聞こえて、季依は男たちのいるほうに走り寄った。
影から様子を見ると、橋の上に男の姿だけがない。
橋の下を見ると、すぐ真下で男が頭から血を流して倒れている。あの血の量から見ると即死に見えた。
「なんで流れないの……。」
「あの水流では人の体を浮かせることもできないわ。」
「ひッ……本当に生きてた……。」
「当たり前よ!たんこぶもできなかったわ!」
「不死身っていうのよ、そういうの。」
「あら、ありがとう!」
「褒めてないし。」
季依は混乱する橋を一瞥して背を向けた。
帰り道を歩き出す季依に華弥子は寄り添ってほほ笑んだ。
コンビニ店内でかご片手にスマホ画面をにらみつける季依に、華弥子はココナッツミルクを渡した。
「かや。」
「なぁに?」
「あんた本当に最高。」
「フフッ、私も買うわ。」
「今日も私の財布でしょ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次の日、朝からメディアでは【不審死】が取り上げられ、【警察の不祥事】とついに警察まで馬鹿にされ始めた。報道番組では専門家がコメンテーターに入り、『犯罪者の心理』にどうこうモノ申している。
華弥子は口の中を飲み込んでからテレビに視線を向ける。
「なんかありきたりね~。」
「仕方ないでしょ、人の心なんてそう簡単にわかるものじゃないし。」
「私たちの心理はそんな薄っぺらに見えるのかしら。」
「分かった気になるのがその人たちの仕事なのよ。内容変わったらチャンネル変えて。」
「は~い。」
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