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13部 番外編

神獣たち

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「本当に面白い生き物だなあ」
とつぶやいていたのはカサンドラである。ここはカサンドラの神殿の近く、新しく産まれた神獣、リリーとレオは神殿の近くを走り回って遊んでいる。そこにハンターが合流していた。ハンターは背中にある翼は白いが女の子のリリーは背中の翼も金色である。リリーはまだ猫のような大きさなのでハンターよりはだいぶ小さいのだが、ハンターを見ると口を開けて威嚇していた。ハンターの方がびっくりしている。
この場には、サントスやネル、ハロルドとキュリアもいた。そしてバリアスとジュリアンもいる。
「メスが生まれてうれしいなあ。これで子供ができる可能性もあるね」
バリアスはうれしそうだった。
「しかし、今度は蛇が二匹もくっついているとは……」
とハロルド。(蛇をつけなきゃ気がすまないんだな)とハロルドはゆりのことを思っていた。きっと大喜びしたに違いないと思っている。

「かわいい。この子は普通の子なのかな?」
キュリアはレオをつかまえようとして逃げられていた。
「酒で成長するのも面白いな。よく気がついたな」
カサンドラがジュリアンに言った。
「ジンラ様の力が入ってるようだからもしかしたらと思って」
「僕はハンターには神気をあげてるけどね。ライからもらったやつを」
とバリアス。
「いつ大人になるかな?」
ネルが聞いた。
「どうだろう。まだわからない。でもあまり大きくなったらここらでいられないかもしれないからなあ」
ジュリアンがぼそぼそ言っていた。
「まあそうだなあ。悪さをしなければいいが、将来的にはペガサス牧場のような場所を作って、そこでいるようにするとか」
とカサンドラ。もちろん、牧場にいるようにしつける必要があるが、ジュリアンならばできるだろうと思っている。

ネルとキュリアがレオをはさみうちにして、ネルがレオをようやくつかまえた。
「アー」
とレオが鳴いている。
「ふわふわ、かわいい」
レオだけは普通の豹紋がある豹の赤ちゃんという感じなので、今はかわいい盛りである。
「猫みたいだよね。私もだっこさせて」
キュリアがレオをだっこしていた。
「この子も神獣なんですよね。ただの豹じゃなくて、何かあるのかな?」
とキュリアが聞いた。
「それは成長してからのお楽しみだよ」
とジュリアン。

「尻尾の蛇はどのような役割があるのだろうな。酒を飲む以外は」
カサンドラが聞いた。どうにもハンターとリリーの尻尾の蛇が気になるようだ。
「それもまだわかりません。多分、戦いに役立つ何かだと思いますけど」
ジュリアンが言って、ハロルドが反応していた。
「こいつら戦えるのか?」
「多分」
「どうやって戦うんだろう?」
ちなみに、魔物相手だとペガサスなどは参加できないし、強そうな龍とて無理だった。魔物にかみつくというのがまず無理なのだ。魔物に触れずに戦う必要があるのだ。
「その神器が気になるな。なんでこの子だけ神器があるんだろう?」
ハロルドはリリーの首輪のようなものを気にしていた。
「本当だな。私も気になる」
とカサンドラ。
「首輪……どうなるんでしょうね」
サントスも気にしていた。

少し離れた所に、アリアスの神獣であるでかいリスのような生き物が一匹いた。こちらの様子を窺っているのにジュリアンが気がついて、「おいで」と声をかけた。すると、こちらにかけよってきてぴょんと飛び跳ねて、ジュリアンにだっこされた。

「アリアス様の神獣ってそんなでかいのもいるんだね」
ネルが言った。たまに見る神獣たちよりもかなり大きめである。抱っこするのも重そうだ。
「この子はモーグって名前だよ」
「モーグっていうんだ」
「キキーキキ……」
モーグは何かを訴えるように鳴いていた。
「キキ……キキ……」
ジュリアンはモーグの体をなでている。しばらくモーグは鳴き声を発していた。まるで何かを訴えているようでもある。
「恐れなくていいよ。後に続く仲間もきっといるから」
「何の話だ?」
ハロルドが聞いた。
「モーグは仲間はずれにされるのを心配してるんだけど、同じになる仲間もきっといるから、大丈夫だよって言ってあげたんです」
ハロルドは首をかしげている。
「いずれわかりますよ」
サントスとネルはリリーの尻尾をじろじろ見ていた。
「お父さん、この蛇も女の子かな」
「多分そうだろうね」
ネルに聞かれてサントスが答えていた。

翌朝のことである。日が明ける前にアリアスは目を覚ましたのだが、寝室の入り口からこちらを見ている何かがいた。
「ん? なんだろう? 鳥かな?」
鳥にしては大きい。アリアスは近づいてみた。
その鳥は、体長一メートルはありそうなほどの大きめの鳥だったが、顔はわしのようで手足が4本あり、体は四つんばいの獣のようである。そして金色の翼がついていた。顔の周り以外は金色の羽で覆われており、長い尻尾の先には金色のふわふわしたものがついている。
「ん? 私の神獣っぽいな。いつ産まれたんだろう?」
「キュイキュイ」
鳥のような神獣が鳴いた。
「よしよし、出かけなきゃならないから、帰ってから名前を決めてやろう。待っていてくれ」
「キュイ~」
アリアスはなでなでして去って行った。

そしてアリアスが朝の仕事を終えて神殿に戻ると、娘達が謎の神獣を囲んでいた。
「お父さん、いつ産まれたの?」
「さあ、今朝のようだぞ」
アリアスが答えた。
「綺麗な神獣だな。名前を決めなきゃ」
「この子オスみたいよ」
「お父さん、モーグがいないけど、知らない?」
部屋の中をうろうろしていた娘が聞いた。神獣達は10匹ほどいたが、モーグはいないようだ。
「でかけたんじゃないか?」
「朝はいっつも隅っこにいるのに」
「キュイキュイ」
神獣が鳴いている。
「そうそう名前……何にしようかな」
アリアスが首をひねっていると、ダーナがやってきた。
「ねえ、モグランがおかしいんだけど」
ダーナは神獣を一匹抱っこしていたが、その神獣は目を閉じて丸まっていて、体の周りは淡い光に包まれていた。
「本当だ。どうしたんだろう?」
アリアスが神獣をダーナから受け取った。神獣は丸まったままぴくりとも動かない。
「あら、この子いつできたの?」
ダーナが鳥っぽい神獣に気がついた。
「かっこいい神獣ねえ」
神獣はダーナの手に顔をすりすりさせている。
「朝いたんだ。私の神獣っぽい。この気高い姿、私にふさわしいじゃないか。なあ」
「お父さん、モグランが!」
「あ、モグラン!」
抱っこしていた神獣に変化が訪れた。金色の繭のようなものが現われて、モグランの体をすっぽり覆ってしまったのである。る。
「モグラン、どうしたんだろう?」
「どうしたのかしら」
その繭はみるみるうちに大きくなってきたので、アリアスはソファの上に置いた。

一同が見守る中、一時間ほどすると繭に亀裂が入ってきた。
「あ!」
中から出て来たのは大きな鳥のような生き物であるが手足が4本ある。
「えー! この子と一緒じゃない!」
「あ、進化したのか? すごいじゃないか。じゃあこっちのはだれなんだ?」
最初にいた神獣も誰かが進化したのかもしれない、と皆思い始めた。
「もしかしてモーグ?」
娘の一人が聞くと、神獣は「キュイ~」と鳴いていた。
「えーモーグなのか?」
アリアスは驚いている。
「全く別の生き物になるなんて……全員変わっちゃうのかしら?」
ダーナが他の神獣達を見た。他の神獣達に変わりはないようだが。

「すごい、さすが私の神獣だな」
アリアスは自慢げである。
「すごーい」
「かっこいい」
モグランは翼を広げてみていた。翼を広げるとかなり大きくなる。
みんな「おー」と声を発している。
「なんて綺麗な鳥だ。鳥でいいんだよな」
「いいのかしら?」
ダーナも首をかしげている。

モーグは、部屋をぴょんびょん飛び跳ねてアリアスの神殿を出て行った。

空を飛んでいたクーリーフンは、見慣れない鳥が飛んでいるのを見た。
「ん? なんだろう? 足が4本ある。もしかしてまたお母さんが産んだとか?」
クーリーフンはそう誤解していた。

モーグはあちこち飛んでジンラの神殿の近くにやってきた。そこにはジュリアンがいたのである。モーグはジュリアンの近くに降りて、「キュイー」と鳴いた。
「おや、あ、もしかしてモーグかい? ステキになったね」
ジュリアンはすぐにモーグだと気がついたようである。ジュリアンがモーグの体をなでてやると、モーグはうれしそうに翼を広げて「キュイ~」と鳴いていたのだった。

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