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プロローグ

スチル〈B〉

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新緑の中にピンク色の花が乱れ咲いて、彼の背景を彩っていた。

少し俯き気味の顔に、真っ直ぐな黒髪が水の流れのように溢れている。
その流れから浮かび上がる象牙のようなクリームがかった肌は滑るようだ。
そこに長いまつ毛が頬に影を落としている。

そんな静止画のような中で、その切れ長な紺色の目は、征服欲を滲ませてギラギラと自分に奉仕する者を見下ろしていた。

目の縁が少し桃色に色付いて、色気がダダ漏れている。
半開きに捲れた口元から覗く舌先が、ぞくりと色っぽい。

制服のボタンは3つほど外されて、はだけて見える喉仏の影も浮き出た鎖骨の影も、
生唾ものだ。
華奢に見えていたのに、実は細マッチョじゃん。

自分の股間にある茶髪を見下ろしながら、
さも当たり前の様にしている男は、攻略対象者Bのブオナ様だ。

必死で奉仕する頭を撫でてやる事も無く。

背もたれにもたれて、腕を向こうに垂らしたままだ。
だらしなく広げた足の間に跪いて、ん、ん、と息を上げながら放置している茶髪はひたすら顎と舌を動かしていた。



スチルでは上半身のぬき絵だった。
股間の茶髪がぽやぽやと見えるくらいの絵だった。
スチルでは白い花だったから、ここは安全地帯だと思い込んでいた。



"スチルB"

まだ名前が決まって無い時に描かれた一枚だ。
色っぽさ一番と言われている一枚だ。
ソレのナマを見る事が出来て、腰が砕けそうになった。

~このままいけばAもCも見れるのかっ⁉︎

渇望がじんじんと体を熱くするけれど、


待てよっ‼︎

そんな目の保養を続けたら、俺の首を絞める事になるだろうがっ!
アホかっ!
と、理性が叫んだ。


だよね。

やばい。

鳴かず。
飛ばず。
近寄らず。

デュークは入学以来
『ワタシ、オモシロミ、ゴザイマセン。』
を顔に貼り付け、ひたすらモブとして埋没して過ごしてきた。

その四方八方への絶対的結界が、今、音を立てて砕け散ったのを感じていた。
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