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いよいよ囲い込み

39 そうして罠は絞られる

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掻き回された性への欲望が。
砂嵐のように辺りへ四散していった。

竜騎士達は自分の竜の衝動に応えて去って行く。
他の者達も前屈みになりながら、相手を求めて散って行く。
招待者達は、相手の腰を抱き寄せて消えて行った。


満月の中に黒い影となりながら、竜達が舞っている。
見る者は少なくなっても、その存在感は轟々と空気を戦慄かせている。

それをルカはぽかんと見上げていた。

息苦しさがまだ残っている。
じんじんする甘い痺れが身体を満たして、中々動けないでいた。

ふと見ると波が引くように人がまばらになっている。

ああ、自分も。
どうせならエルメとこの闘いを見よう。

いとまの挨拶のためにディサロを見ると、待っていたかのように近寄って来た。

「一緒に月とカララを見守りませんか?」

「えっ?」

それ、さっきあちこちでナンパ目的に囁かれてた気がする。
躊躇するルカに、ディサロはくすりと笑う。

「竜の発情に煽られるのが心配かな?」

「ち、違うしっ‼︎」

自分の浮き足だった状態に、ちょっと構えたのを見透かされて、ルカは真っ赤になって叫んだ。

「今までも"飛翔の儀"は何度も見たことあるし!全然、平気だしっ!」

「へぇ。竜の発情に揺らがないの?凄いねぇ」

「勿論‼︎全然揺らがないから!無問題さっ‼︎」

全力でいい切るルカに、にっこりとディサロ。

「じゃ、一緒に見てても大丈夫だよね。」

「勿論っ!臨むところさっ‼︎」




……子供かっ!

うまうま乗せられとるやん。
マルロはあまりにもちょろいルカに、空を仰いだ。


ディサロの手がエスコートの為に触れる。
妙にずくんずくん熱くて、触れた所がびくびくする。
口の中に心臓があって、全身がずんずんと歌っているようだ。

「ルカ。俺は竜舎を見てくるから。」

そんなルカにマルロが声を掛ける。

「あ、そうだね…」

振り向くと、いつも飄々としているマルロの目がうるうるしている。
竜の発情に当てられたんだな。
そういえばマルロの旦那は、今日は竜舎の警備だ。

~~今夜はあちこちで青姦祭りだ。
竜の発情の衝動のままに。
その竜を身近に感じる野っ原で。
沢山の愛が盛り上がるのか…

そう、ぼんやり思って『青姦』とルカは頬を赤くした。
何故か喉がからからで。
じわじわと腹の奥が震えている。
しゃきっと背筋をのばして歩こうとするのに、何故か足に力が入らない。

支えるように、抱き寄せるようにディサロがそっと寄り添った。
その体温に、腹の奥がきゅっと窄まる。
くっ。と声をあげそうになって、ルカは丹田に力を入れた。



マルロは、二人の背中を見送る。

ルカ。
わかってないだろうけど。
~~えっちな顔だぞ。


ディサロ様。
一発逆転ホームラン狙ってますね。
もう、邪魔者は消えろ!
ってオーラが半端ないっすね。

わかってます。
邪魔はしません。

フェルベーツ伯だって、なるようになれ。
って思ってますからね。
名代にルカを行かせたってぇのは、つまりそういうことっスよ。
わかってないのはルカだけですから。
後はディサロ様次第ってことっスね。

俺は俺でせっかくのこの儀を愉しみますから。


そしてマルロはスキップしながら竜舎を目指した。



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