上 下
4 / 47
結婚が降りかかってきました

4 思い込み体質か

しおりを挟む
ルカは何のしがらみも無い次男坊だった。
どこに嫁に行こうが、婿に行こうが、果ては平民になろうが。
兄と父というバリケードを突破出来るのなら何の問題も無かった。

兄のジェルドは出来た男で、しかも弟に甘かった。
ルカは母に似た紅花詰草ストロベリーキャンドルと言われる苺のような紅い髪と、瑠璃色の瞳の美しい容姿で。

怯む事のない好奇心と負けん気の強さで、下町のあちこちに出没して領民からも愛されていた。

父親は、結構やらかすルカに毎回威圧をこめて眉を顰めて説教するけれど。
ごめんなさい。と、しょんぼりする姿にすぐでろでろに懐柔されてしまう、あかん奴だった。

母親は三歳のときに天に召された。
お腹の弟とともに儚くなった。


ルカは泣いて、泣いて、泣いた。
そしてその時にあった飛竜の"孵化の儀"で、今の相棒のエルメを感応してしまった。


領主一族なのに、飛竜を、だ。


しかもエルメは見た事も聞いた事も無い白い竜で。
不吉だ。とか、神の恩恵だ。
と、学者も神殿もけんけんがくがく騒いだが。
卵が小さかった事もあって、騎士として戦闘に向かない。
ペットとしましょう。
と、落ち着いた。



飛竜は生まれながらに相棒がいる。
誰とでも組める訳では無い。
候補となる竜騎士見習いは幼い頃から訓練している。
一度感応したものを引き剥がす事は出来ない。
魂が引き裂かれて、傷が残ると言われている。

片方が死んだ時。
大概もう片方も死ぬ。
生き延びたとしても、廃人になる事が多かった。



領主一族なのに竜持ちとなったルカは、
そのフェルベーツ家の領地が飛竜の産地だと言う事もあって大事に育てられた。
おかげで十歳で王立学園に入学するときも、周りがこそこそ噂話しされたり遠巻きに見られていてもまるっきり平気だった。

見かけは母親似の生き生きとした美貌を持っていたルカは、初めは竜持ちと言う事で周りの貴族の子弟がただただ指を咥えて見ていた。
ソレがある時、王都近くで起こったスタンピードでこのペアの価値は計り知れない!
とわかってしまった。

そこからだ。
面倒くさいアプローチが昼も夜も始まったのは。

良いなぁ。
と見ていた美人が本当に極上の獲物だとわかった途端。
押せ押せのアプローチが始まり。

ルカは卒業と同時に領地へと逃げ戻った。

結婚なんて冗談じゃ無い!

エルメといる時の充足感に、邪魔な奴はいらない。
……と、思ったいたが。


ソレが何故処女喪失になるかと言うと。



王家からのお見合いお茶会のせいだった。


飛竜の産地は二つ。
海側のアグネィンと、辺境のフェルベーツだ。
王太子は既にアグネィンから嫁を貰っている。
出来る事ならフェルベーツも取り込みたい。
さらにエルメの能力は他の貴族に渡せない。
見合いだ。見合い。
上手く丸め込んじゃえ。

あ、フェルベーツからなんか嘆願書あったなあ。
その嘆願書を協議しようと呼び出そう。

と、なったらしい。



フェルベーツは辺境だ。
背後から湧いてくる魔物の対処もしている。
フェルベーツの竜騎士も軍隊も強い。
でもとても忙しい。
何より隣の領地が領主不在だ。

二年前に隣の領主が没した。
妻も子も魔物に殺されたので、すんごくすんごく魔物を狩ってくれてた。
後継者がいなくて、爵位と領地を王族へと返還したけれど、王族は次を決めてくれて無い。

隣の領地には王家から騎士団が駐軍しているけれど、そんなもん焼け石に水だ。
おかげでこっちは金も体力も精神的にも綱渡りだ。
何とかしてくれと嘆願書を送り続けているから、そりゃもう、行きますよ!

と、なったわけで。



でもね、見合いなんて、勘弁だ。
王家のメンツを潰さずにお断りしたい。

~~つらつら考えたルカは、短絡的に答えを出した。


ルカは知ってる。

王家は血統を維持するために、結婚相手は処女限定なのだ。



つ・ま・り。


ルカはマルロに宣言した。



「僕は処女を捨てるからねっ‼︎」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪だとか求婚だとかって、勝手に振り回してくれちゃってるけど。僕はただただ猫を撫でたい。

たまとら
BL
じいちゃんに育てられたリラク。 なんか、ちょっと違うみたいだ。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

気が付いたら乙女ゲームの王子になっていたんだが、ルートから外れたので自由にして良いよね?

ume-gummy
BL
《本編完結しました》 さっきまで何処にでもいる高校生だった俺は、気が付くと乙女ゲームの王子になっていた。 女性が少なくて一人の女の子に男が何人も群がるような世界に転生した俺。 実際は乙女ゲームではなくBLでした。 悪役令嬢の父親が気になる転生王子(攻)×悪役令嬢の父年上美人(受)です。 *マークはR18なシーンがあります。 周りに気をつけてお読み下さい。 指定がなければアルフォンスになった蓮の視点で話が進んでいます。 ふんわり設定ですが、よろしくお願い致します。

好きもの令息と不能公爵の白い結婚

たまとら
BL
男しかいない世界の、真ん中で愛を叫んじゃいます

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

隣国王子に快楽堕ちさせれた悪役令息はこの俺です

栄円ろく
BL
日本人として生を受けたが、とある事故で某乙女ゲームの悪役令息に転生した俺は、全く身に覚えのない罪で、この国の王子であるルイズ様に学園追放を言い渡された。 原作通りなら俺はこの後辺境の地で幽閉されるのだが、なぜかそこに親交留学していた隣国の王子、リアが現れて!? イケメン王子から与えられる溺愛と快楽に今日も俺は抗えない。 ※後編がエロです

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

[完結]嫁に出される俺、政略結婚ですがなんかイイ感じに収まりそうです。

BBやっこ
BL
実家は商家。 3男坊の実家の手伝いもほどほど、のんべんだらりと暮らしていた。 趣味の料理、読書と交友関係も少ない。独り身を満喫していた。 そのうち、結婚するかもしれないが大した理由もないんだろうなあ。 そんなおれに両親が持ってきた結婚話。というか、政略結婚だろ?!

処理中です...