上 下
10 / 11
学園という社会

10 綺麗な留学生

しおりを挟む
並ぶ街路樹には、少し色付いた葉がある。
この国ははっきりした四季がある。

フィルはひらひらと舞い落ちる葉にぼんやりと見惚れ、次に落ちた紅葉を拾った。

路は石畳で半円を描いている。
学園の寮から教義棟へと歩くのはとても楽しい。

バーロイが背後に付き従っている。


この国で専属の従者を連れているのは少ない。
伯爵位以上のもので、豊かな領地を持っているものだけだ。
貧乏貴族や領地無しは共同で従者を雇っていた。

フィルにはもちろん従者がいる。
隣国から来た上級貴族なのは勿論。
身体が弱いと前期を休んだものだから、世話をする者が必須だったのだ。

この時、フィルはあちこちから惚け~っとした物欲しげな視線で見られているのに気が付かなかった。
ぼんやりと紅葉を見上げるフィルは、そりゃもう儚げな美少年で。色付いた葉に同化するようなストロベリーブロンドのおかげか、もう、なんかの妖精のようで。
バーロイは潜む奴等をチェックして、さりげ無く威圧を発してフィルを守っていた。


フィルが入学してから、まぁ大変だった。
前期にいなかった美人が現れたのだ。

幸い"隣国の"と言う枕詞のおかげで、互いに牽制し合ってガツガツ来てない。


そして。
フィルにとってはそんなことより、食堂の昼食の方が大きな問題だった。


はっきり言って、フィルは多少腐った物を食べても腹を壊さない自信のあるボディで、めっちゃ丈夫だった。

ただ幼い頃からの食料事情の所為か、小柄で細い。
骨からして細い。

学園の食堂でちびちびと昼食を食べて。
ああ、お腹がいっぱいですぅ。
を、演じているが、正直大食漢だ!

がっつり三人前のステーキを食べても、余裕でデザートが入る。
病弱設定の為に外で小食でいるが、寮で食べ出すと山盛りだ。大変燃費が悪い。

この大量の食料が、その細い身体の何処へ消えていくのかと、バーロイですら疑問に思っている。外見詐欺だ。

食堂では設定の為に量を食べない。
量がダメなら質‼︎
幸いこの学園の食堂は、コンソメの味一つをとってもあのホテルに負けて無い。


気を紛らわすために外を観ながらゆっくり食事する。
そんな紅葉に見惚れるフィルに、人は見惚れる。

「ご馳走様でした。」

給仕に声かけは欠かさない。
そして微笑みも欠かさない。
バーロイの指示の元、何とか貴族の学園生活を送っていた。

今や流れるように歩く。
バーロイが一挙一動を厳しくチェックしているのを知っているから気を抜かない。
部屋に帰ると毎日指導が入る。



「フィルオード様」

廊下に足音が二つ。
もしやと思ったら、やっぱりカステル様とその従者だった。

ご機嫌よう、と軽く腰を落とす。

「フィルオード様。共に昼食に参りましょうとお誘いしていたではありませんか」

ちっ。
勘弁してくれよ。
スルーしたのを感じて悟れよ。
面倒くせぇなあ。

さり気なく腰に伸ばされた手を、風にのった水の流れのようにふわっとかわす。
この"ふわっと"がキモだ。

露骨にうおっと避けたら、顔を潰すことになるからな。
風に押されてズレた。
と、思わせるのが大事なのだ。



このように。
最近フィルにやたらぐいぐい群がるようになった。
うっかりバレたら大変だ!
フィルは警戒している。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

社畜サラリーマンの優雅な性奴隷生活

BL
異世界トリップした先は、人間の数が異様に少なく絶滅寸前の世界でした。 草臥れた社畜サラリーマンが性奴隷としてご主人様に可愛がられたり嬲られたり虐められたりする日々の記録です。 露骨な性描写あるのでご注意ください。

[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん
BL
【縦読み推奨】 ■ 第一章(第1話〜第9話)  アラディーム国の第七王子であるノモクは、騎士団長ローエの招きを受けて保養地オシヤクを訪れた。ノモクは滞在先であるローエの館で、男奴隷エシフと出会う。  滞在初日の夜、エシフが「夜のデザート」と称し、女奴隷とともにノモクの部屋を訪れる。しかし純潔を重んじるノモクは、「初体験の手ほどき」を断り、エシフたちを部屋から追い返してしまう。 ■ 第二章(第1話〜第10話)  ノモクが「夜のデザート」を断ったことで、エシフは司祭ゼーゲンの立合いのもと、ローエから拷問を受けることになってしまう。  拷問のあと、ノモクは司祭ゼーゲンにエシフを自分の部屋に運ぶように依頼した。それは、持参した薬草でエシフを治療してあげるためだった。しかしノモクは、その意図を悟られないように、エシフの前で「拷問の仕方を覚えたい」と嘘をついてしまう。 ■ 第三章(第1話〜第11話)  ノモクは乳母の教えに従い、薬草をエシフの傷口に塗り、口吻をしていたが、途中でエシフが目を覚ましてしまう。奴隷ごっこがしたいのなら、とエシフはノモクに口交を強要する。 ■ 第四章(第1話〜第9話)  ノモクは、修道僧エークから地下の拷問部屋へと誘われる。そこではギーフとナコシュのふたりが、女奴隷たちを相手に淫らな戯れに興じていた。エークは、驚くノモクに拷問の手引き書を渡し、エシフをうまく拷問に掛ければ勇敢な騎士として認めてもらえるだろうと助言する。 ◾️第五章(第1話〜第10話)  「わたしは奴隷です。あなたを悦ばせるためなら……」  こう云ってエシフは、ノモクと交わる。 ◾️第六章(第1話〜第10話)  ノモクはエシフから新しい名「イェロード」を与えられ、またエシフの本当の名が「シュード」であることを知らされる。  さらにイェロード(=ノモク)は、滞在先であるローエの館の秘密を目の当たりにすることになる。 ◾️第七章(第1話〜第12話)  現在、まとめ中。 ◾️第八章(第1話〜第10話)  現在、まとめ中。 ◾️第九章(第一話〜)  現在、執筆中。 【地雷について】  「第一章第4話」と「第四章第3話」に男女の絡みシーンが出てきます(後者には「小スカ」もあり)。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。  「第二章第10話」に拷問シーンが出てきます。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。

僕は社長の奴隷秘書♡

ビビアン
BL
性奴隷――それは、専門の養成機関で高度な教育を受けた、政府公認のセックスワーカー。 性奴隷養成学園男子部出身の青年、浅倉涼は、とある企業の社長秘書として働いている。名目上は秘書課所属だけれど、主な仕事はもちろんセックス。ご主人様である高宮社長を始めとして、会議室で応接室で、社員や取引先に誠心誠意えっちなご奉仕活動をする。それが浅倉の存在意義だ。 これは、母校の教材用に、性奴隷浅倉涼のとある一日をあらゆる角度から撮影した貴重な映像記録である―― ※日本っぽい架空の国が舞台 ※♡喘ぎ注意 ※短編。ラストまで予約投稿済み

「優秀で美青年な友人の精液を飲むと頭が良くなってイケメンになれるらしい」ので、友人にお願いしてみた。

和泉奏
BL
頭も良くて美青年な完璧男な友人から液を搾取する話。

大好きな彼氏に大食いだって隠してたらなんだかんだでち●ち●食べさせられた話

なだゆ
BL
世話焼きおせっかい×大食いテンパリスト R-18要素はフェラ、イラマチオのみ。 長くスランプの中ひねり出したものなので暖かい目で読んでもらえると助かります。

白い結婚をしたら相手が毎晩愛を囁いてくるけど、魔法契約の破棄は御遠慮いたします。

たまとら
BL
魔道具のせいでイケメンハイスペックなのにチェリー道をいくヴォルフと、ちょっとズレてるレイトの汗と涙とこんちくしょうな白い結婚の物語

転生したらダンジョンコアだった件

葉月+(まいかぜ)
BL
神約・異世界ダンジョン生活   ※かみにやくそくされたいせかいだんじょんせいかつ。 ※主人公は男寄りの無性生物ですがメインの相手(受け)が男なので一応BLとしてあります。 ※主人公は無性なのでTS、リバ風のシチュエーションがあったとしても厳密には違います。イメクラです。 ※主人公は人間ではないので倫理観がちょっとどうかしていますがわりと善良な化け物です。理由もなく街を滅ぼすのはちょっとな~と思いつつ、犯罪者をモルモット扱いすることには抵抗がない程度の天・混沌・善。 ※シリルさまのお楽しみ履歴:昏睡レイプ/睡姦/NTR/視姦/スライムオナホ/種付け(サセ)/

【完結】子供が出来たから出て行けと言われましたが出ていくのは貴方の方です。

珊瑚
恋愛
夫であるクリス・バートリー伯爵から突如、浮気相手に子供が出来たから離婚すると言われたシェイラ。一週間の猶予の後に追い出されることになったのだが……

処理中です...