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ギルドでの討伐

1 ナヴァとアオニアの力

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森の中でアオニアの金髪は溶け込んでいる。
その背中を見ながら、レンは不思議に思った。
新緑の色、萌葱の色。森は色が氾濫している。
藻のようなその影の中で木漏れ日が踊る。
その陽に当たる金の髪は、目立たずに気配を消していた。

街の中もギルドの中でも、アオニアは目立っていた。
光が当たっている訳でも無いのに、ラメ入りか!って程にキンキラキラなのだ。
地球の聖人画や仏像の光背の様に、アオニアの輝きは辺りをあまねく照らしている。
その光に照らされた人間は、雨の牧場の牛の様にひたすらおとなしくなるか、あるいはジャダのように何処か壁を作っていく。

ペアのナヴァは番だという。とても小柄だ。
小学生の5・6年くらいの大きさで、190オーバのアオニアが抱えていると人形のようだ。
ナヴァの顔は分からない。
ローブのフードがいつも顔を隠している。
風が吹いただけでフードがめくれる俺とは違うな、とレンはぼやいた。

アオニアが超絶美形だから、そのペアを気にする冒険者は多かった。
それでもナヴァにちょっかい出す奴はいない。
この世界で"番"と銘打った者にちょっかい出すって事は、命をかけて挑むと同意語だからだ。
そりゃアオニアに挑む程に度胸のある奴はいないと思う。


あの川辺で会ってからしばらくして、アオニア達はレンの居るギルドに移動して来た。
ジャダは胡散臭そうに鼻の頭に皺を作り、周りはゴックンと様子を見ている。
アオニアはあちこち移動するBランクの冒険者で、汗も涎も排泄さえ感じさせない見てくれとその能力に誰も太刀打ち出来なかった。

そしてナヴァの力はちょっと違っていた。

王都の南門から2日程の森で岩猿が目撃された。
岩猿はボスを頂点に群れで動く。
全てを食い尽くして村を襲う。
破壊力と機動力と残虐性、そしてボスはその群れを軍隊のように指揮する。
人肉の味を覚えた岩猿は魔獣化し、ますます狡賢く手強くなっていく。
だから岩猿を見かけた途端にすぐに討伐の依頼がかかる。
まず様子見役の斥候が目撃されて、すぐに近くの村から依頼が来た。

その小規模な群れに四つのパーティが向かった。
ジャダとレン。アオニアとナヴァ。
天の雷牙。月夜の火焰鶏。どれもBランクを抱えるパーティだ。
そして森の奥でその群れを見つけた。
枯れた谷の大岩の上で、群れに囲まれたボスがいた。
寝そべって部下にグルーミングされている。
辺りを睥睨する怖い者なしの態度だ。

見張りの岩猿に見つからないように結界を張って戦略を立てる時、アオニアは自然と指揮を取っていた。

「雷牙と月夜はこことここを抑えて貰いたい。これで奴らの逃げ道は無くなる。
レンは上空から討ち漏らしや突発事故に備えてくれ。
ジャダは私とあそこで殲滅だ。最後は焼き尽くしていく。
谷から延焼しない様にガードも頼む。」

アオニアは人に命じるのが当たり前な雰囲気がある。
地図で指示を出されて、皆が頷いた。

「合図はボスの声だ。」

ナヴァ、頼むよ。


配置に着いてから、空気が振動した。
風とは違う揺らぎが小さくおこった。
はっと気がつくと、グルーミングされる巨大なボスの横に小さな影が立っていた。

いつの間に…
レンは息を殺してそれを見ていた。

ボスのもも程の大きさのローブに、辺りの岩猿達は気付いていない。
寝転んだボスも、だらりと身体を伸ばしたままだ。
ローブがふわりと揺れると手が上がって、指先がボスの耳元に延びていく。
のんびりとグルーミングされるボスに延びた手から、レイピアが頭の中へと差し込まれた。

グギャアぁぁぁッ‼︎

痛みよりもいきなり目の前に現れた敵にボスが吠える。
グルーミングしていた部下は驚きで大岩から滑り落ちた。

その声をスタートに冒険者達は動き出した。
慌てふためく岩猿達が我に帰る前に、その殲滅が始まった。
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